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チェスの結果は、三勝三敗。
つまりは引き分けだ。
さすがに時間が無くなってきたので 切り上げることになったが、二人は満足そう。
「これからは、直接 対戦できますわね」
「そうだね。たくさんゲームが出来るね」
二人はこれからの対戦に期待していた。
次は図書館。
「あれ、転入生の球竜さんじゃないか。こんにちわー」
俺の幼馴染みの朝倉 海翔に遭遇した。
そう言えば、こいつは一応 攻略対象だ。
ヒロインが転入してくると、リアルの美少女に初めて萌えて、恋愛が始まる。
その辺りのこと確かめておかないと。
俺は海翔の肩を掴んで、小声で聞く。
「あのさ、海翔。ちょっと宮のことで聞きたいことがあるんだが」
「なーに? 吉祥院さんという人が居ながら、他の女に興味があるの? いけないなー」
「そうじゃなくて、おまえはどう思うんだ」
「どうって?」
「いや、宮って すごい美少女だから、なんというか、こう、萌えることはないのか?」
「もー、幼稚園の頃からの付き合いなのに、僕のこと分かってくれてなかったの。
僕は二次元の美少女に愛を捧げてるんだよ」
「……ああ、うん。そうだったな」
こいつは、いつもどおり、平常運転だった。
「そうか。変なこと聞いたな」
「そうだよ、変なこと聞くねー」
まあ、変なのは海翔の頭なんだけど。
最後に武道館に来た。
空手の本場、沖縄にて空手を学んでいた宮は、この学校の空手部を見学したいと。
「いらっしゃい、吉祥院さん、球竜さん」
俺達のクラス委員長の眞鳥 凪さんが迎える。
ちょっと気弱で、メガネの三つ編みという、典型的な委員長スタイル。
しかし空手二段で、二年生なのに、すでに女子空手部の主将を務めている。
たぶん、怒らせると怖い。
だから、クラスの皆は眞鳥さんの言うことには素直に従う。
宮は空手部の様子を見学して言った。
「うん、中々活気のある部活だね。これは沖縄も うかうかしていられないな」
しばらくして眞鳥さんが宮に勧めた。
「球竜さん、よかったら本場の空手の型を見せて貰えないかな」
「うん、いいよ」
なにげに沖縄魂が刺激されたのか、アッサリ承諾する。
そして宮は、俺は名前の知らない空手の型を演武する。
ふと気付くと、俺の隣に武闘派 五人衆の一人、空手部主将がいた。
「見事な型だ。元気に溢れ、鋭く、それでいて どこか 柔らかい。さすがは本場沖縄で学んだだけのことはある」
「そんなに凄いんですか」
「うむ、凄いな。俺より強いかもしれん」
「へー、そうなんですか」
空手部主将が認めるほど凄いのか。
その空手部主将は俺の肩に手を置いた。
「さて、ところで話があるのだが。君は あの転入生と仲が良いようだが、いったい どういうことだね。松陽高校の女神、吉祥院さま という女性がいながら、浮気していると言うことだろうか?
もし そうなら、君の性根を叩き直してやらねばなるまい」
空手部主将は握り拳を俺に見せた。
俺は嫌な汗がブワッと噴出する。
「い、いえ、そんな関係では微塵もありませんですよ。ちょっと偶然 知り合いになっただけというか、なんか そんな感じなだけで」
「ならばいい。しかし、以前にも言ったが、もし 女神を泣かせることがあれば、我ら五人衆が黙ってはいないと言うことを肝に銘じておくように。
分かったね」
その質問に疑問符は付いていなかった。
「分かりまくってますですよ」
型が終わり、みんなが宮に拍手を送る。
「えへへへ」
ちょっと照れくさそうな宮。
カシャッ。
なんだ?
今のカメラのシャッター音。
どこからだ?
俺は周囲を見渡すと、入り口の所にスマホを持った二人の男子生徒の姿。
アレって、上永先生が言っていた盗撮?
「先輩、あれって最近 話題の盗撮じゃないですか」
俺は空手部主将に小声で伝える。
「静かに。こっそり捕まえるぞ」
「分かりました」
俺達は こっそり後ろに回って、カメラを持った二人の男子生徒を捕まえようとした。
だが、
「うわぁっ!」
「ひえぇっ!」
寸前で気付かれてしまい、思いっきり暴れて逃げ出す。
そして演武をしていた宮と、話をしているセルニアの方へ。
「え? なに?」
「なにごとですの?」
俺は事態を飲み込めていない二人に叫ぶ。
「そいつら盗撮してた! 逃げろ!」
しかし、次の瞬間。
「ヒデブ!」
「アベシ!」
二人の男子生徒が吹っ飛んで地面に転がった。
そして、セルニアと宮は、攻撃を終えた構えを取っていた。
「……」
今の二人がやったの?
