19 / 31
十九話
しおりを挟む
村から少し離れた湖は、澄んだ清水を湛えていたが、その端だけが今は濁っていた。
兵士たちが遺品を回収するため湖の中に入ったため、底に溜まっている土砂が掻き混ぜられたせいだが、それが血の色に見える。
彼女は切れ端だけしか残っていなかった。
左手。右足。頭部。
宿屋の主人夫婦は呆然としていた。
検分に立ち合わせなかったが、遠くからでも娘かどうかの判別はつくのだろう。
それなのに、錯乱さえできないほど、それは現実味がなかった。
一部しか残されていない遺体。
喰い散らかした、喰べ残し。
事態を知ったホウロとリョホウが現場に現れた。
二人とも走って来たので息が上がっている。
リョホウは人だかりの手前で止まったが、ホウロはさらに掻き分けて、兵士の制止も振り切って、ユイハのところへ走り続けた。
それが二人の感情の差を表すように。
「ユイハ」
震える声で訊ねても、彼女は答えない。
水に冷え、血が抜けた彼女は、人形のようで、まるで誰かの性質の悪いいたずらのように思えた。
「なんで? なんで? どうして? こんな。違う。俺は。こんなのは違う……」
どう見えても、どう思うとも、現実は変わらない。
小包の配達を頼んだのは誰だ。
手伝いを頼んだのは誰だ。
本来死ぬはずだったのは誰だ。
「うぁあああああ!!」
ホウロは絶叫して這い蹲りユイハの残りをかき集めようとした。
コウライに止められた。
容赦なく、首筋に手刀を加え、気絶させることで。
少しの間でも現実から逃れることのできたのは、ホウロにとって短い救いかもしれない。
目を覚ませば残酷な現実が待っているが。
「運んで」
コウライが兵士に、気絶させたホウロを現場から離れさせると、フェイアの検証のために自身も離れた。
フェイアはいつものように札を使い、呪文を唱え、その時の状況を再現する。
人型の紙切れは舞うように地面をのた打ち回る。被害者がどのように餌食となったのか、克明に伝える。ユイハはいつどこからどうしてここへ来たのか。
「やはりそうか」
妖気の反応がおかしい。
妖気は突然出現して、突然消える。
つまり、人間に化けて接近し、食事が終わった後、人間に化けて離れている。
前回の青年の時と同じだ。
だがゴウリュウが雇っていた、例の妖魔の芝居をしていたゴロツキは違う。
妖魔の痕跡がほとんど残されていた。
妖気が消えたのは距離が遠くに離れてからだった。
推測するなら、この村での妖魔の最初の犠牲者は、あのゴロツキの二人、あるいは恐怖に精神を病んだものを入れれば、三人というべきか。それから青年。三度目にユイハ。
やはり、村人に化けている。
最初の時は村人に混じっていなかった。そのため妖気が大量に残された。
しかし二度目以降は村人の誰かと代わっている。
だから人間に化けることによって妖気が途絶える。
だが、誰に?
村人たちへ目を向けると、その中にリョホウの姿があった。だがその隣には、いつもいるはずの彼の妻の姿はない。
知らせを受けたメイリンは、現場へ向かった。村人の大半はすでに湖へ向かい、リョホウとホウロもすでにそちらへ向かったらしい。
湖の手前で人だかりができていた。村人たちがその真偽を確かめるために、集まっている。
そこから少し離れた場所で、倒木に腰掛けるリョホウの姿があった。彼に駆け寄ると、夫はすぐに妻に気付いた。
「……メイリン。ユイハが、殺されたよ」
静かに事実を告げるリョホウの表情は、沈痛や悲哀を一切表さない、能面のような表情のなさだった。
まるでメイリンと出会う前の、一人で生きていた時のように。
「僕は知ってたんだ。気付いていた。ユイハが僕のことを想ってくれていたのは」
訥々と告げる。
「でも、僕は彼女の想いには応えなかった。一度だって優しくしたことがないんだ。一度も。一度ぐらい優しくしてあげればよかったのかな?」
メイリンは答えない。
答えても意味がないことだから。
「どうして僕は、ユイハに優しい言葉の一つぐらいかけて上げられなかったのかな? いや、理由はわかってるんだ。理由はとても単純で簡単だから」
ユイハが好きではなかったから。
自分に好意を向けられても、好きにならなかったから。
自分に恋しているのだと知っても、好きになれなかったから。
自分はそういう人間だ。
沈黙して告白を聞いていたメイリンはリョホウを抱きしめた。
それは母の慈愛のように、姉の庇護のように、妹の思慕のように、そして娘が縋るように。
「あなたは優しい人よ」
ユイハの葬儀が行われた。
