悪役令嬢は腐女子である

神泉灯

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54・大滝利通の結婚式の想い

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 愛しの彼が黒服の男と一緒にリムジンへ乗った。
 黒服の男について、僕は知っていた。
 一見 本職の人のように見えるが、吉祥院さんの専属執事だ。
 僕が生徒会長に就任したとき、吉祥院さんが専属メイドと一緒に紹介してくれた。
 自分の専属執事なので、学校に来ることもあるだろうと言うことで。
 しかし 理解できないのは、なぜ 伊藤 春樹さんが、愛しの彼を連れて行ったのか?
 僕は彼の教室へ行き、話を聞いた。
「あいつ、ヤのつく職業の息子だったんだ」
「若とか呼ばれてたぜ」
「ってことは、あいつ 代を継ぐことになるのか」
 なんだか盛大に誤解されているが、僕は誤解を解いてあげるどころではなかった。
 彼のことを伊藤さんが 若 と呼んだことだ。


 吉祥院家の執事が彼を若と呼んだ。
 つまり、これは、吉祥院家が、彼と吉祥院・セルニア・麗華さんとの婚約を正式に認めたと言うことか!
 おおおぉぉ。
 なんということだ。
 僕は震えが止まらない。
 彼と吉祥院さんは とうとう婚約を。
 そして リムジンに乗って行ったということは、やはり式場の下見なのだろうか?
 いや、待て。
 吉祥院さんは どこにいるんだ?
 彼と一緒ではなかった。
 執事は なぜ彼だけを?


 僕は吉祥院さんについて、朝倉海翔くんに聞いた。
「吉祥院さんなら先に帰ったよ」
 どういうことだ?
 なぜ 式場の下見に彼だけが行って、吉祥院さんは一緒に行かなかったんだ?
 なぜ?
 ……ハァッ!
 まさかッッッ!!!
 下見とかはすでに終わっていて、今日は ついに式を挙げるのでは!?
 女性のほうが準備に時間がかかるもの。
 これで、吉祥院さんが先に帰った説明も付く。
 あわわわわわ……
 なんて展開が早いんだ。
 夏休み中に妊娠したと思ったら、夏休み終了と同時に結婚。
 しかも学生ではないか!
 学生結婚。
 ああ、やはり彼は僕の手の届かないほど先へ行っている。
 僕にチャンスはなかったんだ。
 それに、こんなことを考えるなんて、僕はなんて未練がましいんだ。
 彼らの結婚を機に、僕はこの想いを振り切らなければ。
 さようなら。
 そして どうか 幸せに。
 愛しの君よ。



 54.5・朝倉 海翔の誤解


 生徒会長の大滝利通くん、なんだか情緒不安定だけど、どうしたのかな?
 あいつのこととか 吉祥院さんのこととか聞いてきたと思ったら、なんだか体の震えが止まらなくなったり、急に全てを祝福するかのような笑顔になったり。
 あ、もしかして 生徒会長、吉祥院さんのことが好きなのかな?
 へー、あいつに恋のライバルかー。
 あいつと吉祥院さん なんて意外なカップルができたと思ったら、今度は生徒会長っていう強敵出現かー。
 これだから あいつからは目が離せないんだよね。
 なんだか ますます 面白くなりそう。
 これからも要チェックだ。
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