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花屋のうさぎと銀狼の朝3
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「リオネル様。僕、その、お腹が空きました」
『犯人』たちからとにかく意識を逸らそうと、リオネル様に声をかける。
するとリオネル様は「そうだな」と静かな声で返事をして、縦抱きにしていた僕をひょいと横抱きに抱き直した。……大の大人、しかも男がされるにはなかなかに恥ずかしすぎる体勢だ。
「では食事にしようか。……と言ってもこのあたりの早朝から開いている店に心当たりがないな。ニルスに聞いておけばよかったか」
「い、いえ。僕が作りますので!」
「……レイラが?」
リオネル様は綺麗な瞳を大きく開いて僕を見つめる。僕の手作りなんて、嫌だったかな。この時間だとどこのお店が開いていたっけ。宿の食堂なら、朝から食事を出しているかも? それなら割と近くにある。
毎日自宅で朝食を済ませる僕は、早朝から開いている店について詳しくない。どうしようかと思いながら、オロオロとしてしまったのだけれど……
「レイラの手作りか。……それは嬉しいな」
リオネル様がふっと無防備な笑顔を浮かべて、額に優しく口づけなんてするものだから。僕は真っ赤になってしまった。その笑顔は反則です、リオネル様……!
周囲の野次馬たちもリオネル様の笑顔に当てられたようで、顔を赤くしたり蹲ったりしている。……罪な男とはこの人のことを言うのだろうな。
「……私たちが食事をしている間に。きっと店の前は綺麗になっているだろう」
笑顔から一転、その瞳の色を濁らせ怒りを滲ませた表情になったリオネル様が、野次馬へと鋭い視線を向ける。すると犯人たちだけではなく、他の野次馬たちまで首を激しく上下させた。美しい人の怒りの表情は、それだけ恐ろしいものだったのだ。
「リオネル様。とっておきの珈琲を淹れますから、早くご飯にしましょう!」
リオネル様の意識をこちらに戻そうと、話しかけながらくいくいと服を引っ張る。するとリオネル様の表情はふっと緩んだ。
「……とっておき? それは嬉しいな」
「友人のロランにオススメされて買ったんですけど、とても美味しいんですよ」
「レイラの友人か。いずれ会ってみたいな」
「ロランも喜ぶと思います。……ちょっと喜びすぎるかもしれませんけど」
会話をしつつ、恥ずかしながら横抱きのまま屋内へと運ばれる。扉が閉まったその瞬間に、外のゴミに人々が殺到するのが見えた。……朝食を食べている間に、外はピカピカになっていそうだ。
リオネル様は僕を台所に運ぶとそっと床に下ろした。そしてこちらに期待するような視線を向けながら、ブンブンと尻尾を振る。そんなお顔をされても、大したものは出ないんだけどなぁ……
「その、粗末なものしか出ませんよ?」
「レイラが作るものが、粗末なわけがない」
粗末です、貴方がふだん食べているものより絶対に粗末です。
パンとベーコンエッグとスープくらいしかお出しできません。
「……頑張ります。長椅子でゆっくりされていてくださいね」
「手伝えることはないのか?」
「この通り、台所は狭いので」
一人暮らし用で、しかもうさぎ族規格の台所には、二人並んで料理をするスペースなんてものはない。
なぜか残念そうな表情になったリオネル様は、少し肩を落としながら長椅子へと向かった。
……リオネル様、そんなに一緒に料理をしたかったんですか?
貴族は自分で料理なんてしないだろうし、物珍しかったのかな。
僕だって……好きな人と並んで料理はしてみたいけれど。
そんなことを考えてしまい、僕はぶんぶんと首を横に振った。
『犯人』たちからとにかく意識を逸らそうと、リオネル様に声をかける。
するとリオネル様は「そうだな」と静かな声で返事をして、縦抱きにしていた僕をひょいと横抱きに抱き直した。……大の大人、しかも男がされるにはなかなかに恥ずかしすぎる体勢だ。
「では食事にしようか。……と言ってもこのあたりの早朝から開いている店に心当たりがないな。ニルスに聞いておけばよかったか」
「い、いえ。僕が作りますので!」
「……レイラが?」
リオネル様は綺麗な瞳を大きく開いて僕を見つめる。僕の手作りなんて、嫌だったかな。この時間だとどこのお店が開いていたっけ。宿の食堂なら、朝から食事を出しているかも? それなら割と近くにある。
毎日自宅で朝食を済ませる僕は、早朝から開いている店について詳しくない。どうしようかと思いながら、オロオロとしてしまったのだけれど……
「レイラの手作りか。……それは嬉しいな」
リオネル様がふっと無防備な笑顔を浮かべて、額に優しく口づけなんてするものだから。僕は真っ赤になってしまった。その笑顔は反則です、リオネル様……!
周囲の野次馬たちもリオネル様の笑顔に当てられたようで、顔を赤くしたり蹲ったりしている。……罪な男とはこの人のことを言うのだろうな。
「……私たちが食事をしている間に。きっと店の前は綺麗になっているだろう」
笑顔から一転、その瞳の色を濁らせ怒りを滲ませた表情になったリオネル様が、野次馬へと鋭い視線を向ける。すると犯人たちだけではなく、他の野次馬たちまで首を激しく上下させた。美しい人の怒りの表情は、それだけ恐ろしいものだったのだ。
「リオネル様。とっておきの珈琲を淹れますから、早くご飯にしましょう!」
リオネル様の意識をこちらに戻そうと、話しかけながらくいくいと服を引っ張る。するとリオネル様の表情はふっと緩んだ。
「……とっておき? それは嬉しいな」
「友人のロランにオススメされて買ったんですけど、とても美味しいんですよ」
「レイラの友人か。いずれ会ってみたいな」
「ロランも喜ぶと思います。……ちょっと喜びすぎるかもしれませんけど」
会話をしつつ、恥ずかしながら横抱きのまま屋内へと運ばれる。扉が閉まったその瞬間に、外のゴミに人々が殺到するのが見えた。……朝食を食べている間に、外はピカピカになっていそうだ。
リオネル様は僕を台所に運ぶとそっと床に下ろした。そしてこちらに期待するような視線を向けながら、ブンブンと尻尾を振る。そんなお顔をされても、大したものは出ないんだけどなぁ……
「その、粗末なものしか出ませんよ?」
「レイラが作るものが、粗末なわけがない」
粗末です、貴方がふだん食べているものより絶対に粗末です。
パンとベーコンエッグとスープくらいしかお出しできません。
「……頑張ります。長椅子でゆっくりされていてくださいね」
「手伝えることはないのか?」
「この通り、台所は狭いので」
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なぜか残念そうな表情になったリオネル様は、少し肩を落としながら長椅子へと向かった。
……リオネル様、そんなに一緒に料理をしたかったんですか?
貴族は自分で料理なんてしないだろうし、物珍しかったのかな。
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そんなことを考えてしまい、僕はぶんぶんと首を横に振った。
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