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三章・いきなりですが冒険編

聖女の愛

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 わたしたちは大魔宮殿を進んで行くと、ふと気になる物を発見した。
 通路の脇にある小さな扉。
 その上には 「大魔王 秘密のお部屋・絶対立ち入り禁止」 と書かれたプレート。
 中隊長さんは首を傾げる。
「なんだ これは?」
 兄貴も怪訝に、
「あからさまに怪しいでござるが」
 わたしは、
「入っちゃいましょう」
 とドアノブに手をかけた。
 入るなと言われれば 入りたくなるのが人間の性。
 鍵も開いておらず、すんなり入れる。


 中は、酷い有様だった。
 ゴミ袋とジャンクフードの山。
「な、なんだぃ? ヒドい部屋だヨ」
 王子もドン引き。
 わたしは適当に物色するが、食べ物のは全て体に悪いスナック菓子やケーキの類いばかり。
 飲み物も砂糖とカロリーたっぷりの炭酸飲料とか。
 わたしは大魔王に関する仮説に確信する。
「やっぱり大魔王の正体は……」


 なんて私たちがやっていた頃、魔王と五鬼の戦いは終わっていた。
 魔王たちは無傷。
 しかしチェスの炉歩徒は全て大破。
「ふっ、こんなものだろう」
 余裕の魔王に、五鬼たちが集まる。
 魔鬼が魔王に、
「お怪我は?」
「かすり傷一つも無いわ。これならば、今からでも聖女と大魔王の戦いに参戦できるかもしれんな」
 獣鬼が嬉しそうに、
「なら、もう一暴れできるわけか」
 他の鬼も嬉しそう。


 その時だった。
 周囲に巨大な魔方陣が出現。
 中心にいた魔王たちを包み込む。
「なんだ!?」
 そして魔方陣内部で物凄まじい力の奔流が発生した。
「「「「「うぉおおおおお!!!!!」」」」」
 五鬼たちが力を集約し、力の奔流を押し返す。
 魔王はいらだたしげに、
「おのれ! トラップか! 炉歩徒がやけに弱いと思っていたが、これが狙いだったか!」
 魔鬼が、
「魔王さま! 我々が押し返している間に脱出してくださいませ!」
「しかし おまえたちはどうなる!?」
「兄弟のために死ねるなら本望!」
「ならん! 命を無駄に捨てることなど許さぬ!」
「しかし それでは貴方が!」
「……これを使うぞ」
 魔王は懐からある物を取り出した。
 核爆弾である。
「これで力の奔流と吹き飛ばす。大魔王との戦いで切り札として使うつもりだったが、やむを得まい」
「ですが、上手くいくでしょうか?」
「分からぬ。だが、やるしかない」
 大魔王は核爆弾に力を注ぎ込み始めた。
「いいか、核爆発で力の奔流を吹き飛ばす。魔方陣の効果で核爆発の威力は大幅に抑えられ、聖女たちに被害は出ない。しかし、我々が助かるか否かはタイミング次第。覚悟は良いな」
「「「「「応!!!!!」」」」」


 そして核爆発が起きた。
 力の奔流を押し返し、一瞬静寂が訪れる。
「今だ!!」
 五鬼たちが一斉に散った。
 そして次の瞬間、再び力の奔流が発生した。
 獣鬼が喜ぶ。
「やったぞ。脱出に成功した」
 しかし戦鬼が、
「待て! 魔王さまが!」
 魔王は、
「うぉおおおおお!!」
 まだ魔方陣の中だった。
「しくじった! 核爆発を起こすために力を使ったため、タイミングを逃してしまった」
「「「「「魔王さま!!!!!」」」」」
「俺はもうダメだ! おまえたちは聖女のところへ行け! 聖女と共に大魔王を打ち倒すのだ!」
 しかし五鬼たちは諦めなかった。
 一斉に魔方陣に攻撃を開始した。
 獣鬼が叫ぶ。
「諦めるな! 魔王さま!」
 魔鬼が、
「そうです! 聖女に救われた命を捨ててはなりません!」
「お、おまえたち……」
 そうだ。
 聖女に救われた この命、安易に諦めてはならぬ。
「うぉおおおおお!!!」
 その時だった、魔王の真の力が覚醒した。
 聖女の力によって覚醒した力が、さらなる覚醒を起こした。
 すなわち聖女の力を二重に使った状態。
 力の奔流と共に、魔方陣が消し飛んだ。
 そして凪の如き静寂。
「「「「「魔王さま!?」」」」」
 集まる五鬼に魔王は語る。


「聖女の愛が二度も俺を救ってくれた」


 悪友はわたしに聞く。
「ホントーの所はどうなの?」
「いや、そんなつもりは一ミリもなかったんだけど」
「誤解させちゃって、これからどうすんのよ?」
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