魔王殿

神泉灯

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60・混濁する緊張

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 ゴードを除いた三人が、二人の子供に向かって駆け出した瞬間、雷光が走り、夥しい数の魔物が出現した。
 無機質なまでに顔に動きのない人の顔をした、巨大な蜘蛛の群れだ。
 城門の上にへばりついているひときわ巨大な人顔の蜘蛛の背中に、重力を無視しているのか、両手足を切断し、切断面をそれぞれ接合した奇妙な木乃伊が座している。
 古城の頂上部の窓から夥しい数の、羽毛のない怪鳥と褐色の色の蟲が飛翔した。それは広い空に出ると、萎縮した己の体を最大限に広げ、数メートルに巨大化する。
 その中に混じって修験者の衣服を纏った三匹の鴉天狗が先導を行っていた。
 背後の石階段から数十匹の犬顔の怪物が上ってきた。それらは一様に怪音を喉から出して威嚇する。
 身長一メートル程度の小鬼と小悪魔が崖から、この上の崖を全て覆い尽くすほどの数で、這い上がってきた。
 城壁に十数匹の猿忍者がへばり付いていた。細い瞳孔が朱に輝き、唾液で不気味な光沢を放つ長い舌を伸ばす。
 城壁の上から蜥蜴人が弓矢を構えていた。禍々しい赤い瞳が標的を捉えて放さない。
 先程の出来損ないとは違う、完全に戦闘用に調節されている魔物。
 二人の子供との間を魔物が妨害する形となり、保護できない。
「しまったな」
 教授は状況とは裏腹、奇妙に冷淡に呟いた。
 先の異変はマリアンヌとオットーの精神に重大な影響を与えたことは容易に想像がつくが、少女は比較的冷静だったし、些細なことでなりふりかまわず逃げ出しかねないほど動揺していた少年も、マリアンヌの働きかけで安定しつつあった。
 しかし多少手荒なことをしてでも、即座に二人を確保するべきだった。
 魔物の中枢を目前とした極めて危険な状況下で、数十秒程度とはいえ、事態の推移を見守るなどという悠長なことをするべきではなかった。
 しかし今となってはすべて手遅れだ。次の手を至急、考案しなければ。
「さて、どうしたものかな?」
 魔物の数から推測して、残存する全戦力を投入したのだろう。
 三百年前時空を隔てて逃走したように、今回もまたなにかを画策している。
 この状況は、目的の達成にマリアンヌが必要不可欠だと証言しているのと同然だ。
 魔人の姿が少ないが、直接指揮を執る必要がないというより、計画を推進させているためだろう。
「マリアンヌ様、動かないでくださいませ」
 サリシュタールが静かに忠告を伝える。
 光の戦士が四人いることで、魔物との間にある種の膠着状態が発生している。
 だがマリアンヌともう一人の少年が下手な行動を起せば、それは一瞬で崩れ去る。
 戦闘に巻き込まれれば二人とも無事では済まないだろう。
 アルディアスとゴードンの神経が極限まで張り詰められる。
 もし魔物が動きを見せれば、即座に動く。
 マリアンヌともう一人の少年が巻き込まれる恐れがあるが、動かないことこそが最も愚策だ。
 城門からなにかが現れる気配を感じた。
 門の向こう側は闇に覆われ、中を見ることはできない。
 結界の影響なのか、透徹した視力をもつサリシュタールでさえ感知できない。
 だがその者は自分の存在を誇示するためか、意図的に気配を拡大してその姿を現した。


