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35・約束
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もう 食えねぇ。
って いうか、食い過ぎた。
腹がパンパンで動けない。
立ってるのも辛い。
そんな感じでいると、パーティースタッフさんが俺の様子に気付いて、椅子を用意してくれた。
俺はカタカナの英語でサンキューを伝え、パーティー会場の端っこに移動して座って休憩。
「ハフゥー」
俺は一人心地でいると、セルニアは相変わらず人気者。
スゴイ偉そうな人たちが話しかけているが、セルニアはそれに堂々と対応している。
さっきも思ったけど、やっぱり俺とは住む世界が違う。
なんで俺、セルニアのこと狙ったんだろう?
確かにセルニアの秘密を知って 仲良くなったけど、考えてみれば それだけだ。
その程度のことで、どうしてセルニアの彼氏になれると思ったんだ?
そもそも、なんで俺 セルニアのことが気になってたんだ?
……ああ、そうだった。
セルニアは悪役令嬢になるんだった。
もうすぐ ヒロインが転入してきて、攻略対象たちと恋愛とか青春とかを繰り広げて、それにセルニアは嫉妬して、嫌がらせを始めて、そして最後は落ちぶれる。
でも、今のセルニアを見ていると、そんな気配は全くない。
攻略対象たちに なんの感情も持っていないみたいだし、セルニアはいつでも真っ直ぐで、曲がったことを嫌う。
セルニアがヒロインにイジメをするなんて考えられない。
いや、ヒロインだけじゃない。
誰に対しても分け隔てなく接する。
それなのに、どうしてゲームのセルニアは悪役令嬢になったりしたんだ?
セルニアにそんな要素なんて全然ないのに。
どうして悪役令嬢に?
どうして?
どうして……セルニアは……
……起きて……起きて……
うーん、ムニャムニャ……
……起きてください……
「……あと、五分……」
「起きてください!」
「うわ!」
大きな声で目が覚めた。
「あれ?……セルニア?」
目の前に呆れた顔のセルニアがいた。
「どうしたんだ? 偉い人たちと話をしなくて良いのか?」
「もう パーティーは終わりましたわ。というより、貴方って すごい図太い神経の持ち主ですわね。そんな格好で来たことには指摘しませんでしたが、遠慮なく たくさん食べて 飲んで、そのまま居眠りするなんて」
「俺 眠ってたのか」
「そうですわ」
俺は周囲を見渡すと、客はまばらになっていて、ほとんどが帰ったようだった。
「さ、わたくしたちも帰りますわよ」
そして セルニアは俺の腕に腕を絡めた。
「パーティーではお話しできませんでしたから、帰りの飛行機でゆっくりとお話ししましょう。わたくしのピアノの感想とか」
「それは勘弁してくれ。音楽のことはサッパリなんだ」
「学校の音楽の授業の範囲でかまいませんわ」
からかうようなセルニア。
そして不意に、真剣な眼差しになった。
「ところで、わたくしがみなさんと話していたとき、貴方は球竜さんと話をされていたようですが、知り合いなのですか」
「実は今日、友達になったんだ」
「……そうですの」
セルニアは奇妙な表情を見せた。
感情が複雑で、それゆえにどんな表情にするべきか、わからないような。
「ねえ、わたくしたちは一緒ですよね?」
「え? なんの話?」
「約束の話です。貴方はわたくしから離れない。ずっと一緒にいると約束しました。忘れたのですか?」
「ああ、その話か。もちろん覚えている。でも、どうして急にそんなことを?」
「少し 気になって。
もう一度 約束していただけませんか。貴方はわたくしから離れたりしないと」
「良いけど。俺はセルニアから離れたりしない。どんなことがあってもずっと一緒だ」
「……約束ですわ」
そしてセルニアは沈黙した。
なんだろう?
