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33・異世界の王女さま
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「セルニア、楽譜を借りてきたぞ」
俺は控え室に戻ると、すぐにセルニアに楽譜を渡した。
セルニアは驚いて、
「まあ、どこでこれを借りてきたのですか?」
俺は隣から借りてきたと言おうとして、止めた。
本当のことを言ったら、気になってコンクールに集中できなくなってしまうかも知れない。
「その、スタッフの人に言ったら、こういう時のために用意していたって」
「そうでしたの。そのスタッフに感謝を伝えないと」
「あ、いや、俺が伝えておくから。セルニアはコンクールに集中して」
「わかりました。
それにしても、貴方は本当に頼りになりますわね。いつも わたくしを助けてくれる。まるで わたくしの王子さまですわ」
セルニアがそんなことを恥ずかしいことを言った。
セルニアは笑顔だったけど、真剣だった。
なんか、俺のほうが恥ずかしくなってくる。
ともあれ、これで問題は解決。
その後、セルニアは練習に集中し、イメージの違いとかも解決したとか。
そして本番まで三十分前となった時、猪鹿蝶さんが入ってきた。
「麗華お嬢さま、そろそろ準備に取りかからなければ」
「わかりましたわ」
現在のドレスはまだ仮の物で、これからさらに手を入れて仕上げをするとか。
セルニアの着替えに、立ち会いたいけど 立ち会うわけにはいかないので、俺は退室して、廊下でコンクールのパンフレットを読んで時間を潰す。
コンクールの出場者は十人。
世界的なコンクールなのに、人数が少ないと思ったら、予選がすでに行われていた。
予選の参加者数は千人を超える。
そんな大勢の中から、セルニアは決選に出場したのだ。
そして、あの褐色美少女も。
セルニアが緊張して楽譜を間違えて持ってきても仕方がないのかもしれない。
そんなことを思った。
「終わりました。もう中に入っても大丈夫です」
猪鹿蝶さんの声で、俺は控え室のドアを開けた。
そこには、完成されたセルニアがいた。
薄い桃色のドレスはそのまま。
だが、腕にはレース。
腰には豪奢なバラをあしらった リボンのようなものが付けられていた。
そして頭に乗せてある飾り。
その姿は まるで 異世界の王女さまが、この世界に降臨したかのような。
「……セルニア……綺麗だ……」
俺は魂を吸い取られたかのように、自然とその言葉が口から出た。
「あ、ありがとうございます」
セルニアは頬をほんのり赤くして微笑んだ。
……お持ち帰りしたい。
お持ち帰りして あんなことや こんなことを 色々 じっくり たっぷり ゆっくり ねっぷり……
いや、待て 待て 待て。
俺は今 何を考えた。
実行したら犯罪だし、あの お父さまにマジでマリアナ海溝に沈められる。
あっぶねぇ。
危うく理性まで吸い取られるところだった。
「あの、今日は……」
セルニアはなにかを言おうとして、途中でなぜか止めた。
しかし、次には意を決したように言葉にした。
「今日の曲は、コンクールに優勝するためではなく、貴方のために弾きますわ」
「俺のため?」
どういう意味だ?
俺の疑問をよそにセルニアは続けた。
「どうか、舞台で弾くわたくしの曲を、しっかりと聞いていてください」
それは 重大な決意のように思えた。
「わかった。俺はセルニアの曲を聴いている。どんなことがあっても、セルニアの曲を聴き続けている」
「ありがとうございます」
そこに春樹さんがやって来た。
「お嬢さま、もうすぐ出番です」
「わかりました」
そしてセルニアは俺に、
「では、行ってきますわ」
そして セルニアは舞台へ。
俺は急いで席へ戻った。
俺は控え室に戻ると、すぐにセルニアに楽譜を渡した。
セルニアは驚いて、
「まあ、どこでこれを借りてきたのですか?」
俺は隣から借りてきたと言おうとして、止めた。
本当のことを言ったら、気になってコンクールに集中できなくなってしまうかも知れない。
「その、スタッフの人に言ったら、こういう時のために用意していたって」
「そうでしたの。そのスタッフに感謝を伝えないと」
「あ、いや、俺が伝えておくから。セルニアはコンクールに集中して」
「わかりました。
それにしても、貴方は本当に頼りになりますわね。いつも わたくしを助けてくれる。まるで わたくしの王子さまですわ」
セルニアがそんなことを恥ずかしいことを言った。
セルニアは笑顔だったけど、真剣だった。
なんか、俺のほうが恥ずかしくなってくる。
ともあれ、これで問題は解決。
その後、セルニアは練習に集中し、イメージの違いとかも解決したとか。
そして本番まで三十分前となった時、猪鹿蝶さんが入ってきた。
「麗華お嬢さま、そろそろ準備に取りかからなければ」
「わかりましたわ」
現在のドレスはまだ仮の物で、これからさらに手を入れて仕上げをするとか。
セルニアの着替えに、立ち会いたいけど 立ち会うわけにはいかないので、俺は退室して、廊下でコンクールのパンフレットを読んで時間を潰す。
コンクールの出場者は十人。
世界的なコンクールなのに、人数が少ないと思ったら、予選がすでに行われていた。
予選の参加者数は千人を超える。
そんな大勢の中から、セルニアは決選に出場したのだ。
そして、あの褐色美少女も。
セルニアが緊張して楽譜を間違えて持ってきても仕方がないのかもしれない。
そんなことを思った。
「終わりました。もう中に入っても大丈夫です」
猪鹿蝶さんの声で、俺は控え室のドアを開けた。
そこには、完成されたセルニアがいた。
薄い桃色のドレスはそのまま。
だが、腕にはレース。
腰には豪奢なバラをあしらった リボンのようなものが付けられていた。
そして頭に乗せてある飾り。
その姿は まるで 異世界の王女さまが、この世界に降臨したかのような。
「……セルニア……綺麗だ……」
俺は魂を吸い取られたかのように、自然とその言葉が口から出た。
「あ、ありがとうございます」
セルニアは頬をほんのり赤くして微笑んだ。
……お持ち帰りしたい。
お持ち帰りして あんなことや こんなことを 色々 じっくり たっぷり ゆっくり ねっぷり……
いや、待て 待て 待て。
俺は今 何を考えた。
実行したら犯罪だし、あの お父さまにマジでマリアナ海溝に沈められる。
あっぶねぇ。
危うく理性まで吸い取られるところだった。
「あの、今日は……」
セルニアはなにかを言おうとして、途中でなぜか止めた。
しかし、次には意を決したように言葉にした。
「今日の曲は、コンクールに優勝するためではなく、貴方のために弾きますわ」
「俺のため?」
どういう意味だ?
俺の疑問をよそにセルニアは続けた。
「どうか、舞台で弾くわたくしの曲を、しっかりと聞いていてください」
それは 重大な決意のように思えた。
「わかった。俺はセルニアの曲を聴いている。どんなことがあっても、セルニアの曲を聴き続けている」
「ありがとうございます」
そこに春樹さんがやって来た。
「お嬢さま、もうすぐ出番です」
「わかりました」
そしてセルニアは俺に、
「では、行ってきますわ」
そして セルニアは舞台へ。
俺は急いで席へ戻った。
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