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三章・いきなりですが冒険編
ムンクの叫び状態
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前回のあらすじ。
大魔宮殿にて、かなりヤバい状況なのに逃げられない状態になってるとか。
みんなはとにかく大魔王に向かって必死に戦った。
それは もう頑張った。
でも、気付ばみんなボロボロの状態で満身創痍。
大魔王は無傷。
なんか そんな絶望的な感じ。
どうすりゃいいのよ これ!?
大魔王は愉悦の笑みで、
「ふふふ、中々楽しかったぞ。しかし、そろそろ飽きてきた。もう終わりにするとしよう」
大魔王は両腕を頭上に掲げた。
「私を楽しませてくれた褒美に、我が奥義の一つを持ってして葬ってやろう」
大魔王の掲げた両掌の中心から闇色の輝きが放たれ始めた。
それは周囲の景色を歪ませている。
わたしはオッサンに、
「オ、オッサン。あれってなんですか?」
オッサンは諦めの表情で、
「ブラックホールですね」
「ブ、ブラックホールって、宇宙にある何でも吸い込む穴で、そこに吸い込まれたら二度と出ることができないって言う」
「聖女さまって変なところで博識ですね」
「そんなこと今 褒められたって嬉しくありません! なんか方法はないんですか!?」
「あれくらいの規模なら、強力な遠距離攻撃をすれば一撃くらいなら防げるかも知れないですが」
「強力な遠距離攻撃って、どれくらいの?」
「みなさんが元気いっぱいの時に一斉に全力攻撃するくらいです」
でも みんな膝を付いて立つこともできない状態。
つまり、万事休す。
大魔王は死刑宣告を出す。
「行け。黒い穴」
無限の暗黒が迫ってきた。
マジで終わりなの!?
わたしが内心悲鳴を上げた瞬間、黒い穴が爆散した。
大魔王がわたしたちの後ろを睨み付ける。
「魔王よ、なんのつもりだ?」
振り返ると、魔王と五鬼がいた。
魔王は大魔王を睨み返す。
「説明しなくとも分かるはず。貴方から離れ、聖女に与することにしたまで」
「貴様、私の愛を拒むというのか」
「貴方の話は聞いていた。大魔王よ。貴方の語る真の愛とはそんな物だったのですか。貴方が愛を与えるのではなく、全ての者の愛を貴方に捧げよと」
「そうだ。わたしはこの世で最も美しく強いのだ。よって私自身の愛もまた、私自身にのみ与えるのだ」
「それは真の愛ではない。愛とは惜しみなく与えるもの。捧げることを強要する物ではない!」
「どうやら、おまえには真の愛がなんたるか理解できなかったようだな。ならば、聖女と共に死ぬが良い」
「死ぬのは貴方のほうだ。大魔王」
魔王がドラゴンスレイヤーを構えた。
そして五鬼が力を共鳴させ始めた。
北極大陸上陸部隊を壊滅させた、あの方法。
それなら大魔王にも通じるかも。
魔鬼がわたしたちに小声で囁く。
「聖女よ。そして魔兵将軍。緊急脱出装置を使って大魔宮殿から脱出しなさい」
わたしが答える。
「それは無理なんです。大魔宮殿には結界が張ってあって、中に入ることはできても、外には出られない状態なんです」
「それは分かっています。しかし 共鳴させた五鬼の力を装置に注ぎ込みます。その膨大な力を使えば大魔宮殿の外に出ることはできるでしょう」
魔兵将くんが補足する。
「確かにそれならば、脱出するだけなら可能です。でも、どこに転移するか分かりません。間違いなく皆バラバラになってはぐれることになる」
魔鬼が、
「ですが、満身創痍の貴方たちがこの場にいると、魔王様の足手まといになってしまいます。
竜騎将軍に、外で目印になるものを造っておくように言っておきました。そこへ向かうようにしてください」
