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【コメディ】一休さん 第2話「眠れる虎」
しおりを挟む一休たちがセントラルシティの食堂で夕食を食べていると、隣の席からこんな会話が聞こえてきました。
「おい、聞いたか?義満大臣が、何やら人を募集してるらしいぜ」
「ああ、知ってるよ。どうやら衝立に描かれた虎が夜な夜な出てきては、街に繰り出して人を襲うらしい」
「その虎を捕まえろ、なんて無理な話だよな」
「でも、報酬金が1億だろ?俺、やってみよっかな」
守銭奴である一休は、その会話を聞き耳を立てて聞いてました。
一「聞いたか、みんな?」
じゅう「報酬1億か。当分遊んで暮らせるな」
ぼく「でも、描かれた虎を捕まえるなんて、無理でしょ」
ちん「いや、一休さんならなんとかなるんじゃない?」
一「面白そうだ。いっちょ行ってみよう」
翌日、一休たちを乗せたF40は義満たちがいる都に向かいました。途中で大きな川が道を遮り、向こうに渡ることができません。
ぼく「あれ?行き止まり?」
ちん「いや、あそこに橋があるぞ」
橋まで車を走らせると、そこにはこんな看板がたってました。
「このはしわたるべからず」
じゅう「どうやら、ここは渡れないみたいだな」
一「いや、渡れる」
じゅう「え?」
一「簡単さ。”このはし”。つまり、橋の端っこは渡っちゃいけない訳だ。でも、橋の真ん中なら通っていいってことだろう」
ちん「でも、だとしたらどういう理由で端っこだけ渡れないの?」
ぼく「端っこだけ老朽化してるってことかもよ」
じゅう「じゃあ、真ん中を走るぜ。本当にいいんだな?」
車は橋の真ん中を走り出しました。すると、”バキバキ!”という音を立てて、川の中に崩れ落ちました。
数日後、4人は都の病院の中で目を覚ましました。
「こ、ここは?」
「病院ですよ」と医者。
「えっと、俺たちは一体?」
「どうやら、あそこの橋を渡ったみたいですね。あの橋は老朽化が進んで、来月取り壊される予定でした。子供でも読めるように”ひらがな”で書いてたんですよ。」
「真ん中は通れるって意味じゃなかったのか・・・。」
「とにかく、都は大騒ぎですよ。フェラーリが急に橋に向かって突っ込んで、川に落下した訳ですから。特に、一休さん。あなた、大臣にお呼ばれですよ」
「義満公が?一体何の用で?」
「わかりません。目が覚めたら会いに来るよう伝えてくれ、と頼まれました。」
「そうか・・・。よし、早速行ってみよう」
一休たちは義満に会いに花の御所に行きました。
「おお、よくぞ来てくれた」
「私のことを知ってるんですか?」
「いや、知らん。お主らの様に、あの橋を渡るものを探していたのだ」
義満によると、あの看板は「真ん中は渡れる」と解釈するトンチの効いた人物を探すために書かれたという、2つの意味があったらしい。
「そこでだ。私は衝立の虎を捕まえてくれる人物を探している」
「描かれた虎を捕まえるのなんて、無理ですよ」
「そこをどうにかしてほしい。報酬は1億やる。ついでに、壊れた車の新車もくれてやろう」
「・・・わかりました。やりましょう。では、義満殿。これから私たちは虎と死闘を繰り広げるので、しばらくの間どこかへ行っててください」
「うむ。では、これから”大人の花の御所”へ行って参る。45分ほどしたらまた来よう」
「義満殿ともあろう方が何をおっしゃる!90分で、どうぞゆっくりして来て下さい」
「では、そうしよう。頼んだぞ、一休たちよ」
義満がいなくなったのを見計らって、一休はみんなに言いました。
一「ぼくねんとじゅうねん、これと同じ衝立を買って来てくれ」
ぼく「いいけど、なぜ?」
一「いいから。それからちんねんは、この衝立をレンタカーまで一緒に運んでくれ」
ちん「ああ、いいけど・・・。一体、何を考えてるんだい?」
90分が経ち、義満が家に戻って来ました。
「いやぁ、あの店なかなかサービスがよかった。褒めてつかわす。それで、一休たちよ。虎は退治できたか?」
「衝立をみて下さい」
衝立からは虎の絵が消えてました。
「おお、天晴れじゃ。あの虎は、夜に出て来ては街の人を襲っては困らせていた。捕まえるのは苦労したろ?」
「ええ、まあ。それで、報酬の方は?」
「それなら、街の外に車と一緒に用意してある。遠慮せず持っていくがよい。ところで、虎はどこに処分したのだ?」
「虎には永遠に眠ってもらおうと、ある場所に行ってもらいました」
「ほう・・・?2度とここへは来ないな?」
「ええ、絶対に来ません」
「それならよき」
一休たちは褒美の車に乗って、走り出しました。
ぼく「しかし、衝立を取り替えるなんてよく思いつきましたね」
じゅう「でも、古い衝立はどうしたんだい?」
ちん「それは・・・・」
一「まあ、いいじゃないか。金が手に入ったし、パーッと美味いもんでも食いに行こうぜ!」
~その頃、暗黒寺~
「・・・ふう。セキュリティは変更したし、あいつらがここへ帰ってくることもないだろう。さてと、別な場所に隠してた財産をこの金庫に入れておこう。・・・ん?なんだ、この衝立は?・・・・ぎゃあああ!!!」
金庫を開けた途端、和尚は虎によって金庫の中に引きずり込まれました。そのままオートロック式の金庫は閉まってしまい、その後和尚と虎を見かけたものは誰もいませんでした。
一休さん 第2話「眠れる虎」 ~完~
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