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公爵騎士様と一夜を過ごしてしまいました?3
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水気をしっかりと拭き取ってから、寝間着を身に着ける。お湯を捨ててから濡れた床を乾拭きして、寝室の扉を開けると……。スヴァンテ様が寝台に腰を下ろして、窓の外を眺めていた。その綺麗な横顔に、私はまた見惚れそうになってしまう。
「スヴァンテ様……。起きていらしたのですね」
「ああ。外の音が酷いから、寝つけなくてな」
「そうですね。本当にすごい音」
外は暴風という様子だ。それでもこの山小屋がびくともしないのは、大神様が守ってくれているからだろう。
「ニカナ。なぜ立ったままなのだ?」
扉の前に立ったままの私に、スヴァンテ様が問いかける。一度意識してしまうとお側にいくことをためらってしまうからです……なんて言えなくて、私は「へへ」と変な笑い声を零しながらスヴァンテ様のいる寝台へ歩を進めた。
「お、お邪魔してもいいですか?」
私が訊ねれば、スヴァンテ様は寝台へと上がり端へと詰める。
「ああ。こちらこそ、お邪魔している」
そして、優しい笑みを浮かべながらそう言った。うう、その微笑みもとっても素敵だ。
……どうして、一緒に寝るなんて言っちゃったんだろうなぁ。だけどお客様を床に寝かせるわけにはいかなかったし。いや、私が床で寝ればよかったのか! だけど、それももう言いづらい。今さらながらの後悔が、ぐるぐると脳裏を駆け巡る。
私はそろりと寝台へと上がり、スヴァンテ様の隣に寝転がった。ちらりと彼に視線を向けると綺麗がお顔が思ったよりも近くにあって、緊張感はさらに増した。
寝台は想像していたよりも狭くて、スヴァンテ様の体と私の体はひたりと触れ合ってしまう。
そそくさと身を離そうとすると……その動きは私の腰を抱き込むスヴァンテ様の手によって阻止されてしまった。
「ス、スヴァンテ様……?」
「落ちてしまいそうだから、離れないでいろ」
スヴァンテ様はそう言うと、私の体をぎゅうと抱き込む。大きくて少し体温の高い、逞しい体。それと隙間なく密着してしまい、心臓が痛いくらいの鼓動を刻んだ。
「ひ、ひえ」
「ひえ?」
「も、申し訳ありません。あの……ここまで男性と近くにいることははじめてで、緊張しまっていて。ひゃっ!」
なぜだか軽い音を立てて、首筋を吸い上げられた。そんなことをされる意味がわからず、私は目を白黒させる。
「ニカナは、本当に愛らしいな」
スヴァンテ様の囁きと吐息が、甘く肌を撫でる。待って、今愛らしいって言われた?
そんな言葉を言われたのも、はじめてだ。
ダメだ、ダメだ。こんなの恋に、なっちゃうでしょう。スヴァンテ様の馬鹿!
「もう、そんな冗談──」
「冗談じゃない。君が可愛くて、愛おしくて……仕方がないんだ」
スヴァンテ様の甘やかな囁きを聞いて、体からふにゃりと力が抜ける。
これは、もしかして。私が本当に『淫婦』じゃないかを確認する罠なんじゃないだろうか。
「わ、私。淫婦じゃないですよ……? だから、こんなことは」
「知ってる。君は素朴で可愛らしい一人の女性だ。そんな君に、私は恋をしてしまったらしい」
──恋をした。
その言葉の意味がなかなか理解できずに、頭の中をぐるぐると回る。
スヴァンテ様が、私に恋をしている? 恋? 恋って、なんだっけ。
「……恋?」
ぽつりとつぶやきながら振り向くと、優しく……スヴァンテ様の唇に唇を塞がれた。
──どうしよう。私の中でも、はっきりと恋になってしまった。
今日友達になったばかりなのに展開が急すぎじゃないですか、スヴァンテ様!
そんなことを思いながら、私は彼の口づけに翻弄されるばかりになってしまった。
「スヴァンテ様……。起きていらしたのですね」
「ああ。外の音が酷いから、寝つけなくてな」
「そうですね。本当にすごい音」
外は暴風という様子だ。それでもこの山小屋がびくともしないのは、大神様が守ってくれているからだろう。
「ニカナ。なぜ立ったままなのだ?」
扉の前に立ったままの私に、スヴァンテ様が問いかける。一度意識してしまうとお側にいくことをためらってしまうからです……なんて言えなくて、私は「へへ」と変な笑い声を零しながらスヴァンテ様のいる寝台へ歩を進めた。
「お、お邪魔してもいいですか?」
私が訊ねれば、スヴァンテ様は寝台へと上がり端へと詰める。
「ああ。こちらこそ、お邪魔している」
そして、優しい笑みを浮かべながらそう言った。うう、その微笑みもとっても素敵だ。
……どうして、一緒に寝るなんて言っちゃったんだろうなぁ。だけどお客様を床に寝かせるわけにはいかなかったし。いや、私が床で寝ればよかったのか! だけど、それももう言いづらい。今さらながらの後悔が、ぐるぐると脳裏を駆け巡る。
私はそろりと寝台へと上がり、スヴァンテ様の隣に寝転がった。ちらりと彼に視線を向けると綺麗がお顔が思ったよりも近くにあって、緊張感はさらに増した。
寝台は想像していたよりも狭くて、スヴァンテ様の体と私の体はひたりと触れ合ってしまう。
そそくさと身を離そうとすると……その動きは私の腰を抱き込むスヴァンテ様の手によって阻止されてしまった。
「ス、スヴァンテ様……?」
「落ちてしまいそうだから、離れないでいろ」
スヴァンテ様はそう言うと、私の体をぎゅうと抱き込む。大きくて少し体温の高い、逞しい体。それと隙間なく密着してしまい、心臓が痛いくらいの鼓動を刻んだ。
「ひ、ひえ」
「ひえ?」
「も、申し訳ありません。あの……ここまで男性と近くにいることははじめてで、緊張しまっていて。ひゃっ!」
なぜだか軽い音を立てて、首筋を吸い上げられた。そんなことをされる意味がわからず、私は目を白黒させる。
「ニカナは、本当に愛らしいな」
スヴァンテ様の囁きと吐息が、甘く肌を撫でる。待って、今愛らしいって言われた?
そんな言葉を言われたのも、はじめてだ。
ダメだ、ダメだ。こんなの恋に、なっちゃうでしょう。スヴァンテ様の馬鹿!
「もう、そんな冗談──」
「冗談じゃない。君が可愛くて、愛おしくて……仕方がないんだ」
スヴァンテ様の甘やかな囁きを聞いて、体からふにゃりと力が抜ける。
これは、もしかして。私が本当に『淫婦』じゃないかを確認する罠なんじゃないだろうか。
「わ、私。淫婦じゃないですよ……? だから、こんなことは」
「知ってる。君は素朴で可愛らしい一人の女性だ。そんな君に、私は恋をしてしまったらしい」
──恋をした。
その言葉の意味がなかなか理解できずに、頭の中をぐるぐると回る。
スヴァンテ様が、私に恋をしている? 恋? 恋って、なんだっけ。
「……恋?」
ぽつりとつぶやきながら振り向くと、優しく……スヴァンテ様の唇に唇を塞がれた。
──どうしよう。私の中でも、はっきりと恋になってしまった。
今日友達になったばかりなのに展開が急すぎじゃないですか、スヴァンテ様!
そんなことを思いながら、私は彼の口づけに翻弄されるばかりになってしまった。
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