上 下
20 / 65
第1章 転生編

第20話 登録試験

しおりを挟む



闘技場の中央には剣を肩に乗せた銀髪の男が立っていた。

この人なんか誰かに似ているような…
今はそんなの気にしている場合じゃないか。
戦いに集中しないと!

「ほんとにやるのか?」

銀髪の男が俺に問いかける。

「やらせてください!」

「言っとくが、手加減はなしだぜ」

手加減なんていらない。
自分の力がどれだけ通用するのか試したいしね。

久しぶりに本気を出しますか!

「お願いします!」

俺は剣を鞘から抜き構える。

「ほぅ、剣の持ち方、構え方、相当修行を積んでるな」

こちとら1年間鬼スパルタ筋肉と修行したんだ。
その成果を見せてやる!

「はぁ!」

俺は地面を強く踏み込み試験官に駆け寄る。

「スピードもなかなかいい」

俺は後ろに回り込み切り上げる。

カキンッ

試験官はノールックで剣を止める。

「狙いはいいが、俺には通用しねぇぞ?」

試験官は身体を捻り蹴りのモーションに入る。

蹴りが来る!

俺は蹴りを避けるためにしゃがむ。

「残ねーん、フェイントでした」

蹴りを放とうとしていた足で踏み込み、逆足で蹴りを放つ。

「くっ!」

俺は咄嗟にガードをして防いだ。

ガードをしていた腕がじんじんする。
1発喰らっただけなのにすごい威力だ。

「君強いから俺も職を使って戦えそうだ」

試験官は剣を前に突き出す。

「モードチェンジ【フレイムソード】!」

試験官の剣が炎に包まれる。

「俺の職は『魔剣士 幻想級』だ」

幻想級!?
初めて幻想級の人を見た。
この威力にあの身のこなし、そりゃ強いわけだ。

俺もそろそろ本気出しますかね!

「僕の職は『荷物持ち 有能級』です」

「初めて聞く職だな…どんな職か楽しみだ!いくぞ!」

試験官が剣を振る。

まだ距離全然あるのに何をして___

「うおっと!」

炎を纏った剣から炎の斬撃が飛んできており、間一髪のところで躱す。

「今のを避けるか、初見殺しのはずなんだけどな」

「では僕も」

俺は自慢の脚力で試験官に接近する。

「はぁ!」

俺は分かりやすく剣を大振りで振り下ろす。

「雑になってないか?そんなのばれば___なっ!」

試験官は俺の剣を防ごうと剣を構えていたが、剣がぶつかり合う音は鳴らず、気づけば俺の剣が試験官の喉元に当てられていた。

「何が起きたんだ…?」

「ふっふっふ、僕の初見殺しは見破れなかったみたいですね」

「まるで剣がすり抜けたような…」

そう、簡単に言うと剣がすり抜けたのだ。

使ったのは俺の職の能力である【収納】と【取り出し】だ。

剣を分かりやすく振ることで相手にガードさせる。

そして相手の剣に当たる瞬間に俺の剣を【収納】する。

相手はガードしたと思っているが、その時にはもう俺の手には剣は握られていない。

そして相手の剣を通り過ぎた時に、亜空間から剣を【取り出し】する。

一瞬の間で【収納】と【取り出し】を行えばすり抜ける斬撃の完成だ。

物をしまったり取り出したりするだけかと思ったが、戦闘にも使えるとはな。

思ったよりこの能力チートだぞ?
さすが神といったところだ。

「負けた…?あの魔剣士ヘルバー様が…?」

結果を見ていた受付嬢が驚いている。

「俺の負けだな。お前のランクはそうだな…もうSランクでいいんじゃねぇか?
なぁ嬢ちゃん?」

「んえ?Sランク!?」

なんで急にSランクまで!?
Sランクって1番上のランクだよね!?そんな軽く決めちゃっていいの!?

「Sランクはさすがにやりすぎじゃ…」

「いや、Sランク冒険者である俺に1本取ったんだ。実力も申し分ないしな」

「え!?Sランク冒険者!?」

なんでこんな新人の査定にSランクが!?

まさかあの時…!

俺は受付嬢の方に視線をやる。

「あ…えと…これはケイン様の意思でして…」

やっぱりか。
Sランクを動かせる権力を持っているし、あの人ならやりかねない。

あの時こそこそ話していたのはこれだったのか。

全くやってくれたな。

「では、正式にSランク冒険者として冒険者カードをお作りするので少々お待ちください」

受付嬢は駆け足で戻って行った。

「お前名前は?」

ヘルバーと言われる男が俺に聞く。

「ルイストリア・フールです」

「フール…どこかで聞いたようなー…思い出せねえや。
俺はヘルバー。ヘルバー・ハムギルだ」

ハムギル!?
アシュー師匠と同じじゃないか!

「もしかしてアシューラント・ハムギルって知ってますか?」

「アシュー?アシュー姉ちゃんのことか?なんでお前が知ってるんだ?」

やっぱり兄弟なんだ!

「アシュー師匠には1年間修行をつけてもらいました」

「なるほどな…さすが姉ちゃんが見込んだやつだぜ。
それなら強いのも納得だ」

最初見た時誰かに似ているなと思ったけど、ヘルバーさんはアシュー師匠の弟だったのか。

元Sランクの姉と現Sランクの弟って、ハムギル家凄すぎないか?



それからヘルバーさんと少し話していると、受付嬢が駆け足で戻ってきた。

「ルイス様!今から組長と会ってくださいますか?」

「うわー、ギルドマスターから呼ばれるなんて最悪だなルイス」

ヘルバーがすごく嫌そうな顔をする。

「あ、ヘルバー様も一緒ですよ」

「っ!?なんで俺もなんだよ!」

「戦闘の様子を説明して欲しいとかで…」

ヘルバーさんがあんな顔をするなんて、ギルドマスターは一体どんな人なのだろう。

「ルイス様もよろしいですか?」

「はい、大丈夫です」

「ではついてきてください」

俺とヘルバーさんは受付嬢について行った。


しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

成長チートの元賢者、剣士を目指します。

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:29

2025年何かが起こる!?~予言/伝承/自動書記/社会問題等を取り上げ紹介~

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:33,334pt お気に入り:74

【完結】私がいなくなれば、あなたにも わかるでしょう

nao
恋愛 / 完結 24h.ポイント:603pt お気に入り:901

さげわたし

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:2,332pt お気に入り:1,233

成長チートと全能神

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:224

双子の妹は私に面倒事だけを押し付けて婚約者と会っていた

恋愛 / 完結 24h.ポイント:3,807pt お気に入り:1,651

王子を助けたのは妹だと勘違いされた令嬢は人魚姫の嘆きを知る

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,515pt お気に入り:2,675

早見さん家の異世界姉妹飯

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:35pt お気に入り:4

処理中です...