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銀狼のアルファは心配性2(リオネル視点)
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「リオネル様」
ニルスは眉尻を下げて呆れたような顔をしている。
いや……『呆れたような』ではなく、心底『呆れている』のだろうな。
「……なんだ?」
「貴方は王国一の美男子だと誰もが憧れ、王都中で絵姿も売られている『リオネル・ハルミニア』なんですよ。レイラちゃんを堂々と誘いに行けばいいだけでしょう。大抵の男女はそれで二つ返事です!」
大げさな身振り手振りで言ってから、ニルスは大きなため息をついた。今日のニルスはため息ばかりだな。
……私が悪いのはわかっているのだが。
しかし、誘えばいいなんて簡単に言ってくれるな。
「……断られたらどうするんだ」
レイラに拒絶されるのが怖い。下心を察せられ、あの優しいうさぎに軽蔑されたらと想像しただけで――どうしていいのかわからなくなる。
「知りませんよ! いい年なんだから自分で考えてください!」
「ニルス。お前は冷たいな」
この男は私の部下であるが、その前に友人のはずだ。だったらもっと親身に考えてくれてもいいと思うのだが。
「冷たくないですよ! 忙しい貴方の代わりに先日はレイラちゃんの様子を見に行ったし、今日も早番の前に彼に予定を聞きに行ってあげたでしょうが! レイラちゃんを騎士宿舎に連れてくるために『占い』という理由をでっちあげてやったのも俺でしょう!」
ニルスは一気にそう叫んでから、ぜえぜえと激しく息を切らせた。
オメガの連続誘拐事件が発生し、仕事が手に付かないくらいにレイラの身を案じていた私に『この店の花が必要だと占いで出たとでも言って、毎日騎士宿舎に連れてくればいいじゃないですか。ここならリオネル様もいますし、安全でしょう。ついでに距離も縮めればいいんです』と提案したのはニルスである。
結果的には、レイラにとって騎士宿舎は危険だったわけだが。
そして距離の方は……少しでも縮まっているのだろうか。
「天下のリオネル・ハルミニアが、一年間も片思いでうじうじうじうじと……」
「一年と半年、そして二日だ。日にちは正確に把握しておいた方がいい」
「ああ、そうでしたね!!」
ニルスの尻尾が不機嫌そうにバフバフと振られる。その尻尾の先に――私は望ましくないものを見つけてしまった。
「ニルス、尻尾の先が少し禿げているぞ」
「……本当だ。絶対にリオネル様から受けてるストレスのせいですよ! いつか慰謝料を請求しますから!」
禿げた尻尾の先を悲しそうに見つめてから、ニルスは私を睨みつけた。ストレスも多い仕事だから、私が原因だとは限らないだろうに……言いがかりというやつだな。
連休明けにレイラに宿舎に来るのを断られたら……次はそんな手段を講じて側で守ればいいのだろう。いや、事件を解決すればよいだけか。
「早く、誘拐事件を解決しなければな」
「それは同意ですけど……なかなか相手の尻尾が掴めませんね」
ニルスは少し苛立ったように片手で髪を乱す。
そう――誘拐犯の手がかりを追っても、それはすぐにふつりと消えてしまう。それはもう、不自然なくらいに綺麗に。
「ここまで綺麗に手がかりを消せるのは――貴族が関わっている可能性が高いな」
「そうですね。こういう汚いことをしそうな派閥はどこだろうな……」
「なぁ、ニルス」
「なんです、リオネル様。なにかお気づきなことでも?」
ニルスの真剣な瞳と視線がぶつかる。私は……静かに口を開いた。
「……それで、デートの話だがな」
「今はそれはどうでもいいですよ!!」
ニルスの魂の底からの叫びが――騎士宿舎中に響き渡った。
ニルスは眉尻を下げて呆れたような顔をしている。
いや……『呆れたような』ではなく、心底『呆れている』のだろうな。
「……なんだ?」
「貴方は王国一の美男子だと誰もが憧れ、王都中で絵姿も売られている『リオネル・ハルミニア』なんですよ。レイラちゃんを堂々と誘いに行けばいいだけでしょう。大抵の男女はそれで二つ返事です!」
大げさな身振り手振りで言ってから、ニルスは大きなため息をついた。今日のニルスはため息ばかりだな。
……私が悪いのはわかっているのだが。
しかし、誘えばいいなんて簡単に言ってくれるな。
「……断られたらどうするんだ」
レイラに拒絶されるのが怖い。下心を察せられ、あの優しいうさぎに軽蔑されたらと想像しただけで――どうしていいのかわからなくなる。
「知りませんよ! いい年なんだから自分で考えてください!」
「ニルス。お前は冷たいな」
この男は私の部下であるが、その前に友人のはずだ。だったらもっと親身に考えてくれてもいいと思うのだが。
「冷たくないですよ! 忙しい貴方の代わりに先日はレイラちゃんの様子を見に行ったし、今日も早番の前に彼に予定を聞きに行ってあげたでしょうが! レイラちゃんを騎士宿舎に連れてくるために『占い』という理由をでっちあげてやったのも俺でしょう!」
ニルスは一気にそう叫んでから、ぜえぜえと激しく息を切らせた。
オメガの連続誘拐事件が発生し、仕事が手に付かないくらいにレイラの身を案じていた私に『この店の花が必要だと占いで出たとでも言って、毎日騎士宿舎に連れてくればいいじゃないですか。ここならリオネル様もいますし、安全でしょう。ついでに距離も縮めればいいんです』と提案したのはニルスである。
結果的には、レイラにとって騎士宿舎は危険だったわけだが。
そして距離の方は……少しでも縮まっているのだろうか。
「天下のリオネル・ハルミニアが、一年間も片思いでうじうじうじうじと……」
「一年と半年、そして二日だ。日にちは正確に把握しておいた方がいい」
「ああ、そうでしたね!!」
ニルスの尻尾が不機嫌そうにバフバフと振られる。その尻尾の先に――私は望ましくないものを見つけてしまった。
「ニルス、尻尾の先が少し禿げているぞ」
「……本当だ。絶対にリオネル様から受けてるストレスのせいですよ! いつか慰謝料を請求しますから!」
禿げた尻尾の先を悲しそうに見つめてから、ニルスは私を睨みつけた。ストレスも多い仕事だから、私が原因だとは限らないだろうに……言いがかりというやつだな。
連休明けにレイラに宿舎に来るのを断られたら……次はそんな手段を講じて側で守ればいいのだろう。いや、事件を解決すればよいだけか。
「早く、誘拐事件を解決しなければな」
「それは同意ですけど……なかなか相手の尻尾が掴めませんね」
ニルスは少し苛立ったように片手で髪を乱す。
そう――誘拐犯の手がかりを追っても、それはすぐにふつりと消えてしまう。それはもう、不自然なくらいに綺麗に。
「ここまで綺麗に手がかりを消せるのは――貴族が関わっている可能性が高いな」
「そうですね。こういう汚いことをしそうな派閥はどこだろうな……」
「なぁ、ニルス」
「なんです、リオネル様。なにかお気づきなことでも?」
ニルスの真剣な瞳と視線がぶつかる。私は……静かに口を開いた。
「……それで、デートの話だがな」
「今はそれはどうでもいいですよ!!」
ニルスの魂の底からの叫びが――騎士宿舎中に響き渡った。
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