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三章・いきなりですが冒険編
お菜穂
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童貞オタク兄貴が担当している魔方陣にて。
隠密将軍も単独だったけど、魔王も単独で待ち構えていた。
油断なく勇者を睨み付け、
「俺は大魔王さまの不信を買ってしまった。
大魔王さまは言われた。信頼を取り戻したければ、誰の力も借りずに、一人で勇者を倒せと。
そのために妖術将軍の策を使った。
この場で必ず貴様を倒し、大魔王さまの信頼を取り返してみせる」
大魔王はローブを剥ぎ取り、ボディビルダーみたいな筋肉質の体を見せつける。
「大魔王さまの愛をお尻に受け、さらに一皮剥けた俺の力を見せてやろう!」
勇者は静かに構えた。
「ならば こちらは、一皮剥けた拙者を披露するでござる」
凪の静寂を思わせる、勇者の落ち着きに、魔王は動揺する。
「なに!? まさか貴様 童貞卒業したというか?!
いや、その清らかさは童貞特有の物。童貞卒業したわけではない。
しかし、以前とは明らかに雰囲気が違う。
なんだ これは? この異様な雰囲気はなんだ?!」
「教えて進ぜよう。拙者は、お菜穂で抜いたのでござる!」
「な!? なんだと!? お菜穂で抜いただと?!
貴様にはプライドがないのか! 自分の手で抜くならまだしも、お菜穂でシコるとは! それは、なんか、負けた気分にならないのか!?」
「愛しのマイシスターが筆下ろしをしてくださらないので、とうとう誘惑に負けてしまい、妹のアソコという商品名のお菜穂を購入してしまったでござる。
そして結論を言おう。なぜに拙者はもっと早くお菜穂に手を出さなかったのかと後悔するほどでござった。
その素晴らしさは自分の右手を遙かに凌駕する物だったのでござる。
そしてマイシスターに筆下ろししてもらうのを想像しながらお菜穂で一晩中。拙者 十八回も抜いてしまったでござる」
「じゅ、十八回!? 作り物の穴が そこまでイイと言うのか!」
「今の拙者はマイシスターに筆下ろしして貰うときの練習を十分し、そして心構えもできたでござる。
あとは 魔王よ、貴殿を倒してマイシスターに認めて貰うだけ。
そのために、拙者は鬼となる!」
そして 変態童貞キモオタアホ兄貴は雷電白虎に変身した。
魔王はそれに応えるように闘気を放出する。
「いいだろう、勇者。一度はこの俺を倒した者。その力、侮ってはおらぬ。俺の全力を持って貴様を倒す!
そして大魔王さまの愛を取り戻し 本物の穴で抜いて貰うのだ!」
「いざ」
「尋常に」
「「勝負!!」」
悪友はなんとも言えない顔で、
「お兄さんと魔王ってさ、実は仲良いんじゃない?」
「わたしも時々そう思う」
そして魔兵将くんがハテナマークでも頭に浮かんでそうな表情で、
「あの、僕には話の内容が理解できないのですが。まず、お菜穂ってなんですか?」
わたしは、
「理解しちゃダメ。それはダメ男が手を出す物だから」
そして悪友が、
「そうよぉん。必要なときはお姉さんがしてあげるからぁん」
「あんたも余計なこと吹き込まないで」
魔王と変態勇者の闘いが始まろうとした瞬間、ちょうど駆けつけた魔兵将くんが、炉歩徒の攻撃で魔方陣を破壊した。
「勇者さま!」
「おお! 魔兵将軍殿ではござらぬか! 無事でござったか!」
「はい! 精霊将軍に助けられたんです!」
「精霊将軍殿が!」
「勇者さま。聖女さまのほうも魔方陣破壊に成功して、宮殿へ向かいました。
中隊長さんと姫騎士さまの所には、父と精霊将軍が援軍に行きました。
