42 / 168
42・初めてのファーストキスで最初のチュー
しおりを挟む
さて、目的のブツは入手し、セルニアは憧れの先生とお話までできた。
目的を達したからには迅速に帰還すべし。
余計な寄り道は禁物。
スニーキングミッションは帰るまでが作戦です。
というわけで、俺たちは帰路についたのだが……
ハッキリ言おう。
俺たちは帰るときのことを考えていなかった。
「来るときも凄かったけど、帰りまでとは……」
そう、来るときの人数が凄かったのだから、帰る人数も凄いことになる。
「ちょ、長期戦を覚悟してはいましたが、ここまでとは……」
セルニアの顔をも引きつっている。
「とにかく、列に並ぼう」
「そうですわね」
こうして俺たちは駅への列に並び、帰還の道へ着いた。
そして数時間が経ち、ようやく電車に乗ることができたが、当然 満員電車。
「セルニア、大丈夫か?」
「な、なんとか」
気丈に答えるセルニアだが、大丈夫でないのは明らか。
電車の隅っこで、押しつぶされそうになっている。
本当に苦しそうだが、しかしバッグに入れてある同人誌を死守しようと、自分の体で守っている。
しかたない。
他の人に少し迷惑になるんだが、セルニアのためだ。
俺は両手を壁に付けて、自分の体を支えるようにし、セルニアを守る態勢を作った。
俺の体を防護壁のような感じにしているだけなんだが、内部にいるセルニアは、満員電車の圧迫から逃れられる。
ただ、他の人を押しのけてる形になるから、ちょっと迷惑になるけど。
だが、セルニアのためなら、俺がひんしゅくを買う位なんだ。
「あ、貴方……」
「これで平気だろ。セルニアも、同人誌も」
「はい……」
セルニアは頬を少し赤く染めた。
それは夏の満員電車の 熱気のせいではない。
「貴方は本当に、いつも わたくしを助けてくれる。わたくしだけの王子さまですわ」
「そ、そうか」
物凄い恥ずかしいセリフを、セルニアは真剣な眼で言ってきて、俺は赤面するのを押さえられなかった。
そして気付いた。
これは両手で壁ドンではないだろうか。
状況的に、セルニアにキスしても、なんの問題もないシチュエーション。
いや!
むしろ する方が自然な空気の流れ!
やるべきか、やらざるべきか、それは問題ではない。
やるしかない状況だ!
選択肢は一択しかない
行くぞ。
前世、今世を合わせた、人生 初のファーストキスを。
初めてのファーストキスで最初のチューをするのだ!
と、俺はセルニアにキスしようとしたのだが、セルニアの視線が俺に向いていないことに気付いた。
物凄い良い雰囲気なのに、セルニアの視線は俺ではなく、俺の背後、後ろを見ていた。
なんだ?
俺は振り向くと、満員電車のオタクたちが、みんな俺たちに視線を向けていた。
「チミィ、どうしたのだね? 我々のことなど気にせず、チューッと行ってくれたまえ」
「その通りでござる。拙者たちが貴殿たちの、夏コミの思い出の目撃者となるでござるから」
「彼氏さん、私たちに遠慮しないで、行っちゃいなさい。彼女さんが夏の青い春の一ページを待っているわ」
なんか 俺、周りに人がいることを忘れていたというかなんというか……
「「「さあ、キスをするんだ。バカップル」」」
バカップル 言われたー!
当然、キスなどできるはずもなく、そのまま電車を降りることになった。
セルニアと言葉少なく別れて、俺は家にたどり着いた。
朝早くに出発して、もう日が暮れている。
疲れた。
この一言に尽きる。
姉の玲はまだ帰ってきてないみたいだ。
今日は夕飯を作る気力は残ってないから、テイクアウトかデリバリーで済まそう。
そう思い、ファミレスなどのメニューチラシなどを見ていたときだった。
ジリリリリリ……
俺の電話が鳴った。
通知を見ると、湖瑠璃ちゃんから。
なんだろう?
