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三章・いきなりですが冒険編
なにを張り合ってんだよ
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さて、逃げたオッサンはどうなったのかというと……
「ぜえ、ぜえ、ぜえ」
「ブルルルゥ」
炎馬にあっさり追いつかれていた。
まあ、メタボの足じゃ当然だろう。
「嫌ですぅ。童貞のまま死ぬのは嫌ですぅ」
変な泣き言を言っているオッサン。
「ブルルルルルゥ!」
炎馬が大きく開けた口から、火炎攻撃しようとした その時、その口に何かが投げ込まれた。
「ブル?」
炎馬はそれを飲み込んでしまい、次の瞬間、
「ブヒヒィーン!!」
苦痛にのたうち回り、泡を吹いて気絶した。
オッサンはポカンとして、
「なにが起きたんです?」
「私だ」
オッサンの後ろから現れたのは、姫騎士さんだった。
その手に毒ニンジンを持っていた。
「そこで拾ったんだ。激しい腹痛を起こす毒ニンジンだ」
オッサンは命が助かったことに涙を流して喜び、
「助かりましたです。お礼に僕の童貞を上げますです」
「そんなものいらん!」
姫騎士さんは怖気で鳥肌が立ち、オッサンから後退る。
気を取り直して、
「それより なにがあった? なぜ炎馬に追いかけられていた?」
「そ、それがですね、大魔王軍の将軍に襲われてしまいましてですね」
「それで逃げていたのか? 他の者たちはどうしたのだ?」
「いやー、どうなったんでしょう?」
姫騎士さんはオッサンの胸ぐらを掴む。
「おまえ! 自分 一人だけ逃げたのか!?」
「いや、それはですね……」
「私を他の者たちのところへ案内しろ!」
そして わたしたちの方は……
「わかりました。聖女の力をもう一度 使ってみましょう」
「頼む」
だけど慎重にやらないと。
過剰に力を使えば、どんなことになるか。
しかし そこに精霊将軍が魔法弾を撃ってきて、中隊長さんの胸に命中する。
「グハッ!」
「中隊長さん!」
精霊将軍が、
「力を覚醒させんぞ!」
「あなたは戦いたかったのではないのですか?!」
「敵の力を削ぐのは兵法の基本だ!」
さらに勇者であるはずの兄貴まで、
「ゲフゥ!」
吹っ飛ばされ、木に叩きつけられ、木が折れる。
そして精霊将軍がわたしに剣を向けた。
「さあ、聖女よ。死んで貰う」
え?
これって、マジでやばい?
その時、姫騎士さんとオッサンが現れた。
「助けに来たぞ!」
「助けを連れてきましたです」
オッサンはちょっと自慢げに、
「僕はですね、こうしてですね、援軍を連れてくるためにですね、逃げたわけなんです」
わたしは即座に返す。
「ウソつけ」
「シクシク」
姫騎士さんと精霊将軍は、お互いの姿を見た瞬間、視線と視線がぶつかり合い、火花が飛び散った。
「「こいつ キャラがかぶってて なんかムカつく!!」」
なにを張り合ってんですか。
姫騎士さんと精霊将軍が剣を構えて対峙した。
しかし、力量差は明らかに姫騎士さんが劣る。
でも、わたしは姫騎士さんの身体の奥底にある力を感じていた。
最初に出会ったとき、魔獣と戦ってたときは気付かなかったけど、姫騎士さんはなにか秘められた力を持っている。
これを覚醒させれば いけるんじゃ。
わたしは聖女の杖を姫騎士さんに向けた。
「姫騎士さん! 動かないで!」
姫騎士さんは動揺したようで、
「待て! なぜ わたしに杖を向ける!?」
わたしは返答代わりに聖女の力を姫騎士さんにぶつけた。
すると、姫騎士さんの身体が光輝き、背中から半透明の一対二枚の翼が現れた。
勇者の童貞オタク兄貴が驚愕する。
「なんと! その姿は戦乙女ではござらんか! 姫騎士殿は戦神の祝福を受けていたのでござったか!」
悪友が手を上げて、
「ちょっと待って」
わたしの話を遮った。
「今度はどういうこと? 戦神の祝福を受けたとかってなに?」
「西の王国じゃ、女騎士の中で特に優れた者は、戦神の祝福を受ける行事があるの。
その祝福を受けた者は戦神の使徒、戦乙女になるとかって。
