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一章
3・貴様を処刑する!
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「クリスティーナ・アーネスト! 貴様との婚約をここに破棄する!」
私が前世を思い出してから三年と半年程が経過した。
そして、オルドレン魔法学園卒業式終了後の、突然のリオン王子の発言に、周囲は様々な反応。
在校生に卒業生は勿論、教職員に来賓や保護者は何事かとざわめき立つ。
そして攻略対象の四人がそれぞれ私に向ける眼に、ヒロイン、リリア・カーティスの怯えた眼。
どういうこと?
「あの、リオン殿下。これはいったいどういうことなのでしょうか?」
「惚けおって。説明せずともわかるだろう。それとも、貴様の頭はこんな簡単なことも理解できんのか。婚約を破棄すると言っているのだ!」
「それはわかります。私が言いたいのは、なぜこの時で、この場所かということです」
よりにもよって卒業式終了直後の講堂。
ゲームの、リオンエンドの婚約破棄宣言と同じ。
「人目があるのですよ。リオン殿下の発言は時と場を弁えるべき内容です」
「貴様のような女はこうでもしないと思い知るということがないからな!」
「それはいったいどういう意味でしょうか?」
「とことん白を切るつもりらしいな。いいだろう! ここに貴様の罪状を明かしてやる!」
リリア・カーティスを身分の低い者と嘲ったこと。
他人の婚約者に付きまとう淫らな女と罵ったこと。
リリアを狙って植木鉢を二階から落としたこと。
彼女を階段から突き落としたこと。
リリアを抹殺しようと暗殺者を送り、毒を盛ろうとしたこと。
「まだまだある。しかし、これだけでも貴様との婚約を破棄するには十分な理由だ。証言もある」
私と何度か話をしたことのある、三人の女子が前に出た。
「申し上げます。私たちはクリスティーナ・アーネストの言い付けで、観衆の面前でリリア・カーティスを嘲笑し罵倒いたしました。身分が低いと言うのは勿論、誰とでも関係を持つ淫蕩な者と。いくら侯爵家の令嬢の言い付けとはいえ、このような発言をしたこと、深くお詫び申し上げます」
深く頭を下げる彼女たちに、満足げに頷くリオン殿下。
「どうだ! 今や貴様に取り入る者など誰もおらんぞ!」
「待ってください! その方たちとは話をしたことは何度かありますが、取り巻きなどではけしてありませんわ」
貴族の繋がりで何度か話す必要があっただけで、けして取り巻きとも、友達とも呼べない。
「まだだ! おい! 前へ出ろ! そして証言するのだ!」
二人の下級生の男子生徒が前に出た。
「あの、僕たち、アーネストさまがカーティス先輩を、階段から突き落とすのを見ました」
「それは確かにクリスティーナで間違いないな?」
「はい、銀の髪に巻き毛は見間違いようがありません」
どういうこと?
私、そんなことしてないよ。
それなのに、目撃者がいるって、どういうことなの?
「カツラをかぶっていただけということもあります!」
「いいや! これだけではない!」
二年の下級生の女子が一人、出てきた。
「証言します。わたくしは校庭から、クリスティーナ・アーネスト様が、リリア・カーティスさまへ目掛けて二階から植木鉢を落とすのを目撃いたしました。その時、顔をハッキリと見ております」
「それはクリスティーナに間違いないな!」
「はい。特徴的なお化粧はこの学園にクリスティーナさましかしません」
化粧って、
「それは他の者が私と同じように化粧をしただけではありませんか!」
「まだあるぞ! これがなにかわかるか!?」
リオン王子が手の平に収まる小さな袋を掲げて見せた。
中に枯れた花びらが数枚入っている。
「それはなんですの?」
「貴様の部屋から押収した毒花だ! リリアに毒を盛ろうとした証拠だ!」
そんなの知らないって!
「他の者が私の部屋に入り、仕込んでおいたということも考えられます」
「おまえの物だという証言がある!」
まだ証言者いるの!?
「リリア、さあ、勇気を出して言うんだ」
リリア本人だったー!
「はい、リオン様。
私は度重なる嫌がらせに、正式に抗議しようと一人でクリスティーナ様の部屋を訪ねました。しかし、扉越しから話し声が聞こえたのです。何者かに私に毒を盛って殺せと命令するクリスティーナ様の声が。
私は恐ろしくなって、その場を逃げてしまいました」
その時のことを思い出したかのように、身震いするリリア・カーティス。
「命を狙われたのならば当然だ、リリア。だがここで臆してはいけない。俺が付いている」
優しく勇気づけるリオン王子。
「ありがとうございます、リオン様。
私は自分ではどうすればいいのかわからず、急いでリオン様たちに相談しました。そしてクリスティーナ様の凶行の証拠を抑えるため、暗殺者をリオン様たち四人で取り押さえようということになりました。
そして先週の夜、私の部屋に侵入し、水差にリオン様が持っておられる物と同じ物を入れたのです。私たち五人がそれを確かに目撃した後、暗殺者を取り押さえたのです。
捕えた暗殺者は私の部屋に縛って置きました。そしてクリスティーナ様との関係を明確にするため尋問することにしたのです。
しかし、暗殺者は自分の口に含んでいた毒を飲み、自害したのです。
そのさい、私ははっきりと聞きました。
クリスティーナ様、と」
なによ、それ?
