悪役令嬢に転生した18禁同人誌作家は破滅を回避するために奮闘する

神泉灯

文字の大きさ
上 下
46 / 94
三章・いきなりですが冒険編

素敵なおじさま

しおりを挟む
 魔兵将くんとお父さん、そして精霊将軍が、妖術将軍を睨み付ける。
 魔兵将くんが妖術将軍に、
「大魔王軍の元将軍二人と、魔王軍の元将軍一人。合わせて三人。この戦力に勝てると思うか?」
「うぐぐぐ……」
 妖術将軍は悔しげな表情で、
「撤退じゃ!」
 背中にくくりつけてあったロケットであっという間に逃げた。
 相変わらず逃げ足だけは速い。
 妖術将軍が逃げると 魔物たちも、
「「「妖術将軍さまー! 置いていかないでくださいー!」」」
 みんな逃げていった。
 そして魔兵将くんは わたしに、
「賢姫さまと 大魔道士さまから 話は聞いています。聖女さま、魔方陣を破壊してください」
「わかった」
 わたしは爆弾をセットすると、急いで離れて 起爆。
 チュドーン。
 南の魔方陣は破壊した。
「やった!」
「や、やったです」
 わたしとオッサンは喜ぶ。
 そして魔兵将くんは、
「では 聖女さま。先に賢者の宮殿へ向かってください。僕は勇者さまのところへ向かいます」
 そして精霊将軍は、
「私は姫騎士のところへ向かおう」
 お父さんが、
「私は中隊長殿のところへ」
 こうして三人は、それぞれの所に助けに向かった。


 その姿が見えなくなってから、わたしはオッサンに、
「みんなが来る前に獣士将軍に遭遇すると大変ですから、ゆっくりで行きましょう」
「賛成です」
 作戦、命を大事に。


 中隊長さんが担当している西の魔方陣にて。
 竜騎将軍率いる、竜騎士軍団の精鋭 四竜騎が中隊長さんを取り囲んでいた。
 竜騎将軍はおひげが似合うダンディーな素敵なおじさま。
 ここ重要だから繰り返します。
 竜騎将軍はおひげが似合うダンディーな素敵なおじさまなのだ。
 そのおじさまは中隊長さんに静かに語りかける。
「同じ竜の力を持つ者のよしみで降伏勧告をだそう。
 おとなしく降伏するならば命を助ける。
 だが、あくまで戦うというのならば、死を覚悟せよ」
 中隊長さんは剣を構えて答える。
「おまえも騎士ならば、答えは聞かずとも分かるはずだ」
「ふん。聖女がいなくては竜戦士の力が使えぬはず。にもかかわらず戦いを選ぶとは。それは勇気ではなく、愚行と呼ぶのだ」
 そう言って竜騎将軍が剣に手をかけた瞬間、
「破ぁあああ!」
 中隊長さんは竜戦士の力を発動させた。
「なに?!」
 竜騎将軍は驚愕の声。
「なぜだ!? 聖女の力なしでは竜戦士の力が使えぬはずでは!?」
「いつまでも彼女に頼りっぱなしの俺ではない!」
 種明かしをしよう。
 聖女の力を受けても、その時すぐに力を発揮させなければ、後で自分の意思で発動させることが可能なのだ。
 ようするに聖女の力を一回だけストックしておけるということ。
 作戦開始前に、中隊長さんと姫騎士さんにこの方法で聖女の力を使ったのだ。
 練習は必要だったけど、その甲斐はあった。
 しかし、竜騎将軍の動揺は一呼吸で収まる。
「驚かされたのは確かだが、しかし戦力差は埋まらぬ。
 俺と、竜騎士軍団の精鋭 四竜騎を同時に相手にして、勝利することは不可能だ」
 その時、西の魔方陣にミサイルが直撃し、爆発して破壊された。
「なんだと!?」
 再び動揺する竜騎将軍。
 そして現れたのは、炉歩徒に乗ったお父さん。
「中隊長殿、助太刀します」
 中隊長さんは喜ぶ。
「貴方は! 生きていてくれたか!」
「聖女さまのほうは安心してください。魔方陣は破壊し、すでに賢者の宮殿に向かっています。我々も竜騎士軍団を倒ししだい向かいましょう」
 竜騎将軍は一筋の汗が流れた。
「ぬう……」
 魔兵将軍の父は、かつて魔王の腹心だったという。
 その力は魔王軍の中でもトップ。
 竜戦士とタッグを組めば、その戦力はすさまじいだろう。
 自分が敗北するとは考えられぬが、しかし四竜騎に犠牲が出るのは確実。
 考えている竜騎将軍の耳に、さらに東と北から同時に爆発音が聞こえた。
 中隊長さんは喜んで、
「勇者と姫騎士が成功したんだ」
 竜騎将軍は剣を鞘に収めた。
「ここは引かせて貰う。魔方陣は破壊され、隠密将軍と魔王殿も失敗したとあっては、ここで戦っても無意味」
 中隊長さんは、
「逃げるつもりか!?」
 その問いに竜騎将軍は中隊長さんを睨み付けて返す。
 それだけで、中隊長さんは一瞬 居すくんだ。
 竜騎将軍は、
「どうしても戦いたいというならば相手になってやる。だが、竜の力に覚醒したばかりの小僧の貴様が、俺に勝てると思うか!?」
 竜騎将軍から立ち上る闘気に、中隊長さんは確信してしまった。
 自分とは格が違う。
 そこにお父さんが割って入る。
「貴殿が引くというのならば止めはしません。私としても闘いは避けたいところ」
 竜騎将軍の闘気が収束する。
「では、そうさせてもらう」
 そして竜騎将軍と四竜騎は去って行った。
 中隊長さんは気付くと汗でびっしょりになっていた。
「相対しただけでこうなってしまうとは。情けない」
 お父さんがフォローする。
「しかたありません。竜騎将軍は将軍の中でも最強と言われている。竜戦士の力に覚醒してまだ日が浅い貴方と、百戦錬磨の竜騎士。どちらが上かはハッキリしている。
 今はまだ奴との闘いを避け、経験を積むことを考えてください」
「分かりました」
「さあ、宮殿へ向かいましょう。獣士将軍を倒さなければ」
「はい」