一週間も経たないうちに二人が殺害された。ゴウリュウの手下を入れれば四人。
宿屋の主人夫婦は、朝廷から派遣された妖魔退治の道士を、宿から追い出した。
娘を殺された今では、歓迎できない。
宿泊も許せない。
非難して追い出す気は望んでもいないのに湧き上がってくる。
村長のウクバがとりなしても効果はなかった。
非難は宿屋夫婦だけではなく、村人の一部からも起きていた。
いっそ役に立たない兵士は追い出して自分たちで対処するべきだという極端な意見まで出始め、それどころか、混乱を恐れて秘密にしていたことが、どこからか知れ渡っていた。
「妖魔は人間に化けるんだとよ」
「妖魔は俺達の中に紛れ込んでいるかもしれない」
「俺達の中に化け物がいる」
「道士は俺達の中に妖魔がいることを黙っていた」
「俺達で妖魔を探し出すんだ」
「見つけ出して殺せ」
殺気立った気配が、村中に蔓延し始めている。
もしこれが最高潮に達すると、きっかけ一つで村中の人間が殺しあうかもしれない。
フェイアが恐れていた事態が進行しつつあった。
「どうしたもんかね?」
コウライがどこか呑気に問いかける。彼女はいつでも自分の調子を崩したことはない。
神経質に心配ばかりしている自分にとっては、彼女のその大らかさが助けとなる。
もっとも細かいことを気にしない傾向もあるので、その辺は自分が補う必要があるのだが。
「最悪の事態になる前に、妖魔を見つけ出して滅ぼす」
「どうやって?」
人間の仕業だった時と違い、妖魔の仕業である三つの事件は妖気が残されていた。
しかし、追跡しようとしたが妖気は途中で途絶えている。
最初の事件と共通した見解となるが、どうやらこの妖魔は、人間に化ける。そのためどこに潜んでいるかわからない。
村人の誰かを記憶ごと喰らい、紛れ込んでいる可能性は高い。
村人が考えていることは、おそらく真実だ。
しかし、彼らの知らないこともある。
「妖魔が誰なのかは検討がついている」
フェイアはリョホウに、ゴウリュウの屋敷の使用の許可を貰った。
罪人として捕らえられた彼らの財産、家屋敷などの管理は、唯一の血縁者であるリョホウにある。
リョホウは屋敷の使用を承諾した。
快くという顔ではなかったが、それでも妖魔を討ちとることができるのは、フェイアたちしかいないということを理解しているからだろう。
もし祖父とのささやかな交友がなければ、それもなかったかもしれない。
「いや、そんなことはないか」
フェイアは一人呟く。
冷淡なようでいて、リョホウはそのような人格には縁遠い。
家屋敷の使用を頼んだとき、彼は静かに願った。
「ユイハの敵をとってください」
フェイアは言われなくともそのつもりでいた。
自分が滞在していながら防げなかった数々の犠牲。
彼らのためにも、そして自身に課せた使命を果たすためにも。
リョホウにとって、さらに残酷な結末が待っているかもしれないと思いながら。
ユイハの墓標を前に、ホウロはうなだれていた。
周囲には誰もいない。
だから彼の言葉を聞くものは誰もいない。
ユイハには、もうなにも聞こえない。
「敵はとってやる。絶対にとってやる。敵をとる。殺す。絶対に殺す。化け物め。殺してやる、殺してやる、殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる……」
人が好く面倒見の良い善良なホウロは、今や呪詛を撒き散らし憎悪と憤怒に満ちていた。
兵士たちが遺品を回収するため湖の中に入ったため、底に溜まっている土砂が掻き混ぜられたせいだが、それが血の色に見える。
彼女は切れ端だけしか残っていなかった。
左手。右足。頭部。
宿屋の主人夫婦は呆然としていた。
検分に立ち合わせなかったが、遠くからでも娘かどうかの判別はつくのだろう。
それなのに、錯乱さえできないほど、それは現実味がなかった。
一部しか残されていない遺体。
喰い散らかした、喰べ残し。
事態を知ったホウロとリョホウが現場に現れた。
二人とも走って来たので息が上がっている。
リョホウは人だかりの手前で止まったが、ホウロはさらに掻き分けて、兵士の制止も振り切って、ユイハのところへ走り続けた。
それが二人の感情の差を表すように。
「ユイハ」
震える声で訊ねても、彼女は答えない。
水に冷え、血が抜けた彼女は、人形のようで、まるで誰かの性質の悪いいたずらのように思えた。
「なんで? なんで? どうして? こんな。違う。俺は。こんなのは違う……」
どう見えても、どう思うとも、現実は変わらない。
小包の配達を頼んだのは誰だ。
手伝いを頼んだのは誰だ。
