悪役令嬢は腐女子である

神泉灯

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24・大滝利通の心の独り言

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 僕は大滝 利通。
 松陽高校 二年生。
 生徒会長を務めている。
 僕はみんなから人気がある。
 そのことについて否定するつもりはない。
 後輩、同級生、先輩。
 学年問わず、女子たちから告白されラブレターを貰っている。
 男子にも仲良くさせて貰っている。
 先生からも信頼されている。
 それなのに否定するのは不自然だ。
 謙遜も 度が過ぎれば イヤミになる。
 でも、僕は女子たちから受けた想いに応えることはできない。
 なぜなら、僕には好きな人がいるから。
 その人のことを思うと胸が苦しくなり、しかし同時に暖かくなる。
 仲良くなって、大切に守りたい。
 そんな感情が自然と溢れてくる。
 その人も、みんなに人気がある。
 新入生対象人気投票で上位に入り、影ではみんなその人のことを狙っている。
 みんな あの人の恋人になりたいと思っている。
 本人は そのことに気付いていないみたいだけど。
 あの人の輝く笑顔。
 輝く瞳。
 まるで全てを照らす太陽のような存在。
 ああ……
 吉祥院・セルニア・麗華さん……





 ……の、隣にいる彼。


 なんて可愛いんだ。
 運動神経が良くて 元気いっぱいで、人懐っこい仔犬のよう。
 成績優秀だけど、ちょっとアホっぽいところも愛らしい。
 朝倉海翔くんとBLの噂が出たとき、僕はその噂が真実であることを願った。
 男同士でもOKなら、僕にもチャンスがあるから。
 でも、彼は吉祥院さんと交際を始めたようだ。
 つまり彼はノンケ。
 僕にはチャンスはないのだ。
 それに、あの松陽高校の女神と言われるほどの人と交際するとは。
 やはり、僕は彼にふさわしくないようだ。
 彼は自分にふさわしい人を見つけた。
 僕は諦めて、黙って身を引こう。
 この想いを振り切ることは まだできないけど、いつか僕も新しい恋を見つけてみせる。
 それまで、どうか君を見守らせてくれ。
 愛しの君よ。



 24.5・吉祥院・セルニア・麗華の戦慄


 わたくしは背筋がゾワッと泡立ち、反射的に臨戦態勢に入ってしまった。
「セルニア、どうしたの? ファイティグポーズなんかとったりして」
 彼が怪訝に聞いてきて、我に返る。
「いえ、今 なにか武者震いがしまして」
「武者震い?」
「ええ、わたくしのライバルがどこかにいるかのような。
 でも 気のせいですわね。こんな時に感じるようなものではありませんし」
「もしかしたら夏風邪かも。気をつけないと。今日は早く休むと良いよ」
「そうしますわ」
 しかし、正体の分からない警戒感は中々消えてくれませんでした。
 わたくしは一体何を危険に感じたというのでしょう?
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