貴方は今すぐ宮殿へ向かってください。魔王は僕が引き受けます」
「しかし、貴殿 一人では……」
「勇者さま、僕 一人でやらせてください。魔王は僕の手で倒します。大丈夫。勝算もなしにこんなこと言ったりしません」
勇者は一呼吸 黙考して、
「……分かったでござる。魔王は譲るござるよ」
そして宮殿に向かった。
「待て! 勇者! 逃げるつもりか!」
魔王はその後を追いかけようとしたが、
「貴様の相手は僕だ」
炉歩徒に乗った魔兵将軍が立ちはだかる。
魔王は睨み付ける。
「人間の小僧 如きが俺を倒せると思っているのか!?」
「倒してみせる!」
怒りの魔王は両腕から小剣を生やした。
「俺と勇者との闘いを邪魔した罪は重い。じわじわと なぶり殺しにしてくれる」
魔兵将軍は炉歩徒で巨大な盾を構えた。
「僕を欺き、父を苦しめた罪、ここで償わせてやる」
そして闘いが始まった。
先手は魔王から。
「双魔剣衝撃斬!」
腕から直接 生えている二つの小剣から、刃状の衝撃波が繰り出される。
しかし魔兵将軍は炉歩徒の防御兵器を起動させた。
「大気微振動防御システム起動」
空気の微振動が、衝撃波をかき消した。
「ぬぅっ! ならばこれはどうだ!?
双魔剣打突撃!」
魔王は突進して、二本の小剣に衝撃波をまとわせ、同時に炉歩徒へ突き出す。
「微振動シールド」
魔兵将軍は巨大な盾でその攻撃を受け止める。
魔王の攻撃はとてつもない威力のはずなのに、なんの音もせずに受け止められる。
魔兵将軍は冷淡に、
「魔王よ。おまえの得意とする衝撃波の攻撃への対処法は、すでに考案立証している。おまえの攻撃は通じない」
魔王は戦く。
「この魔法兵の強さ。即席で造ったわけではないな。何年も前から研究し準備していなければ造れぬ。
貴様! 俺と戦うことを以前から考えていたな!?」
魔兵将軍は当然のように、
「僕が魔物に世界を売り渡すと本気で思っていたのか。勇者さまを倒した後は、父を死なせた無能な魔王、おまえを倒すつもりだった。そして おまえを蘇らせた大魔王もだ」
「貴様ぁ! 初めから大魔王様を裏切るつもりだったか!」
「裏切るもなにもない。僕は最初からおまえを利用していただけだ。おまえ自身、僕を利用していただけのはず。そして、それは大魔王も同じ」
「大魔王様は愛に満ちた世界を創られようとしているのだ! その世界には 貴様も含まれているのだぞ!」
「いいや。大魔王は おまえが僕を騙していたことを知っていたはずだが、黙っていた。僕が父を愛する心を利用していた。そんな者の愛など偽りだ!」
「黙れ! 貴様らには大魔王様の高尚な理念理想が理解できぬのだ! 大魔王様の愛を理解できぬ愚か者は俺が引導を渡してくれる!」
魔王は闘気を噴出させた。
同時に肉体が変異していく。
魔兵将軍は驚く。
「なに!? なんだ その変化は!? データにない!」
「部下に己の手の内を全て見せびらかすような俺ではないわ。大魔王様から力を与えられ、大きくレベルアップした俺の真の力を見せてやろう」
魔王の体が一回り大きくなり、特に右腕が大きく膨れ上がり三つの巨大な爪が生えた。
「三魔大爪! これが大魔王様からいただいた力! そして本来ならば勇者に使うはずだった奥の手だ!」
魔王は魔兵将軍に向けて三本の爪を繰り出した。
魔兵将軍はそれを微振動シールドで受け止めたが、しかし紙切れのように切り裂かれる。
「なに!?」
「これが大魔王様から授かった力だ!」
魔兵将軍は慌てて攻撃兵器を起動。
「自動照準機関銃起動! 自動追尾ミサイル起動! レーザー銃起動!」
魔兵将軍は出し惜しみできる相手ではないと判断し、可能な限りの兵器を同時に使った。
