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27・バナナの皮
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色々しょうもない経緯をへて、俺はセルニアにドアを開けてもらうことに成功し、話をすることに。
湖瑠璃ちゃんと猪鹿蝶さんは席を外して貰う。
一応、二人はセルニアの趣味を知らないという事になっているので。
そして俺はセルニアに、
「先輩たちの言ったこと、そんなに気にすることないと思うよ。アレはセルニアに言ったわけじゃないし」
「言われたも同然ですわ。わたくしも腐女子ですから」
セルニアは沈んだ顔。
「先輩方のあの眼。中学校の時も あんな眼で見られていましたわ」
セルニアは訥々と話し始めた。
セルニアは中学校まで、大学までエスカレーター式のお嬢様学校に通っていた。
生徒の八割以上が、語尾にですわを付けるほどのお嬢様学校。
なのに、なぜセルニアはそこを離れ、松陽高校に入ったのか。
ようするに、セルニアの趣味がバレたのがきっかけだった。
中学三年生になってから しばらくしての事だった。
教室に なぜかバナナの皮が落ちていて、それを踏んでしまったセルニアは、その場で一回転して転倒。
鞄の中の物を全て床にぶちまける事態となった。
そして、その中に入っていた 一冊のBLマンガ。
クラスメイトの視線は その本に集中していた。
セルニアの密かな趣味がバレたのだ。
その日から クラスメイトたちの態度は 一変した。
それまで 良い意味で特別視されていたセルニアへの態度は、みんな悪い方向へ変わった。
なにも あからさまなイジめを受けたとか、中傷を受けたとかじゃない。
みんな態度が明らかによそよそしくなって、セルニアから離れていったのだ。
まるで汚れた者を見るかのような目で。
セルニアはみんなとなんとか今まで通りの関係の戻ろうと努力したが、全て無駄に終わった。
セルニアは中学校最後の年を孤独に過ごしたのだ。
そして、セルニアはその空気に耐えられず、翌年、予定の高校に上がらず、遠く離れた松陽高校に入った。
「あの眼には耐えられません。少し変わった趣味の一つで、どうして あんな眼で見られなくてはいけないのか。
今でもトラウマです」
涙を堪えながら語るセルニアに、俺は彼女が悪役令嬢になる理由の片鱗を知ったような気がした。
そして、セルニアが悪役令嬢にならないようにするには、どうすれば良いのかも分かる。
わかりきったことだ。
理解者がいること。
そして、けして離れたりしない誰かがいること。
「……セルニア。俺は離れない。どんなことがあってもセルニアから離れたりしない」
「……わたくしの趣味が他の人に知られてしまってもですか? もし わたくしの趣味が知られれば、貴方も偏見の目で見られることになりますわよ」
「それでも 離れない。俺は 他の人間に どんな目で見られるかよりも、セルニアと一緒にいるほうが大切だ。
俺は どんなことがあっても、セルニアから離れたりしない」
俺は セルニアの手を握って誓った。
「俺は 一生 セルニアと一緒いる」
セルニアの瞳が感動で潤んでいた。
「……はい。わたくしたちは生涯を共にしますわ」
そして セルニアは、顔を少し俺に近づけると、瞳をそっと閉じて、唇を少しだけ差し出した。
……イケる。
これは 間違いなくイケる!
完全にOKのサインだ!
もちろん 俺はイクぞ!
ここで怯むようじゃ男じゃない。
俺は ここでセックスに挑む!
そして そのまま行き着く先へとイクんだ!!
「俺は本日、雄となる」
「ダメに決まっていやす」
と 猪鹿蝶さんが止めた。
「オゥワ!」
「ニニャア!」
俺とセルニアは変な声を上げて離れた。
湖瑠璃ちゃんは呆れた表情で、
「まったく。二人っきりにした途端 これなんですから」
「そうでやす。準備という物が必要でやす」
そして 猪鹿蝶さんは ベッドの枕元にある引き出しから 避妊具を取り出した。
それ、まだあったんだ。
「さあ、これをどうぞ。これを付けて安全対策をし、その上でやってください。
この猪鹿蝶 晶、麗華お嬢様が大人の女になる瞬間を見届けさせていただきやす」
さらに湖瑠璃ちゃんまで、
「わたくしも妹として見届けさせていただきます」
セルニアは叫ぶ。
「やりませんわよ! やるわけないでしょう!」
俺もセルニアに続いて、
「そうそう、やりません。やりませんから」
猪鹿蝶さんは怪訝に、
「なにを言っておりやすか? 先ほど生涯を共にすると誓い合ったではありやせんか。これでやらずして なにをやるというのでやす。
アタシたちに遠慮する必要はありやせん。さあ、お二人とも、大人の階段を全力ダッシュで駆け上がってくださいやせ」
しかし 湖瑠璃ちゃんが、
「いえ、二人とも初心者ですし、ここは ゆっくり ねっとり じっくり のほうが良いのではありませんか」
「それも そうでやすね」
セルニアはたまらず叫ぶ。
「貴女たちはなにを言ってますの!? 人のセックスに口出ししないでくださいませ!」
猪鹿蝶さんは仏頂面のまま、
「やっぱり ヤル気ではないでやすか」
湖瑠璃ちゃんも続けて、
「ヤル気満々ですね」