「貴様か」
 アルディアスが宿敵とも呼べる者を見据える。
「ああ、私だ」
 魔将軍スナフコフ・ガーランドは答えた。
「ついにこの場に到達したな、光の戦士たちよ。しかも最初の者と接触し連れだってな」
 最初の者とは教授を指しているのだろう。
 もし教授の説明が全て真実であれば、その正体を魔物たちが知っていることは必然的な理だ。
「ん?」
 不意に、黒い騎士の気迫が弛緩した。
「マリアンヌ王女?」
 その視線の先に異界通路を開通させるために必要な人材がいた。
 そしてそのすぐ側にいるのは彼らの王。
 二人は硬直したようにして動かないでいる。
 その神経を張り詰めた表情からなんらかの力の作用ではなく、単純に膠着状態から動こうとしていないことがわかる。
「そうか、あの状況下で連れてきたのか。では早く中に入ったほうが良い。ここはこれから戦場になる」
 黒い騎士は少年に告げるが、彼は答えず慄いた目を向けて、動こうとしない。
「なにをしている? 早く中に入るんだ。それに能力の遮断は……」
 そこまで告げて、少年の様子が奇妙なことに気がついた。
 まるで自分を初めて見るような、そればかりか周囲の魔物に対して明らかに恐怖を感じている。
 ゲオルギウスの能力特有の波動も感知できない。
 力が微弱で、しかも別人のように変質してしまっている。
 なんだ、これは? 黒い騎士は魔王の奇妙な状態に戸惑った。
 そして戸惑っているのは、光の戦士たちも同じだった。
 あの少年となにを話しているのか、意味が汲み取れない。
 仲間というには少年は全く返答せず怯えており、だが敵というには黒い騎士は少年の扱いに慣れており、総じて様子が奇妙だ。
 王女と行動を共にして助け合っていたと教授が話していたが、本当なのだろうか。
 その教授は一つの可能性に思い当たった。
 オットーがマリアンヌの世話役に選抜されたのは偶然だと考えていたが、しかし恣意的に選ばれたこともありえる。
 少年が魔物に魂を売り渡す意思があった場合だ。
 しかし魔人の言葉に従わず、魔物に恐怖を感じているのを見ると、記憶喪失だというのは本当だろう。
 なにより虚言というにはあまりにも浅はかで突拍子なく、そして必要性に欠ける。
「そうか」
 教授は少年と少女が動転していた理由を理解した。異変が少年のなくした記憶をよみがえらせる、あるいはそれに類することが発生し、もし少年が魔物と契約したことを知ったのなら。
 それは、少年のあの義心を正しく貫こうとする性格からは想像がつかない。
 しかし推測が的中していれば、人体保管所で見せたあの少年の純粋な善なる心は、魔物に加担しているという事実に耐え切れないだろう。
 だが、もしこの予想が正解だとしたら、少年はどういう行動に出る。
 もう一人の自分、ドッペルゲンガーを目にした者の結末は?


 緊張感だけが異常なまでに高くなる状況に、唐突に空中に白い天使が現れた。
 その羽は銀色の針金細工で形成されていたが、神の意思を表す使徒の姿に他ならなかった。
 もっともそれを真に天使だと感じたものは誰もいなかったが。
「ゼフォル・ヴァ・グリウス。どうなっている?」
 白い天使は黒い騎士に無言の視線を送る。
 そして次の瞬間、針金細工の羽が解け、一直線に煌きがマリアンヌに走った。
 最初にその正体に気づいたのが誰だったのか定かではない。
 だが最も早く行動を起こしたのは、少年だった。
「マリアンヌ!」
 少年は少女を銀の輝きの直線状から庇った。
 代わりに煌きの正体、無数の糸状の針金が少年の体を貫く。
 肉体を貫通した針金は、さらに地面に突き刺さり、少年の動きを完全に封じ込めた。微かな動きさえも、鋭利な刃物のように、皮膚を破り、肉を裂き、骨に食い込み、鮮血を噴出する。
「オットー!」
 マリアンヌの悲痛な呼びかけに、少年は制するように弱々しく手を掲げる。
「……に、逃げて」
 発言はそこで強制的に止められる。
 天使は針金を元の羽の形状に収縮させると、共に少年を手元に回収する。
「ゼフォル・ヴァ・グリウス。どういうつもりだ?」
 少年の信頼を得るために、長い時間をかけて母親を演じてきた擬似天使の行動には、魔物たちさえ理解できなかった。
 黒い騎士の姿をした魔将軍の問いかけに、天使は無数の針金に巻き取られた少年の瞳を見据えて、納得したように頷き、そしてスナフコフに視線を送る。
「なるほど。わかった」


