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三章・いきなりですが冒険編
え?
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前回のあらすじ。
出だしで いきなり登場した魔王は、大魔王に筆下ろしされていた。
勇者たち童貞三人組は戦意喪失。
おまえら なにを勝負してんだよ。
魔王はわたしを値踏みするような笑みで見る。
「おまえが聖女か。ふっ、確かに聖女だ。その身体、なんと清らかなことか」
ヤバい。
わたしが処女だって見抜いた。
魔物の力か何かでだと思うけど、このままだとみんなに卒業式の時の話が嘘だってバレる。
ごまかさないと。
わたしはとりあえず大声で魔王を非難する。
「汚された身体にまで欲情するとは! なんと下劣な! その醜悪な性根! まさに魔王!」
魔王は怪訝な表情になる。
「何を言っている? おまえは綺麗な身体をしているでは……」
最後まで言わせるな!
「どんなに身体を汚されようとも 心までは汚されません! 性欲丸出しの品のない眼をして! それでも王ですか! いやらしい! 童貞だった頃となにも変わっていないのですね!」
「ふふふ」
不敵な笑みの魔王。
ダメだ、まるで動じていない。
これが童貞卒業した男の貫禄。
「なにを言っているのか よくわからぬが、聖女よ、俺から提案をしてやろう」
「提案?」
「この場で敗北を認め、その童貞勇者どもを見捨て、大魔王さまに付けば、命を助けてやる。それだけではない、一生 贅沢な暮らしを保障してやろう。どうだ、いい話だとはおもわんか」
「それで毎晩 あなたの相手をしろとでも言うのですか。
大魔王のお情けで童貞卒業しただけで、ずいぶんな自信ですこと。
それに今の発言は、大魔王を裏切ることになりますよ。身体を重ねた相手がいるのに、他の女の身体を欲しがるなど、裏切りに他なりません!」
「大魔王様はそのような狭小な心の方ではない。筆下ろしさせていただいたときに言われたのだ。好きな相手といくらでもするが良いと。
だが 俺は、大魔王様に貞操を捧げると誓った。俺は大魔王様でしか満足できない身体になってしまったからな。大魔王様の愛でしか俺は満足できぬ」
「あ、愛ですって?」
魔王から意外な言葉が出てきた。
「そうだ。大魔王様はこの世を愛に満ちた世界に変えるのだ」
な、なんか、これって 実は敵の方に理があるっていうパターンなんじゃ。
とにかく、話を続けよう。
「で、では わたしが降伏しても、手出ししないと約束するというのですか?」
「ハハハ! そんなわけがないだろう!
貴様を軍門に下すのは、部下たちの相手をさせるためだ。貴様の身体は部下どもの相手にちょうど良い。貴様は部下どもの娼婦として生きることを許してやる。その報酬としての贅沢だ」
ヤバい。
こいつマジで言ってる。
中隊長さんも 童貞オタク兄貴も 怯えて震えてるだけで役に立たないし。
役立たずはオッサン一人で十分だっての。
自分でなんとかしないと。
とにかく話を続けよう。
会話が終わってしまったら戦いに入り、そして三人とも負けてしまう。
「なんと汚らわしい考えなのです! シコってばかりいる童貞をこじらせた男の歪んだ願望と空想と希望と妄想と欲望そのままではありませんか!
結局あなたは精神的に童貞を卒業していないのです! お情けでの筆下ろしは童貞卒業とは言わないのです! 相手と心が通じ合ってこそ童貞卒業! あなたは心のあり方が童貞なのです! この童貞!」
魔王はわたしの後ろの三人に、哀れな者を見るような、そして気まずいような眼を向ける。
「……その、なんというか、後ろの勇者と竜戦士と魔術師が傷ついているぞ」
勢いでごまかせ!
「大丈夫! あなたと大魔王を倒せば、最高の栄光と名誉が手に入り、世界中の女性が三人の童貞を欲しがります。魔王になっても童貞の貴方とは違うのです!」
魔王は再び不敵な含み笑い。
「ふふふ。貴様、さっきから童貞童貞と言いたい放題だな。違うと言っているというのに。
いいか、大魔王様とは心も通い合ってしているのだ。愛は人間だけの特権ではない。
なにも知らぬ俺に大魔王様から手取り足取り教えていただいたのだ。
愛を持って心が通じ合った証拠」
ダメだ。
童貞卒業して余裕の魔王は動じない。
なんとかしないと、嘘がばれてしまう。
なにか魔王の自信を崩す方法はないの?
