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三章・いきなりですが冒険編

NTR

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 前回のあらすじ。
 怪しすぎる宰相さんは、大魔王軍の妖術将軍が入れ替わっていたという、ひねりのない展開だった。


「「「……」」」
 わたしもみんなも無言だった。
 しばらくして兵士さんたちがヒソヒソと、
「え? この妖術将軍、よりによって宰相と入れ替わったのか?」
「いくらなんでも怪しすぎるだろ。普通 怪しまれない人間を選ぶよな」
「って いうか、変身術を解いても たいして変わんないんだけど」
 わたしも中隊長さんと童貞オタク兄貴とオッサンとで、
「大魔王軍って意外と頭悪いんでしょうか?」
「いや、こいつが例外ということかもしれん」
「拙者が戦った魔王は普通に頭が良かったでござるよ」
「というかですね、なぜにですね、この妖術将軍はですね、ペラペラと自分の策略を全部説明したんです?」
 妖術将軍はこめかみに血管を浮き上がらせて、頭から蒸気を出しながら、
「貴様らぁ! さっきからバカにしておるが わしの策略を見抜けなかったではないか!」
 その剣幕がちょっと怖かったけど、
「いや、だって いくらなんでも怪しすぎて あり得ないだろうという感じで。
 って いうか、この場には勇者の他に、海軍の兵士さんたちもいて、全員で百人近くはいるんですが、貴方 一人で相手をするつもりなんですか?」
 妖術将軍は不敵な笑みを浮かべ、
「ふん。それぐらい考えなかったと思っておるのか? 策くらい用意しておるわ。
 出でよ! 炉歩徒ロボット!」
 妖術将軍が腕を広げると、その足下に魔方陣が一瞬で描かれ、その魔方陣からなにかが召喚された。
 そのなにかに妖術将軍は騎乗し、そして機械的な駆動音を上げる。
 勇者の童貞オタク兄貴がそれを見て、
「なんですと!? 炉歩徒を修復したのでござるか!?」
 わたしは驚きながら、
「炉歩徒って、どうみてもロボットじゃん!」
 なんでファンタジーな世界でロボットなのよ。
 まあテレビとか映画とか携帯電話とか平気であるけどさ。
「細かいことはわからぬでござるが、炉歩徒は魔王が拙者を倒すために造った物でござるよ。拙者、結構 苦戦したでござる」
「じゃ、やばいわけ!?」
「安心召されよ。炉歩徒は雷が弱点でござる!
 受けよ! 雷光放電ライトニングプラズマ!」
 魔法の雷がロボットに直撃したけど、外殻にはじかれた。
 妖術将軍はいやらしい笑い声を上げる。
「イーヒッヒッヒッ! 修復しただけではない! 改良も施したのじゃ! この新型炉歩徒の外殻は絶縁体でできておる! 電撃は通じんわ!」
 そして妖術将軍は炉歩徒の腕をわたしに向けた。
 嫌な予感がしたわたしは、咄嗟に横へ飛んだけど、遅かった。
 ロボットの指先から小さな針が発射して、わたしの腕に刺さった。
「イタッ」
 チクッとした程度の痛み。
 だけど、それが むしろ 嫌な予感を掻き立てた。
 こういうしょぼい攻撃の場合、たいてい毒が塗ってある。
「イーヒッヒッヒッ! 刺さった! 刺さったな! 刺さりおった! 
 その表情からすると予想は付いておるようじゃな。その通りじゃ! その針には毒が塗ってある!
 特別で強力な発情薬をな!」
「は、発情薬!?」 
「その発情薬は特定の人物を対象に効果が発揮される。
 特定の人物とは わしの事じゃ。
 つまり、しばらくすれば 貴様はわしとしたくてたまらなくなるのじゃ!
 勇者どもを始末した後、わしの性奴隷にして じっくり可愛がってやるぞえ!
 イーヒッヒッヒッ!」
 なによ そのNTRな薬は!
「解毒剤はどこにあるの?!」
「そんな物を持ってきておるわけなかろう! 迂闊に持ってきたりすれば、奪われて解毒されてしまうからのう。
 しばらくすれば、貴様はわしの虜になるのじゃ!
 ウヒャヒャヒャヒャヒャ!」
 わたしは心底ヤバいと思った。
 このままでは、前世で童貞オタク兄貴がやっていたNTRエロゲーの展開が、リアルに行われてしまう。
 いったん、妖術将軍から距離を取らないと。
「み、みなさん! 妖術将軍の相手をお願いします! わたしは神殿に入って対策を考えますから!」
 勇者の童貞オタク兄貴が、
「わかったでござる! ここは拙者たちに任せるでござるよ! 中隊長殿と宮廷魔術師殿はマイシスターに付き添ってくだされ! 迅速に解毒するでござる!」
 勇者の指示に、中隊長さんとオッサンは、
「わかった!」
「わ、わかりましたです」
 そして わたしたちは神殿の中へ撤退した。



 このままNTR展開になってしまうのか!?



 悪友はお茶をすすって一息ついた。
「ハフゥー」
「なによ? 話が盛り上がってるところなのに、なんでアンニュイな雰囲気を醸し出してるのよ」
「だって、あんた結局 犯されたわけじゃないんでしょ。処女じゃなくなったら聖女の資格を失って、聖女の力もなくなっちゃうわけじゃん。だったら大魔王討伐なんてできないじゃん」
「……反論の余地のない説明をありがとう」
「まあ、いいわ。話を聞きたいって言ったのは私だし、最後まで聞いてあげる」
「ムカつくわね。クッキー 没収するわよ」
 わたしがクッキーの皿を取り上げると、悪友は身体を猫のようにくねらせて
「ああん、私とっても お話 聞きたーい。だからクッキーちょうだーい」
 ったく、この女は。


 結果がわかっている冒険って盛り上がらないね。
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