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68・三冠王達成
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十一月に入った 最初の日の朝。
ホームルームにて 文化祭の出し物を決めるクラス会議を開く。
「じゃあ、みんな。なにかやりたいことはある? どんなことでも良いから、アイデアを出してー」
球竜 宮がみんなに意見を求める。
俺は板書。
当初は俺がしきる予定だったんだけど、主に男子から、
「朝っぱらから むさい男の声なんざ聞きたくない」
「万年発情期野郎の声なんか聞きたくない」
「吉祥院さまに まとわりつく ゴミ虫の声なんか聞きたくない」
と 心温まる声援を受け、板書担当に任命された。
シクシク。
男子の一人が手を上げる。
「オーソドックスに、お好み焼き屋とか 焼き鳥屋が良いんじゃないか」
すると女子の一人が手を上げ、
「アイスクリーム屋とか クレープ屋が良いと思う」
そして朝倉海翔が手を上げた。
「それより演劇が良いと思うよ。マジカル カード・さくらちゃんの2.5次元化しようよー」
まあ、アイデアとしては定番の物しか出てこない。
海翔は論外。
そこに五十嵐 武士がギターを鳴らして立ち上がった。
「コスプレ喫茶はどうだ!?」
みんな五十嵐に注目した。
コスプレ喫茶。
まあ、コスプレして接客業をするという喫茶店。
五十嵐はスケベな表情で、
「良いか野郎ども! 女子のコスプレ姿を想像するんだ! それは この世のパラダイス!」
男子たちは なにやら想像したのか、
「「「良いねぇ」」」
「スク水はありなのか?」
「今は亡きブルマは」
「手堅く 際どいセーラー服は」
しかし女子たちからはブーイングの嵐。
「良くねぇーだろ! イヤラシイな!」
「ふざけんな! ゴミカス共!」
「スケベ野郎! 地獄へ落ちろ!」
昭和時代のスケバンの如き言葉づかいになっている。
そこにセルニアが手を上げた。
「では、男女逆のコスプレはいかがでしょう?」
セルニアの発言に、教室は静まりかえった。
宮が怪訝に、
「男女逆のコスプレ?」
「はい。女子が男装を。男子が女装をするのです」
セルニアの視線は、朝倉 海翔に向けられていた。
みんなが視線を追って 海翔を観る。
前年度 人気投票一位の実績を誇る美少年。
男子部門一位。
総合部門一位。
女子部門一位。
三冠王達成の朝倉 海翔は、
「みんな どうしたの?」
なにも分かっていない。
次の瞬間、みんなはセルニアに賛成した。
「さんせーい。男女逆のコスプレ喫茶に投票しまーす」
「俺もー、一度 女装に挑戦したかったんだよなー」
「いやー、さすが吉祥院さま。素晴らしい提案だ」
みんな、朝倉 海翔の女装が見たいがために、満場一致で賛成したのだった。
そして 昼休み、俺は宮と軽く打ち合わせをする。
「まず 食器はどこで揃えるかだよね。お金はあまりかけたくないし、でも百均とかで揃えるのもなー」
「それに コスプレ衣装はどこで調達する? コスプレの服って、買うとかなり高いから、やっぱりレンタルが良いよな」
「そうなると、食器とかもレンタルが良いかもね。でも、そういう店って知ってる?」
「コスプレなら海翔が知ってると思うけど」
「うん、あの美少年なのに凄まじいまでにオタクな子ね」
「でも、食器のレンタル店って近くにあるか?」
「君が知らない店を、引っ越してきたばかりの私が知ってるわけ無いじゃない」
「それも そうだな」
そこにセルニアがウキウキとした感じでやってきた。
「打ち合わせはどうですか? なにか困ったことがあれば、わたくしに相談してくださいませ。
うふふふ。文化祭のコスプレ喫茶、楽しみですわね。本当に楽しみですわ。ええ、楽しみにで 楽しみで、グヘヘヘ……」
