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花屋のうさぎとその友人5
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「……まさかぁ」
僕は思わず乾いた声を漏らしてしまう。
あの天下の銀狼『リオネル・ハルミニア様』が、しがないうさぎ族の男を愛人や妻にしたい? それはなんとも現実味がない話だ。
「僕を選ぶ理由が、なさすぎるでしょう?」
これは卑屈なわけではなく、本音だ。
リオネル様が今まで浮いたお話がなかったとして……じゃあ相手を選ぼうという時に、愛人としてでも僕を選ぶか? 見た目は凡庸で、中身も凡庸。身分は平民で、自慢と言えば小さな自分の店を持っているくらいだ。そこは正直誇らしく思っている。けれどリオネル様のような貴族様にとっては……取るに足らないことだろう。
「レイラは愛人にするには、すれてなさすぎるよね。割り切りの関係は向いてなさそう」
「愛人になることが、まずないってば」
なんだか楽しそうなロランを、僕は半眼で見た。
……万が一の話として。
まかり間違ってリオネル様の『愛人』になんてなったら、僕はきっとそれ以上のことを望んでしまうだろう。
だってあんなに素敵な人なのだ。体を何度も合わせて優しい言葉をかけられたら、僕はあっという間に恋に落ちてしまうだろう。
そして面倒なことを言って、きっと捨てられてしまうんだ。
ロランの言う通り……僕は割り切った関係には向いていない。
僕を愛人に、なんて大それた前提がそもそも間違ってると思うけど。妻なんて話はもっともっと、あり得ない。
「まぁ、愛人とか妻とかは置いといて!」
「レイラ……置いちゃうんだ」
ロランは頬杖をついて頬を膨らませる。僕はそんなロランを見て苦笑した。
「だって『無い』可能性のことを考えても、仕方ないでしょう?」
「ええー……あると思うんだけどなぁ」
まだぶつくさと言っているロランのことは放置して、僕は話を先に進めた。
「ご迷惑もたくさんかけたし、アルファばかりの宿舎は怖いから。宿舎に行くのを止めたいって言ったら、リオネル様に引き止められてしまって……。どうしたらいいのか、悩んでるとこなんだ」
話の本題はここである。決してリオネル様との艶話や恋話ではない。
ロランは「うーん」とつぶやくと、珈琲を一口飲んだ。
「止められたんだ」
「うん」
「なんて言って?」
「え、と……守るから、とか。粗相くらいは構わない、とか」
一緒にお風呂に入っている時に、そんなことを言われた。
その時のことを思い出すと、顔が真っ赤になってしまう。今考えるとリオネル様の一緒にお風呂だなんて、本当にとんでもないことだ。しかもお風呂でも、はしたないことになってしまったし……
「守る、ね。ふーん」
ロランの顔がにやっと崩れる。なんなんだよ、その嬉しそうな顔は。
「占いだから、っていう理由以外にも……リオネル様にはレイラに花を配達させたい理由があるんじゃないかなぁって。俺は思うんだよねぇ」
ケーキを一口食べて、ロランは満足そうに笑う。そして言葉を続けた。
「リオネル様と一度お話をして、他の理由があるのかちゃんと聞いてさ。それから行くのを止めるか決めても、いいと思うんだけどな」
『占い』以外の理由……? そんなものが、本当にあるんだろうか。
僕は思わず乾いた声を漏らしてしまう。
あの天下の銀狼『リオネル・ハルミニア様』が、しがないうさぎ族の男を愛人や妻にしたい? それはなんとも現実味がない話だ。
「僕を選ぶ理由が、なさすぎるでしょう?」
これは卑屈なわけではなく、本音だ。
リオネル様が今まで浮いたお話がなかったとして……じゃあ相手を選ぼうという時に、愛人としてでも僕を選ぶか? 見た目は凡庸で、中身も凡庸。身分は平民で、自慢と言えば小さな自分の店を持っているくらいだ。そこは正直誇らしく思っている。けれどリオネル様のような貴族様にとっては……取るに足らないことだろう。
「レイラは愛人にするには、すれてなさすぎるよね。割り切りの関係は向いてなさそう」
「愛人になることが、まずないってば」
なんだか楽しそうなロランを、僕は半眼で見た。
……万が一の話として。
まかり間違ってリオネル様の『愛人』になんてなったら、僕はきっとそれ以上のことを望んでしまうだろう。
だってあんなに素敵な人なのだ。体を何度も合わせて優しい言葉をかけられたら、僕はあっという間に恋に落ちてしまうだろう。
そして面倒なことを言って、きっと捨てられてしまうんだ。
ロランの言う通り……僕は割り切った関係には向いていない。
僕を愛人に、なんて大それた前提がそもそも間違ってると思うけど。妻なんて話はもっともっと、あり得ない。
「まぁ、愛人とか妻とかは置いといて!」
「レイラ……置いちゃうんだ」
ロランは頬杖をついて頬を膨らませる。僕はそんなロランを見て苦笑した。
「だって『無い』可能性のことを考えても、仕方ないでしょう?」
「ええー……あると思うんだけどなぁ」
まだぶつくさと言っているロランのことは放置して、僕は話を先に進めた。
「ご迷惑もたくさんかけたし、アルファばかりの宿舎は怖いから。宿舎に行くのを止めたいって言ったら、リオネル様に引き止められてしまって……。どうしたらいいのか、悩んでるとこなんだ」
話の本題はここである。決してリオネル様との艶話や恋話ではない。
ロランは「うーん」とつぶやくと、珈琲を一口飲んだ。
「止められたんだ」
「うん」
「なんて言って?」
「え、と……守るから、とか。粗相くらいは構わない、とか」
一緒にお風呂に入っている時に、そんなことを言われた。
その時のことを思い出すと、顔が真っ赤になってしまう。今考えるとリオネル様の一緒にお風呂だなんて、本当にとんでもないことだ。しかもお風呂でも、はしたないことになってしまったし……
「守る、ね。ふーん」
ロランの顔がにやっと崩れる。なんなんだよ、その嬉しそうな顔は。
「占いだから、っていう理由以外にも……リオネル様にはレイラに花を配達させたい理由があるんじゃないかなぁって。俺は思うんだよねぇ」
ケーキを一口食べて、ロランは満足そうに笑う。そして言葉を続けた。
「リオネル様と一度お話をして、他の理由があるのかちゃんと聞いてさ。それから行くのを止めるか決めても、いいと思うんだけどな」
『占い』以外の理由……? そんなものが、本当にあるんだろうか。
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