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79・人生終了
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……続き。
そして 俺達はお化け屋敷の中に入った。
しかし 中は 夜の道路を模した内装がしてあるだけ。
ただ それだけで、ぐるっと壁に沿って回るだけの物。
「お兄さま、このお化け屋敷は何でしょう? 幽霊が出る雰囲気ではありませんが」
「まあ、とにかく進んでみよう」
俺達は進むと、曲がり角を曲がるが、そこは突き当たりで曲がる真っ直ぐの通路があるだけ。
俺達は進んで曲がる。
やはり真っ直ぐの通路。
俺達は意味が分からずに進み、そして曲がろうとした。
そして俺達は立ち止まった。
「「……」」
そこには、メタボ気味の半裸の男がいた。
右手に包丁。
左手には、首が折れた鶏の死体を持っていた。
「……お兄さま、あの人はなんでしょう?」
「……さあ」
半裸の男は俺達に眼を向けると、ニタリ と笑った。
そして、裸足で ペタ ペタ と嫌な足音を立てて、こっちに歩いてきた。
「お、お兄さま、近づいてきますよ」
「湖瑠璃ちゃん、よく分からないけど、戻った方が良さそうだ」
「そうですね、戻りましょう」
俺達は来た道を戻ろうとした。
しかし その途端、男はペタペタペタペタと小走りで追いかけてきた。
「追いかけてきます! お兄さま! 男が迫ってきます!」
「走るんだ! 湖瑠璃ちゃん! 走って入り口へ戻るんだ!」
俺達はわけも分からず走って入り口へ戻ると、
「あ、どうでした?」
と受付の人が急に出てきて、
「「うわっ!!」」
ぶつかった。
「イタタタ」
俺はぶつかった拍子に倒れたので、起き上がる。
そして受付の人に文句を言う。
「なんなんだよ、このお化け屋敷。怖さの種類が違うだろ」
と 受付の人を見ると、倒れたまま起き上がってこなかった。
ぐったりしていて、よく見ると 頭から赤い液体が少し流れている。
「…………」
……え?
湖瑠璃ちゃんが震える声で、
「お、お兄さま、この人、大丈夫なんですか?」
「だ、大丈夫だよ。気を失っているだけだから。ね、そうでしょう。起きて、起きてください」
俺は受付の人を揺すってみたが、受付の人は、ぐったりしたまま動かなかった。
「おおお、お兄さま。こここ、この人、ししし、死んで、死んじゃって」
「おおお、落ち着いて。そんな分けない。ちょっと気絶してるだけだって」
「でも、頭から血が出てますよ」
「だだだ、大丈夫。すぐに収まるから」
その時だった。
半裸の男が驚愕の表情で俺を指差し、叫んだ。
「殺したー!」
「え?」
「こいつ ぶつかって 受付を死なせたぞー!」
「い、いや、違う。死んでない。気絶してるだけで……」
しかしギャラリーが来て、
「おい、こいつ人を死なせたのか」
「人殺しだ」
「人を殺しやがった」
「もう人生終わりだな」
「人生終わった」
「人生終了だ」
……嘘。
うそだ。
誰かウソだと言ってくれ。
こんなことで人生が終わるだなんて。
「そんなの うそだぁあああああ!」
と 俺が叫ぶと、受付の人がムクッと起き上がった。
「はい、みなさん お疲れ様ー」
「「「おつかれー」」」
え?
「いかがでした。リアリティ溢れる人生終了 恐怖体験。怖かったら学園祭アンケートにぜひ投票をしてください」
……なるほど。
ギャラリーも ぶつかったことも、全部 仕組んでいたことだったと。
「ほら、アンケートを」
「するわけねーだろ」
「あ、あの、怒りのあまり 人間が しちゃいけない表情になっていますよ」
「あたりまえだろ」
「でも、怖かったでしょ」
「怖かったけど、怖さの種類が違うだろ」
「でも、怖かったんですよね。なら、アンケートに投票を」
「するか!」
怖かったけど。
俺が怒りでお化け屋敷を後にすると、可愛いメイドが話しかけてきた。
「大丈夫だった? ここのお化け屋敷、悪質さで有名になってるよ」
「知ってたなら教えてくれ」
「アハハハ。まあ 騙されたの君だけじゃないから」
「これ 訴えられても おかしくないレベルだぞ」
「そう言わずに。あ、そうそう、もうすぐミスコンだよ。見に行かなくて良いの? 吉祥院さんも出場するし、球竜さんも出るんだから」
「そうだな。おまえも出場するし、見に行くとするか」
俺達が話をしていると、湖瑠璃ちゃんは ジトー と非難の視線を向けてきた。
「湖瑠璃ちゃん、どうした?」
「どうしたではありません。お兄さま、この美人は誰ですか? お姉さまという人がありながら他の人と仲良くして。やっぱり浮気性の気がありますね」
「なぜに浮気になる。こいつは男だ」
「……え!?」
メイドは自己紹介する。
「君は吉祥院さんの妹の、セシリア・湖瑠璃ちゃんだね。初めまして。僕は朝倉 海翔。よろしくね」
「お、男の方でしたか。信じられない。こんなに美人で可愛いなんて。く、くやしいです。女の私より上です」
「アハハハ、ありがとー」
そして海翔は俺に、
「それじゃ、僕はミスコンに行ってくるね」
「ああ、俺も見物に行く」
そして俺達は体育館で行われるミスコンへ向かった。
なお、メイド服の朝倉海翔を、みんなが熱い視線を向けていた。
主に男子生徒が。
そして 俺達はお化け屋敷の中に入った。
しかし 中は 夜の道路を模した内装がしてあるだけ。
ただ それだけで、ぐるっと壁に沿って回るだけの物。
「お兄さま、このお化け屋敷は何でしょう? 幽霊が出る雰囲気ではありませんが」
「まあ、とにかく進んでみよう」
俺達は進むと、曲がり角を曲がるが、そこは突き当たりで曲がる真っ直ぐの通路があるだけ。
俺達は進んで曲がる。
やはり真っ直ぐの通路。
俺達は意味が分からずに進み、そして曲がろうとした。
そして俺達は立ち止まった。
「「……」」
そこには、メタボ気味の半裸の男がいた。
右手に包丁。
左手には、首が折れた鶏の死体を持っていた。
「……お兄さま、あの人はなんでしょう?」
「……さあ」
半裸の男は俺達に眼を向けると、ニタリ と笑った。
そして、裸足で ペタ ペタ と嫌な足音を立てて、こっちに歩いてきた。
「お、お兄さま、近づいてきますよ」
「湖瑠璃ちゃん、よく分からないけど、戻った方が良さそうだ」
「そうですね、戻りましょう」
俺達は来た道を戻ろうとした。
しかし その途端、男はペタペタペタペタと小走りで追いかけてきた。
「追いかけてきます! お兄さま! 男が迫ってきます!」
「走るんだ! 湖瑠璃ちゃん! 走って入り口へ戻るんだ!」
俺達はわけも分からず走って入り口へ戻ると、
「あ、どうでした?」
と受付の人が急に出てきて、
「「うわっ!!」」
ぶつかった。
「イタタタ」
俺はぶつかった拍子に倒れたので、起き上がる。
そして受付の人に文句を言う。
「なんなんだよ、このお化け屋敷。怖さの種類が違うだろ」
と 受付の人を見ると、倒れたまま起き上がってこなかった。
ぐったりしていて、よく見ると 頭から赤い液体が少し流れている。
「…………」
……え?
湖瑠璃ちゃんが震える声で、
「お、お兄さま、この人、大丈夫なんですか?」
「だ、大丈夫だよ。気を失っているだけだから。ね、そうでしょう。起きて、起きてください」
俺は受付の人を揺すってみたが、受付の人は、ぐったりしたまま動かなかった。
「おおお、お兄さま。こここ、この人、ししし、死んで、死んじゃって」
「おおお、落ち着いて。そんな分けない。ちょっと気絶してるだけだって」
「でも、頭から血が出てますよ」
「だだだ、大丈夫。すぐに収まるから」
その時だった。
半裸の男が驚愕の表情で俺を指差し、叫んだ。
「殺したー!」
「え?」
「こいつ ぶつかって 受付を死なせたぞー!」
「い、いや、違う。死んでない。気絶してるだけで……」
しかしギャラリーが来て、
「おい、こいつ人を死なせたのか」
「人殺しだ」
「人を殺しやがった」
「もう人生終わりだな」
「人生終わった」
「人生終了だ」
……嘘。
うそだ。
誰かウソだと言ってくれ。
こんなことで人生が終わるだなんて。
「そんなの うそだぁあああああ!」
と 俺が叫ぶと、受付の人がムクッと起き上がった。
「はい、みなさん お疲れ様ー」
「「「おつかれー」」」
え?
「いかがでした。リアリティ溢れる人生終了 恐怖体験。怖かったら学園祭アンケートにぜひ投票をしてください」
……なるほど。
ギャラリーも ぶつかったことも、全部 仕組んでいたことだったと。
「ほら、アンケートを」
「するわけねーだろ」
「あ、あの、怒りのあまり 人間が しちゃいけない表情になっていますよ」
「あたりまえだろ」
「でも、怖かったでしょ」
「怖かったけど、怖さの種類が違うだろ」
「でも、怖かったんですよね。なら、アンケートに投票を」
「するか!」
怖かったけど。
俺が怒りでお化け屋敷を後にすると、可愛いメイドが話しかけてきた。
「大丈夫だった? ここのお化け屋敷、悪質さで有名になってるよ」
「知ってたなら教えてくれ」
「アハハハ。まあ 騙されたの君だけじゃないから」
「これ 訴えられても おかしくないレベルだぞ」
「そう言わずに。あ、そうそう、もうすぐミスコンだよ。見に行かなくて良いの? 吉祥院さんも出場するし、球竜さんも出るんだから」
「そうだな。おまえも出場するし、見に行くとするか」
俺達が話をしていると、湖瑠璃ちゃんは ジトー と非難の視線を向けてきた。
「湖瑠璃ちゃん、どうした?」
「どうしたではありません。お兄さま、この美人は誰ですか? お姉さまという人がありながら他の人と仲良くして。やっぱり浮気性の気がありますね」
「なぜに浮気になる。こいつは男だ」
「……え!?」
メイドは自己紹介する。
「君は吉祥院さんの妹の、セシリア・湖瑠璃ちゃんだね。初めまして。僕は朝倉 海翔。よろしくね」
「お、男の方でしたか。信じられない。こんなに美人で可愛いなんて。く、くやしいです。女の私より上です」
「アハハハ、ありがとー」
そして海翔は俺に、
「それじゃ、僕はミスコンに行ってくるね」
「ああ、俺も見物に行く」
そして俺達は体育館で行われるミスコンへ向かった。
なお、メイド服の朝倉海翔を、みんなが熱い視線を向けていた。
主に男子生徒が。
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