 東の魔方陣にて、姫騎士さんが隠密将軍と戦っていた。
 隠密将軍はドクロの仮面をつけて顔を隠していた。
 そして単独だった。
 だけど 姫騎士さんは、仮面をつけた人物が現れた途端、危険を感じて、見つかるのもかまわずに戦乙女の力を解放した。
 隠密将軍は冷静に、
「いつまでも聖女がいなくては戦えない状態が続くとは考えてはいなかったが、ここまで早く克服するとはな。
 貴様たちは大魔王さまにとって危険だ。ここで始末する」
 姫騎士は、隠密将軍の その冷たい声に、少し動揺する。
 その声は明らかに女だった。
「おまえ、女なのか?」
「不思議なことがあるか? 貴様も女だが戦っているではないか」
 隠密将軍は答えながら、二本の小太刀を繰り出してくる。
 流れるように、しかし鋭く、それでいて舞うように戦う隠密将軍。
 姫騎士さんは戦慄する。
 こいつ、やはり強い。
 それも、真正面から戦うのではなく、虚を突いてくる戦い方。
 力の大きさは自分のほうが上だが、隠密将軍は その力を上手くそらし、回避し、フェイントを巧みに仕掛けて攻撃を繰り出してくる。
 今まで戦ったことのない、やりにくいタイプの戦闘法。
 これでは戦乙女の力も役に立たない。
 このままではやられてしまう。
 その時、無数の風の刃が隠密将軍に放たれた。
「ムッ!?」
 隠密将軍はそれを全て回避すると、風の刃を放った物へ眼を向ける。
 そこにいたのは、不敵な笑みの精霊将軍。
「姫騎士よ、苦戦しているではないか。私が助太刀してやろう」
 姫騎士は喜ぶ。
「精霊将軍!」
 キャラがかぶっていて、端からだと自分と判別しにくい嫌な奴だが、強いことには変わりなく、心強い援軍だ
「魔兵将軍親子だが、私が救出しておいた。安心しろ」
「本当か! あの親子は無事なんだな!」
「ああ。それぞれ援軍に向かっている。我々も さっさと こいつを倒して宮殿に向かうぞ」
 そして精霊将軍は風の上位精霊を召喚し、融合する。
「さて、隠密将軍。今の私の強さはおまえも知っているだろう。そして、まだ 実戦経験の浅い姫騎士と違い、私は多くの闘いを経験してきた。おまえのようなタイプと戦ったことは何度もある。おまえの戦闘法は私には通用しないぞ」
「ムゥ」
 仮面の下の隠密将軍は、苦々しげな声を上げるが、動けないでいた。
 そして その隙に、姫騎士さんは爆弾を魔方陣に投げ、起爆。
 大きな爆発音と共に魔方陣が破壊された。
 姫騎士さんは改めて隠密将軍と向き合い、
「これで闘いに集中できる」
 しかし隠密将軍の姿がおぼろに揺らぎ、気付けばその姿が消えた。
 精霊将軍が、
「どうやら逃げたようだな」
 姫騎士さんは正直安堵した。
 経験の浅い今の自分では、勝てたかどうか不安だったのだ。
 その心中を察したのか、精霊将軍が、
「大丈夫だ。経験さえ積めば解決する問題だ。大魔王軍との戦いで、これから多くの戦闘を経験することになる。次に奴と戦うまでには、おまえは力を使いこなせるほど強くなっているだろうさ」
「そうだと良いのだが」
「さあ、魔方陣は破壊した。宮殿へ向かうぞ。聖女たちはすでに向かっている。我々も急がねば」