本来死ぬはずだったのは誰だ。
「うぁあああああ!!」
ホウロは絶叫して這い蹲りユイハの残りをかき集めようとした。
コウライに止められた。
容赦なく、首筋に手刀を加え、気絶させることで。
少しの間でも現実から逃れることのできたのは、ホウロにとって短い救いかもしれない。
目を覚ませば残酷な現実が待っているが。
「運んで」
コウライが兵士に、気絶させたホウロを現場から離れさせると、フェイアの検証のために自身も離れた。
フェイアはいつものように札を使い、呪文を唱え、その時の状況を再現する。
人型の紙切れは舞うように地面をのた打ち回る。被害者がどのように餌食となったのか、克明に伝える。ユイハはいつどこからどうしてここへ来たのか。
「やはりそうか」
妖気の反応がおかしい。
妖気は突然出現して、突然消える。
つまり、人間に化けて接近し、食事が終わった後、人間に化けて離れている。
前回の青年の時と同じだ。
だがゴウリュウが雇っていた、例の妖魔の芝居をしていたゴロツキは違う。
妖魔の痕跡がほとんど残されていた。
妖気が消えたのは距離が遠くに離れてからだった。
推測するなら、この村での妖魔の最初の犠牲者は、あのゴロツキの二人、あるいは恐怖に精神を病んだものを入れれば、三人というべきか。それから青年。三度目にユイハ。
やはり、村人に化けている。
最初の時は村人に混じっていなかった。そのため妖気が大量に残された。
しかし二度目以降は村人の誰かと代わっている。
だから人間に化けることによって妖気が途絶える。
だが、誰に?
村人たちへ目を向けると、その中にリョホウの姿があった。だがその隣には、いつもいるはずの彼の妻の姿はない。
知らせを受けたメイリンは、現場へ向かった。村人の大半はすでに湖へ向かい、リョホウとホウロもすでにそちらへ向かったらしい。
湖の手前で人だかりができていた。村人たちがその真偽を確かめるために、集まっている。
そこから少し離れた場所で、倒木に腰掛けるリョホウの姿があった。彼に駆け寄ると、夫はすぐに妻に気付いた。
「……メイリン。ユイハが、殺されたよ」
静かに事実を告げるリョホウの表情は、沈痛や悲哀を一切表さない、能面のような表情のなさだった。
まるでメイリンと出会う前の、一人で生きていた時のように。
「僕は知ってたんだ。気付いていた。ユイハが僕のことを想ってくれていたのは」
訥々と告げる。
「でも、僕は彼女の想いには応えなかった。一度だって優しくしたことがないんだ。一度も。一度ぐらい優しくしてあげればよかったのかな?」
メイリンは答えない。
答えても意味がないことだから。
「どうして僕は、ユイハに優しい言葉の一つぐらいかけて上げられなかったのかな? いや、理由はわかってるんだ。理由はとても単純で簡単だから」
ユイハが好きではなかったから。
自分に好意を向けられても、好きにならなかったから。
自分に恋しているのだと知っても、好きになれなかったから。
自分はそういう人間だ。
沈黙して告白を聞いていたメイリンはリョホウを抱きしめた。
それは母の慈愛のように、姉の庇護のように、妹の思慕のように、そして娘が縋るように。
「あなたは優しい人よ」
ユイハの葬儀が行われた。
一週間も経たないうちに二人が殺害された。ゴウリュウの手下を入れれば四人。
宿屋の主人夫婦は、朝廷から派遣された妖魔退治の道士を、宿から追い出した。
娘を殺された今では、歓迎できない。
宿泊も許せない。
非難して追い出す気は望んでもいないのに湧き上がってくる。
村長のウクバがとりなしても効果はなかった。
非難は宿屋夫婦だけではなく、村人の一部からも起きていた。
いっそ役に立たない兵士は追い出して自分たちで対処するべきだという極端な意見まで出始め、それどころか、混乱を恐れて秘密にしていたことが、どこからか知れ渡っていた。
「妖魔は人間に化けるんだとよ」
「妖魔は俺達の中に紛れ込んでいるかもしれない」
「俺達の中に化け物がいる」
「道士は俺達の中に妖魔がいることを黙っていた」
「俺達で妖魔を探し出すんだ」
「見つけ出して殺せ」
殺気立った気配が、村中に蔓延し始めている。
もしこれが最高潮に達すると、きっかけ一つで村中の人間が殺しあうかもしれない。
フェイアが恐れていた事態が進行しつつあった。
「どうしたもんかね?」
コウライがどこか呑気に問いかける。彼女はいつでも自分の調子を崩したことはない。
神経質に心配ばかりしている自分にとっては、彼女のその大らかさが助けとなる。