しかし、
「三魔聖剣!」
魔王はそれらの攻撃を、三本の爪から繰り出す魔法の斬撃で全て撃墜した。
「ふははは! 素晴らしい! 感謝します 大魔王様! 俺は今
確信しました! この力ならば勇者を必ず倒せると!」
魔兵将軍は慄然とする。
「まずい。ここで魔王を倒さないと、勇者さまが」
「勇者のことより、自分の心配をしたらどうだ。貴様は今、俺と戦っているのだぞ」
魔王は言いつつ魔兵将軍に攻撃を繰り出す。
三本の爪が、炉歩徒の装甲をたやすく切り裂いていく。
「特殊金属の装甲がこんなアッサリと!?」
「いくら特別でも、所詮はただの金属。力の入っていない物質など、大魔王様からいただいた力ならば簡単に破壊できる!」
魔王はどんどん炉歩徒にダメージを与えていき、そして炉歩徒の二本の足を破壊した。
この状態では、もう移動は不可能。
魔王は不敵な笑みで爪を掲げた。
「魔兵将軍。俺に奥の手を出させたのは褒めてやる。だが ここまでだ。今とどめを刺してやるぞ」
魔王は勝利を確信し、三本の爪を振り下ろそうとした。
その時、魔兵将軍は、
「最大出力!」
大気微振動発生装置の出力を最大限にした。
「ぬう!?」
その防御に遮られ、魔王は爪を振り下ろすことができなくなる。
しかし魔王は慌てなかった。
「なんのつもりだ? いくら防御兵器で防いだとしても、いつかエネルギー切れを起こす。その瞬間が おまえの処刑の時間だ。無駄な悪あがきなどせず、潔く死を受け入れろ!」
魔兵将軍は魔王の言葉を無視して、炉歩徒の操作に集中していた。
「頼む。上手くいってくれ」
魔兵将軍はあることを狙っていた。
そして それは成功した。
「全兵器暴走開始!」
「なに!?」
全ての兵器が同時に暴走を開始し、魔王を攻撃し始めた。
それを魔王は三本の爪で防御しているが、しかし、
「き、貴様!? 自爆するつもりか?!」
そう、全ての兵器を暴走させれば、炉歩徒が過負荷に耐えきれずに爆発する。
近距離で爆発を起こせば、魔王もただではすまない。
「ちぃっ!」
魔王は危険と判断し、退避しようとした。
しかし炉歩徒の両腕から放たれたワイヤーが魔王を捕らえた。
「は! 放せ!」
「放すもんか! おまえはここで終わりだ!」
「分かっているのか! 貴様も死ぬのだぞ!」
「それぐらい覚悟の上だ!」
「や、やめろぉおおお!!」
炉歩徒が大爆発した。
「魔王と戦った場所は、爆発とその余波で破壊されていました。
その光景を少し離れた場所から、僕は安堵の気持ちで眺めていました。
僕は死ぬつもりはありませんでした。
この時の闘いで使った炉歩徒には、転移魔法による緊急脱出装置を組み込んでおいたんです。
魔王城で聖女さまが脱出するのに使った、マーキングによる転移魔法と原理は同じです。
勇者さまのところへ行く前に、少し離れた場所にマーキングをしておいたんですよ。
そして炉歩徒の爆発 直前 脱出したわけです。
転移魔法で脱出できるから、暴走させることを思いつくことができたんです」
魔兵将くんってホント頭良い。
わたしは ただ感心する。
「ただ、炉歩徒を失ってしまったので、聖女さまと獣士将軍の闘いに参戦できなくなってしまったのが残念でした」
「いいのよ、そんなこと。魔王を倒しただけでもすごいんだから。もう、魔兵将くん、格好いいー」
頭なでなで。
「はわわわ」
そして悪友は、
「格好いいぃーん。素敵ぃーん。可愛いぃーん」
抱きしめてほっぺたスリスリ。
「はわわわわわ」
魔王に勝利した魔兵将軍。
獣士将軍が待ち受ける宮殿に向かう聖女たち。
賢姫の呪いを解くことはできるのか?!