セルニアが不自然なまでにヤル気になっておられる。
宮はちょっと引きながら、
「吉祥院さん、男装するのがそんなに楽しみなんだ。でも、吉祥院さんなら、男装の女剣士みたいな感じで格好いいと思うよ」
宮は、セルニアがコスプレするのが楽しみらしいと思ったらしいけど、俺は知っている。
男子が女装するのを楽しみにしていると。
特に海翔の女装。
まあ、あの可愛い顔だ。
女装したら凄いことになるだろうな。
俺は ふと思いつく。
「なあ、セルニア。食器のレンタル やってる店とか知ってたりするか?」
「もちろん 存じておりますわよ。有名な食器から、臨時の物まで 揃えている店がありますわ」
「そこ、教えてくれないか。食器を安く調達できるかも」
「わかりましたわ」
よし、これで食器はなんとかなりそうだ。
「コスプレは海翔に聞けば間違いないだろうな」
となると、
「なあ、宮。先に店に下見に行かないか。借りるにしても、とりあえず どれくらいの値段なのか知っておかないと、予算も下りないだろうし」
「そうだね。じゃあさ、分担しない。私は 朝倉くんに聞いて、コスプレ衣装の店に行くから。君は 吉祥院さんと一緒に、食器の店に見に行くってのは」
「いいな。それなら 手早くすみそうだ」
そして俺はセルニアに、
「セルニア、そういうわけで 店を案内してくれないか? 頼む」
セルニアは少し嬉しそうな表情になった。
「頼む と言いましたか? つまり わたくしを頼りにしているということですのね」
「まあ、そうだな」
なんだろう?
やけに嬉しそうな感じのセルニアだ。
セルニアは胸を軽く叩くと、
「わかりましたわ。わたくしがお店に案内いたしますわ」
「よかった。じゃあ、今度の日曜はどうだ?」
「え? 今度の日曜?」
セルニアはかすかに動揺したような。
「ああ、都合が良ければだけど」
「も、もちろん 大丈夫ですわ。スケジュールは空いております」
「よし、よろしく頼むよ」
セルニアは嬉しそうな顔で、
「ええ、任せてください」
ホームルームにて 文化祭の出し物を決めるクラス会議を開く。
「じゃあ、みんな。なにかやりたいことはある? どんなことでも良いから、アイデアを出してー」
球竜 宮がみんなに意見を求める。
俺は板書。
当初は俺がしきる予定だったんだけど、主に男子から、
「朝っぱらから むさい男の声なんざ聞きたくない」
「万年発情期野郎の声なんか聞きたくない」
「吉祥院さまに まとわりつく ゴミ虫の声なんか聞きたくない」
と 心温まる声援を受け、板書担当に任命された。
シクシク。
男子の一人が手を上げる。
「オーソドックスに、お好み焼き屋とか 焼き鳥屋が良いんじゃないか」
すると女子の一人が手を上げ、
「アイスクリーム屋とか クレープ屋が良いと思う」
そして朝倉海翔が手を上げた。
「それより演劇が良いと思うよ。マジカル カード・さくらちゃんの2.5次元化しようよー」
まあ、アイデアとしては定番の物しか出てこない。
海翔は論外。
そこに五十嵐 武士がギターを鳴らして立ち上がった。
「コスプレ喫茶はどうだ!?」
みんな五十嵐に注目した。
コスプレ喫茶。
まあ、コスプレして接客業をするという喫茶店。
五十嵐はスケベな表情で、
「良いか野郎ども! 女子のコスプレ姿を想像するんだ! それは この世のパラダイス!」
男子たちは なにやら想像したのか、
「「「良いねぇ」」」
「スク水はありなのか?」
「今は亡きブルマは」
「手堅く 際どいセーラー服は」
しかし女子たちからはブーイングの嵐。
「良くねぇーだろ! イヤラシイな!」
「ふざけんな! ゴミカス共!」
「スケベ野郎! 地獄へ落ちろ!」
昭和時代のスケバンの如き言葉づかいになっている。
そこにセルニアが手を上げた。
「では、男女逆のコスプレはいかがでしょう?」
セルニアの発言に、教室は静まりかえった。
宮が怪訝に、
「男女逆のコスプレ?」
「はい。女子が男装を。男子が女装をするのです」
セルニアの視線は、朝倉 海翔に向けられていた。
みんなが視線を追って 海翔を観る。
前年度 人気投票一位の実績を誇る美少年。
男子部門一位。
総合部門一位。
女子部門一位。
三冠王達成の朝倉 海翔は、
「みんな どうしたの?」
なにも分かっていない。
次の瞬間、みんなはセルニアに賛成した。
「さんせーい。男女逆のコスプレ喫茶に投票しまーす」
「俺もー、一度 女装に挑戦したかったんだよなー」
「いやー、さすが吉祥院さま。素晴らしい提案だ」
みんな、朝倉 海翔の女装が見たいがために、満場一致で賛成したのだった。
そして 昼休み、俺は宮と軽く打ち合わせをする。
「まず 食器はどこで揃えるかだよね。お金はあまりかけたくないし、でも百均とかで揃えるのもなー」
「それに コスプレ衣装はどこで調達する? コスプレの服って、買うとかなり高いから、やっぱりレンタルが良いよな」
「そうなると、食器とかもレンタルが良いかもね。でも、そういう店って知ってる?」
「コスプレなら海翔が知ってると思うけど」
「うん、あの美少年なのに凄まじいまでにオタクな子ね」
「でも、食器のレンタル店って近くにあるか?」
「君が知らない店を、引っ越してきたばかりの私が知ってるわけ無いじゃない」
「それも そうだな」
そこにセルニアがウキウキとした感じでやってきた。
「打ち合わせはどうですか? なにか困ったことがあれば、わたくしに相談してくださいませ。
うふふふ。文化祭のコスプレ喫茶、楽しみですわね。本当に楽しみですわ。ええ、楽しみにで 楽しみで、グヘヘヘ……」
セルニアが不自然なまでにヤル気になっておられる。
宮はちょっと引きながら、
「吉祥院さん、男装するのがそんなに楽しみなんだ。でも、吉祥院さんなら、男装の女剣士みたいな感じで格好いいと思うよ」
宮は、セルニアがコスプレするのが楽しみらしいと思ったらしいけど、俺は知っている。
男子が女装するのを楽しみにしていると。
特に海翔の女装。
まあ、あの可愛い顔だ。
女装したら凄いことになるだろうな。
俺は ふと思いつく。
「なあ、セルニア。食器のレンタル やってる店とか知ってたりするか?」
「もちろん 存じておりますわよ。有名な食器から、臨時の物まで 揃えている店がありますわ」
「そこ、教えてくれないか。食器を安く調達できるかも」
「わかりましたわ」
よし、これで食器はなんとかなりそうだ。
「コスプレは海翔に聞けば間違いないだろうな」
となると、
「なあ、宮。先に店に下見に行かないか。借りるにしても、とりあえず どれくらいの値段なのか知っておかないと、予算も下りないだろうし」
「そうだね。じゃあさ、分担しない。私は 朝倉くんに聞いて、コスプレ衣装の店に行くから。君は 吉祥院さんと一緒に、食器の店に見に行くってのは」
「いいな。それなら 手早くすみそうだ」
そして俺はセルニアに、
「セルニア、そういうわけで 店を案内してくれないか? 頼む」
セルニアは少し嬉しそうな表情になった。
「頼む と言いましたか? つまり わたくしを頼りにしているということですのね」
「まあ、そうだな」
なんだろう?
やけに嬉しそうな感じのセルニアだ。
セルニアは胸を軽く叩くと、
「わかりましたわ。わたくしがお店に案内いたしますわ」
「よかった。じゃあ、今度の日曜はどうだ?」
「え? 今度の日曜?」
セルニアはかすかに動揺したような。
「ああ、都合が良ければだけど」
「も、もちろん 大丈夫ですわ。スケジュールは空いております」
「よし、よろしく頼むよ」
セルニアは嬉しそうな顔で、
「ええ、任せてください」
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