もっとも細かいことを気にしない傾向もあるので、その辺は自分が補う必要があるのだが。
「最悪の事態になる前に、妖魔を見つけ出して滅ぼす」
「どうやって?」
人間の仕業だった時と違い、妖魔の仕業である三つの事件は妖気が残されていた。
しかし、追跡しようとしたが妖気は途中で途絶えている。
最初の事件と共通した見解となるが、どうやらこの妖魔は、人間に化ける。そのためどこに潜んでいるかわからない。
村人の誰かを記憶ごと喰らい、紛れ込んでいる可能性は高い。
村人が考えていることは、おそらく真実だ。
しかし、彼らの知らないこともある。
「妖魔が誰なのかは検討がついている」
フェイアはリョホウに、ゴウリュウの屋敷の使用の許可を貰った。
罪人として捕らえられた彼らの財産、家屋敷などの管理は、唯一の血縁者であるリョホウにある。
リョホウは屋敷の使用を承諾した。
快くという顔ではなかったが、それでも妖魔を討ちとることができるのは、フェイアたちしかいないということを理解しているからだろう。
もし祖父とのささやかな交友がなければ、それもなかったかもしれない。
「いや、そんなことはないか」
フェイアは一人呟く。
冷淡なようでいて、リョホウはそのような人格には縁遠い。
家屋敷の使用を頼んだとき、彼は静かに願った。
「ユイハの敵をとってください」
フェイアは言われなくともそのつもりでいた。
自分が滞在していながら防げなかった数々の犠牲。
彼らのためにも、そして自身に課せた使命を果たすためにも。
リョホウにとって、さらに残酷な結末が待っているかもしれないと思いながら。
ユイハの墓標を前に、ホウロはうなだれていた。
周囲には誰もいない。
だから彼の言葉を聞くものは誰もいない。
ユイハには、もうなにも聞こえない。
「敵はとってやる。絶対にとってやる。敵をとる。殺す。絶対に殺す。化け物め。殺してやる、殺してやる、殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる……」
人が好く面倒見の良い善良なホウロは、今や呪詛を撒き散らし憎悪と憤怒に満ちていた。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。

子持ちの私は、夫に駆け落ちされました
月山 歩
恋愛
産まれたばかりの赤子を抱いた私は、砦に働きに行ったきり、帰って来ない夫を心配して、鍛錬場を訪れた。すると、夫の上司は夫が仕事中に駆け落ちしていなくなったことを教えてくれた。食べる物がなく、フラフラだった私は、その場で意識を失った。赤子を抱いた私を気の毒に思った公爵家でお世話になることに。

覚悟はありますか?
翔王(とわ)
恋愛
私は王太子の婚約者として10年以上すぎ、王太子妃教育も終わり、学園卒業後に結婚し王妃教育が始まる間近に1人の令嬢が発した言葉で王族貴族社会が荒れた……。
「あたし、王太子妃になりたいんですぅ。」
ご都合主義な創作作品です。
異世界版ギャル風な感じの話し方も混じりますのでご了承ください。
恋愛カテゴリーにしてますが、恋愛要素は薄めです。

「白い結婚の終幕:冷たい約束と偽りの愛」
ゆる
恋愛
「白い結婚――それは幸福ではなく、冷たく縛られた契約だった。」
美しい名門貴族リュミエール家の娘アスカは、公爵家の若き当主レイヴンと政略結婚することになる。しかし、それは夫婦の絆など存在しない“白い結婚”だった。
夫のレイヴンは冷たく、長く屋敷を不在にし、アスカは孤独の中で公爵家の実態を知る――それは、先代から続く莫大な負債と、怪しい商会との闇契約によって破綻寸前に追い込まれた家だったのだ。
さらに、公爵家には謎めいた愛人セシリアが入り込み、家中の権力を掌握しようと暗躍している。使用人たちの不安、アーヴィング商会の差し押さえ圧力、そして消えた夫レイヴンの意図……。次々と押し寄せる困難の中、アスカはただの「飾りの夫人」として終わる人生を拒絶し、自ら未来を切り拓こうと動き始める。
政略結婚の檻の中で、彼女は周囲の陰謀に立ち向かい、少しずつ真実を掴んでいく。そして冷たく突き放していた夫レイヴンとの関係も、思わぬ形で変化していき――。
「私はもう誰の人形にもならない。自分の意志で、この家も未来も守り抜いてみせる!」
果たしてアスカは“白い結婚”という名の冷たい鎖を断ち切り、全てをざまあと思わせる大逆転を成し遂げられるのか?
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる