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三章・いきなりですが冒険編

ギラリと輝いた

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 中隊長さんと兄貴が帰ってきた。
 なんかボロボロになっているけど、魔王以外の敵と戦闘になったのだろうか。
「マイシスター! 愛しの兄の帰還でござるよ!」
 わたしは兄貴を無視して中隊長さんの胸へ。
「中隊長さん、お帰りなさい」
「ただいま、愛しい人よ」
 わたしたちは雰囲気たっぷりに抱きしめ合った。
「フォオオオ! マイシスター!」
 興奮している兄貴を、魔兵将くんがなだめる。
「落ち着いてください、お兄さん。とにかく、お兄さんが無事に戻ってきてくれて、僕は嬉しいです」
「……」
 兄貴はしばらく無言で魔兵将くんを見つめると、
「……今、拙者のことを お兄さん と呼んだでござるか?」
 魔兵将くんは素敵な笑顔で答える。
「はい、お兄さん」
 兄貴の奴、慕われたりして喜ぶわね。
 これで妹離れをしてくれるといいんだけど。
 だけど兄貴は怒りを押し殺した表情で、
「ハッハッハッ。貴殿にお兄さんと呼ばれる筋合いはないでござるよ」
 わたしは兄貴の頭を叩く。
「ちょっと、慕ってくれてるのにそれはないでしょ。可愛がってあげなさい」
 兄貴は頭を抱えて、
「フォオオオオオ! いつの間にかライバルが増えていたでござるー!」
 とか叫びだしたけど、こいつ いったいなに言ってんのよ?


 さて、わたしたちは中隊長さんと兄貴の話を聞いた。
 北極大陸で遭遇した、五体の鬼の姿をした破邪の力を有した造魔。
 魔兵将くんは その正体に心当たりがあるという。
「妖術将軍が造魔の研究をしているという話は、大魔王軍にいたときに聞いていました。
 ですが大魔王は、妖術将軍とは別の者に、破邪の力の研究をさせていると聞いたことがあります。
 邪悪を破壊する力は大魔王にとって脅威。しかし、その力を解析し、自分の戦力に取り込むことができればかなりのものになる。
 じつは僕も以前から破邪の力の研究はしていて、中隊長さんが試練を受ける時にバックアップできたのも、その研究があったからなんです。破邪の力は大魔王達と戦うのに必要でしたから。
 ともかく、これらの情報を合わせて考えれば、大魔王は二つの研究を融合させて、造魔に破邪の力を宿すことに成功したとみるべきでしょう」
 次に賢姫さまが発言する。
「これは敵側に戦力が少なくなってきたために、即席で戦力を増やしたと言うことですわ。
 しかし即席とはいえ侮れない相手です。妖術将軍を一瞬で気絶させるとは。
 ですが作戦に変更はありません。大魔宮殿の正確な位置が判明し、準備も整った今、大魔王を討つ またとないチャンス。明朝、出撃しましょう」
 わたしたちは無言で首肯したのだった。