「言いがかりです! 全て証言だけではありませんか! 証拠はあるのですか?!」
「証拠なら貴様の部屋から押収したこの毒花がある!」
「それは私の差し金だという証拠にはなりません!」
「これ以上の証拠など必要ない! これだけの証言を前にまだ白を切り通せると思っているのか!」
証拠など必要ないって、私の話を聞いてないの!?
真犯人が私に罪をかぶせるために少し細工をしただけじゃない!
「どうやら観念したようだな」
「お待ちください。殿下がその方とお付き合いしているのは存じております。しかし、私は申し上げたはずです。その方を妃に迎えたいのならば、私との婚約を正式に解消しましょうと。在学中、何度も。そもそも、私たちが婚約した時にも、言ったではありませんか。お互いに想う人ができたなら、婚約を解消し、恋を成就するため助け合おうと。お忘れですか?」
そうだ。
私は今迄なにもしなかったわけじゃない。
円満に婚約解消するべく努力した。
リリア・カーティスとの噂を聞いた時、真っ先に進言したのだ。
婚約を解消しようと。
そうすれば、彼女を妃に迎えられると。
婚約したあの時の約束を違えず。
「ふん。それも貴様の手なのだろう。そう言っておけば疑いの目をそらすことができ、さらに自分の忠義を示すことができる。そうすれば、俺が貴様との婚約を破棄しないと思った。そして貴様は王子妃となり、アーネスト侯爵家も安泰というわけだ。小賢しい真似を。貴様の謀りごとなど全てお見通しだ!」
どこまで捻くれてるのよ!? この王子さまは!
「そこまでおっしゃるのなら、国王と王妃、それに私の両親を交えて話し合いましょう。それが筋と言うものではありませんか」
「貴様と話す必要などこれ以上ない! 兵士よ!」
リオン王子が号令をかけると、十数人の兵士が講堂に入ってきた。
そして私を取り囲み、剣を向ける。
「これはなんのおつもりですか?!」
私が問うとリオン王子は、
「貴様を竜の谷へ連行する。オルドレン王国王太子の権限において、貴様を処刑する!」
「裁判もかけずに処刑すると言うのですか?!」
「貴様に裁判などと言う高尚なものなど必要ない!」
二人の兵士が私の両脇から腕を掴み、私の前に出た兵士が、私の腹部を思い切り殴った。
私は意識が遠のき、薄れていく意識の中、リリア・カーティスが勝ち誇った薄ら笑いを浮かべたのが見えた。
私が前世を思い出してから三年と半年程が経過した。
そして、オルドレン魔法学園卒業式終了後の、突然のリオン王子の発言に、周囲は様々な反応。
在校生に卒業生は勿論、教職員に来賓や保護者は何事かとざわめき立つ。
そして攻略対象の四人がそれぞれ私に向ける眼に、ヒロイン、リリア・カーティスの怯えた眼。
どういうこと?
「あの、リオン殿下。これはいったいどういうことなのでしょうか?」
「惚けおって。説明せずともわかるだろう。それとも、貴様の頭はこんな簡単なことも理解できんのか。婚約を破棄すると言っているのだ!」
「それはわかります。私が言いたいのは、なぜこの時で、この場所かということです」
よりにもよって卒業式終了直後の講堂。
ゲームの、リオンエンドの婚約破棄宣言と同じ。
「人目があるのですよ。リオン殿下の発言は時と場を弁えるべき内容です」
「貴様のような女はこうでもしないと思い知るということがないからな!」
「それはいったいどういう意味でしょうか?」
「とことん白を切るつもりらしいな。いいだろう! ここに貴様の罪状を明かしてやる!」
リリア・カーティスを身分の低い者と嘲ったこと。
他人の婚約者に付きまとう淫らな女と罵ったこと。
リリアを狙って植木鉢を二階から落としたこと。
彼女を階段から突き落としたこと。
リリアを抹殺しようと暗殺者を送り、毒を盛ろうとしたこと。
「まだまだある。しかし、これだけでも貴様との婚約を破棄するには十分な理由だ。証言もある」
私と何度か話をしたことのある、三人の女子が前に出た。
「申し上げます。私たちはクリスティーナ・アーネストの言い付けで、観衆の面前でリリア・カーティスを嘲笑し罵倒いたしました。身分が低いと言うのは勿論、誰とでも関係を持つ淫蕩な者と。いくら侯爵家の令嬢の言い付けとはいえ、このような発言をしたこと、深くお詫び申し上げます」
深く頭を下げる彼女たちに、満足げに頷くリオン殿下。
「どうだ! 今や貴様に取り入る者など誰もおらんぞ!」
「待ってください! その方たちとは話をしたことは何度かありますが、取り巻きなどではけしてありませんわ」
貴族の繋がりで何度か話す必要があっただけで、けして取り巻きとも、友達とも呼べない。
「まだだ! おい! 前へ出ろ! そして証言するのだ!」
二人の下級生の男子生徒が前に出た。
「あの、僕たち、アーネストさまがカーティス先輩を、階段から突き落とすのを見ました」
「それは確かにクリスティーナで間違いないな?」
「はい、銀の髪に巻き毛は見間違いようがありません」
どういうこと?