わたしは答える。
「わかりました。わたしたちがいても邪魔なだけ見たいですし、とにかく一旦脱出しましょう。ですが、貴方たちはどうなるのですか?」
「我々だけなら脱出できます。それに大魔王に対し勝算がないわけではありません」
「大魔王に勝つ方法があると?」
「少ない可能性ですが」
でも、これで少なくとも魔王達が死んでジャンルの方向性が変わると言うことはなさそうだ。
「さあ、脱出の準備を」
「わ、わかりました」
わたしたちが脱出のために魔兵将くんの周りに集まった。
大魔王はわたしたちが脱出しようとしていることに気付いたみたい。
「なるほど、五鬼の力を使って脱出しようというのか。しかし甘いな」
大魔王がパチンと指を鳴らすと、隠密将軍と執事が動いた。
「私が一人で戦ってやるのはここまでだ」
隠密将軍と執事がわたしたちへ向かってくる。
わたしは疲労困憊のみんなに、
「皆さん! 最後の力を振り絞って時間稼ぎをしてください!」
みんなは残された力を使って戦った。
とにかく五鬼の力がチャージされるまで時間稼ぎをしないと。
そして大魔王には魔王が直接戦っていた。
大魔王は静かな怒りを顔に滲ませながら、
「貴様、私に刃を向けるとは。どうやら本気で私を裏切るようだな」
「当然だ。貴方のような者に愛を捧げたりはしない」
「だが 私に勝てると思っているのか? 貴様と私では力の差は歴然としている」
「やってみなくては分からない」
という感じで戦っているわけなんだけど、確かに力の差がある。
だけど、大魔王は思ったより魔王に苦戦しているみたいで、みんなと戦っていたときほどの圧倒感はない。
魔王は予想していたかのような顔。
「やはりな。勇者達の攻撃を、貴方は全て素手で防御していた。それは造作もなくやっていたように見せかけていたが、その実、体力と魔力を著しく消耗するのだ。
力を消耗した今の貴方と俺の差は、それほど開いているわけではない」
大魔王はかすかに苦渋の表情で沈黙。
そして五鬼達の力が溜まった。
魔兵将軍がみんなに叫ぶ。
「僕の周りに集まって!」
隠密将軍と執事の隙を突いて、みんなが魔兵将軍の周りに集まった。
そして魔鬼が合図をする。
「今です! 魔兵将軍!」
「緊急脱出装置」
作動させようとした瞬間、
「おっと! そうはさせんわい!」
突然 妖術将軍が現れた。
「捕縛魔法!」
魔法でできた蜘蛛の糸が、魔兵将軍と精霊将軍の身体に絡みついて動きを封じた。
わたしはムンクの叫び状態。
「うそー!?」
あと もうちょっとで逃げられたのに!
妖術将軍が大魔王に手を振って、
「大魔王様! この妖術将軍めが裏切り者どもを捕まえてやりましたぞ!」
「よくやった。妖術将軍」
大魔王は賞賛の妖術将軍に声をかけると、魔王に、
「これで聖女どもは逃げられなくなった。遊びは終わりだ。貴様らは私が直々に処刑してやろう」
「……」
魔王は無言で懐に手を入れると、あるものを取り出す。
大魔王は余裕の表情から一転、驚愕をみせた。
「それは核爆弾!」
「そうだ。貴方が妖術将軍に命じて俺に仕掛けさせた物だ。下手に動かない方が良い。俺がこれに力を注げば、即座に核爆発が起きる。大魔宮殿の外でなら問題はなかった。しかし、内部で爆発させればどうなるかな」
「くっ!」
なんか 優位に立ったような感じがするけど、よく考えたら核爆発を起こせば わたしたちもアウトよね。
まさか 魔王の奴、こうなれば死ねばもろともなんて考えてるんじゃ。
魔王は、
「聖女よ、緊急脱出装置を手動で作動させろ」
「え? 逃げて良いんですか?」
「このままでは おまえ達も巻き込まれるぞ」
なんか すぐには爆発させるつもりはないみたい。
