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一章・事の発端
おまけ・マンガ道
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卒業式の日からしばらくして、わたしはマンガを描き始め、一ヶ月経った今日、遂に第一話が完成した。
これを絵本などを出版している出版社に持ち込もうと思っているけれど、その前に マンガの手法がこの世界の人にも理解してもらえるかどうか、正直 不安だった。
だから、まずは友人に見て貰うことにした。
わたしは女だから、男の目線で読んで欲しいところ。
となれば 中隊長さんだ。
俺は彼女に呼ばれて館に来た。
「これが完成したマンガですわ」
彼女はマンガというものを描いているそうだ。
絵本を発展させたようなもので、こういう手法を世の中に広めたいと。
そして自分がマンガ家第一号になるのだと。
あんな酷い体験をしたのに、彼女は前向きに立ち直ろうと努力している。
そんな彼女に俺の好意や愛はますます深まっていく。
俺は早速、彼女の描いたマンガを見せてもらう。
マンガの絵は、普通の絵画や絵本とは全く異なる描写で、人物や背景の多くが簡略的にデフォルメされ、特に目が強調されて描かれている。
少し戸惑う事も多いが、しかし理解できないでもない。
そして読み進めていくうちに分かるのは、これが初恋を描いていると言う事。
学園に入学した主人公の女生徒が、遅刻しそうなので朝食のパンを口に咥えながら学校へ走っている通学途中で、先輩の男子生徒とぶつかってしまう。
そして、その男子生徒に一目ぼれした女生徒は、なんとかして男子生徒と話をするきっかけを作ろうと努力するが、中々うまくいかない。
やっと話ができたと思ったら、嬉しさのあまり舞い上がって、頭が混乱してしまい、しどろもどろになってしまう。
そんな女の子の恋の物語。
俺は読み進めていくうちに怒りがあふれてきた。
彼女は前向きに立ち直ろうとしているのだと思っていた。
だが違った。
あのゲス王子に受けた心の傷はとてつもなく深かったのだ。
こんな、いくらなんでもこれはあり得ないだろとつっこみどころありまくりのろくな青春を送れずにそのまま婚期を逃した喪女の妄想のような恋愛を描いているなど。
もう 彼女はまともな恋愛を考えることができなくなってしまったんだ!
俺はゲス王子への怒りで 拳を強く握りしめた。
爪が肉に食い込んで血が出てしまうほど。
「あの、そんなに原稿を強く握ると、シワクチャになってしまうのですが」
「え? ああ、すまない」
俺はマンガの原稿を彼女に返すと、笑顔を作る。
「俺はとても良いと思う」
「本当ですか!?」
彼女は俺の言葉に喜ぶ。
「ああ、この話は君の純真な気持ちが伝わってくるよ」
「わかりました。読んでいただいてありがとうございます」
「続きが完成したらぜひ読ませてくれ」
中隊長さんが帰宅した後、私は首を傾げる。
このマンガのどこに怒るようなところがあったのかな?
なんか感想が一人だけじゃ不安だ。
他の人にも読んでもらおう。
次は公爵令嬢だ。
わたくしは彼女に呼ばれて館へやってきた。
彼女は卒業式からマンガというものを書いているそうなのだけれども、第一話が完成したので読んで欲しいとのこと。
「ふーむ」
「ど、どうですか?」
「うーむ」
なんというか、物凄く前衛的で、理解できる人と理解できない人に大きく分かれると思う作品だった。
そして わたくしはというと、理解できない人間に分類された。
なぜですの?
どうして主人公の女生徒が一目惚れするのが汚らわしい男なの!?
男なんて不潔よ!
女は女同士で仲良くするのが一番なのよ!
相手が麗しいお姉さまだったら完璧なのに。
いったいどうして汚らわしい男なのよ!?
