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どんでん返し
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「ラスト3分!!衝撃のどんでん返し!!」
なんだか、ありがちな宣伝文句だな。今週公開された映画、「ラスト3分のどんでん返し」。なんとタイトルにどんでん返しを入れている。なんてこった。宣伝文句にどんでん返しを入れていることはまあ良くあるのだろうが、タイトルにまでどんでん返しを入れていることは滅多にない。余程すごいどんでん返しが待っているのだろう。楽しみだ。どんな映画なのかはわからないが、取り敢えずどんでん返しはあるのだろうな。間違いない。
ザワザワ、ザワザワ
映画館。どうやら満員のようだ。やはり「ラスト3分のどんでん返し」すごい映画なのかもしれない。レビューなどは何も見ずに来た。恐らく多くの人がそうなのではないだろうか。空気の読めないやつのネタバレレビューを誤って読んでしまうかもしれないのだから。ただ、上映時間は1時間35分と書いてあった。ちょっと短めだろうか。濃密な映画なのだろう。とても楽しみだ。
プオーーーーン
上映が始まる。
サラサラサラサラサラ、サラサラサラサラ
川が流れている。美しい綺麗な川だ。いい川、グッドリバー。癒される、癒される川だ。
「川です。癒されましょう。」
柔らかい女性の声。癒される。ああ、癒される。さあ、どんな展開が待ち受けているのか。
サラサラサラサラ、サラサラサラサラ
ずっと、流れている。水面がキラキラと太陽の光を反射して輝いている。ちょっと退屈だな。
サラサラサラサラ、サラサラサラサラ
もう20分も経過した。だるすぎる。しかし最後の3分はすごいのだろう。きっと。
サラサラサラサラ、サラサラサラサラ
1時間が経過した。ただ、川が流れている。退屈だ。
サラサラサラサラ、サラサラサラサラ
さあ、ラスト3分だ。何が起こるのだろうか。おい、早くどんでん返しを見せてくれ。
サラサラサラサラ、サラサラサラサラ
残り1分。
「どんでん返しはありません。どんでん返しがないというのが、この映画のどんでん返しです。」
ジャーーーーーーーーーンッ!!
女性のアナウンスが入り映画が終わった。クソだ。クソ映画じゃないか。席を立とう。
パチパチパチパチパチパチパチパチ!!
「ブラボーーーーー!!」
「最高よ!!最高!!」
んん、、なんだ。なんだ。
「うぅっ、、いい映画だった、、、いい映画だった、、、、、。」
パチパチパチパチ、パチパチパチパチ
感極まっている。周囲の人がみな感極まっている。鳴り止まない拍手。私だけか。私が異質なのか。
「うぅっ、、、うぅうぅうぅ、、、どんでん返しが無いのがどんでん返しなんて、、、うぅっ、、うぅうぅうぅっ、、、。」
隣の人はハンカチを取り出して涙している。誰も席を立たない。謎だ。私だけだ。取り敢えずこんなところに長居はしたくない。
「ブラボー!!ブラボー!!」
ギャーギャーギャー!!
ワーワーワーワーワー!!
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ
耳が割れてしまいそうだ。なんだか呼吸も苦しくなる。早く出なければ。大量の虫の羽音みたいな、拍手。席を立つ。
スタッ
音が消えた。床が抜けたような感覚に陥る。なんだ。後ろを振り向く。さっきまで拍手をしていたはずの人々はマネキンみたいに固まってじっとスクリーンを見ている。老若男女。みんな、じっと手を膝の上に。早く出なければ。
タンタンタンタン、タンタンタンタン
一段一段上がっていく。震えを抑えて。扉は既に開いている。永遠に感じる。周囲の人々は薄暗い中背筋をピンと伸ばし、前をじっと見つめている。私の足音だけ響き渡る。ああ、やっと登り切れた。劇場から足を踏み出したその時。
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ
再び、割れんばかりの拍手。反射的に振り返る。
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ
さっきまで前を見ていた人々が、ニコッと笑ってこっちを見ている。虫みたいな目で見ている。全員、マネキンみたいな笑顔だ。
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ
前方からも拍手が。受付の女だ。若い受付の女も同じように、拍手している。ここにいてはいけない。
ダダダダダダッ
転びそうになりながらもなんとか階段を駆け下り、街へ出る。街はいつも通り。車が走っている。人々もいつも通り歩いているように見える。なんだったんだ、さっきのは。
家に帰る。
「おかえり。」
妻が迎えてくれる。いつも通りの風景のはずだが、何か違う気がする。何か、何か、、、。
完
なんだか、ありがちな宣伝文句だな。今週公開された映画、「ラスト3分のどんでん返し」。なんとタイトルにどんでん返しを入れている。なんてこった。宣伝文句にどんでん返しを入れていることはまあ良くあるのだろうが、タイトルにまでどんでん返しを入れていることは滅多にない。余程すごいどんでん返しが待っているのだろう。楽しみだ。どんな映画なのかはわからないが、取り敢えずどんでん返しはあるのだろうな。間違いない。
ザワザワ、ザワザワ
映画館。どうやら満員のようだ。やはり「ラスト3分のどんでん返し」すごい映画なのかもしれない。レビューなどは何も見ずに来た。恐らく多くの人がそうなのではないだろうか。空気の読めないやつのネタバレレビューを誤って読んでしまうかもしれないのだから。ただ、上映時間は1時間35分と書いてあった。ちょっと短めだろうか。濃密な映画なのだろう。とても楽しみだ。
プオーーーーン
上映が始まる。
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川が流れている。美しい綺麗な川だ。いい川、グッドリバー。癒される、癒される川だ。
「川です。癒されましょう。」
柔らかい女性の声。癒される。ああ、癒される。さあ、どんな展開が待ち受けているのか。
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ずっと、流れている。水面がキラキラと太陽の光を反射して輝いている。ちょっと退屈だな。
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もう20分も経過した。だるすぎる。しかし最後の3分はすごいのだろう。きっと。
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1時間が経過した。ただ、川が流れている。退屈だ。
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さあ、ラスト3分だ。何が起こるのだろうか。おい、早くどんでん返しを見せてくれ。
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残り1分。
「どんでん返しはありません。どんでん返しがないというのが、この映画のどんでん返しです。」
ジャーーーーーーーーーンッ!!
女性のアナウンスが入り映画が終わった。クソだ。クソ映画じゃないか。席を立とう。
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「最高よ!!最高!!」
んん、、なんだ。なんだ。
「うぅっ、、いい映画だった、、、いい映画だった、、、、、。」
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感極まっている。周囲の人がみな感極まっている。鳴り止まない拍手。私だけか。私が異質なのか。
「うぅっ、、、うぅうぅうぅ、、、どんでん返しが無いのがどんでん返しなんて、、、うぅっ、、うぅうぅうぅっ、、、。」
隣の人はハンカチを取り出して涙している。誰も席を立たない。謎だ。私だけだ。取り敢えずこんなところに長居はしたくない。
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音が消えた。床が抜けたような感覚に陥る。なんだ。後ろを振り向く。さっきまで拍手をしていたはずの人々はマネキンみたいに固まってじっとスクリーンを見ている。老若男女。みんな、じっと手を膝の上に。早く出なければ。
タンタンタンタン、タンタンタンタン
一段一段上がっていく。震えを抑えて。扉は既に開いている。永遠に感じる。周囲の人々は薄暗い中背筋をピンと伸ばし、前をじっと見つめている。私の足音だけ響き渡る。ああ、やっと登り切れた。劇場から足を踏み出したその時。
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前方からも拍手が。受付の女だ。若い受付の女も同じように、拍手している。ここにいてはいけない。
ダダダダダダッ
転びそうになりながらもなんとか階段を駆け下り、街へ出る。街はいつも通り。車が走っている。人々もいつも通り歩いているように見える。なんだったんだ、さっきのは。
家に帰る。
「おかえり。」
妻が迎えてくれる。いつも通りの風景のはずだが、何か違う気がする。何か、何か、、、。
完
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