俺は電話に出ると、湖瑠璃ちゃんが泣きそうな声で叫んだ。
「お兄さま! 大変です! お姉さまが家出してしまいました!」
目的を達したからには迅速に帰還すべし。
余計な寄り道は禁物。
スニーキングミッションは帰るまでが作戦です。
というわけで、俺たちは帰路についたのだが……
ハッキリ言おう。
俺たちは帰るときのことを考えていなかった。
「来るときも凄かったけど、帰りまでとは……」
そう、来るときの人数が凄かったのだから、帰る人数も凄いことになる。
「ちょ、長期戦を覚悟してはいましたが、ここまでとは……」
セルニアの顔をも引きつっている。
「とにかく、列に並ぼう」
「そうですわね」
こうして俺たちは駅への列に並び、帰還の道へ着いた。
そして数時間が経ち、ようやく電車に乗ることができたが、当然 満員電車。
「セルニア、大丈夫か?」
「な、なんとか」
気丈に答えるセルニアだが、大丈夫でないのは明らか。
電車の隅っこで、押しつぶされそうになっている。
本当に苦しそうだが、しかしバッグに入れてある同人誌を死守しようと、自分の体で守っている。
しかたない。
他の人に少し迷惑になるんだが、セルニアのためだ。
俺は両手を壁に付けて、自分の体を支えるようにし、セルニアを守る態勢を作った。
俺の体を防護壁のような感じにしているだけなんだが、内部にいるセルニアは、満員電車の圧迫から逃れられる。
ただ、他の人を押しのけてる形になるから、ちょっと迷惑になるけど。
だが、セルニアのためなら、俺がひんしゅくを買う位なんだ。
「あ、貴方……」
「これで平気だろ。セルニアも、同人誌も」
「はい……」
セルニアは頬を少し赤く染めた。
それは夏の満員電車の 熱気のせいではない。
「貴方は本当に、いつも わたくしを助けてくれる。わたくしだけの王子さまですわ」
「そ、そうか」
物凄い恥ずかしいセリフを、セルニアは真剣な眼で言ってきて、俺は赤面するのを押さえられなかった。
そして気付いた。
これは両手で壁ドンではないだろうか。
状況的に、セルニアにキスしても、なんの問題もないシチュエーション。
いや!
むしろ する方が自然な空気の流れ!
やるべきか、やらざるべきか、それは問題ではない。
やるしかない状況だ!
選択肢は一択しかない
行くぞ。
前世、今世を合わせた、人生 初のファーストキスを。
初めてのファーストキスで最初のチューをするのだ!
と、俺はセルニアにキスしようとしたのだが、セルニアの視線が俺に向いていないことに気付いた。
物凄い良い雰囲気なのに、セルニアの視線は俺ではなく、俺の背後、後ろを見ていた。
なんだ?
俺は振り向くと、満員電車のオタクたちが、みんな俺たちに視線を向けていた。
「チミィ、どうしたのだね? 我々のことなど気にせず、チューッと行ってくれたまえ」
「その通りでござる。拙者たちが貴殿たちの、夏コミの思い出の目撃者となるでござるから」
「彼氏さん、私たちに遠慮しないで、行っちゃいなさい。彼女さんが夏の青い春の一ページを待っているわ」
なんか 俺、周りに人がいることを忘れていたというかなんというか……
「「「さあ、キスをするんだ。バカップル」」」
バカップル 言われたー!
当然、キスなどできるはずもなく、そのまま電車を降りることになった。
セルニアと言葉少なく別れて、俺は家にたどり着いた。
朝早くに出発して、もう日が暮れている。
疲れた。
この一言に尽きる。
姉の玲はまだ帰ってきてないみたいだ。
今日は夕飯を作る気力は残ってないから、テイクアウトかデリバリーで済まそう。
そう思い、ファミレスなどのメニューチラシなどを見ていたときだった。
ジリリリリリ……
俺の電話が鳴った。
通知を見ると、湖瑠璃ちゃんから。
なんだろう?