あのゲス王子の慰め者にされたのに、彼女はまだ男という生き物に幻想を抱いているみたい。
「描き直す必要があるわね」
「え?! 描き直しですか!?」
「ええ、描き直しよ。貴女の話には現実味がないわ。貴女、そもそも今までに恋愛したことないでしょ?」
「うっ」
「図星ね。だからこの話には現実味がないのよ」
「でも、恋愛をしたことのない私にどうすれば?」
「簡単よ。恋愛をすればいいだけの話よ」
「いや、簡単に言いますけれど、一目惚れなんてそうホイホイ起こるもんじゃないでしょう」
「そのとおりね。でも、わたくしの入れたお茶を飲めば分かるかもしれないわ。
じゃあ早速 入れるわね。ティーポットにお茶葉を一匙。お湯を注いで、わたくしが持参した隠し味を入れて」
「ちょっと待ってください。隠し味ってなんですか?」
「気にしないで。隠し味を入れたら一分待って、ティーカップにお茶を注いで、はい、召し上がれ」
「召し上がりません」
「一口だけでもごっくんと」
「しません」
「貴女、恋愛したくないの? このお茶を一口飲めばたちまち恋がなんなのか理解できるのよ」
「だから なんで お茶を飲んだだけで恋できるんですか!? なにを入れたんですか?! 隠し味と言ってなにを入れたんですか!?」
「細かいことは気にしないで。このお茶を一口飲めば 貴女はたちまち わたくしに恋をすることになるのよ。
さあ、一口だけでも。さあ。さあ!」
「ひえぇえええ!」
「ど、どこへ行くの!? お待ちなさい! お茶を一口 飲むだけですわー!」
公爵令嬢から隠れながら わたしが思う事は一つ。
彼女の感想を聞こうとしたのが間違いだった。
やっぱり正統派ヒロインじゃないと。
私は彼女に呼ばれて館へやって来た。
卒業式から彼女はマンガというものを描いているそうだ。
マンガという手法を世に広め、自分がマンガ家第一号になると。
とても辛い事が会っても、前向きに将来を見ている彼女に、私は尊敬の念を覚える。
きっと彼女なら立ち直ることができる。
私は早速 彼女の描いたマンガを読ませていただく。
その話はまるで夢物語のようだった。
偶然の出会い。
一目惚れ。
愛しい彼と話だけでもしたい恋心。
でも、いざ その時が来たら なにを話せば良いのか分からなくなってしまう純情。
私は読み進めて行くうちに涙が溢れてきた。
彼女は前向きに将来を見ていなかった。
あのゲス王子に受けた心の傷は こんなにも深かったというの!?
こんな、いくらなんでもこれはあり得ないだろとつっこみどころありまくりのろくな青春を送れずにそのまま婚期を逃した喪女の妄想のような恋愛を描いてるなんて。
痛々しくて涙が止まらない。
私は読み終えると彼女の両手を握りしめた。
「素晴らしいです! 私 感動しました!」
「そ、そう? でも、感動しすぎじゃないかしら? え? これ、泣くような所あったっけ?」
「泣き所ありまくりです! 感動のあまり涙が止まりません!」
「そ、そう、ありがとう」
「続きが完成したら絶対読ませてください!」
「わ、わかったわ」
ヒロインが帰った後、わたしは首を傾げる。
感動の仕方が間違っているような気が……
わたしは三人の……いえ、一人は除外して、二人の感想を聞いて、ともかく出版社に持ち込んでみた。
「ボツ」
マンガ家になるのはこの世界でも難しいようだ。
これを絵本などを出版している出版社に持ち込もうと思っているけれど、その前に マンガの手法がこの世界の人にも理解してもらえるかどうか、正直 不安だった。
だから、まずは友人に見て貰うことにした。
わたしは女だから、男の目線で読んで欲しいところ。
となれば 中隊長さんだ。
俺は彼女に呼ばれて館に来た。
「これが完成したマンガですわ」
彼女はマンガというものを描いているそうだ。
絵本を発展させたようなもので、こういう手法を世の中に広めたいと。
そして自分がマンガ家第一号になるのだと。
あんな酷い体験をしたのに、彼女は前向きに立ち直ろうと努力している。
そんな彼女に俺の好意や愛はますます深まっていく。
俺は早速、彼女の描いたマンガを見せてもらう。
マンガの絵は、普通の絵画や絵本とは全く異なる描写で、人物や背景の多くが簡略的にデフォルメされ、特に目が強調されて描かれている。
少し戸惑う事も多いが、しかし理解できないでもない。
そして読み進めていくうちに分かるのは、これが初恋を描いていると言う事。
学園に入学した主人公の女生徒が、遅刻しそうなので朝食のパンを口に咥えながら学校へ走っている通学途中で、先輩の男子生徒とぶつかってしまう。
そして、その男子生徒に一目ぼれした女生徒は、なんとかして男子生徒と話をするきっかけを作ろうと努力するが、中々うまくいかない。
やっと話ができたと思ったら、嬉しさのあまり舞い上がって、頭が混乱してしまい、しどろもどろになってしまう。
そんな女の子の恋の物語。
俺は読み進めていくうちに怒りがあふれてきた。
彼女は前向きに立ち直ろうとしているのだと思っていた。
だが違った。
あのゲス王子に受けた心の傷はとてつもなく深かったのだ。
こんな、いくらなんでもこれはあり得ないだろとつっこみどころありまくりのろくな青春を送れずにそのまま婚期を逃した喪女の妄想のような恋愛を描いているなど。
もう 彼女はまともな恋愛を考えることができなくなってしまったんだ!