とりあえず、しょーもないことだけど、話を引き延ばすためにあの話をしよう。
「あ、あなたは絶対に男のアレを女性のおしっこの穴に入れると勘違いしていたタイプです!」
性行為の知識がない童貞に多い勘違い。
男のアレを入れる穴と、おしっこの穴は違うのだ。
「なにをバカなことを言うのだ。筆下ろしの時にきちんと大魔王様から教えていただいた」
魔王は自信満々に答えた。
「アレを入れるのは お尻の穴 だと」
「……え?」
わたしの心の底からの疑問の声に、魔王は虚を突かれた表情。
「なんだ その、え? というのは? なにを疑問に思ったのだ?」
「疑問もなにも、お尻の穴 なんてところに入れるのは変態だけですよ」
「な、なんだと?」
魔王はかすかに動揺し始めた。
「だが 大魔王さまは、お尻の穴でするものだと教えてくれたぞ」
わたしは冷淡に、
「あなた騙されてますよ。お尻の穴ではなく、前の穴に入れるんです」
「前に穴など どこにある? 前には肉棒があるだけではないか」
んんー?
わたしは首を傾げた。
「ちょっと待ってください? 今 なんとおっしゃいました?」
魔王は戸惑いながら、
「だ、だから 前に穴などないと」
「その次です」
「肉棒があるだけだと」
わたしは叫ぶ。
「肉棒があるのは男だー!」
魔王はわたしの声にビクッと驚いて、
「な、なにをいう。肉棒のある女性なのだ。大魔王様は極めてまれな身体をしておられ、女性だが、肉棒が付いているのだ」
「女性に肉棒は付いてません! 付いている女性というのは すべて作り話です!」
「だから、ふたなりという奴なのだろう」
「いいえ! ふたなりの場合でも前にちゃんと穴があります!
性行為において肉棒は前の穴に入れるのが基本です!」
魔王は理解できないように、
「……え? いや? 性行為というのは お尻の穴でするものなのだろう?」
「……あの、非常に言い難いのですけれども……」
わたしは残酷な事実を告げた。
「大魔王は男です」
「え? え?」
魔王は完全に理解できないように、疑念の声を繰り返す。
「違うのか? ホントに大魔王様は女性ではないのか?」
わたしは可哀想な人へにかける声で、
「あの、今日のところは帰って真実を確かめてみては。童貞卒業の相手の性別を勘違いしたままというのは、敵ながら可哀想すぎますので」
「そ、そうさせてもらおう」
そして魔王は帰っていった。
なんとか助かった。
魔王の姿が消えた後、わたしは情けない童貞の三人に、
「さあ、魔王の脅威は去りました。旅を続けましょう」
しかし中隊長さんはわたしの手を握って、
「今 ここで 俺の童貞を受け取ってくれ」
童貞オタク兄貴まで迫ってきて、
「いや、拙者の童貞を」
そしてオッサンが泣きながら、
「シクシク。童貞童貞って ヒドイです」
その頃、公爵令嬢さんは……
「うぅうう……水が美味しいですわ。真水がこんなにも美味しいなんて」
「海水 飲んじゃいましたもんね。飲んだら大変なことになるって言ったのに」
「だって喉が渇いて 喉が渇いて しかたかなかったのですわ……うぅうう……」
「もう国に帰りましょうよ」
「帰るわけにはいきません! 旅がこんなに大変だとわかったのです! 聖女となった彼女はもっと大変なはず! わたくしが助けに参るのですわ!」
「それ以前に俺たちが助けられていますよ」
漁師に救出されたとか。
悪友がお茶を一息に飲んでから、
「豆知識の本で読んだことがあるわ。
海水を蒸留せずにそのまま飲むと、塩分濃度の関係で、逆に喉が渇いて苦しくなって、飲むのが止まらなくなっちゃうんだってね。
で、体内の塩分濃度がおかしくなって、最悪 死ぬとか。
あの女、ヤバかったんだ」
「うん、ヤバかったみたい」
「なんか あたし、お茶ばっかり飲んでたら、おしっこしたくなってきちゃった。トイレ行ってくる。
ところでさ、海水浴とかで海の中でおしっこするのって、あたしだけかな?」
「汚いこと言わないでよ! そして するな!」
遭難しても海水は飲んではいけません。
出だしで いきなり登場した魔王は、大魔王に筆下ろしされていた。
勇者たち童貞三人組は戦意喪失。
おまえら なにを勝負してんだよ。
魔王はわたしを値踏みするような笑みで見る。
「おまえが聖女か。ふっ、確かに聖女だ。その身体、なんと清らかなことか」
ヤバい。
わたしが処女だって見抜いた。
魔物の力か何かでだと思うけど、このままだとみんなに卒業式の時の話が嘘だってバレる。
ごまかさないと。
わたしはとりあえず大声で魔王を非難する。
「汚された身体にまで欲情するとは! なんと下劣な! その醜悪な性根! まさに魔王!」
魔王は怪訝な表情になる。
「何を言っている? おまえは綺麗な身体をしているでは……」
最後まで言わせるな!