周囲は盗撮犯を撃退したセルニアと宮に拍手を送った。
さて、みんなが二人の盗撮犯を囲み、尋問する。
空手部主将が代表で話を聞く。
「貴様らが最近 話題になっていた盗撮犯だな」
「ち、違いますぅ」
「盗撮だなんて、とんでもない」
「この期に及んで言い訳するとは、見苦しいぞ。一拳 入れてやらねばならんな」
「いえいえ! ホントに違うんです!」
「実は僕たちこういう者でして」
二人は名刺を渡してきた。
空手部主将が読み上げる。
「第四十七回・松陽祭・ミスコン委員実働部だと?」
俺は聞く。
「それは なんじゃらほい?」
盗撮犯二人は説明を始める。
「前年まで密かに行われていた人気投票なんですが」
「今年度から正式に学校に認められたんです」
「それで予選を兼ねて候補者の写真をとっていただけなんです」
「なるべく自然な姿を評価したかったので、こうしてこっそり撮影していただけで」
俺は、
「つまりミスコンの写真を撮っていただけだと?」
「「そのとおりですぅ」」
なんだそりゃ。
「前年度二位の吉祥院さまと、期待の新人、褐色美少女 球竜 宮さんも候補に挙がっていまして。あと、女子空手部主将、眞鳥 凪さんも」
「それで出来れば出場していただけないかと」
宮は、美少女の部分を聞いて、なにやら態度がコロッと変わった。
「え? 美少女? 私のこと美少女って言った?」
「はい、美少女です」
「どこからどう見てもビューテホーです」
「やだー。わかってるじゃなーい。いいよー。出場してあげるー」
……もしかして、宮ってチョロい?
宮は続けてセルニアに、
「吉祥院さんも出るよね」
と期待を込めて聞いた。
「そうですわね。わたくしは別にかまいませんわ。眞鳥さんはどうしますか?」
「わ、私も構わないけど」
実行委員会の二人は平伏して感謝した。
「「ありがとうござますぅ」」
こうして文化祭にて、セルニアと球竜 宮はミスコンに出場することになったのだった。
さて、その頃。
更衣室にて、下着姿の上永先生が、一時間以上待機していた。
「盗撮犯はいつになったら来るのかしらぁん? 美人女教師がぁ、こうして油断しまくりで待ってるのにぃ、全然来ないじゃなぁい。早く来てくれないとぉ、お姉さん風邪引いちゃうわぁん」
盗撮される気満々の頭の弱い上永先生だった。
つまりは引き分けだ。
さすがに時間が無くなってきたので 切り上げることになったが、二人は満足そう。
「これからは、直接 対戦できますわね」
「そうだね。たくさんゲームが出来るね」
二人はこれからの対戦に期待していた。
次は図書館。
「あれ、転入生の球竜さんじゃないか。こんにちわー」
俺の幼馴染みの朝倉 海翔に遭遇した。
そう言えば、こいつは一応 攻略対象だ。
ヒロインが転入してくると、リアルの美少女に初めて萌えて、恋愛が始まる。
その辺りのこと確かめておかないと。
俺は海翔の肩を掴んで、小声で聞く。
「あのさ、海翔。ちょっと宮のことで聞きたいことがあるんだが」
「なーに? 吉祥院さんという人が居ながら、他の女に興味があるの? いけないなー」
「そうじゃなくて、おまえはどう思うんだ」
「どうって?」
「いや、宮って すごい美少女だから、なんというか、こう、萌えることはないのか?」
「もー、幼稚園の頃からの付き合いなのに、僕のこと分かってくれてなかったの。
僕は二次元の美少女に愛を捧げてるんだよ」
「……ああ、うん。そうだったな」
こいつは、いつもどおり、平常運転だった。
「そうか。変なこと聞いたな」
「そうだよ、変なこと聞くねー」
まあ、変なのは海翔の頭なんだけど。
最後に武道館に来た。
空手の本場、沖縄にて空手を学んでいた宮は、この学校の空手部を見学したいと。
「いらっしゃい、吉祥院さん、球竜さん」
俺達のクラス委員長の眞鳥 凪さんが迎える。
ちょっと気弱で、メガネの三つ編みという、典型的な委員長スタイル。
しかし空手二段で、二年生なのに、すでに女子空手部の主将を務めている。
たぶん、怒らせると怖い。
だから、クラスの皆は眞鳥さんの言うことには素直に従う。
宮は空手部の様子を見学して言った。
「うん、中々活気のある部活だね。これは沖縄も うかうかしていられないな」
しばらくして眞鳥さんが宮に勧めた。
「球竜さん、よかったら本場の空手の型を見せて貰えないかな」
「うん、いいよ」
なにげに沖縄魂が刺激されたのか、アッサリ承諾する。
そして宮は、俺は名前の知らない空手の型を演武する。
ふと気付くと、俺の隣に武闘派 五人衆の一人、空手部主将がいた。
「見事な型だ。元気に溢れ、鋭く、それでいて どこか 柔らかい。さすがは本場沖縄で学んだだけのことはある」
「そんなに凄いんですか」
「うむ、凄いな。俺より強いかもしれん」
「へー、そうなんですか」
空手部主将が認めるほど凄いのか。
その空手部主将は俺の肩に手を置いた。
「さて、ところで話があるのだが。君は あの転入生と仲が良いようだが、いったい どういうことだね。松陽高校の女神、吉祥院さま という女性がいながら、浮気していると言うことだろうか?