「わ、わかりました」
わたしは身動きできない魔兵将くんに聞く。
「手動で作動させるにはどうすればいいの?」
「このボタンを押してください」
魔兵将軍が教えてくれた位置のボタンを、わたしが押そうとすると魔兵将くんは、
「聖女さま、どうか無事でいてください」
「え? う、うん」
なんか変な言い方しているような気がしたけど、わたしは理解できずに そのままボタンを押した。
次の瞬間、わたしは大魔宮殿の外にいた。
でも けっこう大魔宮殿に近い位置だ。
早く離れないと。
遠くに兄貴とオッサンの姿が見えた。
「マイシスター! こっちでござるー!」
「早く来てくださいですー!」
他のメンバーの姿は見えない。
とりあえず、二人のところへ行って、その後、竜騎将軍が造ったという目印へ向かおう。
わたしは二人へ向かって走り出そうとした。
その時だった。
「ふふふ、甘いですよ」
執事がわたしの近くにいた。
「な! なんで?! 大魔宮殿には結界が張ってあって外には出られないんじゃ!?」
「それは貴女たちだけです。わたしは大魔王様の味方ですよ。自由に出入りできるに決まっているではありませんか」
ヤバい。
兄貴たちは遠くだ。
間に合うわけない。
執事は掌をわたしに向けた。
「では、死んでください」
特大の魔法弾がわたしに放たれた。
そして爆発。
兄貴とオッサンが爆発後、その場にすぐに到着したけど、そこには執事の姿も、そしてわたしもいなかった。
ただ爆発のクレーターがあるだけ。
オッサンが恐怖で身体を震わせながら、
「もしかしてですけど、今ので聖女さま死んだとかですか?」
兄貴は叫ぶ。
「そんなわけがござらん! マイシスターが死ぬわけがござらん!」
兄貴の叫びはわたしに届くことなく、虚空へむなしく消えた。
聖女は本当に死んでしまったのか!?
悪友はつまらなそうに言った。
「うん、死んでないのは知ってる。あんた、目の前で生きてるもんね」
「まあ、そうなんだけど。世界も救われて、わたしも死んでないって初めからわかってるのって、盛り上がらないわね」
「この小説で盛り上がったことって、一回でもあったっけ?」
この小説、どうやれば盛り上がるんだろう?
大魔宮殿にて、かなりヤバい状況なのに逃げられない状態になってるとか。
みんなはとにかく大魔王に向かって必死に戦った。
それは もう頑張った。
でも、気付ばみんなボロボロの状態で満身創痍。
大魔王は無傷。
なんか そんな絶望的な感じ。
どうすりゃいいのよ これ!?
大魔王は愉悦の笑みで、
「ふふふ、中々楽しかったぞ。しかし、そろそろ飽きてきた。もう終わりにするとしよう」
大魔王は両腕を頭上に掲げた。
「私を楽しませてくれた褒美に、我が奥義の一つを持ってして葬ってやろう」
大魔王の掲げた両掌の中心から闇色の輝きが放たれ始めた。
それは周囲の景色を歪ませている。
わたしはオッサンに、
「オ、オッサン。あれってなんですか?」
オッサンは諦めの表情で、
「ブラックホールですね」
「ブ、ブラックホールって、宇宙にある何でも吸い込む穴で、そこに吸い込まれたら二度と出ることができないって言う」
「聖女さまって変なところで博識ですね」
「そんなこと今 褒められたって嬉しくありません! なんか方法はないんですか!?」
「あれくらいの規模なら、強力な遠距離攻撃をすれば一撃くらいなら防げるかも知れないですが」
「強力な遠距離攻撃って、どれくらいの?」
「みなさんが元気いっぱいの時に一斉に全力攻撃するくらいです」
でも みんな膝を付いて立つこともできない状態。
つまり、万事休す。
大魔王は死刑宣告を出す。
「行け。黒い穴」
無限の暗黒が迫ってきた。
マジで終わりなの!?
