3 / 6
ヒト結び
1-2.未知なる旅路
しおりを挟む
長野までの道は自然に溢れていた。山の緑、坂道の木漏れ日、トンネルを抜けると突然広がる青空。セミ達の鳴き声が県境付近からミーンミーンと聞こえだし、季節の変わり目を感じさせる。
クーラーが効いていても、未だ暑い車内。駿が突然妙なことを聞いてきた。
「ところで、今はいいけど長袖の服は持ってきたよな?」
「引っ越しみたいなもんだから持ってきてるよ。」
「愛知じゃ朝でも夜でも暑かったが、向こうじゃ夜になると寒くなるからな。人によってはこの時期なのにまだコタツを出したままの人もいる。」
「おいおい、もう春を越した初夏だぜ?流石にそれは冗談だろ?」
「本当だ。向こうは涼しいどころか夜中天然のクーラーつけっぱなしだから、防寒対策しておかないと風邪引くぞ。」
「これから行くところは山の中にあるから、結構冷えるのよ。山を降りた市街の方なら愛知と変わらないけどね。」
彩までこう言う始末だ。
「もちろん冬はずっと冷えっぱなし。近くにはスキー場もあるからうちの温泉の仕事もそれなりに儲かるってわけだ。」
駿はニヤつきながら言う。
「そういえば具体的に聞いてなかったけど、観光地経営の手伝いってもしかして温泉のこと?」
「それもあるけど、他にもキャンプ場管理や地元の宣伝活動や環境整備とかいろいろあるから忙しくなるぞ。」
「人の対応だけじゃなく、自然環境を守ったり災害時の対応もしなきゃいけないからな。」
田舎はゆっくりできるイメージがあったけど、どうやら仕事の話になるとやることは山積みのようだ。
「湖霧市で休憩するんだし、その時に買いましょう。」
湖霧市は夕霧邸から近い市街だ。大きな湖があり、遊覧船やボート、釣りなどが楽しめる観光スポットにもなっている。天気が良い日は大きな湖には山が反射して写り、絶景となるのだとか。
湖霧の高速道路を降りて、激安ショップのドン・グリホーテで長旅の休憩と買い物をするのだった。そこで駿と彩の知り合いの少し若々しいおじさんと出会った。
「やぁ、駿さんお久しぶり。彩ちゃんもしばらく見ないうちにずいぶんキレイになったね。」
「もう徳松さんったら相変わらず口がうまいんだから。」
彩が少し恥ずかしそうに答える。
「今日は数年ぶりの里帰りなんです。」
そう答えると徳松さんは俺をチラっと見て、彩に訊ねた。
「そうか、今年か……ということはもしかして彼が……」
「はい。」
彩は急に真顔になって答えた。
「そうか大変だろうけど、頑張ってな。」
徳松さんは俺に語りかけてきた。仕事の事と思い、やる気をアピールするように、「はい!」と笑顔で元気いっぱいに答えた。しかし、徳松さんの反応は薄かった。
「それではそろそろ行きますので。」
駿が徳松さんにそう伝え、買い物に向かった。
一体何の話をしてたんだろう?もしかして俺の想像を超えるほど忙しい職場ということなのだろうか……。
彩と駿の顔を少し伺うと先ほどまで車でワイワイしていた顔が強張っていた。
二人のその姿をみて少し不安になり車内移動中、目にした神社や道祖神に『労働基準法が守られた安全な職場でありますように』
と、心のなかで祈った。
クーラーが効いていても、未だ暑い車内。駿が突然妙なことを聞いてきた。
「ところで、今はいいけど長袖の服は持ってきたよな?」
「引っ越しみたいなもんだから持ってきてるよ。」
「愛知じゃ朝でも夜でも暑かったが、向こうじゃ夜になると寒くなるからな。人によってはこの時期なのにまだコタツを出したままの人もいる。」
「おいおい、もう春を越した初夏だぜ?流石にそれは冗談だろ?」
「本当だ。向こうは涼しいどころか夜中天然のクーラーつけっぱなしだから、防寒対策しておかないと風邪引くぞ。」
「これから行くところは山の中にあるから、結構冷えるのよ。山を降りた市街の方なら愛知と変わらないけどね。」
彩までこう言う始末だ。
「もちろん冬はずっと冷えっぱなし。近くにはスキー場もあるからうちの温泉の仕事もそれなりに儲かるってわけだ。」
駿はニヤつきながら言う。
「そういえば具体的に聞いてなかったけど、観光地経営の手伝いってもしかして温泉のこと?」
「それもあるけど、他にもキャンプ場管理や地元の宣伝活動や環境整備とかいろいろあるから忙しくなるぞ。」