少年マンガのノリで続く!
隠密将軍も単独だったけど、魔王も単独で待ち構えていた。
油断なく勇者を睨み付け、
「俺は大魔王さまの不信を買ってしまった。
大魔王さまは言われた。信頼を取り戻したければ、誰の力も借りずに、一人で勇者を倒せと。
そのために妖術将軍の策を使った。
この場で必ず貴様を倒し、大魔王さまの信頼を取り返してみせる」
大魔王はローブを剥ぎ取り、ボディビルダーみたいな筋肉質の体を見せつける。
「大魔王さまの愛をお尻に受け、さらに一皮剥けた俺の力を見せてやろう!」
勇者は静かに構えた。
「ならば こちらは、一皮剥けた拙者を披露するでござる」
凪の静寂を思わせる、勇者の落ち着きに、魔王は動揺する。
「なに!? まさか貴様 童貞卒業したというか?!
いや、その清らかさは童貞特有の物。童貞卒業したわけではない。
しかし、以前とは明らかに雰囲気が違う。
なんだ これは? この異様な雰囲気はなんだ?!」
「教えて進ぜよう。拙者は、お菜穂で抜いたのでござる!」
「な!? なんだと!? お菜穂で抜いただと?!
貴様にはプライドがないのか! 自分の手で抜くならまだしも、お菜穂でシコるとは! それは、なんか、負けた気分にならないのか!?」
「愛しのマイシスターが筆下ろしをしてくださらないので、とうとう誘惑に負けてしまい、妹のアソコという商品名のお菜穂を購入してしまったでござる。
そして結論を言おう。なぜに拙者はもっと早くお菜穂に手を出さなかったのかと後悔するほどでござった。
その素晴らしさは自分の右手を遙かに凌駕する物だったのでござる。
そしてマイシスターに筆下ろししてもらうのを想像しながらお菜穂で一晩中。拙者 十八回も抜いてしまったでござる」
「じゅ、十八回!? 作り物の穴が そこまでイイと言うのか!」
「今の拙者はマイシスターに筆下ろしして貰うときの練習を十分し、そして心構えもできたでござる。
あとは 魔王よ、貴殿を倒してマイシスターに認めて貰うだけ。
そのために、拙者は鬼となる!」
そして 変態童貞キモオタアホ兄貴は雷電白虎に変身した。
魔王はそれに応えるように闘気を放出する。
「いいだろう、勇者。一度はこの俺を倒した者。その力、侮ってはおらぬ。俺の全力を持って貴様を倒す!
そして大魔王さまの愛を取り戻し 本物の穴で抜いて貰うのだ!」
「いざ」
「尋常に」
「「勝負!!」」
悪友はなんとも言えない顔で、
「お兄さんと魔王ってさ、実は仲良いんじゃない?」
「わたしも時々そう思う」
そして魔兵将くんがハテナマークでも頭に浮かんでそうな表情で、
「あの、僕には話の内容が理解できないのですが。まず、お菜穂ってなんですか?」
わたしは、
「理解しちゃダメ。それはダメ男が手を出す物だから」
そして悪友が、
「そうよぉん。必要なときはお姉さんがしてあげるからぁん」
「あんたも余計なこと吹き込まないで」
魔王と変態勇者の闘いが始まろうとした瞬間、ちょうど駆けつけた魔兵将くんが、炉歩徒の攻撃で魔方陣を破壊した。
「勇者さま!」
「おお! 魔兵将軍殿ではござらぬか! 無事でござったか!」
「はい! 精霊将軍に助けられたんです!」
「精霊将軍殿が!」
「勇者さま。聖女さまのほうも魔方陣破壊に成功して、宮殿へ向かいました。
中隊長さんと姫騎士さまの所には、父と精霊将軍が援軍に行きました。
貴方は今すぐ宮殿へ向かってください。魔王は僕が引き受けます」
「しかし、貴殿 一人では……」
「勇者さま、僕 一人でやらせてください。魔王は僕の手で倒します。大丈夫。勝算もなしにこんなこと言ったりしません」