わたしが内心悲鳴を上げた瞬間、黒い穴が爆散した。
大魔王がわたしたちの後ろを睨み付ける。
「魔王よ、なんのつもりだ?」
振り返ると、魔王と五鬼がいた。
魔王は大魔王を睨み返す。
「説明しなくとも分かるはず。貴方から離れ、聖女に与することにしたまで」
「貴様、私の愛を拒むというのか」
「貴方の話は聞いていた。大魔王よ。貴方の語る真の愛とはそんな物だったのですか。貴方が愛を与えるのではなく、全ての者の愛を貴方に捧げよと」
「そうだ。わたしはこの世で最も美しく強いのだ。よって私自身の愛もまた、私自身にのみ与えるのだ」
「それは真の愛ではない。愛とは惜しみなく与えるもの。捧げることを強要する物ではない!」
「どうやら、おまえには真の愛がなんたるか理解できなかったようだな。ならば、聖女と共に死ぬが良い」
「死ぬのは貴方のほうだ。大魔王」
魔王がドラゴンスレイヤーを構えた。
そして五鬼が力を共鳴させ始めた。
北極大陸上陸部隊を壊滅させた、あの方法。
それなら大魔王にも通じるかも。
魔鬼がわたしたちに小声で囁く。
「聖女よ。そして魔兵将軍。緊急脱出装置を使って大魔宮殿から脱出しなさい」
わたしが答える。
「それは無理なんです。大魔宮殿には結界が張ってあって、中に入ることはできても、外には出られない状態なんです」
「それは分かっています。しかし 共鳴させた五鬼の力を装置に注ぎ込みます。その膨大な力を使えば大魔宮殿の外に出ることはできるでしょう」
魔兵将くんが補足する。
「確かにそれならば、脱出するだけなら可能です。でも、どこに転移するか分かりません。間違いなく皆バラバラになってはぐれることになる」
魔鬼が、
「ですが、満身創痍の貴方たちがこの場にいると、魔王様の足手まといになってしまいます。
竜騎将軍に、外で目印になるものを造っておくように言っておきました。そこへ向かうようにしてください」
わたしは答える。
「わかりました。わたしたちがいても邪魔なだけ見たいですし、とにかく一旦脱出しましょう。ですが、貴方たちはどうなるのですか?」
「我々だけなら脱出できます。それに大魔王に対し勝算がないわけではありません」
「大魔王に勝つ方法があると?」
「少ない可能性ですが」
でも、これで少なくとも魔王達が死んでジャンルの方向性が変わると言うことはなさそうだ。
「さあ、脱出の準備を」
「わ、わかりました」
わたしたちが脱出のために魔兵将くんの周りに集まった。
大魔王はわたしたちが脱出しようとしていることに気付いたみたい。
「なるほど、五鬼の力を使って脱出しようというのか。しかし甘いな」
大魔王がパチンと指を鳴らすと、隠密将軍と執事が動いた。
「私が一人で戦ってやるのはここまでだ」
隠密将軍と執事がわたしたちへ向かってくる。
わたしは疲労困憊のみんなに、
「皆さん! 最後の力を振り絞って時間稼ぎをしてください!」
みんなは残された力を使って戦った。
とにかく五鬼の力がチャージされるまで時間稼ぎをしないと。
そして大魔王には魔王が直接戦っていた。
大魔王は静かな怒りを顔に滲ませながら、
「貴様、私に刃を向けるとは。どうやら本気で私を裏切るようだな」
「当然だ。貴方のような者に愛を捧げたりはしない」
「だが 私に勝てると思っているのか? 貴様と私では力の差は歴然としている」
「やってみなくては分からない」
という感じで戦っているわけなんだけど、確かに力の差がある。
だけど、大魔王は思ったより魔王に苦戦しているみたいで、みんなと戦っていたときほどの圧倒感はない。
魔王は予想していたかのような顔。
「やはりな。勇者達の攻撃を、貴方は全て素手で防御していた。それは造作もなくやっていたように見せかけていたが、その実、体力と魔力を著しく消耗するのだ。
力を消耗した今の貴方と俺の差は、それほど開いているわけではない」
大魔王はかすかに苦渋の表情で沈黙。
そして五鬼達の力が溜まった。
魔兵将軍がみんなに叫ぶ。
「僕の周りに集まって!」
隠密将軍と執事の隙を突いて、みんなが魔兵将軍の周りに集まった。
そして魔鬼が合図をする。
「今です! 魔兵将軍!」
「緊急脱出装置」
作動させようとした瞬間、
「おっと! そうはさせんわい!」
突然 妖術将軍が現れた。
「捕縛魔法!」
魔法でできた蜘蛛の糸が、魔兵将軍と精霊将軍の身体に絡みついて動きを封じた。
わたしはムンクの叫び状態。
「うそー!?」
あと もうちょっとで逃げられたのに!