もし そうなら、君の性根を叩き直してやらねばなるまい」
空手部主将は握り拳を俺に見せた。
俺は嫌な汗がブワッと噴出する。
「い、いえ、そんな関係では微塵もありませんですよ。ちょっと偶然 知り合いになっただけというか、なんか そんな感じなだけで」
「ならばいい。しかし、以前にも言ったが、もし 女神を泣かせることがあれば、我ら五人衆が黙ってはいないと言うことを肝に銘じておくように。
分かったね」
その質問に疑問符は付いていなかった。
「分かりまくってますですよ」
型が終わり、みんなが宮に拍手を送る。
「えへへへ」
ちょっと照れくさそうな宮。
カシャッ。
なんだ?
今のカメラのシャッター音。
どこからだ?
俺は周囲を見渡すと、入り口の所にスマホを持った二人の男子生徒の姿。
アレって、上永先生が言っていた盗撮?
「先輩、あれって最近 話題の盗撮じゃないですか」
俺は空手部主将に小声で伝える。
「静かに。こっそり捕まえるぞ」
「分かりました」
俺達は こっそり後ろに回って、カメラを持った二人の男子生徒を捕まえようとした。
だが、
「うわぁっ!」
「ひえぇっ!」
寸前で気付かれてしまい、思いっきり暴れて逃げ出す。
そして演武をしていた宮と、話をしているセルニアの方へ。
「え? なに?」
「なにごとですの?」
俺は事態を飲み込めていない二人に叫ぶ。
「そいつら盗撮してた! 逃げろ!」
しかし、次の瞬間。
「ヒデブ!」
「アベシ!」
二人の男子生徒が吹っ飛んで地面に転がった。
そして、セルニアと宮は、攻撃を終えた構えを取っていた。
「……」
今の二人がやったの?
周囲は盗撮犯を撃退したセルニアと宮に拍手を送った。
さて、みんなが二人の盗撮犯を囲み、尋問する。
空手部主将が代表で話を聞く。
「貴様らが最近 話題になっていた盗撮犯だな」
「ち、違いますぅ」
「盗撮だなんて、とんでもない」
「この期に及んで言い訳するとは、見苦しいぞ。一拳 入れてやらねばならんな」
「いえいえ! ホントに違うんです!」
「実は僕たちこういう者でして」
二人は名刺を渡してきた。
空手部主将が読み上げる。
「第四十七回・松陽祭・ミスコン委員実働部だと?」
俺は聞く。
「それは なんじゃらほい?」
盗撮犯二人は説明を始める。
「前年まで密かに行われていた人気投票なんですが」
「今年度から正式に学校に認められたんです」
「それで予選を兼ねて候補者の写真をとっていただけなんです」
「なるべく自然な姿を評価したかったので、こうしてこっそり撮影していただけで」
俺は、
「つまりミスコンの写真を撮っていただけだと?」
「「そのとおりですぅ」」
なんだそりゃ。
「前年度二位の吉祥院さまと、期待の新人、褐色美少女 球竜 宮さんも候補に挙がっていまして。あと、女子空手部主将、眞鳥 凪さんも」
「それで出来れば出場していただけないかと」
宮は、美少女の部分を聞いて、なにやら態度がコロッと変わった。
「え? 美少女? 私のこと美少女って言った?」
「はい、美少女です」
「どこからどう見てもビューテホーです」
「やだー。わかってるじゃなーい。いいよー。出場してあげるー」
……もしかして、宮ってチョロい?
宮は続けてセルニアに、
「吉祥院さんも出るよね」
と期待を込めて聞いた。
「そうですわね。わたくしは別にかまいませんわ。眞鳥さんはどうしますか?」
「わ、私も構わないけど」
実行委員会の二人は平伏して感謝した。
「「ありがとうござますぅ」」
こうして文化祭にて、セルニアと球竜 宮はミスコンに出場することになったのだった。
さて、その頃。
更衣室にて、下着姿の上永先生が、一時間以上待機していた。
「盗撮犯はいつになったら来るのかしらぁん? 美人女教師がぁ、こうして油断しまくりで待ってるのにぃ、全然来ないじゃなぁい。早く来てくれないとぉ、お姉さん風邪引いちゃうわぁん」
盗撮される気満々の頭の弱い上永先生だった。
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