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三章・いきなりですが冒険編
金属の歯車方式
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賢者の宮殿から離れ、森の中にある隠れ家のような 大魔道士さまの家に案内された私たち。
大魔道士さまが賢姫さまの様態を見る。
「この様子だと、三日も持たんな。明後日の日没には猫になってしまうじゃろうて」
「そんな……」
このままでは賢姫さまが女王様から猫ちゃんにジョブチェンジ。
そんな賢姫さまは苦しげで弱々しく、童貞オタク兄貴に懇願する。
「勇者さま。わたくしが猫になる前に、一度だけでもイニシャル・エス・エムのプレイを。一度だけわたくしの豚奴隷になって調教を受けてくださいませ」
「なにを言うでござるか。必ず呪いを解くでござる。だから拙者を狙うのは止めていただけぬか」
「ああ、勇者さまの愛を感じますわ」
「いや、イチミリたりとも愛してはおらぬのでござるが」
なんか 賢姫さま、猫になっても大丈夫なんじゃないかなっていうか、たいして変わんないじゃないかな、これ。
わたしは兄貴に、
「とりあえず、このまま賢姫さまが猫ちゃんになったら、兄貴が飼うという方向で」
「拙者は犬派でござるゆえ、断らせていただくでござる。というか、飼うとか そういう話は止めていただけぬか」
賢姫さまは途端 瞳を輝かせた。
「勇者さま! なぜ早く犬派だと言ってくださらなかったのですか!? 犬派と知っていれば豚奴隷ではなくバター犬にして差し上げたものを!」
「こういう話になるから止めて欲しいでござるよ、マイシスター」
「ああ、うん。なんか ごめん」
さて、話が進まないので、さっさと獣士将軍を倒すための作戦会議。
賢姫さまの様子から見て、三日も持たない。
早く獣士将軍を倒す必要がある。
大魔道士さまの解説だと、
「聖封魔方陣は、東西南北に配置された、四つの小さな魔方陣を中核に形成されておる。
まあ ようするに、その四つの魔方陣を全部 破壊すれば、効力は消えるわけじゃ。
ただ、敵さんもそれはわかっておるから、簡単に消せるような魔方陣は作っておらんじゃろう。強力な攻撃で魔方陣を破壊せねばならん。
だから、ほれ、わしの秘蔵の爆弾じゃ」
あからさまに遠隔操作式の爆弾といった物を四つ出した。
「これで中核の魔方陣を破壊すれば良いわけじゃ。
ただし、敵もそれぐらいの事は想定しておるはず。守りを固めておるじゃろうな。
さて、おまえさんたちはどう攻める?」
うーん。
わたしたちがまとまって行動して、一カ所一カ所 破壊するのは効率が悪すぎる。
となれば、わたしが前世で大好きだった、そして残念ながら未完のまま終わってしまったステルスゲーム、金属の歯車方式で作戦を進めるのが良いだろう。
「みなさん。ここは隠密作戦でいきます。
四手に分かれて、敵に見つからずに、こっそり爆弾を仕掛けて魔方陣を破壊する。
いいですね」
みんなは力強く頷いた。
隠密作戦は大人数では逆効果。
少数精鋭で行く。
北には勇者の童貞オタク兄貴。
「マイシスター、拙者 頑張ってくるでござる。ついては、生存フラグを立てるためにも、拙者のファーストキスを受け取ってくださらぬか」
「ちょっと待て。兄貴 二十三回も転生して、エス!イー!エックス! どころか キスもしたこともないの?」
「拙者の初めては全てマイシスターに捧げると誓っているでござる。というわけで ファーストキスを」
「するわけねえだろ」
そして賢姫さまが、
「勇者さまぁん。ならばわたくしが初めてを済ませて差し上げますわぁん」
と、いつのまにか女王さまスタイル。
「ヒィイイイ!」
西には中隊長さん。
「行ってくる。必ず作戦を成功させてみせるよ」
「中隊長さん、成功のおまじないです。
右頬にチュッ。左頬にもチュッ」
「素晴らしいおまじないだ。勇気がわいてくる」
で、変態兄貴が、
「フォオオオ! マイシスター!」
あー、うっさい。
東には姫騎士さん。
「賢姫殿。貴女の勇者への愛はよく伝わってくる。言葉の意味はサッパリわからないが、とにかく愛が伝わってくるのは確かだ。
私たちが必ず獣士将軍を倒し、賢姫殿にかけられた呪いを解いてみせる。
だから 必ず勇者と結ばれるのだ」
賢姫さまは感激する。
「まあ、姫騎士さま。わたくしの愛を応援してくださるなんて、心強いですわ」
勇者は抗議の声を上げる。
「意味をわかっておられぬのに応援しないでくだされ!」
そして南には、わたしとオッサン。
「……」
「……」
わたしとオッサンはしばらく無言で見つめ合っていた。
というか、同じ事を考えてるだろうなと思った。
「聖女さま、同じこと考えてますですか?」
「オッサンこそ、同じこと考えてるでしょう」
そう、お互いの眼が雄弁に語っていた。
ヤバくなったら 賢姫さまを見捨てて 全力で逃げる!
