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子爵位の罠

後編

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 数ヶ月後。
「あらまあ、ベルティ伯爵家は取り潰しになりましたの。案外呆気なかったですわね」
 ロゼッタは紅茶を一口飲み、ふふっと口角を上げてラピスラズリの目を細めた。

 ベルティ伯爵家は様々な家から取り引きを打ち切られ、あっという間に困窮した。当主になったマルコの実力では何も出来ず、そのまま取り潰されるのであった。

「まあ妥当な末路じゃないかな」
 ロゼッタの隣で憐れむような笑みを浮かべているのは、彼女の新たな婚約者フェデーレ・リベルト・ディ・バルビアーニ。バルビアーニ侯爵家の長男だ。ふわふわと柔らかな癖のある赤毛にマラカイトのような緑の目の、甘い顔立ちの貴公子である。
「ロゼッタ嬢が宰相閣下の姪で、スフォルツァ子爵家は同名のスフォルツァ公爵家と縁があることに気付かないなんて馬鹿としか言いようがない」
 フッとフェデーレはマルコを嘲笑うかのようだ。
「それにしても、ロゼッタは優し過ぎるよ。あのままマルコとイメルダを結婚させるよう宰相閣下にお願いするだなんて。ラヴェニル伯爵家側には何もお咎めなしにして欲しいともお願いしたんだろう? 君は被害者だというのに」
 フェデーレは眉を八の字にして少し困ったように微笑む。
「ラヴェニル伯爵閣下はすぐにスフォルツァ子爵家と伯父様のスフォルツァ公爵家に謝罪に来てくれましたわ。相場より遥かに高い賠償金と共に、イメルダ様は好きに処分してくれて構わない、ラヴェニル伯爵領で出た利益は全てわたくし達に譲渡する条件を提示して許しを求めていらしたので」
 ロゼッタはふふっと品良く笑う。
(わたくしは優しくなんかないわ。でも、イメルダ様はどうせマルコ様と道連れで没落して不幸になるのだから、少しくらい夢を見させてあげても良いじゃない。まあそれを口にしたらフェデーレ様やお父様、お母様、お兄様はまたわたくしのことを優しいと仰るのでしょうけど)
 ロゼッタはフッと苦笑する。
 そしてハッと思い出したような表情になるロゼッタ。
「そう言えばフェデーレ様、この前伯父様に王立劇場のオペラのチケットを二枚いただきましたの」
「王立劇場の……! しかもこの演目、侯爵家の人間ですら見に行けたら幸運ってレベルのものじゃないか!」
 ロゼッタが出したチケットを見てマラカイトの目を大きく見開くフェデーレ。
「フェデーレ様と見に行ったらどうかと提案されましたわ」
 クスッと楽しそうに笑うロゼッタ。
「うん。これは是非一緒に行こう。気になっていた演目でもあるし、何よりロゼッタと一緒に出かけることが出来る」
 フェデーレは嬉しそうな表情だ。
 その表情を見て、更に嬉しそうに表情を綻ばせるロゼッタであった。
(全てこのアリティー王国宰相であって、スフォルツァ公爵家当主の伯父様のお陰ね)
 ロゼッタは伯父に感謝するのであった。

 スフォルツァ子爵令嬢ロゼッタ及びスフォルツァ子爵家を侮ってはいけない。彼女達はアリティー王国でもかなり力のあるスフォルツァ公爵家と繋がりがあるのだ。
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