悪役令嬢に転生した18禁同人誌作家は破滅を回避するために奮闘する

神泉灯

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番外編

ノーガンズ

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 わたしは変な汗が噴き出ていた。
「これ、どうすんの?」
 みんな同じ思いの中、最初に動いたのは、役者さんだった。
「しかたねぇ。どうやら俺の正体を明かすときが来たようだな」
 そして前に出ると、名乗りを上げる。
「俺は表向きは売れない役者。だが 本業は、殺し屋 ノーガンズ」
 キラーゲージは鼻で笑う。
「そんな殺し屋など聞いたことがないぞ」
「だろうな。同業者にも正体を隠してきたからな。だから教えてやる。俺の名の由来を。
 俺はな、銃がなくても弾が撃てるんだよ」
 殺し屋さんが、こいつ なに言ってんだ といった顔。
 役者さんは街灯に向けて手を銃のような形にした。
「バーン!」
 街灯が割れた。
 まるで本当に弾丸が命中したかのように。
 殺し屋さんはギョッとする。
 役者さんは続けて、事務員さん男に向けて、
「バーン!」
 事務員さん男は、
「うっ!」
 と 血飛沫を上げて倒れた。
 事務員さん女が悲鳴を上げる。
「なにするんですか?!」
 役者さんは続けて彼女に、
「バーンッ!」
 事務員さん女は、
「うっ!」
 と声を上げて倒れた。
 役者さん恐ろしい眼で告げる。
「俺の技を知ったからには生かしておくわけにはいかねぇ」
 わたしは叫ぶ。
「貴方! 始めからそのつもりで!」
「バーン!」
 わたしは胸に衝撃を受けて倒れた。
 役者さんは大きな看板に両手を構えた。
「ダ!ダ!ダ!ダ!ダ!ダ!ダ!ダ!ダ!ダ!ダ!ダ!ダ!」
 看板が穴だらけになった。
 そして そのまま両手を殺し屋に構え、睨みを効かせた。
「次はおめぇが蜂の巣になる番だぜ」


 殺し屋さんは息をのむと、全力で撤退した。


 事情を知らない下っ端ヤクザさんが、尻餅ついてへたり込んでいた。
「ど、どうなってるんだ?」


「カーット!」
 どこからか聞こえた声で、役者さんの態度がコロッと変わった。
「お疲れーっす」

 事務員さんたちも何事もなかったかのように立ち上がり、
「お疲れです」
「お疲れ様です」
 わたしも立ち上がって、
「うまく ごまかせましたね」
 下っ端ヤクザさんは そこでようやく理解した。
「あっ、今の、芝居の仕込みを利用したアドリブだったんですか」
 役者さんは当然のように、
「当たり前じゃない。鉄砲もないのに弾が撃てるわけないでしょ。いやー、仕込みが無駄にならなくて良かったよ」
 そこにマネージャーさんが駆け寄ってきた。
「いやー! 今の良かったよ! 最っ高の演技だった!」
「ホント? いや、俺もね、今回のことで、役者として一皮むけたって感じがするんだよね」
「僕、早速 次の仕事とってくるよ! 今度こそブレイク間違い無しだ!」
「よし! 俺も挨拶回りに行ってくる!」
 と二人は行ってしまった。


 そして撮影スタッフの人たちが手早く片付けを行い、三分もしないうちに、辺りは静けさが戻った。
「じゃあ、わたしたちも帰りましょうか」
 わたしは事務員さんたちに言って帰宅。
 下っ端ヤクザさんを残して。


「……えぇー」


 下っ端ヤクザさんが なぜか変な疑念の声を上げていた。


 数日後、新しい仕事が入った役者さんは、撮影所にて台本片手にわたしと話をしていた。
「取材させていただき ありがとうございます。おかげで良い話が描けそうです」
「そいつはよかった。俺もあんたの取材を受けられて良かったよ。良い仕事も入ったしな」
 今日で役者さんの取材は終了。
 これで役者さんとはお別れだ。
 でも、またいつか会えるだろう。
 撮影スタッフさんが来た。
「もうすぐ撮影始まります。準備、お願いします」
「わかりました」
「頑張ってください」
「一芝居やってくる」



 おわり
 


 わたしは編集者さんに取材の結果報告を終えた。
「それで、役者さんはその後ブレイクしたわけですね」
「ダメだった」
「……は?」
「結局、その仕事でも演技が評価されずに、いつもどおり脇役ばかりの仕事しか来てないって。
 この前、居酒屋で、俺は結局ダメ役者なんだ とか言って、飲んだくれているのを見かけました」
「それ、どこがいい話なんですか?」
「組長さんと愛人さんが結ばれたじゃないですか。これをマンガに書けば大ヒット間違いなしですよ」
 編集者さんはなぜか頭を抱えて叫んだ。
「どいつもこいつも全然成長してねえじゃねえか!」


 おしまい
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