 悪友はわたしに、
「みんな格好いいわね。あんたとオッサンだけ情けないんだけど」
「しかたないじゃない。わたし 戦えないんだから」
 わたしが拗ねると、魔兵将くんがフォローしてくれる。
「聖女さまは戦わなくて良いんですよ。危険なことは僕たちが引き受けますから」
「魔兵将くんは良い子ねー。よしよし」
 わたしが頭をなでなで魔兵将くんは照れて頬を赤くする。
「はわわわ。頭なでなでしないでくださいぃ」
 そして悪友が、
「私にもやらせなさいよ。よしよし、良い子 良い子。可愛い 可愛い 可愛いーん! はぁーん!」
「はわわわ」
「それ以上は止めなさい。このショタコン」


 なんかフツーの冒険物になってきたような。
 どうしよう?
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

公爵令嬢を虐げた自称ヒロインの末路

八代奏多
恋愛
 公爵令嬢のレシアはヒロインを自称する伯爵令嬢のセラフィから毎日のように嫌がらせを受けていた。  王子殿下の婚約者はレシアではなく私が相応しいとセラフィは言うが……  ……そんなこと、絶対にさせませんわよ?

(完)なにも死ぬことないでしょう?

青空一夏
恋愛
ジュリエットはイリスィオス・ケビン公爵に一目惚れされて子爵家から嫁いできた美しい娘。イリスィオスは初めこそ優しかったものの、二人の愛人を離れに住まわせるようになった。 悩むジュリエットは悲しみのあまり湖に身を投げて死のうとしたが死にきれず昏睡状態になる。前世を昏睡状態で思い出したジュリエットは自分が日本という国で生きていたことを思い出す。還暦手前まで生きた記憶が不意に蘇ったのだ。 若い頃はいろいろな趣味を持ち、男性からもモテた彼女の名は真理。結婚もし子供も産み、いろいろな経験もしてきた真理は知っている。 『亭主、元気で留守がいい』ということを。 だったらこの状況って超ラッキーだわ♪ イケてるおばさん真理(外見は20代前半のジュリエット)がくりひろげるはちゃめちゃコメディー。 ゆるふわ設定ご都合主義。気分転換にどうぞ。初めはシリアス?ですが、途中からコメディーになります。中世ヨーロッパ風ですが和のテイストも混じり合う異世界。 昭和の懐かしい世界が広がります。懐かしい言葉あり。解説付き。

婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?

こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。 「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」 そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。 【毒を検知しました】 「え?」 私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。 ※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです

【完結】悪役令嬢の反撃の日々

くも
恋愛
「ロゼリア、お茶会の準備はできていますか?」侍女のクラリスが部屋に入ってくる。 「ええ、ありがとう。今日も大勢の方々がいらっしゃるわね。」ロゼリアは微笑みながら答える。その微笑みは氷のように冷たく見えたが、心の中では別の計画を巡らせていた。 お茶会の席で、ロゼリアはいつものように優雅に振る舞い、貴族たちの陰口に耳を傾けた。その時、一人の男性が現れた。彼は王国の第一王子であり、ロゼリアの婚約者でもあるレオンハルトだった。 「ロゼリア、君の美しさは今日も輝いているね。」レオンハルトは優雅に頭を下げる。

妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹に正妻の座を奪われた公爵令嬢マリアは、それでも婚約者を憎むことはなかった。なぜか? 「すまない、マリア。ソフィアを正式な妻として迎え入れることにしたんだ」 「どうぞどうぞ。私は何も気にしませんから……」 マリアは妹のソフィアを祝福した。だが当然、不気味な未来の陰が少しずつ歩み寄っていた。

婚約破棄されたら魔法が解けました

かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」 それは学園の卒業パーティーでのこと。 ……やっぱり、ダメだったんだ。 周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間でもあった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、第一王子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表する。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放。そして、国外へと運ばれている途中に魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。 「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」 あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。 「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」 死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー! ※毎週土曜日の18時+気ままに投稿中 ※プロットなしで書いているので辻褄合わせの為に後から修正することがあります。

悪役令嬢が美形すぎるせいで話が進まない

陽炎氷柱
恋愛
「傾国の美女になってしまったんだが」 デブス系悪役令嬢に生まれた私は、とにかく美しい悪の華になろうとがんばった。賢くて美しい令嬢なら、だとえ断罪されてもまだ未来がある。 そう思って、前世の知識を活用してダイエットに励んだのだが。 いつの間にかパトロンが大量発生していた。 ところでヒロインさん、そんなにハンカチを強く嚙んだら歯並びが悪くなりますよ?

だから言ったでしょう?

わらびもち
恋愛
ロザリンドの夫は職場で若い女性から手製の菓子を貰っている。 その行為がどれだけ妻を傷つけるのか、そしてどれだけ危険なのかを理解しない夫。 ロザリンドはそんな夫に失望したーーー。

処理中です...