でも 形式だけの行事っていうか、ほとんどの場合は、実際に戦神の祝福を受けるわけじゃないんだけどね。神官がそれっぽいことして、戦神の祝福があらんことをみたいなことを言って、それでお終いって感じで。
だけど、姫騎士さんの場合は、ホントに祝福を受けてたみたいなの。
姫騎士さん本人も、周りの人も誰も、ホントに戦神の祝福を受けてたって事には気付いてなくて、だけど祝福された力だけは、その時からずっと姫騎士さんの中で眠ってたってわけ。
それを わたしが聖女の力で覚醒させたの」
悪友は嘆息した。
「なんてご都合主義的な」
「いや、わたしに言われても」
姫騎士さんは自分の力に驚いていた。
「私にこんな力があったとは。これなら 私とキャラのかぶってる このムカつく女と戦える」
いや だから なにを張り合ってんだよ。
しかし対等に戦えるのは事実だった。
ここに兄貴が加われば、勝てるはず。
しかし兄貴は雷電白虎の姿から、人間の姿に戻っていた。
「ちょっと兄貴?! なんで元に戻ってんのよ?!」
「いや、実は雷電白虎の姿は時間制限があるのでござる。精霊将軍殿と同じでござるな。一度 元に戻るとしばらく変身できなくなってしまうでござる」
「なら わたしが聖女の力で強制的に覚醒させてあげるわ。腹に力を入れて歯を食いしばりなさい」
「いやいやいや! なに全力でやろうとしているでござるか!? そんなことしたら拙者ヤバいでござる!」
「大丈夫! 二十三回も転生してるんだから もう一回くらい死んでも平気よ!」
「何気にヤル気でござる!」
中隊長さんが間に入り、
「いくら勇者でもそこまでするのは危険だ。ここは俺に力を使ってくれ」
私は悲壮感一杯に首を振る、
「いけません! そんなことをしたら 中隊長さんが危険なことになってしまいます! あなたにそんな事できません!」
わたしのドラマチックな台詞に、兄貴がオッサンみたいに泣きながら、
「シクシク、拙者と対応が全然違うでござる」
姫騎士さんと精霊将軍の戦いは膠着状態に陥っていた。
戦乙女となった姫騎士さんと、上位精霊と同化している精霊将軍。
二つの力がぶつかり合い、剣戟が繰り出されている。
しかし、それは徐々に精霊将軍が優位になり始めていた。
力の大きさも 剣の技量も同じくらいのはずなのに、姫騎士さんが押され始めている。
どういうことなの?
精霊将軍は不敵な笑みで 姫騎士さんに、
「おまえ、さては実戦経験が少ないな。いや、ハッキリ言ってしまえば、自らの手で直接 なにかの命を奪ったことがないのだ。
姫騎士などという大層な呼ばれかたをしているようだが、王女であるおまえは 周囲の者に守られ、自分で直接 殺すという行為をしたことがない。
だから 私を殺すことにためらいがある。命を奪うことを躊躇している。
殺す覚悟もなしに私に勝つことはできん!」
な、なんか、シリアスな感じにヤバいような。
姫騎士さんが負けることになれば、それは つまり、わたしがやられるということ。
ヤバい。
なにか手を打たないと。
考えるのよ。
この状況を打開する方法を。
でも、兄貴も中隊長さんも戦える状態じゃなくなったし、戦力がなにもない。
オッサンは役に立たないし。
……待って。
逆を考えるのよ。
勝とうと思うな。
生き延びることだけを考えれば。
戦いに勝つのは後回しにするのよ。
「オッサン。耳を貸してください」
「最後だから筆下ろししてくれるとかですか」
とりあえず わたしはオッサンにボディブローをしてから、
「作戦を思いつきました。わたしの言うとおりに魔法を使ってください」
姫騎士さんと精霊将軍の戦いは佳境に入っていた。
姫騎士さんが一方的に押される形になってしまっている。
精霊将軍は、
「王女にしては中々だったが、そろそろ終わりだ。覚悟しろ!」
わたしは姫騎士さんに叫ぶ。
「姫騎士さん! 目を閉じて 耳を塞いでください!」
「わ、わかった!」
そして わたしはオッサンに、
「今です! やってください!」
「わかりましたです!」
オッサンが魔法を発動した。
ババンッバパンッパバパンッババンッパパパンッバンッパンッババパンッ!!!
