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公爵騎士様と一夜を過ごしてしまいました?4※
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スヴァンテ様の唇が、啄むように何度も私の唇に触れる。
どうしよう。これは、どうしたらいいの?
王国中の女性たちは心をときめかせているスヴァンテ様と、追放聖女で平民の私が口づけをしているなんて。
実際に我が身に起きていることなのに、まるで現実感がない。
スヴァンテ様はさらに何度か唇を合わせたあとに、熱のこもった目でこちらを見つめる。そして……。
「嫌なら、これ以上はしない」
切なげな声音で、そんなことを言った。
スヴァンテ様に口づけをされて、ぜんぜん、嫌じゃなかった。たぶんこの先に起こる行為も、嫌じゃないのだろう。
ここでお断りしたら、二度と触れてもらえないかもしれない。だったら、チャンスを逃してなるものかと……実はそんな打算もある。好きな人に触れてもらえる機会なんて、この先の人生でまた訪れるかわからないもの。
スヴァンテ様は貴族だから、結婚したいなんて図々しいことは願わない。
だけどこの嵐の間だけは。私だけのスヴァンテ様になってもらっても、いいだろうか。
「したい、です」
「……そうか!」
眼の前で、美しい笑顔がぱっと弾ける。わ、私そんなに喜ばれるような、いいものじゃないんですけど……!
「で、でも!」
「でも?」
私が急に大きな声を上げたからか、スヴァンテ様は目を瞠る。だけど、これを言っておかないとと思ったのだ。
「私には色気なんてまったくないですから、がっかりしないでくださいね?」
胸の大きさはそれなりにあるけれど、胴はくびれがあまりなくてお尻はぺたりとしている。なんとも、色気がない体型なのだ。
「がっかりなんて、するわけがない」
スヴァンテ様はくすりと笑うと甘やかな声音で言いながら、私の額にそっと口づけた。
「私、そちらの経験が一切ないので。……ご迷惑をおかけするかも」
「任せろ……というほど私も経験はないが。経験なんて、二人で積み重ねればいい」
スヴァンテ様の手が、優しく頬に触れる。少し乾いたその手のひらの感触が、なんだか心地いい。
手はしばらく頬を撫でてから、首筋を撫で、鎖骨に触れる。そして……はじめて人に触れられる緊張で跳ねる心臓がある胸のあたりに、そっと触れた。
「……柔らかいな」
「あ、ありがとうございます!」
私は動転してしまい、なぜだか勢いよくお礼を言ってしまう。うう、本当に色気もなにもないわ! スヴァンテ様はくすりと笑うとそんな私の緊張を解すように、優しく額に口づけをしてくれた。
「そんなに緊張しないでほしい。できるだけ、優しくするから」
「わ、わ、わかりました」
スヴァンテ様はガチガチな私の様子を見て、少し思案顔になる。呆れられたかもと少々不安になっていると、大きな手が私の手を握り指がゆっくりと絡められた。指同士はすりすりと、何度か擦り合わせられる。
──スヴァンテ様の手って、こんなに大きいんだ。
重なった手と手と見つめながら、私はしみじみとそんなことを思う。
「このくらいの触れ合いは、平気か?」
「は、はい」
スヴァンテ様の問いに答えながら、こちらからも手を握り返す。違う体温同士が触れ合い溶け合うのが、なんだか不思議だ。にぎにぎとスヴァンテ様の手を握っていると、幼子を見守るような優しい笑みを向けられた。
「そうか。では、これは?」
次に、手の甲にゆっくりと口づけられた。柔らかな唇感触や、スヴァンテ様の吐息の感触。それが肌に柔らかく触れる。
「平気……です」
ドキドキはするけれど、これくらいの触れ合いなら緊張しない気がする。ここから、慣れていけばいいのかな。
「まぁ、そうか。先ほど口づけはしたものな」
スヴァンテ様はくすりと小さく笑う。出会った頃は怒った顔ばかりだった彼が、こんなにも穏やかな表情を浮かべている。それが嬉しいと感じてしまう。
「今の、もっとしていただいてもいいですか?」
「ん。わかった」
おねだりをすると、スヴァンテ様は手の甲に何度も口づけをしてくれた。
どうしよう。これは、どうしたらいいの?
