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三章・いきなりですが冒険編

正真正銘

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 ……続き。


 マッチョジジイは若い頃、暗黒竜王と呼ばれた存在と戦っていた。
 当時の聖女に力を覚醒して貰い、聖女と共に暗黒竜王討伐の旅に出た。
 そして旅の途中で、試練の聖殿に挑戦して、魔神から破邪の力を授かった。
 さらに聖女の力を加え、力を二重に使うことも可能となった。
 しかしここで問題が発生した。
 そう、兄貴や中隊長さんたちと同じ問題が起きたのだ。
 武器が些細な事で壊れてしまうのだ。
 そこで、当時 世界一と名高い鍛冶師を訪ね、自分の力に耐えられる武器を特注した。
 その武器を携え、聖女と共に暗黒竜王を倒した。
 その後、マッチョジジイはその時の鍛冶師に弟子入りし、鍛造の道へ入った。
 そして聖女と結婚し、時が流れて、世界一の鍛冶師の賞賛は、マッチョジジイに受け継がれた。


 話を聞いて、わたしは納得した。
「なるほど。つまり、オッサンは捨て子で どっかから拾ってきたんですね」
「なぜにそう言う話になるです?」
 オッサンはなぜか疑問に思っている。
「だって そうとしか考えられないでしょう。英雄と聖女の間に生まれた子なら、こんな まるでダメなオッサンになったりしませんよ。四十歳すぎて未だに童貞なんてあり得ません」
「シクシク。ヒドいです」
 マッチョジジイは不機嫌な表情で、
「残念ながら、正真正銘、俺の実の息子だ」
「なるほど。つまり 血は繋がっていなくても、心は繋がっていると。わたし、感動しましたわ」
「おまえ ホントに聖女か? 喧嘩 売ってるようにしか聞こえねえぞ」
「スンマセン。現実を認めたくないんです。わたしも聖女ですし、わたしからもオッサンみたいなのが生まれる可能性を全力で否定したいというかなんというか」
「まあ、その気持ちは分かるが」
 オッサンがますます泣きだした。
「シクシク。父さんまでヒドいです」


 ともあれ問題は解決したのだ。
 みんな気分が高揚した時だった。
 ピリリリリリ……
 わたしの携帯電話がなった。
「あ、すみません。マナーモードにするの忘れてました」
 賢姫さまが、
「どなたからですか?」
「えっとですね……」
 通知を見ると、
「精霊将軍からです!」
「すぐに出てください! スピーカーにして!」
「はい!」
 そして通話状態にすると、聞こえて来たのは、
「聖女よ。やはり電話にでたな」
 大魔王の声だった。
「大魔王。精霊将軍の電話からかけていると言うことは、やっぱり精霊将軍は捕まったのですね」
「そうだ。それに魔兵将軍もな」
「人質ですか?」
「ふっ、そんなことをするつもりはない。人質など使わなくとも、おまえたちを倒すことは造作もない。
 いいことを思いついたのだ。真実の愛を拒んだ裏切りども末路を見せてやろう。
 大峡谷と呼ばれる場所がある。そこにある最も広い窪地で、公開処刑を行うことにした。
 日時は三日後の正午。
 助けに来たければ好きにすると良いが、どうなるかは予想できるだろう。
 では 処刑を楽しみにな。
 ハハハハハ!」
 そして電話は切れた。


「完全に罠です」
 精霊将軍と魔兵将くんを助けに行けば、そこには敵が待ち構えている。
「ですが助けに行きます。たとえ罠でも見捨てるわけにはいきません」
 わたしの言葉にみんな決意の眼で答えた。
 わたしは思った。
 死人が出たらこの小説のジャンル変わって、わたしの命の危険が出るからね。


 そして、それぞれ準備に取りかかった。
 マッチョジジイが皆のために急ぎで武器の強化と、ほかのメンバーのためにも武器を造ってくれるとのこと。
 マッチョジジイは嬉しそうに、
「暗黒竜王と戦った時のことを思い出すぜ。あの時、俺は鍛冶師に頭を下げて頼んだもんよ。今度は俺が造る立場になるとはな」
 なんというか、オッサンとは全然違って 実に頼もしい。


 そのオッサンなんだけど、庭園で大魔道士さまと話しているのを、偶然聞いてしまった。
「僕、決心しましたです。魔兵将軍と精霊将軍を助けたら、思い切って聖女さまに僕の気持ちを伝えますです」
「そうか。まあ、頑張れ」
 わたしは決心した。
 告白されそうになったら、その前に即行で断ろう。
 っていうか、いつのまにオッサンそんな気持ちになってたのよ。


 そして王子。
 悩みがあるから相談に乗って欲しいとかで、城の応接間に。
 なんか神妙な雰囲気で、
「実はボクはおかしくなったんだ」
「それはとっくに分かってます。性格 変わりすぎちゃってますし」
「それにはきっかけがあってネ。ボクの可愛い彼のことなんだけど」
「貴方の彼がどうかされたんですか?」
「修道長のモノを咥えていたんだ」
「……は?」
「ボクの童貞を卒業させてあげるからって、そのために白い液体を貯めておくために、我慢プレイだっていって、しばらくお預けされてたんだけど、その間に修道長に調教されていて、気付いたときには性奴隷にされていた。
 ボクは助けようとしたんだけど、彼はボクより修道長のモノのが大きくて気持ちいい。王子は一人寂しくシコシコしててって笑ったんだ。ボクを笑い物にしたんだ」
 って、竜騎将軍に続いて、王子までNTR発生。
 わたしは顔が引きつるのを感じながら、
「そ、そうですか。そのショックで性格が変わってしまったと」
「そうなんだ。ボクはおかしくなってしまった。
 愛しの彼があの変態メタボ親父のモノを咥えているかと思うと、もう、モウ!
 不自然に興奮が止まらなインだ! 想像しただけでイってしまうんダヨー!
 この興奮は一体何なんだ!? 教えてくれ! 知識が豊富で詳しい君なら分かるだろう!」
 わたしは頭を抱えて叫んだ。
「王子がNTR属性になってしまったー!」
 王子は我が意を得たりと言った感じで、
「そうか! この興奮はNTRというのか! ウヒョー! 興奮が止まらなイー!」
 腰をアレな感じで振り出した。
「どうすりゃいいんだよ!? この変態は!」


 と、その時だった。
「何事だ!?」
 中隊長さんが部屋に突入してきた。
 そして 興奮している王子を見て、怒りをあらわにする。
「貴様……やはり そうだったか。彼女をまた陵辱するために近づいたか」
 そして剣を抜いた。
「今この場で斬り捨ててくれる!」
 誤解されておられる。
「いや、待ってください。違うんです。剣をしまってください」
 わたしが慌てて止めると、
「なぜこいつを助けようとするんだ!?」
「いや ホント違うんです。誤解なんです。とりあえず そー言うのじゃないですから」
 王子は中隊長さんに気付かずに腰振りダンスを続けながら、
「ウヒョヒョヒョヒョヒョ! 気持ちイイー!」
 興奮しっぱなしだった。
「やはりそうではないか! まさか君は王子と身体を重ねて情がわいているのか?!」
「んなわけねーですけど、とにかく違いますから」
「オヒーン! ボクちゃん興奮しちゃうヨー!」
「なにが違うと言うんだ!?」
 ああぁー!
 これ どうすりゃ良いんだよ!?


 誤解を解くのに一日中かかったとか。
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