 二人の魔人がなにを語ったのか、そのことを問うものはいなかったし、そもそも疑念に感じる者もいなかった。
 状況は動いた。
 行動しないことは最悪の愚策だ。
 白銀の糸の凶刃が少年の体を貫いた、その刹那の瞬間に、勇者と称される人類内においてもっとも強大な戦闘能力を有した三人は、判断を下し行動に移していた。
「おぉおおおらぁ!!」
 ゴードは雄叫びを上げ、周囲の魔物を切り裂いた。
「ヌン!」
 気合一閃、衝撃波が直線状の魔物を粉砕した。
「マリアンヌ様、動かないでください」
 サリシュタールは王女に警告し、魔物を障害物のようにあしらって、彼女を確保しようとする。
 教授もまた戦闘を開始していたが、しかし魔物の数は多く、一気に殲滅しようと大規模な攻撃を行えば、二人の子供も巻き込んでしまうので使用できない。
 現在の戦いは速度と精密さが要求される。
 彼らの戦いは決して下手なものではない。
 人間という枠組みで捉えれば、最高にして最強だ。
 だがそれも異形の力を有した者の数量と制限された戦闘方法の為に押され始めた。
「先生! 私は良いから! オットーを助けて!」
 王女の悲痛な懇願を叶えたくとも、不可能に近かった。


 背中から鮮血が溢れ、動きを封じる糸に血が滴り落ちる。
 身動きが取れない。
 魔物たちが周囲を取り囲もうとしている。
 これが完成すれば、もうマリアンヌを教授たちが救出するのは絶望的になる。
「オットー! オットー!」
 名を叫ぶ少女の声が遠くに聞こえる。
 少年は少女の言葉を思い出す。
 私は一緒に脱出すると約束しました。
 あなたは私の大切な友達です。
 あなたはオットーです。
 始めは魔王殿を脱出する為の嘘だったのかもしれない。
 自分が魔王であることを忘れてしまった自分を連れ回せば、脱出できる確率が高くなるという発想からの虚言だった。
 でも心優しい寂しがり屋の孤独な少女は、僕を本当に友達だと思ってくれるようになっていた。
 だから教授と一緒に戦いたいと言ったとき、マリアンヌはあれほど反対した。
 彼女は僕の正体を知っているのに、沈黙を通した。
 教授に教えてしまえば、魔王である自分は抵抗もできずに殺された筈なのに。
 故郷に帰ることも、僕の故郷はここなのだと知っていたから、王国に連れて行こうとした。
 王国を僕の故郷にする為に。
 この少女は自分がいったいなにを選択したのか理解しているのだろうか。
 世界の敵を庇おうだなんて。
 世界中に大惨事を引き起こした張本人を、本人からさえ隠し通そうだなんて。
 少年は翳んでいく視界の中で、聖騎士と魔術師が走ってくるのを捉えた。
 記憶の世界で見た、マリアンヌの守護者。
 光の戦士たち。
 彼らに届ければ、マリアンヌはきっと助かる。
「……マリアンヌ」
 少年は呟き無意識のうちに眉間に意識を集中した。
 人間が保有している筈のない力が収斂されるのを感じ、眼前に自分を捕らえている天使に向けて、開放した。
 瞬間、爆音が轟き、天使の体の右半分を吹き飛ばしていた。
 針金の束縛が緩んだが、右半分を失った天使は、その状態でもなお、少年を解放しなかった。
 少年は半ば宙吊りになる。
 だがそれで十分だった。
 戦いの情景を視認した少年は、同じ行為を周囲の魔物に向けて行った。
 無数の光線が少年の眉間から放たれ、穿たれた魔物は次には消滅する。
 力の使用法を忘却したはずの少年は、死を目前として生存本能が最大限に発揮されたのか、その力を解放した。
 魔物は少年の攻撃に、単純に敵に行われるより遥かに驚愕し、動きが明らかに鈍った。
 その隙を光の戦士は逃さず、世界最強の魔術師が王女の身柄を確保し、失敗に気づいた魔物が群がるが、それを一瞬にして蹴散らす。
 その腕の中でマリアンヌがなにかを叫んでいるが良く聞き取れない。
 聖騎士と狩人が自分を助けようと駆けてくるが、大量の魔物に阻まれて思うように進めないでいる。
 天使の針金が微かに残る命を搾り取るかのように締め上げ、傷口から鮮血が迸り、白い肌と銀の髪を紅く染めていく。
 大量の血液が失なわれ体が急速に冷えていくのを感じた。
 命が少しずつ、確実に消えていく。
 消え行く意識の中で少年は少女に告げる。
 ごめんね。
 僕のせいでこんなことになって。
 どうか無事に逃げ延びて。
 なにがあっても絶対に死んだりしないで。
 僕にも君はたった一人の大切な友達。
 最後に君に会えて良かった。
 名前をくれた大切な友達。
「僕は……」
 少年がなにを言おうとしたのか、言い終えることのない言葉を最後に、その意識は消失した。
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