この瞬間、臆病同盟が成立した。
悪友は呆れ返った表情。
「あんたみたいなのを聖女にしたのって、女神の失敗だわ、絶対」
「あんたに言われたくないわよ」
言われたくない相手っているよね。
大魔道士さまが賢姫さまの様態を見る。
「この様子だと、三日も持たんな。明後日の日没には猫になってしまうじゃろうて」
「そんな……」
このままでは賢姫さまが女王様から猫ちゃんにジョブチェンジ。
そんな賢姫さまは苦しげで弱々しく、童貞オタク兄貴に懇願する。
「勇者さま。わたくしが猫になる前に、一度だけでもイニシャル・エス・エムのプレイを。一度だけわたくしの豚奴隷になって調教を受けてくださいませ」
「なにを言うでござるか。必ず呪いを解くでござる。だから拙者を狙うのは止めていただけぬか」
「ああ、勇者さまの愛を感じますわ」
「いや、イチミリたりとも愛してはおらぬのでござるが」
なんか 賢姫さま、猫になっても大丈夫なんじゃないかなっていうか、たいして変わんないじゃないかな、これ。
わたしは兄貴に、
「とりあえず、このまま賢姫さまが猫ちゃんになったら、兄貴が飼うという方向で」
「拙者は犬派でござるゆえ、断らせていただくでござる。というか、飼うとか そういう話は止めていただけぬか」
賢姫さまは途端 瞳を輝かせた。
「勇者さま! なぜ早く犬派だと言ってくださらなかったのですか!? 犬派と知っていれば豚奴隷ではなくバター犬にして差し上げたものを!」
「こういう話になるから止めて欲しいでござるよ、マイシスター」
「ああ、うん。なんか ごめん」
さて、話が進まないので、さっさと獣士将軍を倒すための作戦会議。
賢姫さまの様子から見て、三日も持たない。
早く獣士将軍を倒す必要がある。
大魔道士さまの解説だと、
「聖封魔方陣は、東西南北に配置された、四つの小さな魔方陣を中核に形成されておる。
まあ ようするに、その四つの魔方陣を全部 破壊すれば、効力は消えるわけじゃ。
ただ、敵さんもそれはわかっておるから、簡単に消せるような魔方陣は作っておらんじゃろう。強力な攻撃で魔方陣を破壊せねばならん。
だから、ほれ、わしの秘蔵の爆弾じゃ」
あからさまに遠隔操作式の爆弾といった物を四つ出した。
「これで中核の魔方陣を破壊すれば良いわけじゃ。
ただし、敵もそれぐらいの事は想定しておるはず。守りを固めておるじゃろうな。
さて、おまえさんたちはどう攻める?」
うーん。
わたしたちがまとまって行動して、一カ所一カ所 破壊するのは効率が悪すぎる。
となれば、わたしが前世で大好きだった、そして残念ながら未完のまま終わってしまったステルスゲーム、金属の歯車方式で作戦を進めるのが良いだろう。
「みなさん。ここは隠密作戦でいきます。
四手に分かれて、敵に見つからずに、こっそり爆弾を仕掛けて魔方陣を破壊する。
いいですね」
みんなは力強く頷いた。
隠密作戦は大人数では逆効果。
少数精鋭で行く。
北には勇者の童貞オタク兄貴。
「マイシスター、拙者 頑張ってくるでござる。ついては、生存フラグを立てるためにも、拙者のファーストキスを受け取ってくださらぬか」
「ちょっと待て。兄貴 二十三回も転生して、エス!イー!エックス! どころか キスもしたこともないの?」
「拙者の初めては全てマイシスターに捧げると誓っているでござる。というわけで ファーストキスを」
「するわけねえだろ」
そして賢姫さまが、
「勇者さまぁん。ならばわたくしが初めてを済ませて差し上げますわぁん」
と、いつのまにか女王さまスタイル。
「ヒィイイイ!」
西には中隊長さん。
「行ってくる。必ず作戦を成功させてみせるよ」
「中隊長さん、成功のおまじないです。
右頬にチュッ。左頬にもチュッ」
「素晴らしいおまじないだ。勇気がわいてくる」
で、変態兄貴が、
「フォオオオ! マイシスター!」
あー、うっさい。
東には姫騎士さん。
「賢姫殿。貴女の勇者への愛はよく伝わってくる。言葉の意味はサッパリわからないが、とにかく愛が伝わってくるのは確かだ。
私たちが必ず獣士将軍を倒し、賢姫殿にかけられた呪いを解いてみせる。
だから 必ず勇者と結ばれるのだ」
賢姫さまは感激する。
「まあ、姫騎士さま。わたくしの愛を応援してくださるなんて、心強いですわ」
勇者は抗議の声を上げる。
「意味をわかっておられぬのに応援しないでくだされ!」
そして南には、わたしとオッサン。
「……」
「……」
わたしとオッサンはしばらく無言で見つめ合っていた。
というか、同じ事を考えてるだろうなと思った。
「聖女さま、同じこと考えてますですか?」
「オッサンこそ、同じこと考えてるでしょう」
そう、お互いの眼が雄弁に語っていた。
ヤバくなったら 賢姫さまを見捨てて 全力で逃げる!
この瞬間、臆病同盟が成立した。
悪友は呆れ返った表情。
「あんたみたいなのを聖女にしたのって、女神の失敗だわ、絶対」
「あんたに言われたくないわよ」
言われたくない相手っているよね。
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