セルニアの様子は 少しおかしかったが、帰りの飛行機ではいつものセルニアに戻った。
どうして急に約束のことを聞いてきたのか分からずじまいだけど、日本の陸が見えた頃には、そのことはすっかり忘れてしまった。
ただ、別の忘れていたことを思い出した。
玲に晩飯 作ってなかった。
急いで家に帰ると、
「……やっとー……帰ってー……来てくれましたねー……お願いー……なにかー……食べさせてー……」
自炊すらできない姉が空腹にあえいでいた。
って いうか、食い過ぎた。
腹がパンパンで動けない。
立ってるのも辛い。
そんな感じでいると、パーティースタッフさんが俺の様子に気付いて、椅子を用意してくれた。
俺はカタカナの英語でサンキューを伝え、パーティー会場の端っこに移動して座って休憩。
「ハフゥー」
俺は一人心地でいると、セルニアは相変わらず人気者。
スゴイ偉そうな人たちが話しかけているが、セルニアはそれに堂々と対応している。
さっきも思ったけど、やっぱり俺とは住む世界が違う。
なんで俺、セルニアのこと狙ったんだろう?
確かにセルニアの秘密を知って 仲良くなったけど、考えてみれば それだけだ。
その程度のことで、どうしてセルニアの彼氏になれると思ったんだ?
そもそも、なんで俺 セルニアのことが気になってたんだ?
……ああ、そうだった。
セルニアは悪役令嬢になるんだった。
もうすぐ ヒロインが転入してきて、攻略対象たちと恋愛とか青春とかを繰り広げて、それにセルニアは嫉妬して、嫌がらせを始めて、そして最後は落ちぶれる。
でも、今のセルニアを見ていると、そんな気配は全くない。
攻略対象たちに なんの感情も持っていないみたいだし、セルニアはいつでも真っ直ぐで、曲がったことを嫌う。
セルニアがヒロインにイジメをするなんて考えられない。
いや、ヒロインだけじゃない。
誰に対しても分け隔てなく接する。
それなのに、どうしてゲームのセルニアは悪役令嬢になったりしたんだ?
セルニアにそんな要素なんて全然ないのに。
どうして悪役令嬢に?
どうして?
どうして……セルニアは……
……起きて……起きて……
うーん、ムニャムニャ……
……起きてください……
「……あと、五分……」
「起きてください!」
「うわ!」
大きな声で目が覚めた。
「あれ?……セルニア?」
目の前に呆れた顔のセルニアがいた。
「どうしたんだ? 偉い人たちと話をしなくて良いのか?」
「もう パーティーは終わりましたわ。というより、貴方って すごい図太い神経の持ち主ですわね。そんな格好で来たことには指摘しませんでしたが、遠慮なく たくさん食べて 飲んで、そのまま居眠りするなんて」
「俺 眠ってたのか」
「そうですわ」
俺は周囲を見渡すと、客はまばらになっていて、ほとんどが帰ったようだった。
「さ、わたくしたちも帰りますわよ」
そして セルニアは俺の腕に腕を絡めた。
「パーティーではお話しできませんでしたから、帰りの飛行機でゆっくりとお話ししましょう。わたくしのピアノの感想とか」
「それは勘弁してくれ。音楽のことはサッパリなんだ」
「学校の音楽の授業の範囲でかまいませんわ」
からかうようなセルニア。
そして不意に、真剣な眼差しになった。
「ところで、わたくしがみなさんと話していたとき、貴方は球竜さんと話をされていたようですが、知り合いなのですか」
「実は今日、友達になったんだ」
「……そうですの」
セルニアは奇妙な表情を見せた。
感情が複雑で、それゆえにどんな表情にするべきか、わからないような。
「ねえ、わたくしたちは一緒ですよね?」
「え? なんの話?」
「約束の話です。貴方はわたくしから離れない。ずっと一緒にいると約束しました。忘れたのですか?」
「ああ、その話か。もちろん覚えている。でも、どうして急にそんなことを?」
「少し 気になって。
もう一度 約束していただけませんか。貴方はわたくしから離れたりしないと」
「良いけど。俺はセルニアから離れたりしない。どんなことがあってもずっと一緒だ」
「……約束ですわ」
そしてセルニアは沈黙した。
なんだろう?
セルニアの様子は 少しおかしかったが、帰りの飛行機ではいつものセルニアに戻った。
どうして急に約束のことを聞いてきたのか分からずじまいだけど、日本の陸が見えた頃には、そのことはすっかり忘れてしまった。
ただ、別の忘れていたことを思い出した。
玲に晩飯 作ってなかった。
急いで家に帰ると、
「……やっとー……帰ってー……来てくれましたねー……お願いー……なにかー……食べさせてー……」
自炊すらできない姉が空腹にあえいでいた。
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