「やりませんわよ! 言葉の綾ですわよ! とにかくやりません! やりませんから!!」
こんな感じで、俺たちの感動の誓いの雰囲気は、台無しとなった。
湖瑠璃ちゃんと猪鹿蝶さんは席を外して貰う。
一応、二人はセルニアの趣味を知らないという事になっているので。
そして俺はセルニアに、
「先輩たちの言ったこと、そんなに気にすることないと思うよ。アレはセルニアに言ったわけじゃないし」
「言われたも同然ですわ。わたくしも腐女子ですから」
セルニアは沈んだ顔。
「先輩方のあの眼。中学校の時も あんな眼で見られていましたわ」
セルニアは訥々と話し始めた。
セルニアは中学校まで、大学までエスカレーター式のお嬢様学校に通っていた。
生徒の八割以上が、語尾にですわを付けるほどのお嬢様学校。
なのに、なぜセルニアはそこを離れ、松陽高校に入ったのか。
ようするに、セルニアの趣味がバレたのがきっかけだった。
中学三年生になってから しばらくしての事だった。
教室に なぜかバナナの皮が落ちていて、それを踏んでしまったセルニアは、その場で一回転して転倒。
鞄の中の物を全て床にぶちまける事態となった。
そして、その中に入っていた 一冊のBLマンガ。
クラスメイトの視線は その本に集中していた。
セルニアの密かな趣味がバレたのだ。
その日から クラスメイトたちの態度は 一変した。
それまで 良い意味で特別視されていたセルニアへの態度は、みんな悪い方向へ変わった。
なにも あからさまなイジめを受けたとか、中傷を受けたとかじゃない。
みんな態度が明らかによそよそしくなって、セルニアから離れていったのだ。
まるで汚れた者を見るかのような目で。
セルニアはみんなとなんとか今まで通りの関係の戻ろうと努力したが、全て無駄に終わった。
セルニアは中学校最後の年を孤独に過ごしたのだ。
そして、セルニアはその空気に耐えられず、翌年、予定の高校に上がらず、遠く離れた松陽高校に入った。
「あの眼には耐えられません。少し変わった趣味の一つで、どうして あんな眼で見られなくてはいけないのか。
今でもトラウマです」
涙を堪えながら語るセルニアに、俺は彼女が悪役令嬢になる理由の片鱗を知ったような気がした。
そして、セルニアが悪役令嬢にならないようにするには、どうすれば良いのかも分かる。
わかりきったことだ。
理解者がいること。
そして、けして離れたりしない誰かがいること。
「……セルニア。俺は離れない。どんなことがあってもセルニアから離れたりしない」
「……わたくしの趣味が他の人に知られてしまってもですか? もし わたくしの趣味が知られれば、貴方も偏見の目で見られることになりますわよ」
「それでも 離れない。俺は 他の人間に どんな目で見られるかよりも、セルニアと一緒にいるほうが大切だ。
俺は どんなことがあっても、セルニアから離れたりしない」
俺は セルニアの手を握って誓った。
「俺は 一生 セルニアと一緒いる」
セルニアの瞳が感動で潤んでいた。
「……はい。わたくしたちは生涯を共にしますわ」
そして セルニアは、顔を少し俺に近づけると、瞳をそっと閉じて、唇を少しだけ差し出した。
……イケる。
これは 間違いなくイケる!
完全にOKのサインだ!
もちろん 俺はイクぞ!
ここで怯むようじゃ男じゃない。
俺は ここでセックスに挑む!
そして そのまま行き着く先へとイクんだ!!
「俺は本日、雄となる」
「ダメに決まっていやす」
と 猪鹿蝶さんが止めた。
「オゥワ!」
「ニニャア!」
俺とセルニアは変な声を上げて離れた。
湖瑠璃ちゃんは呆れた表情で、
「まったく。二人っきりにした途端 これなんですから」
「そうでやす。準備という物が必要でやす」
そして 猪鹿蝶さんは ベッドの枕元にある引き出しから 避妊具を取り出した。
それ、まだあったんだ。
「さあ、これをどうぞ。これを付けて安全対策をし、その上でやってください。
この猪鹿蝶 晶、麗華お嬢様が大人の女になる瞬間を見届けさせていただきやす」
さらに湖瑠璃ちゃんまで、
「わたくしも妹として見届けさせていただきます」
セルニアは叫ぶ。
「やりませんわよ! やるわけないでしょう!」
俺もセルニアに続いて、
「そうそう、やりません。やりませんから」
猪鹿蝶さんは怪訝に、
「なにを言っておりやすか? 先ほど生涯を共にすると誓い合ったではありやせんか。これでやらずして なにをやるというのでやす。
アタシたちに遠慮する必要はありやせん。さあ、お二人とも、大人の階段を全力ダッシュで駆け上がってくださいやせ」
しかし 湖瑠璃ちゃんが、
「いえ、二人とも初心者ですし、ここは ゆっくり ねっとり じっくり のほうが良いのではありませんか」
「それも そうでやすね」
セルニアはたまらず叫ぶ。
「貴女たちはなにを言ってますの!? 人のセックスに口出ししないでくださいませ!」
猪鹿蝶さんは仏頂面のまま、
「やっぱり ヤル気ではないでやすか」
湖瑠璃ちゃんも続けて、
「ヤル気満々ですね」
「やりませんわよ! 言葉の綾ですわよ! とにかくやりません! やりませんから!!」
こんな感じで、俺たちの感動の誓いの雰囲気は、台無しとなった。
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