俺はゲス王子への怒りで 拳を強く握りしめた。
爪が肉に食い込んで血が出てしまうほど。
「あの、そんなに原稿を強く握ると、シワクチャになってしまうのですが」
「え? ああ、すまない」
俺はマンガの原稿を彼女に返すと、笑顔を作る。
「俺はとても良いと思う」
「本当ですか!?」
彼女は俺の言葉に喜ぶ。
「ああ、この話は君の純真な気持ちが伝わってくるよ」
「わかりました。読んでいただいてありがとうございます」
「続きが完成したらぜひ読ませてくれ」
中隊長さんが帰宅した後、私は首を傾げる。
このマンガのどこに怒るようなところがあったのかな?
なんか感想が一人だけじゃ不安だ。
他の人にも読んでもらおう。
次は公爵令嬢だ。
わたくしは彼女に呼ばれて館へやってきた。
彼女は卒業式からマンガというものを書いているそうなのだけれども、第一話が完成したので読んで欲しいとのこと。
「ふーむ」
「ど、どうですか?」
「うーむ」
なんというか、物凄く前衛的で、理解できる人と理解できない人に大きく分かれると思う作品だった。
そして わたくしはというと、理解できない人間に分類された。
なぜですの?
どうして主人公の女生徒が一目惚れするのが汚らわしい男なの!?
男なんて不潔よ!
女は女同士で仲良くするのが一番なのよ!
相手が麗しいお姉さまだったら完璧なのに。
いったいどうして汚らわしい男なのよ!?
あのゲス王子の慰め者にされたのに、彼女はまだ男という生き物に幻想を抱いているみたい。
「描き直す必要があるわね」
「え?! 描き直しですか!?」
「ええ、描き直しよ。貴女の話には現実味がないわ。貴女、そもそも今までに恋愛したことないでしょ?」
「うっ」
「図星ね。だからこの話には現実味がないのよ」
「でも、恋愛をしたことのない私にどうすれば?」
「簡単よ。恋愛をすればいいだけの話よ」
「いや、簡単に言いますけれど、一目惚れなんてそうホイホイ起こるもんじゃないでしょう」
「そのとおりね。でも、わたくしの入れたお茶を飲めば分かるかもしれないわ。
じゃあ早速 入れるわね。ティーポットにお茶葉を一匙。お湯を注いで、わたくしが持参した隠し味を入れて」
「ちょっと待ってください。隠し味ってなんですか?」
「気にしないで。隠し味を入れたら一分待って、ティーカップにお茶を注いで、はい、召し上がれ」
「召し上がりません」
「一口だけでもごっくんと」
「しません」
「貴女、恋愛したくないの? このお茶を一口飲めばたちまち恋がなんなのか理解できるのよ」
「だから なんで お茶を飲んだだけで恋できるんですか!? なにを入れたんですか?! 隠し味と言ってなにを入れたんですか!?」
「細かいことは気にしないで。このお茶を一口飲めば 貴女はたちまち わたくしに恋をすることになるのよ。
さあ、一口だけでも。さあ。さあ!」
「ひえぇえええ!」
「ど、どこへ行くの!? お待ちなさい! お茶を一口 飲むだけですわー!」
公爵令嬢から隠れながら わたしが思う事は一つ。
彼女の感想を聞こうとしたのが間違いだった。
やっぱり正統派ヒロインじゃないと。
私は彼女に呼ばれて館へやって来た。
卒業式から彼女はマンガというものを描いているそうだ。
マンガという手法を世に広め、自分がマンガ家第一号になると。
とても辛い事が会っても、前向きに将来を見ている彼女に、私は尊敬の念を覚える。
きっと彼女なら立ち直ることができる。
私は早速 彼女の描いたマンガを読ませていただく。
その話はまるで夢物語のようだった。
偶然の出会い。
一目惚れ。
愛しい彼と話だけでもしたい恋心。
でも、いざ その時が来たら なにを話せば良いのか分からなくなってしまう純情。
私は読み進めて行くうちに涙が溢れてきた。
彼女は前向きに将来を見ていなかった。
あのゲス王子に受けた心の傷は こんなにも深かったというの!?
こんな、いくらなんでもこれはあり得ないだろとつっこみどころありまくりのろくな青春を送れずにそのまま婚期を逃した喪女の妄想のような恋愛を描いてるなんて。
痛々しくて涙が止まらない。
私は読み終えると彼女の両手を握りしめた。
「素晴らしいです! 私 感動しました!」
「そ、そう? でも、感動しすぎじゃないかしら? え? これ、泣くような所あったっけ?」
「泣き所ありまくりです! 感動のあまり涙が止まりません!」
「そ、そう、ありがとう」
「続きが完成したら絶対読ませてください!」
「わ、わかったわ」
ヒロインが帰った後、わたしは首を傾げる。
感動の仕方が間違っているような気が……
わたしは三人の……いえ、一人は除外して、二人の感想を聞いて、ともかく出版社に持ち込んでみた。
「ボツ」
マンガ家になるのはこの世界でも難しいようだ。
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