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第3章 世界編

第55話 カインウェルダンジョン(2)

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その後もアンデッド系のモンスターが現れてはオーバーキルを繰り返し、罠があればアオが解除し、俺たちは苦戦することも無く最下層へ到着した。

「どうやらここがボス部屋みたいだ」

ボス部屋の大きな扉に立ちすくむ。

「行くよ…」

メリアが覚悟を決め扉を開ける。

全員が中に入ると明かりが灯る。

「ゔぁゔぁぁぁ…」

部屋の奥に巨大な人型の何かがこちらを振り向く。
部屋には異臭が漂っている。

「あいつはゾンビの親玉、キングゾンビだ…!」

「キングゾンビだって!?」

「私に任せて!」

メリアがキングゾンビに向かって突っ走る。

「待てメリア!」

アートが呼び止めるがメリアはそのままキングゾンビの頭を切り落とす。

「どうよ!こんなもん楽勝よ!」

メリアが俺たちの方を向いて自慢げに手を振る。

その時___

「メリア後ろ!」

「ん?きゃっ!」

メリアが横に吹き飛ばされる。

首を切り落としたはずのキングゾンビが再び立ち上がり、メリアに攻撃をくらわした。

キングゾンビの首は傷跡が無く、完全に再生していた。

「大丈夫かメリア!」

俺は吹き飛ばされたメリアに急いで駆け寄る。

「直前に受身を取ったから致命傷は避けたわ!でも、この怪我じゃ戦力になれないわね」

「わかった。メリアはここで安心して休んでて。
俺が必ず守るから」

「ルイス…」

メリアの顔が少し赤らむ。

「キングゾンビは物理攻撃が効かなくて凄まじい再生能力を有しているんだ」

なるほど。
だからメリアの斬撃が効かなかったわけか。
相変わらずアートの知識には助けられてるな。

「シシー、【ヘルフレイム】は使える?【ヘルフレイム】ならあいつに通用するはず」

「【ヘルフレイム】…魔力ないから使えない…」

「なっ!?」

そういえば、シシーは俺と一緒に【ファイアランス】を打ちまくってたんだっけ?

それで魔力が足りないのか…

「って、もっと自分の魔力総量考えながら魔術を使いなよ!」

「てへ…」

全くシシーってやつは!
唯一の有効打が潰れてしまった今、俺達にはキングゾンビを倒すことが出来ないのか…?

(時雨丸でも無理そう?)

〈ここら一帯を吹き飛ばしても構わんのなら可能じゃよ〉

「それは無しで」

時雨丸にも無理となると残された手は…神固有魔術【神の制裁】を使ってみるか?

でもみんなに神だとバレてしまう…

一体どうすれば…!

「みんな見てくれ!」

「ゔぁ!ゔぁゔぁぁ!」

キングゾンビがもがき苦しんでいる。

「急にどうした___あれ見て!」

アオがキングゾンビの足元を指差す。

「そうか!そういうことか!」

そこには先程の衝撃でメリアのバッグからこぼれ落ち、中身が飛び出している美容液があった。

「美容液の浄化効果が効いているのか!?
美容液で弱らせられれば【ファイアランス】でも倒せるかもしれない!」

「うそうそうそちょっと待って!」

アオが驚いたように鞄を守る。

「頼む!キングゾンビに向かって美容液をあるだけ全部投げてくれ!」

「えーこの美容液高かったのにー!
倒せなかったら絶対許さないんだからね!」

「えい…えい…」

アオは渋々、シシーは残念そうにキングゾンビに向かって美容液を投げる。

美容液はキングゾンビに直撃し、中身を散乱させる。

「ゔぁゔぁぁぁ!」

キングゾンビが顔を押えてもがき苦しむ。

「どうやらアートの推測は合ってたみたいだ」

「全部投げ終わったよ!」

「それじゃあルイス頼む!」

「任せろ!【ファイアランス】【ファイアランス】【ファイアランス】!」

俺はキングゾンビに向かって【ファイアランス】を連発する。

「ルイスの【ファイアランス】に僕の【ウィンドストーム】を合わせて炎を拡散!」

アートの放った【ウィンドストーム】は俺の【ファイアランス】を巻き込み【ファイアストーム】となる。

「ゔぁぁぁぁぁぁ!」

キングゾンビは悲鳴を上げ、塵となって消えていった。

「討伐成功だね」

「さすがアートだな」

俺とアートは拳を合わせ合う。

「それにしても、メリアに言ったあの言葉はかっこよかったね!
メリア俺が必ず守るから、だってさ!」

アオが辛かったように俺の真似をする。

「俺そんな恥ずかしいこと言ってたの!?」

あの時は無意識に守らないとって思って…
まさかこんなに恥ずかしいこと言っていたなんて…!?

俺はちらりとメリアの方を向く。

メリアもこちらを向き、目が合う。

やばいやばいなんか変に意識しちゃうんだけど!?
恥ずかしくて穴があったら入りたい…

《初回クリアのため、クリア報酬が与えられます。
奥の祭壇にお進み下さい》

俺が恥ずかしがっているとアナウンスが流れる。

「初めてのダンジョン攻略…!」

「僕達だけでダンジョンを攻略したんだ…」

アオとアートはダンジョン攻略の達成感を感じている。

「メリア大丈夫?」

俺は恥ずかしがりながらもメリアに手を差し伸べる。

「ありがとルイス!かっこよかったわよ!」

「なっ!?メリア!?」

「にひひっ」

メリアは俺をからかうように笑う。

今の言葉は本心なのか、それともからかっただけなのか…

女性ってのは難しいな…

《クリア報酬が与えられます》

「報酬…」

シシーは報酬に心を躍らせている。

祭壇の中央が光り、報酬が現れる。
各自それぞれの報酬を受け取る。

俺の報酬はいつも通り神の欠片だ。

《報酬の受け取りが完了したので帰還します》

目の前が光に包まれ地上に送還される。


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