王国中の女性たちは心をときめかせているスヴァンテ様と、追放聖女で平民の私が口づけをしているなんて。
実際に我が身に起きていることなのに、まるで現実感がない。
スヴァンテ様はさらに何度か唇を合わせたあとに、熱のこもった目でこちらを見つめる。そして……。
「嫌なら、これ以上はしない」
切なげな声音で、そんなことを言った。
スヴァンテ様に口づけをされて、ぜんぜん、嫌じゃなかった。たぶんこの先に起こる行為も、嫌じゃないのだろう。
ここでお断りしたら、二度と触れてもらえないかもしれない。だったら、チャンスを逃してなるものかと……実はそんな打算もある。好きな人に触れてもらえる機会なんて、この先の人生でまた訪れるかわからないもの。
スヴァンテ様は貴族だから、結婚したいなんて図々しいことは願わない。
だけどこの嵐の間だけは。私だけのスヴァンテ様になってもらっても、いいだろうか。
「したい、です」
「……そうか!」
眼の前で、美しい笑顔がぱっと弾ける。わ、私そんなに喜ばれるような、いいものじゃないんですけど……!
「で、でも!」
「でも?」
私が急に大きな声を上げたからか、スヴァンテ様は目を瞠る。だけど、これを言っておかないとと思ったのだ。
「私には色気なんてまったくないですから、がっかりしないでくださいね?」
胸の大きさはそれなりにあるけれど、胴はくびれがあまりなくてお尻はぺたりとしている。なんとも、色気がない体型なのだ。
「がっかりなんて、するわけがない」
スヴァンテ様はくすりと笑うと甘やかな声音で言いながら、私の額にそっと口づけた。
「私、そちらの経験が一切ないので。……ご迷惑をおかけするかも」
「任せろ……というほど私も経験はないが。経験なんて、二人で積み重ねればいい」
スヴァンテ様の手が、優しく頬に触れる。少し乾いたその手のひらの感触が、なんだか心地いい。
手はしばらく頬を撫でてから、首筋を撫で、鎖骨に触れる。そして……はじめて人に触れられる緊張で跳ねる心臓がある胸のあたりに、そっと触れた。
「……柔らかいな」
「あ、ありがとうございます!」
私は動転してしまい、なぜだか勢いよくお礼を言ってしまう。うう、本当に色気もなにもないわ! スヴァンテ様はくすりと笑うとそんな私の緊張を解すように、優しく額に口づけをしてくれた。
「そんなに緊張しないでほしい。できるだけ、優しくするから」
「わ、わ、わかりました」
スヴァンテ様はガチガチな私の様子を見て、少し思案顔になる。呆れられたかもと少々不安になっていると、大きな手が私の手を握り指がゆっくりと絡められた。指同士はすりすりと、何度か擦り合わせられる。
──スヴァンテ様の手って、こんなに大きいんだ。
重なった手と手と見つめながら、私はしみじみとそんなことを思う。
「このくらいの触れ合いは、平気か?」
「は、はい」
スヴァンテ様の問いに答えながら、こちらからも手を握り返す。違う体温同士が触れ合い溶け合うのが、なんだか不思議だ。にぎにぎとスヴァンテ様の手を握っていると、幼子を見守るような優しい笑みを向けられた。
「そうか。では、これは?」
次に、手の甲にゆっくりと口づけられた。柔らかな唇感触や、スヴァンテ様の吐息の感触。それが肌に柔らかく触れる。
「平気……です」
ドキドキはするけれど、これくらいの触れ合いなら緊張しない気がする。ここから、慣れていけばいいのかな。
「まぁ、そうか。先ほど口づけはしたものな」
スヴァンテ様はくすりと小さく笑う。出会った頃は怒った顔ばかりだった彼が、こんなにも穏やかな表情を浮かべている。それが嬉しいと感じてしまう。
「今の、もっとしていただいてもいいですか?」
「ん。わかった」
おねだりをすると、スヴァンテ様は手の甲に何度も口づけをしてくれた。
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