悪役令嬢に転生した18禁同人誌作家は破滅を回避するために奮闘する

神泉灯

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三章・いきなりですが冒険編

油断してたけど

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 魔兵将軍親子の感動的なのに感動できない再会を、中断させる者が現れた。
「ゲラゲラゲラゲラゲラ!」
 突然、下品な笑い声が円形闘技場に響いた。
 その笑い声へわたしたちは視線を向けると、そこにはライオンの頭をした獣人がいた。
 魔兵将くんは驚く。
「おまえは獣戦士軍団の獣士将軍!」
 獣士将軍は不愉快な笑みで、
「あーあ、とうとうバレちまったな。魔王様の大嘘が」
「おまえは知っていたのか!?」
「知ってぜ。魔王様から聞かされていた。
 おい クソガキ。死んだと思ってた大好きなパパが生きてたって事を知って嬉しいか?
 だが、真実を知ったからには生かしておくわけにはいかねえ。真実を知ったら殺せと魔王様から指示が出てるんでな。だからおまえをここで処分する。聖女どもと一緒にな。
 残念だったなー。パパに甘えることができなくなって。
 ま、パパと一緒に死ねるんだから嬉しいだろ。
 じゃ、死んでくれや」
 獣士将軍が指をパチンッとならすと、魔獣に騎乗した百人以上の獣人が、客席に一斉に現れ、わたしたちを囲んだ。
 この数、ヤバいんじゃ。
 それを肯定するように兄貴が、
「まずいでござる。魔兵将軍殿との戦いで、拙者たち かなり疲労しているでござる。勝ち目がなさそうな感じでござる」
 獣士将軍は不愉快な笑い声を上げる。
「ゲラゲラゲラゲラゲラ!
 感じじゃねえよ! ねえんだよ! ゼロだ! テメェらに勝ち目なんざ1パーセントもねえんだよ!
 なんせバカ正直に戦いを挑むわけじゃねぇんだ!
 客席から魔獣が一斉にブレス攻撃するだけなんだからな!」
 ブレス。
 竜が口から火炎を吐くのが有名だけど、同じ攻撃手段を持つ魔獣は他にも居る。
 つまり、今 客席にいる百体以上の魔獣は、みんなブレス攻撃できるということで、と言うことは、そんな圧倒的火力で攻撃されたら、逃げることも、防ぐこともできないわけで……
 ア、アレ?
 これってマジでヤバい?
「さぁて、死にな」
 獣士将軍が指を鳴らすと、百体以上の魔獣が一斉に炎を吹きかけてきた。
「「魔法兵召喚!!」」
 魔兵将くんとお父さんの詠唱と同時に、地面に魔方陣が描かれ、そこから魔法兵が出現し、そしてブレスの炎がわたしたちに届く直前で、止まった。
 だけど、魔獣たちはかまわずに炎をはき続けている。
 魔法兵の機能で炎を防いでくれてるみたいだけど、これじゃ炎に囲まれて逃げられない。
 魔兵将くんがわたしに、
「聖女さま、ここは僕たちが引き受けます。魔法兵でブレスを防いでいる間に、貴女たちは逃げてください」
「え? でも、どうやって逃げれば?」
 お父さんがオッサンを指差して、
「彼は転移の魔法が使える。宮廷魔術師殿、これを」
 お父さんはオッサンに指輪を渡した。
「緊急用に用意してあった、外へ脱出するための、転移魔法のマーキングの一対です。銀の月光の称号を持つ貴方なら、これで外のマーキングポイントまで皆さんを転移できるはず」
 オッサンはオタオタしながら、
「で、できますです」
「では お願いします」
 そして魔兵将くんは勇者に、
「勇者さん。僕は今はまだ謝罪しません。貴方と再会したときに、誤解していたことを正式に謝らせてください。それまで、聖女さまをお願いします」
 勇者は戸惑っている。
「き、貴殿らはなにを言っているでござるか? 二人ともセリフに死亡フラグが満載でござるよ!」
 そうよ。
 なんか これって 自分たちを犠牲にするパターンじゃない。
 魔兵将くんはオッサンに、
「さあ、行ってください!」
「わ、わかりましたです!」
 オッサン 待って!
 わたしがその言葉を口にする前に、逃げ出したい一心のオッサンは、わたしたちを転移させた。


 魔兵将くんとお父さんは言葉を交わす。
「僕たち、ずっと一緒だよ」
「そうだとも。私たちはずっと一緒だ」


 わたしたちは魔王城から離れた位置に転移した。
 中隊長さん、兄貴、姫騎士さん、オッサン。
 みんないる。
 でも、魔兵将くんとお父さんは居ない。
 遠くに見える魔王城から、巨大な火柱が上がった。
 遅れて大きな爆発音。
 魔王城も崩れ始めた。
 中隊長さんが呆然とした様子で、
「あの爆発では助からない」
 姫騎士さんが苦渋の表情で、
「助かったとしても、城が崩れてしまっては、生き埋めだ。あれでは助けることなど不可能だ」
 兄貴が怒りと悲しみで木を殴りつけて、
「愛し合う親子が殺されてしまったでござる! 未来在る子供が命を落としてしまったでござる!」


 わたしは呆然とみんなの言葉を聞いていた。
 え?
 死んだ? 
 あの親子、死んじゃった?
 ホントに死んじゃったの?
 わたしは嫌な汗がブワッと吹き出した。
 どうしよう?
 この小説って下ネタ中心のギャグばっかりだったから油断してたけど、大魔王討伐ってマジで命の危険があるのよね。
 なんかオッサンの気持ちがホントにわかってしまった。
 逃げたい。
 どうすればいい?
 どうすりゃ逃げられる?
 考えているわたしに、オッサンが、
「あのー、聖女さま。もしかしてですね、大魔王討伐の旅、本気で止めたくなったとかそういう感じですか?」
「いやいや、なに言ってんですか。いやいやいやいや。変なこと言わないでくださいですよ。ちゃんと続けますです、はいです」
「僕の口調みたいになってますです」


 この小説の方向性はどうなるんです?


 悪友は電話をかけていた。
「ねえねえ、魔兵将くん、今 暇してない? よかったら一緒にお茶しましょうよ」
「ちょっと、人が話しているときに、なに電話してんのよ。
 しかも 今、その魔兵将くんが死んだかのような、そーいう雰囲気のアレで話が進んでたんだけど」
 悪友はわたしの抗議を無視して、
「ホントー。お姉さん ウレシー。わかったー、待ってるねー」
 悪友は電話を切った。
「魔兵将くん、来てくれるって」
「だから呼ぶな! あの子には知られたくないネタがたくさんあるのよ!」


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