悪役令嬢に転生した18禁同人誌作家は破滅を回避するために奮闘する

神泉灯

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三章・いきなりですが冒険編

どうでも良い

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「で、魔兵将くんは隠密将軍を圧倒したわけなんだけど……」
「隠密兵軍団が問題だったわけね」
「そうなの。魔兵将くんは隠密将軍 一人に手が一杯で、さすがに他の隠密兵軍団まで相手にする余裕までなかったの。
 でも、そこに現れたのが 中隊長さんたち」


 魔兵将くんが戦っている間、隠密兵軍団との戦況報告が来た。
 やはり、身体能力を増強した隠密兵軍団に、兵士たちが倒されてイっているとのこと。
 そこに新しい報告が。
「報告します! 勇者さまたちが参戦しました!」
 やった。
 武器が完成したんだ。
 魔兵将くんが喜びの表情で、
「お兄さんが来たくれたんですね!」
 わたしは首を傾げて、
「お兄さん?」
 なぜに童貞オタク兄貴のことをお兄さんと呼ぶ?
 魔兵将くんはテレくさそうに、
「あ、いえ、実は前から そう呼びたくて」
 まさか、童貞オタク兄貴に姫騎士さんが喜びそうな感情を持ち始めているのでは。
 お父さまと その寸前まで行くくらい仲良しだし。
 それは後で確認するとして、聖なる戦士たちは隠密兵軍団を倒していく。
 その活躍たるや すさまじいもので、新しい武器の威力は……


「待ちなさい」
 悪友が話を遮る。
「そこはどうでも良いわ。魔兵将くんの話をして」
「ちょっと、中隊長さんたちの活躍を説明しないと読者ががっかりするでしょ」
「わたしが興味ないのよ。興味があるのは魔兵将くんなの。さあ、魔兵将くんの活躍を話しなさい」
 ったく、このショタコンは。
 しかたないわね。


 隠密兵軍団の心配がなくなった魔兵将くんは、隠密将軍に集中することが出来た。
 隠密将軍が焦りの声で、
「時間稼ぎもここまでが限界か」
 時間稼ぎ?
 わたしが疑問に思ったその時、魔兵将くんが隠密将軍の顔に一撃を入れた。
 その攻撃でドクロの仮面が割れて、その顔が表れた。
 若くて物凄い美女だった。
 あまりの美しさに背筋に鳥肌が立ったくらい。
 魔兵将くんが その顔を見て怪訝に呟いた。
「え? 大魔王と同じ顔?」
 隠密将軍は怒りの声で、
「おのれ! よくも私の顔を見たな! 誰にも知られてはならぬ私の顔を!
 作戦も完遂できなかった。せめて、大魔王様への忠義の証として、貴様らだけでも始末しなくては」


「おやめなさい」
 その時、執事が現れた。
 聖王国で挨拶に来た、大魔王の執事をしている、悪魔。
 執事は隠密将軍に微笑んで、
「隠密将軍。大魔王様からの命令です。撤退せよとのこと。
 作戦は完遂できませんでしたが、目的は達成できました。それでよしとするとのことです」
「しかし、私の顔を見られたからには、こいつらを始末しなくては」
「大魔王の命令は絶対です。それに、もし貴方が倒されることとなったら、どんな事態になると思っているのですか」
「……くっ」
 隠密将軍は苦渋の表情だったが、
「わかった」
 そして、その姿がおぼろに揺らめいたかと思うと、幻のように消えたのだった。
 執事も一礼し、
「では、私も失礼いたします」
 そして影に溶け込むように姿が消えた。


 会議室に静寂が訪れた。
 隠密兵軍団も撤退したとの報告が上がってきた。
 しばらくすれば中隊長さんたちもここに来るだろう。
 わたしは魔兵将くんに確認する。
「ねえ、さっき隠密将軍の顔を見て、大魔王と同じ顔って言ってたけど?」
「はい。実は隠密将軍はいつも仮面で顔を隠していて、誰も素顔を知らないんです。将軍だった僕たちでさえ。
 だから初めて隠密将軍の素顔を見たんですけど、本当に大魔王にすごく似ていました。大魔王は綺麗な女性なのですが……」
「ちょっと待って。大魔王のことを女性って言った?」
「え? はい、女性と言いました。僕、なにかおかしなことを言いましたか?」
 なんとなく察してたけど、魔兵将くん、大魔王が男だって気付いてないんだ。
 そういえば、今まで確認してなかったけど、魔兵将くんって大魔王にお手つきにされているのかどうか?
「ところで魔兵将くん、大魔王に触られたこととかってある?」
 魔兵将くんの返答次第で、大魔王の処分が決まる!
「いいえ。父さんの敵の一人です。正直、会うときに自分の感情を抑えるので精一杯で、触れられていたら感情を抑えられなかったと思います」
「そうなんだ。良かった」
 ホントーに良かった。
 魔兵将くんは綺麗な体。