爆竹のような破裂音が、精霊将軍の周囲で一斉に轟き、同時に眩い閃光が連続発生した。
「ヌグゥ!!」
精霊将軍は破裂音をまともに聞き、そして閃光を直視する。
わたしはみんなに、
「今のうちに撤退です!」
わたしたちはその場から全力で逃走した。
精霊将軍からかなり離れ、安全を見計らったところで、わたしたちは一息吐いた。
姫騎士さんがわたしに、
「おまえは本当に聖女なんだな。嘘つき呼ばわりしてすまなかった。一度 村に来てくれ。そこで話をしよう」
その頃 ヒロインちゃんは、王宮の図書室で調べ物をしていた。
「そうだったんだ。聖女の力の正体がわかった」
そこに何者かが声をかけた。
「可愛らしいお嬢さん。このひもにぶら下がった硬貨を見てごらん。振り子のように揺れる硬貨を見ていると、あら不思議、だんだん眠くなる、眠くなーる」
「ふにゃぁ」
「フヒヒヒ」
悪友が、なんか嫌な予感がしていますって感じの表情で質問してきた。
「あのー、オチは?」
「……今回もないの」
「どうすんのよ? この小説、ジャンルはラブコメなのよ。なのにラブ成分もコメディ成分もないじゃない。元々ラブが少ないのに、コメディまでなくなったら、ジャンル詐欺になっちゃわよ」
「だ、大丈夫。一応 最後の最後はオチが付くから」
「ホントに?」
「……た、たぶん」
たぶんオチが付きます。
「ぜえ、ぜえ、ぜえ」
「ブルルルゥ」
炎馬にあっさり追いつかれていた。
まあ、メタボの足じゃ当然だろう。
「嫌ですぅ。童貞のまま死ぬのは嫌ですぅ」
変な泣き言を言っているオッサン。
「ブルルルルルゥ!」
炎馬が大きく開けた口から、火炎攻撃しようとした その時、その口に何かが投げ込まれた。
「ブル?」
炎馬はそれを飲み込んでしまい、次の瞬間、
「ブヒヒィーン!!」
苦痛にのたうち回り、泡を吹いて気絶した。
オッサンはポカンとして、
「なにが起きたんです?」
「私だ」
オッサンの後ろから現れたのは、姫騎士さんだった。
その手に毒ニンジンを持っていた。
「そこで拾ったんだ。激しい腹痛を起こす毒ニンジンだ」
オッサンは命が助かったことに涙を流して喜び、
「助かりましたです。お礼に僕の童貞を上げますです」
「そんなものいらん!」
姫騎士さんは怖気で鳥肌が立ち、オッサンから後退る。
気を取り直して、
「それより なにがあった? なぜ炎馬に追いかけられていた?」
「そ、それがですね、大魔王軍の将軍に襲われてしまいましてですね」
「それで逃げていたのか? 他の者たちはどうしたのだ?」
「いやー、どうなったんでしょう?」
姫騎士さんはオッサンの胸ぐらを掴む。
「おまえ! 自分 一人だけ逃げたのか!?」
「いや、それはですね……」
「私を他の者たちのところへ案内しろ!」
そして わたしたちの方は……
「わかりました。聖女の力をもう一度 使ってみましょう」
「頼む」
だけど慎重にやらないと。
過剰に力を使えば、どんなことになるか。
しかし そこに精霊将軍が魔法弾を撃ってきて、中隊長さんの胸に命中する。
「グハッ!」
「中隊長さん!」
精霊将軍が、
「力を覚醒させんぞ!」
「あなたは戦いたかったのではないのですか?!」
「敵の力を削ぐのは兵法の基本だ!」
さらに勇者であるはずの兄貴まで、
「ゲフゥ!」
吹っ飛ばされ、木に叩きつけられ、木が折れる。
そして精霊将軍がわたしに剣を向けた。
「さあ、聖女よ。死んで貰う」
え?