妖術将軍が大魔王に手を振って、
「大魔王様! この妖術将軍めが裏切り者どもを捕まえてやりましたぞ!」
「よくやった。妖術将軍」
大魔王は賞賛の妖術将軍に声をかけると、魔王に、
「これで聖女どもは逃げられなくなった。遊びは終わりだ。貴様らは私が直々に処刑してやろう」
「……」
魔王は無言で懐に手を入れると、あるものを取り出す。
大魔王は余裕の表情から一転、驚愕をみせた。
「それは核爆弾!」
「そうだ。貴方が妖術将軍に命じて俺に仕掛けさせた物だ。下手に動かない方が良い。俺がこれに力を注げば、即座に核爆発が起きる。大魔宮殿の外でなら問題はなかった。しかし、内部で爆発させればどうなるかな」
「くっ!」
なんか 優位に立ったような感じがするけど、よく考えたら核爆発を起こせば わたしたちもアウトよね。
まさか 魔王の奴、こうなれば死ねばもろともなんて考えてるんじゃ。
魔王は、
「聖女よ、緊急脱出装置を手動で作動させろ」
「え? 逃げて良いんですか?」
「このままでは おまえ達も巻き込まれるぞ」
なんか すぐには爆発させるつもりはないみたい。
「わ、わかりました」
わたしは身動きできない魔兵将くんに聞く。
「手動で作動させるにはどうすればいいの?」
「このボタンを押してください」
魔兵将軍が教えてくれた位置のボタンを、わたしが押そうとすると魔兵将くんは、
「聖女さま、どうか無事でいてください」
「え? う、うん」
なんか変な言い方しているような気がしたけど、わたしは理解できずに そのままボタンを押した。
次の瞬間、わたしは大魔宮殿の外にいた。
でも けっこう大魔宮殿に近い位置だ。
早く離れないと。
遠くに兄貴とオッサンの姿が見えた。
「マイシスター! こっちでござるー!」
「早く来てくださいですー!」
他のメンバーの姿は見えない。
とりあえず、二人のところへ行って、その後、竜騎将軍が造ったという目印へ向かおう。
わたしは二人へ向かって走り出そうとした。
その時だった。
「ふふふ、甘いですよ」
執事がわたしの近くにいた。
「な! なんで?! 大魔宮殿には結界が張ってあって外には出られないんじゃ!?」
「それは貴女たちだけです。わたしは大魔王様の味方ですよ。自由に出入りできるに決まっているではありませんか」
ヤバい。
兄貴たちは遠くだ。
間に合うわけない。
執事は掌をわたしに向けた。
「では、死んでください」
特大の魔法弾がわたしに放たれた。
そして爆発。
兄貴とオッサンが爆発後、その場にすぐに到着したけど、そこには執事の姿も、そしてわたしもいなかった。
ただ爆発のクレーターがあるだけ。
オッサンが恐怖で身体を震わせながら、
「もしかしてですけど、今ので聖女さま死んだとかですか?」
兄貴は叫ぶ。
「そんなわけがござらん! マイシスターが死ぬわけがござらん!」
兄貴の叫びはわたしに届くことなく、虚空へむなしく消えた。
聖女は本当に死んでしまったのか!?
悪友はつまらなそうに言った。
「うん、死んでないのは知ってる。あんた、目の前で生きてるもんね」
「まあ、そうなんだけど。世界も救われて、わたしも死んでないって初めからわかってるのって、盛り上がらないわね」
「この小説で盛り上がったことって、一回でもあったっけ?」
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