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銀狼のアルファは心配性1(リオネル視点)
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「リオネル様~。レイラちゃんの連休の予定、回収してきましたよ」
執務室の扉が軽くノックされ、私が返事をする前にニルスがのそりと部屋に入ってくる。マナーには違反しているが、いつものことなので別段気にもならない。彼はこちらにやって来ると、懐から取り出した紙を手渡した。
レイラの予定だ……それが手に入ったことに心底安堵する。
不甲斐ないことだが、オメガの連続誘拐犯をまだ捕まえられていない現状だ。
想像したくもないがレイラに『なにか』があった時に、居場所がわからないのが一番怖い。初動を失敗すると、取り返しのつかないことになりかねないのだ。
本当はここに呼んで私が守ってやりたいが……彼にそれは無理強いできない。あんなことがあったばかりだしな。
「……ニルス」
「なんです? リオネル様」
「レイラは、その。私を怖がるようなことを言っていたか?」
訊ねる声が情けないくらいに震えている。
発情を解消するためだったとはいえ、無遠慮にレイラに触れてしまった。いや……発情の解消とは関係なく、彼に触れてしまうこともしばしばだな。
一歩間違えば――彼を押し倒して孕むまで抱いていたかもしれない。
今さらながらにレイラに嫌われているのではという不安で頭がいっぱいで、今日は仕事も手につかなかった。
「そんなことは一言も。嫌われてはいないと思いますよ」
私寄りであるニルスの言葉なので鵜呑みにしてはならないと思いつつも、安堵で体から力が抜ける。……私は、あのうさぎのオメガにそれだけ夢中なのだ。
――それにしても……レイラの字は愛らしいな。
字にまで可愛さというものは滲み出るものなのか。
契約している仕入先からの花を店で受け取った後に、市場に行ってさらに花を仕入れるのが彼の毎朝の日課なのか。小さい体なのに本当に働き者だ。……市場の見回りは増やさなければならないな。あそこには毎日たくさんの人が集まるから。決して、私情ではない。
今日は友人に会いに出かけるのか……レイラに親しいという認識をされているなんて、本当に羨ましい。私もいつか親しみを覚えてもらえるだろうか。
思わず頬を緩ませながらレイラの予定を眺めていると、ニルスからの含みのある視線が刺さった。
「……なんだ?」
「レイラちゃんの二日目の予定見て、なにか気づかないですか?」
「二日目……?」
そう言われ、改めてレイラの連休二日目の予定を確認する。
朝に花を受け取り、市場に行って――その後の予定がまったくない?
「レイラちゃんは、その日はずっと家に居るとは言ってたけど。なにか足りないなんてことで急に出かけたりという可能性もありますよね」
「……そうだな」
「様子は見に行こうと思ってますけど、俺もしょっちゅうは仕事を抜け出せませんし」
「…………そうだな」
たしかに突発的な行動までは把握できない。これはどうしたものか……
「ところでリオネル様。四ヶ月間、お休みを取っていませんよね?」
「そうだが、それがなんだ?」
唐突な話題転換に訳がわからず眉間に皺を寄せてそう返すと、ニルスは大げさなくらいのため息をつく。一体なんなんだ。
「お休みを取って、レイラちゃんをデートに誘ったらどうだって言ってるんです。それなら彼を守れるし、ついでに街の見回りもできますしね」
「――!」
目から鱗が何枚も落ちた。そうか……そういう手もあるのか。では明日は休暇を申請しよう。たしかに四ヶ月間働き通しなのだ。それくらいは許されるだろう。
しかし……
「ニルス……その」
「なんです?」
「デートというのは……どう誘えばいいんだ? そしてどこに行けばいい?」
私の言葉を聞いたニルスは肩を大きく落とす。仕方がないではないか。レイラと出会うまで、私は色恋なんかにまったく興味がなかったのだから。
同じ狼のアルファでも、蝶の間を軽やかに飛び回っているニルスとは違うのだ。
執務室の扉が軽くノックされ、私が返事をする前にニルスがのそりと部屋に入ってくる。マナーには違反しているが、いつものことなので別段気にもならない。彼はこちらにやって来ると、懐から取り出した紙を手渡した。
レイラの予定だ……それが手に入ったことに心底安堵する。
不甲斐ないことだが、オメガの連続誘拐犯をまだ捕まえられていない現状だ。
想像したくもないがレイラに『なにか』があった時に、居場所がわからないのが一番怖い。初動を失敗すると、取り返しのつかないことになりかねないのだ。
本当はここに呼んで私が守ってやりたいが……彼にそれは無理強いできない。あんなことがあったばかりだしな。
「……ニルス」
「なんです? リオネル様」
「レイラは、その。私を怖がるようなことを言っていたか?」
訊ねる声が情けないくらいに震えている。
発情を解消するためだったとはいえ、無遠慮にレイラに触れてしまった。いや……発情の解消とは関係なく、彼に触れてしまうこともしばしばだな。
一歩間違えば――彼を押し倒して孕むまで抱いていたかもしれない。
今さらながらにレイラに嫌われているのではという不安で頭がいっぱいで、今日は仕事も手につかなかった。
「そんなことは一言も。嫌われてはいないと思いますよ」
私寄りであるニルスの言葉なので鵜呑みにしてはならないと思いつつも、安堵で体から力が抜ける。……私は、あのうさぎのオメガにそれだけ夢中なのだ。
――それにしても……レイラの字は愛らしいな。
字にまで可愛さというものは滲み出るものなのか。
契約している仕入先からの花を店で受け取った後に、市場に行ってさらに花を仕入れるのが彼の毎朝の日課なのか。小さい体なのに本当に働き者だ。……市場の見回りは増やさなければならないな。あそこには毎日たくさんの人が集まるから。決して、私情ではない。
今日は友人に会いに出かけるのか……レイラに親しいという認識をされているなんて、本当に羨ましい。私もいつか親しみを覚えてもらえるだろうか。
思わず頬を緩ませながらレイラの予定を眺めていると、ニルスからの含みのある視線が刺さった。
「……なんだ?」
「レイラちゃんの二日目の予定見て、なにか気づかないですか?」
「二日目……?」
そう言われ、改めてレイラの連休二日目の予定を確認する。
朝に花を受け取り、市場に行って――その後の予定がまったくない?
「レイラちゃんは、その日はずっと家に居るとは言ってたけど。なにか足りないなんてことで急に出かけたりという可能性もありますよね」
「……そうだな」
「様子は見に行こうと思ってますけど、俺もしょっちゅうは仕事を抜け出せませんし」
「…………そうだな」
たしかに突発的な行動までは把握できない。これはどうしたものか……
「ところでリオネル様。四ヶ月間、お休みを取っていませんよね?」
「そうだが、それがなんだ?」
唐突な話題転換に訳がわからず眉間に皺を寄せてそう返すと、ニルスは大げさなくらいのため息をつく。一体なんなんだ。
「お休みを取って、レイラちゃんをデートに誘ったらどうだって言ってるんです。それなら彼を守れるし、ついでに街の見回りもできますしね」
「――!」
目から鱗が何枚も落ちた。そうか……そういう手もあるのか。では明日は休暇を申請しよう。たしかに四ヶ月間働き通しなのだ。それくらいは許されるだろう。
しかし……
「ニルス……その」
「なんです?」
「デートというのは……どう誘えばいいんだ? そしてどこに行けばいい?」
私の言葉を聞いたニルスは肩を大きく落とす。仕方がないではないか。レイラと出会うまで、私は色恋なんかにまったく興味がなかったのだから。
同じ狼のアルファでも、蝶の間を軽やかに飛び回っているニルスとは違うのだ。
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