これって、マジでやばい?
その時、姫騎士さんとオッサンが現れた。
「助けに来たぞ!」
「助けを連れてきましたです」
オッサンはちょっと自慢げに、
「僕はですね、こうしてですね、援軍を連れてくるためにですね、逃げたわけなんです」
わたしは即座に返す。
「ウソつけ」
「シクシク」
姫騎士さんと精霊将軍は、お互いの姿を見た瞬間、視線と視線がぶつかり合い、火花が飛び散った。
「「こいつ キャラがかぶってて なんかムカつく!!」」
なにを張り合ってんですか。
姫騎士さんと精霊将軍が剣を構えて対峙した。
しかし、力量差は明らかに姫騎士さんが劣る。
でも、わたしは姫騎士さんの身体の奥底にある力を感じていた。
最初に出会ったとき、魔獣と戦ってたときは気付かなかったけど、姫騎士さんはなにか秘められた力を持っている。
これを覚醒させれば いけるんじゃ。
わたしは聖女の杖を姫騎士さんに向けた。
「姫騎士さん! 動かないで!」
姫騎士さんは動揺したようで、
「待て! なぜ わたしに杖を向ける!?」
わたしは返答代わりに聖女の力を姫騎士さんにぶつけた。
すると、姫騎士さんの身体が光輝き、背中から半透明の一対二枚の翼が現れた。
勇者の童貞オタク兄貴が驚愕する。
「なんと! その姿は戦乙女ではござらんか! 姫騎士殿は戦神の祝福を受けていたのでござったか!」
悪友が手を上げて、
「ちょっと待って」
わたしの話を遮った。
「今度はどういうこと? 戦神の祝福を受けたとかってなに?」
「西の王国じゃ、女騎士の中で特に優れた者は、戦神の祝福を受ける行事があるの。
その祝福を受けた者は戦神の使徒、戦乙女になるとかって。
でも 形式だけの行事っていうか、ほとんどの場合は、実際に戦神の祝福を受けるわけじゃないんだけどね。神官がそれっぽいことして、戦神の祝福があらんことをみたいなことを言って、それでお終いって感じで。
だけど、姫騎士さんの場合は、ホントに祝福を受けてたみたいなの。
姫騎士さん本人も、周りの人も誰も、ホントに戦神の祝福を受けてたって事には気付いてなくて、だけど祝福された力だけは、その時からずっと姫騎士さんの中で眠ってたってわけ。
それを わたしが聖女の力で覚醒させたの」
悪友は嘆息した。
「なんてご都合主義的な」
「いや、わたしに言われても」
姫騎士さんは自分の力に驚いていた。
「私にこんな力があったとは。これなら 私とキャラのかぶってる このムカつく女と戦える」
いや だから なにを張り合ってんだよ。
しかし対等に戦えるのは事実だった。
ここに兄貴が加われば、勝てるはず。
しかし兄貴は雷電白虎の姿から、人間の姿に戻っていた。
「ちょっと兄貴?! なんで元に戻ってんのよ?!」
「いや、実は雷電白虎の姿は時間制限があるのでござる。精霊将軍殿と同じでござるな。一度 元に戻るとしばらく変身できなくなってしまうでござる」
「なら わたしが聖女の力で強制的に覚醒させてあげるわ。腹に力を入れて歯を食いしばりなさい」
「いやいやいや! なに全力でやろうとしているでござるか!? そんなことしたら拙者ヤバいでござる!」
「大丈夫! 二十三回も転生してるんだから もう一回くらい死んでも平気よ!」
「何気にヤル気でござる!」
中隊長さんが間に入り、
「いくら勇者でもそこまでするのは危険だ。ここは俺に力を使ってくれ」
私は悲壮感一杯に首を振る、
「いけません! そんなことをしたら 中隊長さんが危険なことになってしまいます! あなたにそんな事できません!」
わたしのドラマチックな台詞に、兄貴がオッサンみたいに泣きながら、
「シクシク、拙者と対応が全然違うでござる」
姫騎士さんと精霊将軍の戦いは膠着状態に陥っていた。
戦乙女となった姫騎士さんと、上位精霊と同化している精霊将軍。
二つの力がぶつかり合い、剣戟が繰り出されている。
しかし、それは徐々に精霊将軍が優位になり始めていた。
力の大きさも 剣の技量も同じくらいのはずなのに、姫騎士さんが押され始めている。
どういうことなの?