勇者は一呼吸 黙考して、
「……分かったでござる。魔王は譲るござるよ」
そして宮殿に向かった。
「待て! 勇者! 逃げるつもりか!」
魔王はその後を追いかけようとしたが、
「貴様の相手は僕だ」
炉歩徒に乗った魔兵将軍が立ちはだかる。
魔王は睨み付ける。
「人間の小僧 如きが俺を倒せると思っているのか!?」
「倒してみせる!」
怒りの魔王は両腕から小剣を生やした。
「俺と勇者との闘いを邪魔した罪は重い。じわじわと なぶり殺しにしてくれる」
魔兵将軍は炉歩徒で巨大な盾を構えた。
「僕を欺き、父を苦しめた罪、ここで償わせてやる」
そして闘いが始まった。
先手は魔王から。
「双魔剣衝撃斬!」
腕から直接 生えている二つの小剣から、刃状の衝撃波が繰り出される。
しかし魔兵将軍は炉歩徒の防御兵器を起動させた。
「大気微振動防御システム起動」
空気の微振動が、衝撃波をかき消した。
「ぬぅっ! ならばこれはどうだ!?
双魔剣打突撃!」
魔王は突進して、二本の小剣に衝撃波をまとわせ、同時に炉歩徒へ突き出す。
「微振動シールド」
魔兵将軍は巨大な盾でその攻撃を受け止める。
魔王の攻撃はとてつもない威力のはずなのに、なんの音もせずに受け止められる。
魔兵将軍は冷淡に、
「魔王よ。おまえの得意とする衝撃波の攻撃への対処法は、すでに考案立証している。おまえの攻撃は通じない」
魔王は戦く。
「この魔法兵の強さ。即席で造ったわけではないな。何年も前から研究し準備していなければ造れぬ。
貴様! 俺と戦うことを以前から考えていたな!?」
魔兵将軍は当然のように、
「僕が魔物に世界を売り渡すと本気で思っていたのか。勇者さまを倒した後は、父を死なせた無能な魔王、おまえを倒すつもりだった。そして おまえを蘇らせた大魔王もだ」
「貴様ぁ! 初めから大魔王様を裏切るつもりだったか!」
「裏切るもなにもない。僕は最初からおまえを利用していただけだ。おまえ自身、僕を利用していただけのはず。そして、それは大魔王も同じ」
「大魔王様は愛に満ちた世界を創られようとしているのだ! その世界には 貴様も含まれているのだぞ!」
「いいや。大魔王は おまえが僕を騙していたことを知っていたはずだが、黙っていた。僕が父を愛する心を利用していた。そんな者の愛など偽りだ!」
「黙れ! 貴様らには大魔王様の高尚な理念理想が理解できぬのだ! 大魔王様の愛を理解できぬ愚か者は俺が引導を渡してくれる!」
魔王は闘気を噴出させた。
同時に肉体が変異していく。
魔兵将軍は驚く。
「なに!? なんだ その変化は!? データにない!」
「部下に己の手の内を全て見せびらかすような俺ではないわ。大魔王様から力を与えられ、大きくレベルアップした俺の真の力を見せてやろう」
魔王の体が一回り大きくなり、特に右腕が大きく膨れ上がり三つの巨大な爪が生えた。
「三魔大爪! これが大魔王様からいただいた力! そして本来ならば勇者に使うはずだった奥の手だ!」
魔王は魔兵将軍に向けて三本の爪を繰り出した。
魔兵将軍はそれを微振動シールドで受け止めたが、しかし紙切れのように切り裂かれる。
「なに!?」
「これが大魔王様から授かった力だ!」
魔兵将軍は慌てて攻撃兵器を起動。
「自動照準機関銃起動! 自動追尾ミサイル起動! レーザー銃起動!」
魔兵将軍は出し惜しみできる相手ではないと判断し、可能な限りの兵器を同時に使った。
しかし、
「三魔聖剣!」
魔王はそれらの攻撃を、三本の爪から繰り出す魔法の斬撃で全て撃墜した。