 悪友は欲望まみれの笑みでよだれを垂らしながら、
「そうなの。やっぱり魔兵将くんは童貞なんだ。ぐへへへ……」
 うん。
 こうなると思った。


 わたしは魔兵将くんと話を続けて、
「それで、隠密将軍と大魔王の顔って、そんなに似てるの?」
「瓜二つです。一瞬 同一人物かと思いました。でも、雰囲気って言うのかな、そういうのが全然違いました。だから別人だとは思うんですけど」
「なんらかの関係があるのは確かね」
 兄妹とか従兄妹といった、血縁関係があるのか。
 それとも、別の何か。
 でも、顔を隠しておく意味って、なんだろう?
 血縁関係があるって言う程度で、顔を隠しておく必要なんてない。
 いったいなんの意味が?


 そんな話をしている内に兄貴たちが来た。
「マイシスター! 見てくだされ! 新しい逆刃刀でござる!」
「フン!」
 わたしは即座にボディブロー。
「この童貞クソバカアホ兄貴! なんで不殺ころさずの剣なのよ! マンガと現実の区別つけろって言ってるでしょ!」


 それはともかくとして、わたしたちは話し合う。
 賢姫さまが分析する。
「北の国に大魔王軍が攻めてきたと言うことは、私たちが連合軍を編成しようとしていることを察知されたと言うことですわ。
 早く大魔宮殿へ攻めないと、なんらかの対処を打たれてしまうかも知れません」
 中隊長さんが腕組みして思案する。
「しかし、精霊将軍が大魔宮殿を見つけない限り、攻め入ることが出来ない。報告が間に合うだろうか」
 姫騎士さんが提案する。
「精霊将軍だけに任せず、こちらもなんらかの手を打つべきかもしれん」
 兄貴が困ったように、
「しかし手がかりがないでござるよ。精霊将軍はある程度の見当は付けていたようでござるが、拙者たちはなんの情報もござらぬ。動きようがないでござる」
 手詰まりか。
 そこにオッサンが手を上げた。
「あの、実はですね、どさくさに紛れてですね、隠密将軍に発信器を付けたのですが」
「「「「「え!!!!!」」」」」
 みんなオッサンに驚愕の眼を向けた。
「なぜにそんなに驚いているですか?」
 わたしはオッサンの肩を掴んで揺さぶる。
「しっかりしてください オッサン! 体の具合が悪いなら早く言ってください! それとも脳をやられたんですか!? オー・ノウ!」
「あの、なぜに急に僕の心配をするですか?」
「ここんところマジでオッサンが役に立ってるんです! 連続でですよ! そんなこと天地がひっくり返ってもあり得ないのに! オッサンがおかしくなったからに違いありません!」
「シクシク、酷いです」


 わたしたちが落ち着くのに 時間がかかったとか。


 そして発信器の信号を頼りに隠密将軍の追跡を開始することになった。
 これで大魔宮殿の場所が分かるかも知れない。
 ただ、大人数で行くと気付かれてしまう可能性が高くなるので、少人数で。
 行くのは 中隊長さん、兄貴、オッサン。
 残りは北の国に残り、作戦会議を続けることに。
 中隊長さんはわたしに、
「必ず大魔宮殿を発見してみせる」
「必ず無事に戻ってきてください。ホッペにチュ」
「フォオオオ! マイシスター!」
 相変わらず うっさい兄貴に、賢姫さまが、
「では 勇者さまには わたくしが ホッペにチュを」
「行ってくるでござるよ」
 兄貴は急に冷静になって逃げた。


 こうして三人は大魔宮殿 探索へ向かった。


 続く……
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