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公爵騎士様と一夜を過ごしてしまいました?5※
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「ふふ、くすぐったい。ひゃっ!」
唇の感触がくすぐったくて身を捩って笑っていた私は、突然訪れた湿った感触に小さな悲鳴を上げる。スヴァンテ様の舌が、手の甲を優しく拭ったのだ。
「……嫌か?」
「嫌じゃ、ないです」
様子を窺うようにして訊ねられ、微笑みながらそう返す。人に肌を舐められることなんて今夜がはじめてだけれど、ぜんぜん嫌じゃない。これは相手が、スヴァンテ様だからだろう。ほかの人とだなんて、想像するのも嫌だ。
「そうか、よかった」
スヴァンテ様は安堵したように言ってから、嬉しそうに笑う。豊かな黒髪がさらりと揺れて、頬にかかる。絵画みたいに綺麗だな……と思いながら、私はその光景を見つめてしまった。うん。わかり切っていたことだけれど、スヴァンテ様は綺麗だ。
「んっ……」
舌が手の甲をまた這い、次に手首を舐め取る。背筋を悪寒に似たなにかが走り、私は小さく声を上げた。
スヴァンテ様は次は腕に舌を這わせ、柔らかな肉を吸い上げる。そうされると、背筋を走る感覚がさらに強くなったような気がした。
「あ……っ」
また自然に声が零れ、それを聞いたスヴァンテ様は嬉しそうな顔になる。
「愛らしい声だ」
「ひぇええ。ありがとうございます」
「今度は、間抜けな声だ」
「も、申し訳……」
「そんな声も、可愛い」
……この人、なんでも褒めてくれるな!
親しくなってからのスヴァンテ様は、私に対する判定がかなり甘いような気がする。
そんなに甘やかされると、調子に乗ってしまいそう。
スヴァンテ様は首筋に顔を寄せると、少し強めに肌を吸い上げた。彼は吸い上げた場所に目をやると、満足げに目を細める。
「……私の印がついた」
「スヴァンテ様の、印?」
「明日の朝にでも、鏡を確認するといい」
スヴァンテ様の言葉の意味がわからずに、私は首を傾げる。彼はくすりと笑ってから、私の寝衣に手をかけた。
綺麗な手が釦を外し、そっと前が開かれる。すると、白く柔らかな胸がスヴァンテ様の前にすぐに晒された。
私は、寝衣の下にはなにも身に着けていない。それは単純に、衣類を多く持っていないからだ。今日もいつもの癖で、なにも身に着けずに来てしまったんだよなぁ。なんだか、とても痴女っぽい気がする。
「……下着は?」
案の定、スヴァンテ様は目を丸くする。私は頬を赤らめながら、視線を泳がせた。
「えっと。あまり数を持っていないので、夜は着けないことが多くて。その癖で……今日も身に着けていなかったのです」
「悪い子だな。そんな格好で、男と一緒の寝台で寝ようと言い出すなんて。……私以外に、そんなことは言わないでくれよ? 君は男への警戒心が足りない」
スヴァンテ様の表情は、真剣なものだ。
だけど。いくら警戒心が薄い私でも、スヴァンテ様じゃなかったら『一緒に寝ますか?』なんて言わなかったと思うの。
そう。スヴァンテ様だから……だったんだ。
今さらながらだけれど、そんなことをしみじみと思う。
彼にだったらなにをされても怖くないと、私は感じていたんだ。
「……スヴァンテ様じゃなければ、言っていません」
微笑みながら内心を告げれば、スヴァンテ様の目が丸くなる。
「──ッ! ニカナ……!」
「むぅうっ!」
そして……なにが起爆剤になってしまったのか。スヴァンテ様は、性急に唇を合わせてきた。
唇の感触がくすぐったくて身を捩って笑っていた私は、突然訪れた湿った感触に小さな悲鳴を上げる。スヴァンテ様の舌が、手の甲を優しく拭ったのだ。
「……嫌か?」
「嫌じゃ、ないです」
様子を窺うようにして訊ねられ、微笑みながらそう返す。人に肌を舐められることなんて今夜がはじめてだけれど、ぜんぜん嫌じゃない。これは相手が、スヴァンテ様だからだろう。ほかの人とだなんて、想像するのも嫌だ。
「そうか、よかった」
スヴァンテ様は安堵したように言ってから、嬉しそうに笑う。豊かな黒髪がさらりと揺れて、頬にかかる。絵画みたいに綺麗だな……と思いながら、私はその光景を見つめてしまった。うん。わかり切っていたことだけれど、スヴァンテ様は綺麗だ。
「んっ……」
舌が手の甲をまた這い、次に手首を舐め取る。背筋を悪寒に似たなにかが走り、私は小さく声を上げた。
スヴァンテ様は次は腕に舌を這わせ、柔らかな肉を吸い上げる。そうされると、背筋を走る感覚がさらに強くなったような気がした。
「あ……っ」
また自然に声が零れ、それを聞いたスヴァンテ様は嬉しそうな顔になる。
「愛らしい声だ」
「ひぇええ。ありがとうございます」
「今度は、間抜けな声だ」
「も、申し訳……」
「そんな声も、可愛い」
……この人、なんでも褒めてくれるな!
親しくなってからのスヴァンテ様は、私に対する判定がかなり甘いような気がする。
そんなに甘やかされると、調子に乗ってしまいそう。
スヴァンテ様は首筋に顔を寄せると、少し強めに肌を吸い上げた。彼は吸い上げた場所に目をやると、満足げに目を細める。
「……私の印がついた」
「スヴァンテ様の、印?」
「明日の朝にでも、鏡を確認するといい」
スヴァンテ様の言葉の意味がわからずに、私は首を傾げる。彼はくすりと笑ってから、私の寝衣に手をかけた。
綺麗な手が釦を外し、そっと前が開かれる。すると、白く柔らかな胸がスヴァンテ様の前にすぐに晒された。
私は、寝衣の下にはなにも身に着けていない。それは単純に、衣類を多く持っていないからだ。今日もいつもの癖で、なにも身に着けずに来てしまったんだよなぁ。なんだか、とても痴女っぽい気がする。
「……下着は?」
案の定、スヴァンテ様は目を丸くする。私は頬を赤らめながら、視線を泳がせた。
「えっと。あまり数を持っていないので、夜は着けないことが多くて。その癖で……今日も身に着けていなかったのです」
「悪い子だな。そんな格好で、男と一緒の寝台で寝ようと言い出すなんて。……私以外に、そんなことは言わないでくれよ? 君は男への警戒心が足りない」
スヴァンテ様の表情は、真剣なものだ。
だけど。いくら警戒心が薄い私でも、スヴァンテ様じゃなかったら『一緒に寝ますか?』なんて言わなかったと思うの。
そう。スヴァンテ様だから……だったんだ。
今さらながらだけれど、そんなことをしみじみと思う。
彼にだったらなにをされても怖くないと、私は感じていたんだ。
「……スヴァンテ様じゃなければ、言っていません」
微笑みながら内心を告げれば、スヴァンテ様の目が丸くなる。
「──ッ! ニカナ……!」
「むぅうっ!」
そして……なにが起爆剤になってしまったのか。スヴァンテ様は、性急に唇を合わせてきた。
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