上 下
1 / 1

ボックスティッシュ人間・ジョン

しおりを挟む
 ボックスティッシュが街を行く。トコトコトコトコ街を行く。

「きゃあかわいい~。」

「ボックスティッシュが歩いているわ~。」

 パシャパシャパシャパシャ

「は?かわいくねぇよ。きめぇよ。」

 お、酷い言葉が聞こえてくるぞ。

「きもいかもしれないけど、かわいいわ。きもかわいいわよ。きもかわよ。」

 お、なんだか褒められているな。嬉しいな。嬉しいな。

 トコトコトコトコ街を行く。トコトコトコトコ街を行く。

「かわいいわあ!!かわいいわあ!!」

「素敵!!素敵ぃっ!!」

 いつの間にか、人々の群れが出来ている。すごい群れだ。すごい、すごい。

 ピピーッ!!ピーッピーッ!!

 これは警察が笛を吹く音。警察が笛を吹く音だ。

「このあたりでボックスティッシュが歩いているとの通報を受けた。知っているものは手をあげなさーい。ん、人だかりが出来ている。あれか、怪しい怪しい。ちょっと退けなさーい。退けなさーい。」

 ワーワーワーワーワーワーワーワーワーワー

 人混みに穴ができ、警察が入ってくる。

「君、ボックスティッシュだね。」

 凛々しいイケメンの警官が声をかけてきた。

「........。」

「君、ボックスティッシュだね?」

「.......。」

「答えなさい!!」

 怒鳴ってきた。怖い。

「ちょっと待ちなさい!!ほれ!!ほれ!!」 

 後ろからなんかしわがれた声が聞こえてきた。若い警官を押し除け、眼鏡をかけた白髪の老人がやってきた。

「ちょっと、なんですかあなたは。」

 動揺する警察官。

「私はこういうものじゃよ。」

 手帳を取り出すおじいさん。警察手帳?みたいだ。

「なになに、『警視庁鑑識課 カン・シキシキ』ですとな。これはこれは、失礼致しました。」

 顔を引っ込める警察官。虫眼鏡のようなものを取り出し私を観察するカン・シキシキ。

「ふーむ。これはボックスティッシュではないなあ。おそらく人間だろう。」

「そ、そうなんですね!!それは失礼致しやしたー!!!」

 タタタタタタタタッ!!

 慌てて走り去る若い警官。そう、その通り。私はボックスティッシュ人間・ジョン。そして、ボックスティッシュ人間・まさみを探している。今まで全くヒントを得られていなかったが、得られるかもしれない。この老人なら、この老人なら何かを知っているかもしれない。

「あの、あのすみません。ボックスティッシュ人間・まさみを知りませんか?ボックスティッシュ人間、ボックスティッシュ人間・まさみ。」

「あぁ、まさみか、、、。」

 遠い目をする、老人。

「そうだっ!!」

 突然何か思い出したのか、こちらを見つめる。太くて白い眉毛、老人独特の、力強い目。

「西へ、西へ行きなさい。」

 そういうと、カン・シキシキは後ろを向き去っていった。カンフー仙人のような、濃厚な趣があった。

 西へ行こう。

 私はそう決めた。西へ、西へ歩いてゆく。一人孤独に歩いてゆく。

 トコトコトコトコトコトコトコトコトコトコ

 しばらくゆくと、ドラッグストアがあった。なにか、感じる。第六感が、唸っている。入店。

「いらっしゃいませー。」

 店員の元気な声。私はボックスティッシュ売り場へ一直線。様々なボックスティッシュが並べられている。この中にボックスティッシュ人間・まさみがいるかもしれない。しかし、わからない。どうなのだろうか。店員さんに聞いてみよう。

「ボックスティッシュ人間・まさみはありますか?」

「そこになかったらないですね。」

 完
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

私はネコ・名前は一応在る・にや

パラレル・タイム
大衆娯楽
主人公とネコのミー子とのドタバタ的日常

貧乏人と金持ちの熾烈な友情

ポルネス・フリューゲル
大衆娯楽
声を失った森ヶ崎純也(もりがさきじゅんじ) 自称、若干20歳。 彼は父親の経営していた。 ライブハウス「HOTTEI HOUSE」で歌っていた。 しかし、父親の森ヶ崎談九郎(もりがさきだんくろう)がある時、秘密結社の「テクノポリス」のゴロツキの口車にいいように乗せられ、交わしてはいけない契約を交わしてしまった。 そして挙げ句の果てに1億円に登る借金を背負い父親は失踪してしまう。 一方で、いつも、退屈して暇を持て余していた証券会社の代表取締役会長の角田斬九郎(つのだざんくろう)50歳と森ヶ崎純也がとある日出逢ってしまう。 ほんの些細な出来事で2人に友情のドラマが待ち受ける。 それでは!よッ!!!

亀と千代さんの徒然なる日々

チェンユキカ
大衆娯楽
この穏やかな日々が、いつまでも続くと思っていたのに……。 『亀』は、一人暮らしの老婦人・千代さんと何年も一緒に暮らしている。 時々尋ねてくる友人や息子家族とのやりとり、一人で気ままに過ごす姿、亀は千代さんのことをずっと見守っていた。 亀は気付いていなかった。ただただ平穏に流れる二人の時間に、いつか終わりが来ることを……。

海に漂う亡霊

一宮 沙耶
大衆娯楽
会社でおきた恐怖体験。夜1人でお読みください。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

鎖の少年

MEIRO
大衆娯楽
【注意】特殊な小説を書いています。下品注意なので、タグをご確認のうえ、閲覧をよろしくお願いいたします。・・・特殊な女性が集まる、とあるお屋敷のお話です。

その時まで

鈴木まる
大衆娯楽
村に一人暮らしの偏屈な小次郎爺さん。彼は桜が嫌いだと言う。ひょんなことから村の少年・弥助(やすけ)は、その理由を聞くことになる。

This is a peeeen!!

有箱
大衆娯楽
いつものようにウオコは、日記に好きな男子の事を綴っていた。すると、どこからか聞いた事もない声が聞こえてくる。恐ろしくなりながらもよく聞くと、手に持っているペンから発せられていると気付いて……? 突如喋りだしたお喋りペンと、サバサバ系女子の不器用な恋の物語。……多分。

処理中です...