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番外編
肉野菜炒め
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数日 経ったヤクザの事務所にて。
組長さんは不機嫌だった。
浮気男の疑いがある、ギャングのボスの居場所が分からないのだ。
これでは 殺し屋に仕事を頼むことが出来ない。
組長さんは若頭と幹部の一人を呼びつけ叱る。
「早くあの男を見つけんか! なにをしとる!?」
若頭さんが額に汗をかき、
「どうやら、あの男は こちらがキラーゲージを雇ったことを、どこかで知ったようです。それで姿をくらましているようで」
「どうやって知った。いや、姿を消したと言うことは、やはり浮気相手は あいつに間違いないと言うことか。
なんとしても見つけ出せ! ヤツの息の根を止めて 女を取り返すのだ!」
怒り狂う組長さんに、幹部さんが疑問を呈する。
「あの、伝説の殺し屋 キラーゲージについてですが、ヤツは本物なのでしょうか?」
「どういう意味だ?」
「どうも、人を殺したことがあるようには思えないんですよ」
「では、わしが睨み合いで負けたことはどう説明する。わしが腰抜けだとでも言いたいのか」
「いえ、そんなことは」
下っ端ヤクザさんは嫌な汗をかいていた。
やばい、疑われてる。
そこに役者さんとわたしが訪れた。
下っ端ヤクザさんは慌てた様子で、
「ど、どうしてここに?」
役者さん穏やかに話す。
「いや、呼び出しがかからないんで、ちょっと様子を見に来たんだけど」
組長さんは緊張した様子で、
「こっちも準備をしているところだ。もう少し待ってくれ」
「え、ああ、わかった」
幹部のヤクザが組長さんに そっと、
「本当に伝説の殺し屋なんですか? やはり そんなふうには見えないんですが」
「本人の前で迂闊なことを言うな。機嫌を損ねたら なにをされるかわからんぞ」
幹部さんは役者さんに疑わしげな眼を向けていた。
そして下っ端ヤクザさんは心の中で悲鳴を上げていたとか。
やっぱり無理があるよー!
そこに 別の下っ端が食事を持ってきた。
カップラーメンだった。
役者さんは険しい表情で聞く。
「ちょっと待って。なにそれ?」
「え? 昼食ですけど」
役者さん怒った風に。
「ダメだよ、こんな物 食べちゃ。この仕事は体が資本なんだから。ちゃんとしたもの食べないと。ほら、俺の筋肉 触ってみて」
と 力こぶを作って見せた。
「失礼します」
と下っ端がそれを触ると、
「うわ! すげえ筋肉だ!」
役者さんはちょっと自慢げに、
「ね、すごいでしょ。毎日トレーニングして、食事にも気を遣ってさ。野菜をたくさん食べて、タンパク質もたっぷりとって。努力してこの体を維持してるんだから。
カップラーメンなんて 体に悪い物食べてたら、すぐに落ち目になるよ。
しょーがないな。俺が飯作ってやるよ。台所はあるんだよな。早速 買い出しに行ってくる」
役者さんは返事を待たずに、わたしを連れて買い出しに向かった。
近所の商店街で食材を買っていると、幸薄そうなサラリーマンのオッサンを見かけた。
「あ、映画館にいた人だ。こんな昼間から何やってんだろ。もしかして リストラされて どこにも行く宛がないとか?
ま、わたしには関係ないか」
事務所に戻った役者さんは、台所を借りて肉野菜炒めを作った。
みんなは出てきたそれによだれを垂らし、
「いただきます」
そして 一口食べて 皆一斉に叫ぶ。
「「「美味い!!!」」」
役者さん嬉しそうに、
「そーだろ そーだろ。美味いだろ。俺は昔、食堂で働いてたんだから」
若頭さん怪訝に、
「あんたみたいな人が、そんな仕事をしてたのか?」
「下積みが長くてね。生活が苦しくて、仕事を掛け持ちしてたんだ。この世界で成功するのは、そう簡単にはいかないってことさ」
「「「へぇー」」」
一同感心していた。
組長さんは思った。
伝説の殺し屋といえども、一人の人間。
あの眼力は、苦労の賜物か。
若頭さんは思った。
伝説の殺し屋って言っても、仕事以外は普通なんだな。
わたしは思った。
やっぱり役者のお仕事って大変なんだなー。
幹部さんは思った。
なんか 怪しい。
そして下っ端ヤクザさんは思った。
ヤバイ。
バレそうになってる。
いくらなんでも伝説の殺し屋っていうには無理があるよー!
愛人さんは思った。
まー、すぐバレるわね。
そして 事態は急転する。
ギャングの一団が襲撃を仕掛けてきたのだ。
組長さんは不機嫌だった。
浮気男の疑いがある、ギャングのボスの居場所が分からないのだ。
これでは 殺し屋に仕事を頼むことが出来ない。
組長さんは若頭と幹部の一人を呼びつけ叱る。
「早くあの男を見つけんか! なにをしとる!?」
若頭さんが額に汗をかき、
「どうやら、あの男は こちらがキラーゲージを雇ったことを、どこかで知ったようです。それで姿をくらましているようで」
「どうやって知った。いや、姿を消したと言うことは、やはり浮気相手は あいつに間違いないと言うことか。
なんとしても見つけ出せ! ヤツの息の根を止めて 女を取り返すのだ!」
怒り狂う組長さんに、幹部さんが疑問を呈する。
「あの、伝説の殺し屋 キラーゲージについてですが、ヤツは本物なのでしょうか?」
「どういう意味だ?」
「どうも、人を殺したことがあるようには思えないんですよ」
「では、わしが睨み合いで負けたことはどう説明する。わしが腰抜けだとでも言いたいのか」
「いえ、そんなことは」
下っ端ヤクザさんは嫌な汗をかいていた。
やばい、疑われてる。
そこに役者さんとわたしが訪れた。
下っ端ヤクザさんは慌てた様子で、
「ど、どうしてここに?」
役者さん穏やかに話す。
「いや、呼び出しがかからないんで、ちょっと様子を見に来たんだけど」
組長さんは緊張した様子で、
「こっちも準備をしているところだ。もう少し待ってくれ」
「え、ああ、わかった」
幹部のヤクザが組長さんに そっと、
「本当に伝説の殺し屋なんですか? やはり そんなふうには見えないんですが」
「本人の前で迂闊なことを言うな。機嫌を損ねたら なにをされるかわからんぞ」
幹部さんは役者さんに疑わしげな眼を向けていた。
そして下っ端ヤクザさんは心の中で悲鳴を上げていたとか。
やっぱり無理があるよー!
そこに 別の下っ端が食事を持ってきた。
カップラーメンだった。
役者さんは険しい表情で聞く。
「ちょっと待って。なにそれ?」
「え? 昼食ですけど」
役者さん怒った風に。
「ダメだよ、こんな物 食べちゃ。この仕事は体が資本なんだから。ちゃんとしたもの食べないと。ほら、俺の筋肉 触ってみて」
と 力こぶを作って見せた。
「失礼します」
と下っ端がそれを触ると、
「うわ! すげえ筋肉だ!」
役者さんはちょっと自慢げに、
「ね、すごいでしょ。毎日トレーニングして、食事にも気を遣ってさ。野菜をたくさん食べて、タンパク質もたっぷりとって。努力してこの体を維持してるんだから。
カップラーメンなんて 体に悪い物食べてたら、すぐに落ち目になるよ。
しょーがないな。俺が飯作ってやるよ。台所はあるんだよな。早速 買い出しに行ってくる」
役者さんは返事を待たずに、わたしを連れて買い出しに向かった。
近所の商店街で食材を買っていると、幸薄そうなサラリーマンのオッサンを見かけた。
「あ、映画館にいた人だ。こんな昼間から何やってんだろ。もしかして リストラされて どこにも行く宛がないとか?
ま、わたしには関係ないか」
事務所に戻った役者さんは、台所を借りて肉野菜炒めを作った。
みんなは出てきたそれによだれを垂らし、
「いただきます」
そして 一口食べて 皆一斉に叫ぶ。
「「「美味い!!!」」」
役者さん嬉しそうに、
「そーだろ そーだろ。美味いだろ。俺は昔、食堂で働いてたんだから」
若頭さん怪訝に、
「あんたみたいな人が、そんな仕事をしてたのか?」
「下積みが長くてね。生活が苦しくて、仕事を掛け持ちしてたんだ。この世界で成功するのは、そう簡単にはいかないってことさ」
「「「へぇー」」」
一同感心していた。
組長さんは思った。
伝説の殺し屋といえども、一人の人間。
あの眼力は、苦労の賜物か。
若頭さんは思った。
伝説の殺し屋って言っても、仕事以外は普通なんだな。
わたしは思った。
やっぱり役者のお仕事って大変なんだなー。
幹部さんは思った。
なんか 怪しい。
そして下っ端ヤクザさんは思った。
ヤバイ。
バレそうになってる。
いくらなんでも伝説の殺し屋っていうには無理があるよー!
愛人さんは思った。
まー、すぐバレるわね。
そして 事態は急転する。
ギャングの一団が襲撃を仕掛けてきたのだ。
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