精霊将軍は不敵な笑みで 姫騎士さんに、
「おまえ、さては実戦経験が少ないな。いや、ハッキリ言ってしまえば、自らの手で直接 なにかの命を奪ったことがないのだ。
姫騎士などという大層な呼ばれかたをしているようだが、王女であるおまえは 周囲の者に守られ、自分で直接 殺すという行為をしたことがない。
だから 私を殺すことにためらいがある。命を奪うことを躊躇している。
殺す覚悟もなしに私に勝つことはできん!」
な、なんか、シリアスな感じにヤバいような。
姫騎士さんが負けることになれば、それは つまり、わたしがやられるということ。
ヤバい。
なにか手を打たないと。
考えるのよ。
この状況を打開する方法を。
でも、兄貴も中隊長さんも戦える状態じゃなくなったし、戦力がなにもない。
オッサンは役に立たないし。
……待って。
逆を考えるのよ。
勝とうと思うな。
生き延びることだけを考えれば。
戦いに勝つのは後回しにするのよ。
「オッサン。耳を貸してください」
「最後だから筆下ろししてくれるとかですか」
とりあえず わたしはオッサンにボディブローをしてから、
「作戦を思いつきました。わたしの言うとおりに魔法を使ってください」
姫騎士さんと精霊将軍の戦いは佳境に入っていた。
姫騎士さんが一方的に押される形になってしまっている。
精霊将軍は、
「王女にしては中々だったが、そろそろ終わりだ。覚悟しろ!」
わたしは姫騎士さんに叫ぶ。
「姫騎士さん! 目を閉じて 耳を塞いでください!」
「わ、わかった!」
そして わたしはオッサンに、
「今です! やってください!」
「わかりましたです!」
オッサンが魔法を発動した。
ババンッバパンッパバパンッババンッパパパンッバンッパンッババパンッ!!!
爆竹のような破裂音が、精霊将軍の周囲で一斉に轟き、同時に眩い閃光が連続発生した。
「ヌグゥ!!」
精霊将軍は破裂音をまともに聞き、そして閃光を直視する。
わたしはみんなに、
「今のうちに撤退です!」
わたしたちはその場から全力で逃走した。
精霊将軍からかなり離れ、安全を見計らったところで、わたしたちは一息吐いた。
姫騎士さんがわたしに、
「おまえは本当に聖女なんだな。嘘つき呼ばわりしてすまなかった。一度 村に来てくれ。そこで話をしよう」
その頃 ヒロインちゃんは、王宮の図書室で調べ物をしていた。
「そうだったんだ。聖女の力の正体がわかった」
そこに何者かが声をかけた。
「可愛らしいお嬢さん。このひもにぶら下がった硬貨を見てごらん。振り子のように揺れる硬貨を見ていると、あら不思議、だんだん眠くなる、眠くなーる」
「ふにゃぁ」
「フヒヒヒ」
悪友が、なんか嫌な予感がしていますって感じの表情で質問してきた。
「あのー、オチは?」
「……今回もないの」
「どうすんのよ? この小説、ジャンルはラブコメなのよ。なのにラブ成分もコメディ成分もないじゃない。元々ラブが少ないのに、コメディまでなくなったら、ジャンル詐欺になっちゃわよ」
「だ、大丈夫。一応 最後の最後はオチが付くから」
「ホントに?」
「……た、たぶん」
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