【R18】うさぎのオメガは銀狼のアルファの腕の中

夕日(夕日凪)

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花屋のうさぎとその友人3

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『白熊亭』から、徒歩で約五分。
 前方に見えてきたこぢんまりとした煉瓦の建物が、僕たちの行きつけのカフェである。
 休みの日にはロランと、よくここで喋っているのだ。
 白木の扉を開けると、ベルのカランカランという軽い音が響く。そして中から「いらっしゃぁい」という少し間延びした声がかけられた。
 店に入ると、可愛らしい牛獣人の女性が机を拭いているのが目に入る。彼女はこの店の店主のモニーさんだ。

「あらぁ、お久しぶり。うふふ、噂のレイラちゃんじゃないの」

 モニーさんはそう言うと、黒目がちな大きな瞳を楽しそうに煌めかせた。うう、ロランと同じような反応を! これは、リオネル様が有名人なのが悪いのだ。

「モニーさんまでやめてくださいよ。その、世間で噂になってる……お、お、お手付きとかぜんぶ誤解なんですから!」
「あらぁ? リオネル様となにもしてないの?」
「してません! なにもありませんか……ら?」

 いや、あった。『なにか』はあったな。
 リオネル様に性的な感じで、さんざん触られ……た。
 発情の解消に関しては、ちゃんと理由があることだった。だからあれは仕方ない。
 だけど馬車で触れられたり、お風呂で触られたりは……

「……ん?」

 動機が『うさぎフェチ』であれ、僕がリオネル様の『お手付き』になったことには変わりないのでは? 今さらながらそんなことに気づいて、僕の顔は真っ赤になった。そんな僕を見て、モニーさんは好奇心剥き出しの笑顔を浮かべる。
 ……根掘り葉掘りと聞かれそうな予感に、僕は一歩後ろに下がった。

「モニーさん、それ以上はレイラをいじめないで」

 僕とモニーさんの間にロランが割って入る。

「それと今日は個室を貸して。盗み聞きとかしちゃダメだからね?」

 ロランは完熟トマトのような顔色の僕を自分の後ろに隠しながら、モニーさんにそう言った。
 このカフェの二階にはテーブル一つしか置けない部屋……通称『個室』がある。下階がお客でいっぱいになった時用の部屋だけれど、こうやって内緒話に使われることも多い。
 モニーさんは残念そうな顔で唇を尖らせた。

「ええ~。私には聞かせてくれないのぉ?」
「うん、聞かせない。大事な友人の悩み事だもん。聞き耳を立てようとしても、俺たちうさぎ族に気配はすぐにバレるからね?」

 僕はロランの言葉に感動してしまう。『大事な友人』だなんて思われてたんだ、嬉しいなぁ。

「それと、珈琲二つと今日のケーキをくださいな!」

 ロランは引き締めていた表情を緩めて、にぱっと笑った。

「ちぇ……。二人ともミルクとお砂糖はいっぱいだったよねぇ」
「うん、よろしくね」

 がっくりと肩を落とすモニーさんを尻目に、僕とロランは二階に上がる。
 ロランは頼りになるなぁ。僕だけだったら勢いに負けて洗いざらい話すはめになったと思うから、本当にありがたい。
『個室』に入り、モニーさんが珈琲とケーキを持ってくるのを僕らは待つ。注文の品をテーブルに置いた彼女が下階に行くのを見届け……というより耳で遠ざかる音を聞き届けてから、僕とロランは目を合わせた。

「さて、話を聞こうかぁ」

 ロランの唇が悪戯っ子のような笑みを刻む。
 僕は数度深呼吸をしてから――口を開いた。
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