 その夜、わたしは 城のテレビ電話で冒険者組合の悪友と話をしていた。
「実はさ、冒険者組合で ちょっと問題が発生したみたいなの。あんたの冒険の情報を誰か盗み見したらしいのよ。で、その情報が大魔王関連」
「それ わたしたちに危険はないの?」
「わかんない。見られたのは大魔王の本拠地が北極大陸にあるって情報くらいで、あんたに直接 関わる情報は見てないみたいなんだけど。
 これ、大魔王側の隠密とは考えにくいでしょ。大魔王が大魔王の情報を見てどうすんのよって感じで。
 だけど 人間側だとしても 誰なのかサッパリ。王さまたちは全員知ってる情報だから、抜け駆けして大魔王を倒して功績を手に入れようなんて無理だし」
「じゃあ、誰が なんのために?」
「さっぱりわかんない」
 悪友とそんな話をしていると、魔兵将くんが来た。
「聖女さま。ピストルの点検が終わりました。問題はありません。決戦で故障することはないはずです」
 悪友の眼がギラリと輝いた。
「ちょっと! 後ろにいる少年くんは誰なの!? 紹介しなさい!」
 魔兵将くんは画面の悪友に無垢な笑顔で、
「初めまして。聖女さまのご友人ですね。僕は以前 大魔王軍の魔兵将軍をしていた……」
 悪友は慈しみの笑顔で、
「きみが噂の魔兵将軍なのぉ。よろしくねぇん」
 その笑顔の裏にはゲスな欲望がありありと見えた。
 こいつ、魔兵将くんに目を付けやがった。
 早いとこ魔兵将くんを退室させないと
「あの、魔兵将くん、ピストルの点検 ありがとう。わたしたちは大事な話があるから、外してくれるかしら。オホホホ」
 魔兵将くんは疑いもせずに、
「わかりました、聖女さま。明日は出発です。あまり夜更かししないようにしてくださいね」
「わかってるわ」
 そして魔兵将くんが退室すると、悪友は抗議し始めた。
「ちょっと! なんで帰らせちゃったのよ! お姉さんが友達になってあげようとしたのに!」
「だから帰らせたのよ。あんたの毒牙にかかるまえに」
「人聞きの悪いこと言わないでよ! 愛を教えてあげるのよ!」


 なんてやってると、今度は姫騎士さんがやって来た。
「おーい、ちょっと話があるのだが」
「どうしました?」
「実は おまえが描いているという、マンガというものを入手したのだが」
「あ、それ この国でも出版されてるんですね」
「このマンガについてもっと詳しく知りたくてな。こういうデフォルメされた絵などの技術はどこで学べばよいのだ?」
「半分は絵画教室。半分は独学で」
「なるほど。やはり マンガを描くには そうするしかないか」
「って、マンガを描くつもりなんですか?」
「うむ。戦いが終わった後 描こうと思ってな。真の兄弟愛を世界中に伝えるのに良い手法だと思うのだ」
 どうしよう。
 姫騎士さんが世界初のBLマンガ家になろうとしておられる。


 なんて頃、オッサンは大魔道士さまから究極奥義を教わっていた。
 どんな物質も破壊する、究極破壊魔法だとか。
 その あまりの威力に、大魔道士さまは使用を自ら封印し、弟子にも教えていなかったそう。
 だけど、これからオッサンが大魔王との決戦に向かうわけだから、さすがに教えないわけにはいかないだろうと思って教えることにした。
 さて、究極奥義なのだから 当然 修得するのは難しいはずだった。
 なのに オッサンあっさり修得。
「おヌシ、マジで天才なのに、どうして そう臆病なのじゃ」
 大魔道士さまは逆にあきれてしまう。
「怖いものは怖いです」
「まあ、おまえなら間違った使い方をすることはなさそうじゃが」


 その頃、竜の祠にいる竜騎将軍のところに執事が来たのだった。
 執事はナイフを手に、奇妙なまでに友好的な微笑を浮かべていた。
「大魔王さまからの命令です。貴方を始末せよ。よって命を頂戴します」
 竜騎将軍は落ち着いて、
「俺は大魔王軍から離れた。しかし 大魔王の邪魔もしない」
「いいえ、貴方は大魔王さまの愛を拒絶した。それは死に値するとのことです」
「拒否しただけで殺すだと。あの男にとって愛とはなんなのだ?」
「大魔王さまの愛。それは……」
 竜騎将軍の問いに、執事は大魔王の愛の意味を説明した。
 それを聞いた竜騎将軍は憤怒した。
「あの男の愛とは そんな物だったのか!」
 執事は不敵な笑みで、
「答えを聞いて納得できましたか。では、死んでいただきましょう」
 次の瞬間、首が刎ねられたのは執事だった。
 竜騎将軍はとてつもない早抜きで執事の首を切り落とし、そして剣を納めると決意の表情で呟いた。
「大魔王。俺が止めてみせる」


 マジでシリアスな感じで続く……
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