「どんなに身体を汚されようとも 心までは汚されません! 性欲丸出しの品のない眼をして! それでも王ですか! いやらしい! 童貞だった頃となにも変わっていないのですね!」
「ふふふ」
不敵な笑みの魔王。
ダメだ、まるで動じていない。
これが童貞卒業した男の貫禄。
「なにを言っているのか よくわからぬが、聖女よ、俺から提案をしてやろう」
「提案?」
「この場で敗北を認め、その童貞勇者どもを見捨て、大魔王さまに付けば、命を助けてやる。それだけではない、一生 贅沢な暮らしを保障してやろう。どうだ、いい話だとはおもわんか」
「それで毎晩 あなたの相手をしろとでも言うのですか。
大魔王のお情けで童貞卒業しただけで、ずいぶんな自信ですこと。
それに今の発言は、大魔王を裏切ることになりますよ。身体を重ねた相手がいるのに、他の女の身体を欲しがるなど、裏切りに他なりません!」
「大魔王様はそのような狭小な心の方ではない。筆下ろしさせていただいたときに言われたのだ。好きな相手といくらでもするが良いと。
だが 俺は、大魔王様に貞操を捧げると誓った。俺は大魔王様でしか満足できない身体になってしまったからな。大魔王様の愛でしか俺は満足できぬ」
「あ、愛ですって?」
魔王から意外な言葉が出てきた。
「そうだ。大魔王様はこの世を愛に満ちた世界に変えるのだ」
な、なんか、これって 実は敵の方に理があるっていうパターンなんじゃ。
とにかく、話を続けよう。
「で、では わたしが降伏しても、手出ししないと約束するというのですか?」
「ハハハ! そんなわけがないだろう!
貴様を軍門に下すのは、部下たちの相手をさせるためだ。貴様の身体は部下どもの相手にちょうど良い。貴様は部下どもの娼婦として生きることを許してやる。その報酬としての贅沢だ」
ヤバい。
こいつマジで言ってる。
中隊長さんも 童貞オタク兄貴も 怯えて震えてるだけで役に立たないし。
役立たずはオッサン一人で十分だっての。
自分でなんとかしないと。
とにかく話を続けよう。
会話が終わってしまったら戦いに入り、そして三人とも負けてしまう。
「なんと汚らわしい考えなのです! シコってばかりいる童貞をこじらせた男の歪んだ願望と空想と希望と妄想と欲望そのままではありませんか!
結局あなたは精神的に童貞を卒業していないのです! お情けでの筆下ろしは童貞卒業とは言わないのです! 相手と心が通じ合ってこそ童貞卒業! あなたは心のあり方が童貞なのです! この童貞!」
魔王はわたしの後ろの三人に、哀れな者を見るような、そして気まずいような眼を向ける。
「……その、なんというか、後ろの勇者と竜戦士と魔術師が傷ついているぞ」
勢いでごまかせ!
「大丈夫! あなたと大魔王を倒せば、最高の栄光と名誉が手に入り、世界中の女性が三人の童貞を欲しがります。魔王になっても童貞の貴方とは違うのです!」
魔王は再び不敵な含み笑い。
「ふふふ。貴様、さっきから童貞童貞と言いたい放題だな。違うと言っているというのに。
いいか、大魔王様とは心も通い合ってしているのだ。愛は人間だけの特権ではない。
なにも知らぬ俺に大魔王様から手取り足取り教えていただいたのだ。
愛を持って心が通じ合った証拠」
ダメだ。
童貞卒業して余裕の魔王は動じない。
なんとかしないと、嘘がばれてしまう。
なにか魔王の自信を崩す方法はないの?
とりあえず、しょーもないことだけど、話を引き延ばすためにあの話をしよう。
「あ、あなたは絶対に男のアレを女性のおしっこの穴に入れると勘違いしていたタイプです!」
性行為の知識がない童貞に多い勘違い。
男のアレを入れる穴と、おしっこの穴は違うのだ。
「なにをバカなことを言うのだ。筆下ろしの時にきちんと大魔王様から教えていただいた」
魔王は自信満々に答えた。
「アレを入れるのは お尻の穴 だと」
「……え?」
わたしの心の底からの疑問の声に、魔王は虚を突かれた表情。
「なんだ その、え? というのは? なにを疑問に思ったのだ?」
「疑問もなにも、お尻の穴 なんてところに入れるのは変態だけですよ」
「な、なんだと?」
魔王はかすかに動揺し始めた。
「だが 大魔王さまは、お尻の穴でするものだと教えてくれたぞ」
わたしは冷淡に、
「あなた騙されてますよ。お尻の穴ではなく、前の穴に入れるんです」
「前に穴など どこにある? 前には肉棒があるだけではないか」
んんー?
わたしは首を傾げた。
「ちょっと待ってください? 今 なんとおっしゃいました?」
魔王は戸惑いながら、
「だ、だから 前に穴などないと」
「その次です」
「肉棒があるだけだと」
わたしは叫ぶ。
「肉棒があるのは男だー!」
魔王はわたしの声にビクッと驚いて、
「な、なにをいう。肉棒のある女性なのだ。大魔王様は極めてまれな身体をしておられ、女性だが、肉棒が付いているのだ」
「女性に肉棒は付いてません! 付いている女性というのは すべて作り話です!」
「だから、ふたなりという奴なのだろう」
「いいえ! ふたなりの場合でも前にちゃんと穴があります!
性行為において肉棒は前の穴に入れるのが基本です!」
魔王は理解できないように、
「……え? いや? 性行為というのは お尻の穴でするものなのだろう?」
「……あの、非常に言い難いのですけれども……」
わたしは残酷な事実を告げた。
「大魔王は男です」
「え? え?」
魔王は完全に理解できないように、疑念の声を繰り返す。
「違うのか? ホントに大魔王様は女性ではないのか?」
わたしは可哀想な人へにかける声で、
「あの、今日のところは帰って真実を確かめてみては。童貞卒業の相手の性別を勘違いしたままというのは、敵ながら可哀想すぎますので」
「そ、そうさせてもらおう」
そして魔王は帰っていった。
なんとか助かった。
魔王の姿が消えた後、わたしは情けない童貞の三人に、
「さあ、魔王の脅威は去りました。旅を続けましょう」
しかし中隊長さんはわたしの手を握って、
「今 ここで 俺の童貞を受け取ってくれ」
童貞オタク兄貴まで迫ってきて、
「いや、拙者の童貞を」
そしてオッサンが泣きながら、
「シクシク。童貞童貞って ヒドイです」
その頃、公爵令嬢さんは……
「うぅうう……水が美味しいですわ。真水がこんなにも美味しいなんて」
「海水 飲んじゃいましたもんね。飲んだら大変なことになるって言ったのに」
「だって喉が渇いて 喉が渇いて しかたかなかったのですわ……うぅうう……」
「もう国に帰りましょうよ」
「帰るわけにはいきません! 旅がこんなに大変だとわかったのです! 聖女となった彼女はもっと大変なはず! わたくしが助けに参るのですわ!」
「それ以前に俺たちが助けられていますよ」
漁師に救出されたとか。
悪友がお茶を一息に飲んでから、
「豆知識の本で読んだことがあるわ。
海水を蒸留せずにそのまま飲むと、塩分濃度の関係で、逆に喉が渇いて苦しくなって、飲むのが止まらなくなっちゃうんだってね。
で、体内の塩分濃度がおかしくなって、最悪 死ぬとか。
あの女、ヤバかったんだ」
「うん、ヤバかったみたい」
「なんか あたし、お茶ばっかり飲んでたら、おしっこしたくなってきちゃった。トイレ行ってくる。
ところでさ、海水浴とかで海の中でおしっこするのって、あたしだけかな?」
「汚いこと言わないでよ! そして するな!」
遭難しても海水は飲んではいけません。
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