私、そんなことしてないよ。
それなのに、目撃者がいるって、どういうことなの?
「カツラをかぶっていただけということもあります!」
「いいや! これだけではない!」
二年の下級生の女子が一人、出てきた。
「証言します。わたくしは校庭から、クリスティーナ・アーネスト様が、リリア・カーティスさまへ目掛けて二階から植木鉢を落とすのを目撃いたしました。その時、顔をハッキリと見ております」
「それはクリスティーナに間違いないな!」
「はい。特徴的なお化粧はこの学園にクリスティーナさましかしません」
化粧って、
「それは他の者が私と同じように化粧をしただけではありませんか!」
「まだあるぞ! これがなにかわかるか!?」
リオン王子が手の平に収まる小さな袋を掲げて見せた。
中に枯れた花びらが数枚入っている。
「それはなんですの?」
「貴様の部屋から押収した毒花だ! リリアに毒を盛ろうとした証拠だ!」
そんなの知らないって!
「他の者が私の部屋に入り、仕込んでおいたということも考えられます」
「おまえの物だという証言がある!」
まだ証言者いるの!?
「リリア、さあ、勇気を出して言うんだ」
リリア本人だったー!
「はい、リオン様。
私は度重なる嫌がらせに、正式に抗議しようと一人でクリスティーナ様の部屋を訪ねました。しかし、扉越しから話し声が聞こえたのです。何者かに私に毒を盛って殺せと命令するクリスティーナ様の声が。
私は恐ろしくなって、その場を逃げてしまいました」
その時のことを思い出したかのように、身震いするリリア・カーティス。
「命を狙われたのならば当然だ、リリア。だがここで臆してはいけない。俺が付いている」
優しく勇気づけるリオン王子。
「ありがとうございます、リオン様。
私は自分ではどうすればいいのかわからず、急いでリオン様たちに相談しました。そしてクリスティーナ様の凶行の証拠を抑えるため、暗殺者をリオン様たち四人で取り押さえようということになりました。
そして先週の夜、私の部屋に侵入し、水差にリオン様が持っておられる物と同じ物を入れたのです。私たち五人がそれを確かに目撃した後、暗殺者を取り押さえたのです。
捕えた暗殺者は私の部屋に縛って置きました。そしてクリスティーナ様との関係を明確にするため尋問することにしたのです。
しかし、暗殺者は自分の口に含んでいた毒を飲み、自害したのです。
そのさい、私ははっきりと聞きました。
クリスティーナ様、と」
なによ、それ?
「言いがかりです! 全て証言だけではありませんか! 証拠はあるのですか?!」
「証拠なら貴様の部屋から押収したこの毒花がある!」
「それは私の差し金だという証拠にはなりません!」
「これ以上の証拠など必要ない! これだけの証言を前にまだ白を切り通せると思っているのか!」
証拠など必要ないって、私の話を聞いてないの!?
真犯人が私に罪をかぶせるために少し細工をしただけじゃない!
「どうやら観念したようだな」
「お待ちください。殿下がその方とお付き合いしているのは存じております。しかし、私は申し上げたはずです。その方を妃に迎えたいのならば、私との婚約を正式に解消しましょうと。在学中、何度も。そもそも、私たちが婚約した時にも、言ったではありませんか。お互いに想う人ができたなら、婚約を解消し、恋を成就するため助け合おうと。お忘れですか?」
そうだ。
私は今迄なにもしなかったわけじゃない。
円満に婚約解消するべく努力した。
リリア・カーティスとの噂を聞いた時、真っ先に進言したのだ。
婚約を解消しようと。
そうすれば、彼女を妃に迎えられると。
婚約したあの時の約束を違えず。
「ふん。それも貴様の手なのだろう。そう言っておけば疑いの目をそらすことができ、さらに自分の忠義を示すことができる。そうすれば、俺が貴様との婚約を破棄しないと思った。そして貴様は王子妃となり、アーネスト侯爵家も安泰というわけだ。小賢しい真似を。貴様の謀りごとなど全てお見通しだ!」
どこまで捻くれてるのよ!? この王子さまは!
「そこまでおっしゃるのなら、国王と王妃、それに私の両親を交えて話し合いましょう。それが筋と言うものではありませんか」
「貴様と話す必要などこれ以上ない! 兵士よ!」
リオン王子が号令をかけると、十数人の兵士が講堂に入ってきた。
そして私を取り囲み、剣を向ける。
「これはなんのおつもりですか?!」
私が問うとリオン王子は、
「貴様を竜の谷へ連行する。オルドレン王国王太子の権限において、貴様を処刑する!」
「裁判もかけずに処刑すると言うのですか?!」
「貴様に裁判などと言う高尚なものなど必要ない!」
二人の兵士が私の両脇から腕を掴み、私の前に出た兵士が、私の腹部を思い切り殴った。
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