「人の対応だけじゃなく、自然環境を守ったり災害時の対応もしなきゃいけないからな。」
田舎はゆっくりできるイメージがあったけど、どうやら仕事の話になるとやることは山積みのようだ。
「湖霧市で休憩するんだし、その時に買いましょう。」
湖霧市は夕霧邸から近い市街だ。大きな湖があり、遊覧船やボート、釣りなどが楽しめる観光スポットにもなっている。天気が良い日は大きな湖には山が反射して写り、絶景となるのだとか。
湖霧の高速道路を降りて、激安ショップのドン・グリホーテで長旅の休憩と買い物をするのだった。そこで駿と彩の知り合いの少し若々しいおじさんと出会った。
「やぁ、駿さんお久しぶり。彩ちゃんもしばらく見ないうちにずいぶんキレイになったね。」
「もう徳松さんったら相変わらず口がうまいんだから。」
彩が少し恥ずかしそうに答える。
「今日は数年ぶりの里帰りなんです。」
そう答えると徳松さんは俺をチラっと見て、彩に訊ねた。
「そうか、今年か……ということはもしかして彼が……」
「はい。」
彩は急に真顔になって答えた。
「そうか大変だろうけど、頑張ってな。」
徳松さんは俺に語りかけてきた。仕事の事と思い、やる気をアピールするように、「はい!」と笑顔で元気いっぱいに答えた。しかし、徳松さんの反応は薄かった。
「それではそろそろ行きますので。」
駿が徳松さんにそう伝え、買い物に向かった。
一体何の話をしてたんだろう?もしかして俺の想像を超えるほど忙しい職場ということなのだろうか……。
彩と駿の顔を少し伺うと先ほどまで車でワイワイしていた顔が強張っていた。
二人のその姿をみて少し不安になり車内移動中、目にした神社や道祖神に『労働基準法が守られた安全な職場でありますように』
と、心のなかで祈った。
10
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
本当にあった怖い話
邪神 白猫
ホラー
リスナーさんや読者の方から聞いた体験談【本当にあった怖い話】を基にして書いたオムニバスになります。
完結としますが、体験談が追加され次第更新します。
LINEオプチャにて、体験談募集中✨
あなたの体験談、投稿してみませんか?
投稿された体験談は、YouTubeにて朗読させて頂く場合があります。
【邪神白猫】で検索してみてね🐱
↓YouTubeにて、朗読中(コピペで飛んでください)
https://youtube.com/@yuachanRio
※登場する施設名や人物名などは全て架空です。
すべて実話
さつきのいろどり
ホラー
タイトル通り全て実話のホラー体験です。
友人から聞いたものや著者本人の実体験を書かせていただきます。
長編として登録していますが、短編をいつくか載せていこうと思っていますので、追加配信しましたら覗きに来て下さいね^^*
奇怪未解世界
五月 病
ホラー
突如大勢の人間が消えるという事件が起きた。
学内にいた人間の中で唯一生存した女子高生そよぎは自身に降りかかる怪異を退け、消えた友人たちを取り戻すために「怪人アンサー」に助けを求める。
奇妙な契約関係になった怪人アンサーとそよぎは学校の人間が消えた理由を見つけ出すため夕刻から深夜にかけて調査を進めていく。
その過程で様々な怪異に遭遇していくことになっていくが……。


やってはいけない危険な遊びに手を出した少年のお話
山本 淳一
ホラー
あるところに「やってはいけない危険な儀式・遊び」に興味を持った少年がいました。
彼は好奇心のままに多くの儀式や遊びを試し、何が起こるかを検証していました。
その後彼はどのような人生を送っていくのか......
初投稿の長編小説になります。
登場人物
田中浩一:主人公
田中美恵子:主人公の母
西藤昭人:浩一の高校時代の友人
長岡雄二(ながおか ゆうじ):経営学部3年、オカルト研究会の部長
秋山逢(あきやま あい):人文学部2年、オカルト研究会の副部長
佐藤影夫(さとうかげお)社会学部2年、オカルト研究会の部員
鈴木幽也(すずきゆうや):人文学部1年、オカルト研究会の部員
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる