どんでん返し

salmon mama

文字の大きさ
1 / 1

どんでん返し

しおりを挟む
「ラスト3分!!衝撃のどんでん返し!!」

 なんだか、ありがちな宣伝文句だな。今週公開された映画、「ラスト3分のどんでん返し」。なんとタイトルにどんでん返しを入れている。なんてこった。宣伝文句にどんでん返しを入れていることはまあ良くあるのだろうが、タイトルにまでどんでん返しを入れていることは滅多にない。余程すごいどんでん返しが待っているのだろう。楽しみだ。どんな映画なのかはわからないが、取り敢えずどんでん返しはあるのだろうな。間違いない。

 ザワザワ、ザワザワ

 映画館。どうやら満員のようだ。やはり「ラスト3分のどんでん返し」すごい映画なのかもしれない。レビューなどは何も見ずに来た。恐らく多くの人がそうなのではないだろうか。空気の読めないやつのネタバレレビューを誤って読んでしまうかもしれないのだから。ただ、上映時間は1時間35分と書いてあった。ちょっと短めだろうか。濃密な映画なのだろう。とても楽しみだ。

 プオーーーーン

 上映が始まる。

 サラサラサラサラサラ、サラサラサラサラ

 川が流れている。美しい綺麗な川だ。いい川、グッドリバー。癒される、癒される川だ。

「川です。癒されましょう。」

 柔らかい女性の声。癒される。ああ、癒される。さあ、どんな展開が待ち受けているのか。

 サラサラサラサラ、サラサラサラサラ

 ずっと、流れている。水面がキラキラと太陽の光を反射して輝いている。ちょっと退屈だな。

 サラサラサラサラ、サラサラサラサラ

 もう20分も経過した。だるすぎる。しかし最後の3分はすごいのだろう。きっと。

 サラサラサラサラ、サラサラサラサラ

 1時間が経過した。ただ、川が流れている。退屈だ。

 サラサラサラサラ、サラサラサラサラ

 さあ、ラスト3分だ。何が起こるのだろうか。おい、早くどんでん返しを見せてくれ。

 サラサラサラサラ、サラサラサラサラ

 残り1分。

「どんでん返しはありません。どんでん返しがないというのが、この映画のどんでん返しです。」

 ジャーーーーーーーーーンッ!!

 女性のアナウンスが入り映画が終わった。クソだ。クソ映画じゃないか。席を立とう。

 パチパチパチパチパチパチパチパチ!!

「ブラボーーーーー!!」

「最高よ!!最高!!」

 んん、、なんだ。なんだ。

「うぅっ、、いい映画だった、、、いい映画だった、、、、、。」

 パチパチパチパチ、パチパチパチパチ

 感極まっている。周囲の人がみな感極まっている。鳴り止まない拍手。私だけか。私が異質なのか。

「うぅっ、、、うぅうぅうぅ、、、どんでん返しが無いのがどんでん返しなんて、、、うぅっ、、うぅうぅうぅっ、、、。」

 隣の人はハンカチを取り出して涙している。誰も席を立たない。謎だ。私だけだ。取り敢えずこんなところに長居はしたくない。

「ブラボー!!ブラボー!!」

 ギャーギャーギャー!!

 ワーワーワーワーワー!!

 パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ

 耳が割れてしまいそうだ。なんだか呼吸も苦しくなる。早く出なければ。大量の虫の羽音みたいな、拍手。席を立つ。

 スタッ

 音が消えた。床が抜けたような感覚に陥る。なんだ。後ろを振り向く。さっきまで拍手をしていたはずの人々はマネキンみたいに固まってじっとスクリーンを見ている。老若男女。みんな、じっと手を膝の上に。早く出なければ。

 タンタンタンタン、タンタンタンタン

 一段一段上がっていく。震えを抑えて。扉は既に開いている。永遠に感じる。周囲の人々は薄暗い中背筋をピンと伸ばし、前をじっと見つめている。私の足音だけ響き渡る。ああ、やっと登り切れた。劇場から足を踏み出したその時。

 パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ

 再び、割れんばかりの拍手。反射的に振り返る。

 パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ

 さっきまで前を見ていた人々が、ニコッと笑ってこっちを見ている。虫みたいな目で見ている。全員、マネキンみたいな笑顔だ。

 パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ

 前方からも拍手が。受付の女だ。若い受付の女も同じように、拍手している。ここにいてはいけない。

 ダダダダダダッ

 転びそうになりながらもなんとか階段を駆け下り、街へ出る。街はいつも通り。車が走っている。人々もいつも通り歩いているように見える。なんだったんだ、さっきのは。

 家に帰る。

「おかえり。」

 妻が迎えてくれる。いつも通りの風景のはずだが、何か違う気がする。何か、何か、、、。

 完
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)

MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。

意味がわかると怖い話

邪神 白猫
ホラー
【意味がわかると怖い話】解説付き 基本的には読めば誰でも分かるお話になっていますが、たまに激ムズが混ざっています。 ※完結としますが、追加次第随時更新※ YouTubeにて、朗読始めました(*'ω'*) お休み前や何かの作業のお供に、耳から読書はいかがですか?📕 https://youtube.com/@yuachanRio

意味が分かると怖い話【短編集】

本田 壱好
ホラー
意味が分かると怖い話。 つまり、意味がわからなければ怖くない。 解釈は読者に委ねられる。 あなたはこの短編集をどのように読みますか?

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

後宮の男妃

紅林
BL
碧凌帝国には年老いた名君がいた。 もう間もなくその命尽きると噂される宮殿で皇帝の寵愛を一身に受けていると噂される男妃のお話。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

処理中です...