「ふははは! 素晴らしい! 感謝します 大魔王様! 俺は今
確信しました! この力ならば勇者を必ず倒せると!」
魔兵将軍は慄然とする。
「まずい。ここで魔王を倒さないと、勇者さまが」
「勇者のことより、自分の心配をしたらどうだ。貴様は今、俺と戦っているのだぞ」
魔王は言いつつ魔兵将軍に攻撃を繰り出す。
三本の爪が、炉歩徒の装甲をたやすく切り裂いていく。
「特殊金属の装甲がこんなアッサリと!?」
「いくら特別でも、所詮はただの金属。力の入っていない物質など、大魔王様からいただいた力ならば簡単に破壊できる!」
魔王はどんどん炉歩徒にダメージを与えていき、そして炉歩徒の二本の足を破壊した。
この状態では、もう移動は不可能。
魔王は不敵な笑みで爪を掲げた。
「魔兵将軍。俺に奥の手を出させたのは褒めてやる。だが ここまでだ。今とどめを刺してやるぞ」
魔王は勝利を確信し、三本の爪を振り下ろそうとした。
その時、魔兵将軍は、
「最大出力!」
大気微振動発生装置の出力を最大限にした。
「ぬう!?」
その防御に遮られ、魔王は爪を振り下ろすことができなくなる。
しかし魔王は慌てなかった。
「なんのつもりだ? いくら防御兵器で防いだとしても、いつかエネルギー切れを起こす。その瞬間が おまえの処刑の時間だ。無駄な悪あがきなどせず、潔く死を受け入れろ!」
魔兵将軍は魔王の言葉を無視して、炉歩徒の操作に集中していた。
「頼む。上手くいってくれ」
魔兵将軍はあることを狙っていた。
そして それは成功した。
「全兵器暴走開始!」
「なに!?」
全ての兵器が同時に暴走を開始し、魔王を攻撃し始めた。
それを魔王は三本の爪で防御しているが、しかし、
「き、貴様!? 自爆するつもりか?!」
そう、全ての兵器を暴走させれば、炉歩徒が過負荷に耐えきれずに爆発する。
近距離で爆発を起こせば、魔王もただではすまない。
「ちぃっ!」
魔王は危険と判断し、退避しようとした。
しかし炉歩徒の両腕から放たれたワイヤーが魔王を捕らえた。
「は! 放せ!」
「放すもんか! おまえはここで終わりだ!」
「分かっているのか! 貴様も死ぬのだぞ!」
「それぐらい覚悟の上だ!」
「や、やめろぉおおお!!」
炉歩徒が大爆発した。
「魔王と戦った場所は、爆発とその余波で破壊されていました。
その光景を少し離れた場所から、僕は安堵の気持ちで眺めていました。
僕は死ぬつもりはありませんでした。
この時の闘いで使った炉歩徒には、転移魔法による緊急脱出装置を組み込んでおいたんです。
魔王城で聖女さまが脱出するのに使った、マーキングによる転移魔法と原理は同じです。
勇者さまのところへ行く前に、少し離れた場所にマーキングをしておいたんですよ。
そして炉歩徒の爆発 直前 脱出したわけです。
転移魔法で脱出できるから、暴走させることを思いつくことができたんです」
魔兵将くんってホント頭良い。
わたしは ただ感心する。
「ただ、炉歩徒を失ってしまったので、聖女さまと獣士将軍の闘いに参戦できなくなってしまったのが残念でした」
「いいのよ、そんなこと。魔王を倒しただけでもすごいんだから。もう、魔兵将くん、格好いいー」
頭なでなで。
「はわわわ」
そして悪友は、
「格好いいぃーん。素敵ぃーん。可愛いぃーん」
抱きしめてほっぺたスリスリ。
「はわわわわわ」
魔王に勝利した魔兵将軍。
獣士将軍が待ち受ける宮殿に向かう聖女たち。
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