俺は電話に出ると、湖瑠璃ちゃんが泣きそうな声で叫んだ。
「お兄さま! 大変です! お姉さまが家出してしまいました!」
0
お気に入りに追加
49
あなたにおすすめの小説
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢
岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか?
「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」
「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」
マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
悪役令嬢に転生したので、やりたい放題やって派手に散るつもりでしたが、なぜか溺愛されています
平山和人
恋愛
伯爵令嬢であるオフィーリアは、ある日、前世の記憶を思い出す、前世の自分は平凡なOLでトラックに轢かれて死んだことを。
自分が転生したのは散財が趣味の悪役令嬢で、王太子と婚約破棄の上、断罪される運命にある。オフィーリアは運命を受け入れ、どうせ断罪されるなら好きに生きようとするが、なぜか周囲から溺愛されてしまう。
【取り下げ予定】愛されない妃ですので。
ごろごろみかん。
恋愛
王妃になんて、望んでなったわけではない。
国王夫妻のリュシアンとミレーゼの関係は冷えきっていた。
「僕はきみを愛していない」
はっきりそう告げた彼は、ミレーゼ以外の女性を抱き、愛を囁いた。
『お飾り王妃』の名を戴くミレーゼだが、ある日彼女は側妃たちの諍いに巻き込まれ、命を落としてしまう。
(ああ、私の人生ってなんだったんだろう──?)
そう思って人生に終止符を打ったミレーゼだったが、気がつくと結婚前に戻っていた。
しかも、別の人間になっている?
なぜか見知らぬ伯爵令嬢になってしまったミレーゼだが、彼女は決意する。新たな人生、今度はリュシアンに関わることなく、平凡で優しい幸せを掴もう、と。
*年齢制限を18→15に変更しました。
病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない
月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。
人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。
2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事)
。
誰も俺に気付いてはくれない。そう。
2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。
もう、全部どうでもよく感じた。
【完結】もう無理して私に笑いかけなくてもいいですよ?
冬馬亮
恋愛
公爵令嬢のエリーゼは、遅れて出席した夜会で、婚約者のオズワルドがエリーゼへの不満を口にするのを偶然耳にする。
オズワルドを愛していたエリーゼはひどくショックを受けるが、悩んだ末に婚約解消を決意する。だが、喜んで受け入れると思っていたオズワルドが、なぜか婚約解消を拒否。関係の再構築を提案する。その後、プレゼント攻撃や突撃訪問の日々が始まるが、オズワルドは別の令嬢をそばに置くようになり・・・
「彼女は友人の妹で、なんとも思ってない。オレが好きなのはエリーゼだ」
「私みたいな女に無理して笑いかけるのも限界だって夜会で愚痴をこぼしてたじゃないですか。よかったですね、これでもう、無理して私に笑いかけなくてよくなりましたよ」
姫騎士様と二人旅、何も起きないはずもなく……
踊りまんぼう
ファンタジー
主人公であるセイは異世界転生者であるが、地味な生活を送っていた。 そんな中、昔パーティを組んだことのある仲間に誘われてとある依頼に参加したのだが……。 *表題の二人旅は第09話からです
(カクヨム、小説家になろうでも公開中です)
本日、私の大好きな幼馴染が大切な姉と結婚式を挙げます
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
本日、私は大切な人達を2人同時に失います
<子供の頃から大好きだった幼馴染が恋する女性は私の5歳年上の姉でした。>
両親を亡くし、私を養ってくれた大切な姉に幸せになって貰いたい・・・そう願っていたのに姉は結婚を約束していた彼を事故で失ってしまった。悲しみに打ちひしがれる姉に寄り添う私の大好きな幼馴染。彼は決して私に振り向いてくれる事は無い。だから私は彼と姉が結ばれる事を願い、ついに2人は恋人同士になり、本日姉と幼馴染は結婚する。そしてそれは私が大切な2人を同時に失う日でもあった―。
※ 本編完結済。他視点での話、継続中。
※ 「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています
※ 河口直人偏から少し大人向けの内容になります
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる