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三章・いきなりですが冒険編
ナックルパンチ
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大魔王が呆然と呟いた。
「塔が……破壊された」
……え?
わたしは内心疑念を呟くと、自分の体を確かめる。
「ホントだ。わたし 生きてる。死んでない! 生きてるー!」
みんなを確認すると、みんなも無事。
世界中の人々も、魔物も、みんな無事だ。
大魔王は憤怒の雄叫びを上げる。
「いったい誰だぁあああー?! 誰が塔を破壊したぁあああー?!?」
大魔王は上空にその人物を写しだした。
それは……
バーコドハゲのメタボの中年男。
銀の月光の称号を持つ宮廷魔術師。
魔力の量だけなら国で最高。
童貞卒業を夢見る、見た目は中年、心は少年。
「オッサン!」
「ハハハ……なんか世界を救っちゃったみたいです」
わたしはオッサンに歓喜の声を上げる。
「どうやったんですか!?」
「究極破壊魔法です。テレポートしてきましたです。なんかボク、物凄く役に立っちゃったですか?」
「役に立ちまくりです! 世界を救った英雄ですよオッサン! ご褒美にわたしをオカズにシコッても良いですよ! 一生涯わたしをネタにしてオッケーです!」
「聖女さまが そんな下ネタ言っちゃダメです。っていうか童貞卒業はさせてくれないんですね。シクシク」
大魔王は叫ぶ。
「隠密将軍! すぐに来るんだ! 変身薬を飲ませろ! こいつらを皆殺しにして最初からやり直しだ!」
しかし隠密将軍の声は、
「……大魔王さま、今ので私も決心が付いた。拒絶する」
「なんだと! 私から受けた恩を忘れたのか!?」
「貴方に恩などない。恩があるのは、貴方の両親だ。
私が貴方の言いなりになっていたのは、亡くなった貴方の両親のため。
身寄りの無い私を引き取ってくださり、大切に育ててくれた。実の娘のように。あの二人は最後の遺言で、貴方の面倒を見てくれと頼んだのだ。
しかし、貴方はナルシストで、身も心も醜男だった。
誰かに愛されたいという欲求だけは強いくせに、そのための努力はまるでしない。生まれつき魔力が高いだけの、それ以外はまるでダメ男。
あのお二人の遺言がなければ、とうに見捨てていた。
私を娘にしてくださった二人のために、私は貴女の命令を聞いていた。
だが、それも もう終わりだ。
世界中の人間が、命をかけても真の愛を選んだ。
だから私も、望まぬ愛を拒絶する勇気を得た。
聖女の愛が教えてくれた。
真の愛は死に勝ると」
なんだか、誤解されているような気もするけど、どうやら隠密将軍も大魔王から離れる様子。
大魔王は怒り狂う。
「おのれぇえええ! どいつもこいつも真の愛を拒むのか! こうなれば塔を使うまでもない! 私自ら全員皆殺しにしてくれる!」
わたしは叫ぶ。
「いいかげんに黙りなさい! 貴方に愛を語る資格はないわ! 愛とは自らの意思で与える物! 捧げることを強要することしか考えない貴方が愛されるわけがない!
わたしの拳で目を覚まさせてあげる! この拳を喰らいなさい!」
わたしは渾身のナックルパンチを大魔王の頬面に喰らわせた!
ぺち。
……
「……」
「「「……」」
あれ?
「大魔王パンチ!」
「ゲフゥ」
わたしは大魔王に殴られて思いっきり吹っ飛んだ。
中隊長さんが駆け寄ってきた、
「しっかりしするんだ!」
「中隊長さぁぁん。イタいぃぃー。鼻血出たぁぁぁ」
「当たり前じゃないか。君は戦えないだろう。戦いは俺達に任せるんだ」
「そうでした。わたし戦闘要員じゃなかったんでした。大魔王のクズップリに頭に血が上ってすっかり忘れてしまいました」
大魔王は怒り狂う。
「ちくしょぉおおおー! なぜだ! なぜ 私を愛する者はいないのだ!?」
いや、あたりまえだろ。
わたしは鼻血を拭きながら みんなに、
「と、とにかく、大魔王は弱くなっています。今のうちに倒して、禍根を断つことにしましょう」
その時だった。
「待ってくれ、みんな」
王子がみんなを制止した。
「王子、どうされました?」
「ボクが愛する」
「誰をです? っていうか、なぜにいきなり愛の告白?」
「ボクが大魔王を愛することにする」
……
んんー?
「誰が誰を愛すると言いました?」
「ボクが大魔王を愛すると言ったんだ」
……
「……」
「「「……」」」
耳が痛くなるほどの沈黙が過ぎ去ると、皆は叫んだ。
「「「「「えええぇぇえええええー?!?!?」」」」」
「塔が……破壊された」
……え?
わたしは内心疑念を呟くと、自分の体を確かめる。
「ホントだ。わたし 生きてる。死んでない! 生きてるー!」
みんなを確認すると、みんなも無事。
世界中の人々も、魔物も、みんな無事だ。
大魔王は憤怒の雄叫びを上げる。
「いったい誰だぁあああー?! 誰が塔を破壊したぁあああー?!?」
大魔王は上空にその人物を写しだした。
それは……
バーコドハゲのメタボの中年男。
銀の月光の称号を持つ宮廷魔術師。
魔力の量だけなら国で最高。
童貞卒業を夢見る、見た目は中年、心は少年。
「オッサン!」
「ハハハ……なんか世界を救っちゃったみたいです」
わたしはオッサンに歓喜の声を上げる。
「どうやったんですか!?」
「究極破壊魔法です。テレポートしてきましたです。なんかボク、物凄く役に立っちゃったですか?」
「役に立ちまくりです! 世界を救った英雄ですよオッサン! ご褒美にわたしをオカズにシコッても良いですよ! 一生涯わたしをネタにしてオッケーです!」
「聖女さまが そんな下ネタ言っちゃダメです。っていうか童貞卒業はさせてくれないんですね。シクシク」
大魔王は叫ぶ。
「隠密将軍! すぐに来るんだ! 変身薬を飲ませろ! こいつらを皆殺しにして最初からやり直しだ!」
しかし隠密将軍の声は、
「……大魔王さま、今ので私も決心が付いた。拒絶する」
「なんだと! 私から受けた恩を忘れたのか!?」
「貴方に恩などない。恩があるのは、貴方の両親だ。
私が貴方の言いなりになっていたのは、亡くなった貴方の両親のため。
身寄りの無い私を引き取ってくださり、大切に育ててくれた。実の娘のように。あの二人は最後の遺言で、貴方の面倒を見てくれと頼んだのだ。
しかし、貴方はナルシストで、身も心も醜男だった。
誰かに愛されたいという欲求だけは強いくせに、そのための努力はまるでしない。生まれつき魔力が高いだけの、それ以外はまるでダメ男。
あのお二人の遺言がなければ、とうに見捨てていた。
私を娘にしてくださった二人のために、私は貴女の命令を聞いていた。
だが、それも もう終わりだ。
世界中の人間が、命をかけても真の愛を選んだ。
だから私も、望まぬ愛を拒絶する勇気を得た。
聖女の愛が教えてくれた。
真の愛は死に勝ると」
なんだか、誤解されているような気もするけど、どうやら隠密将軍も大魔王から離れる様子。
大魔王は怒り狂う。
「おのれぇえええ! どいつもこいつも真の愛を拒むのか! こうなれば塔を使うまでもない! 私自ら全員皆殺しにしてくれる!」
わたしは叫ぶ。
「いいかげんに黙りなさい! 貴方に愛を語る資格はないわ! 愛とは自らの意思で与える物! 捧げることを強要することしか考えない貴方が愛されるわけがない!
わたしの拳で目を覚まさせてあげる! この拳を喰らいなさい!」
わたしは渾身のナックルパンチを大魔王の頬面に喰らわせた!
ぺち。
……
「……」
「「「……」」
あれ?
「大魔王パンチ!」
「ゲフゥ」
わたしは大魔王に殴られて思いっきり吹っ飛んだ。
中隊長さんが駆け寄ってきた、
「しっかりしするんだ!」
「中隊長さぁぁん。イタいぃぃー。鼻血出たぁぁぁ」
「当たり前じゃないか。君は戦えないだろう。戦いは俺達に任せるんだ」
「そうでした。わたし戦闘要員じゃなかったんでした。大魔王のクズップリに頭に血が上ってすっかり忘れてしまいました」
大魔王は怒り狂う。
「ちくしょぉおおおー! なぜだ! なぜ 私を愛する者はいないのだ!?」
いや、あたりまえだろ。
わたしは鼻血を拭きながら みんなに、
「と、とにかく、大魔王は弱くなっています。今のうちに倒して、禍根を断つことにしましょう」
その時だった。
「待ってくれ、みんな」
王子がみんなを制止した。
「王子、どうされました?」
「ボクが愛する」
「誰をです? っていうか、なぜにいきなり愛の告白?」
「ボクが大魔王を愛することにする」
……
んんー?
「誰が誰を愛すると言いました?」
「ボクが大魔王を愛すると言ったんだ」
……
「……」
「「「……」」」
耳が痛くなるほどの沈黙が過ぎ去ると、皆は叫んだ。
「「「「「えええぇぇえええええー?!?!?」」」」」
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