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公爵騎士様と友達になったらしいです?3

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 幼い頃に両親と引き離されて、教会では私と親しくしてくれる人なんていなかった。
 大神様は常に側にいたけれど……。存在が身近に感じられる『人間』とこんなに一緒にいるのは本当に久しぶりなのだ。
 人恋しさなんて、忘れていたのにな。離れがたくなってしまいそうで、とても困る。
 そんな私の内心なんて露知らずなスヴァンテ様は、木陰に行くとそこに置いていたらしい袋を手に取った。そしてこちらにやってくると、ぽんと私に手渡す。

「今日は菓子を持ってきた。それも一緒に食べよう」
「えっ、お菓子ですか? 貴族様が食べるようなお菓子と、私の焼きアマイモを並べられると……なんだか気後れしちゃいそうなんですけど」
「君の作るものは、王都のどんなものにも負けないくらい美味しい。だから、自信を持っていい」

 スヴァンテ様はそう言うと、優しい瞳をこちらに向けた。
 焼きアマイモは、アマイモを潰して耐熱容器に入れてオーブンで焼いただけのものだ。
 どんなものにも負けない……なんて見え透いたお世辞なのに、心が浮き立ってしまう。
 ずるいなぁ。素敵な男性な上に、優しいなんて。本当にずるい。うっかりときめいてしまうじゃない。乙女心を弄ばれるって、こういうことなんだろうか。

「スヴァンテ様。お世辞は結構ですよ?」

 身を翻して、私は山小屋へ足早で向かった。

「お世辞ではない」

 スヴァンテ様は長い脚でやすやすと私に追いつき、そんな言葉を重ねる。

「ふふ。まぁ、いいです」

 山小屋に入る前に、外に積んでいる薪を何本か手に取る。スヴァンテ様はそんな私の様子を、じっと見つめてから……。

「薪が減ってきているな」

 と、ぽつりとつぶやいた。たしかに、そろそろ割らなきゃなぁって思っていたところだ。

「薪割りとかしなくても、大丈夫ですからね?」
「いや、あとで割ろう。薪は大事だ」

 やりそうだなぁと思ってクッキングストーブに薪をくべながら釘を刺したけれど、そんな釘は彼には効かないようだ。この人って、世話焼きだなぁ。

「スヴァンテ様は、私の監視役なのですよね?」
「…………ああ、そうだ」

 訊ねてみると、スヴァンテ様はしばしの間のあとにそう応える。なんなのだろう、今の間は。まぁ、いいのだけれど。

「こんなにお手伝いをしてもらったら、申し訳ないです。同居人ならともかく、監視役の公爵様によくしてもらいすぎです。甘えすぎは、ダメだと思うんです」

 私はスヴァンテ様に情のようなものが湧いている。スヴァンテ様も、きっとそうなのだろう。だけどこの関係は『スヴァンテ様の監視が終わるまで』の関係なのだ。甘えていい人が側にいることに慣れきってしまったら、お別れの時に絶対悲しくなる。
 私がいなくなっても、スヴァンテ様の側にはたくさんの人がいる。だけど私は違うのだ。胸にぽっかりと大きな穴が空いて、たぶんたくさん泣いてしまう。
 それが想像できるから、私はここで線を引こうとした。けれど……。

「……同居人のような扱いでいい」

 スヴァンテ様は、私が引いた線を消してしまおうとする。

「スヴァンテ様は、いつかいなくなっちゃう人じゃないですか。そんな扱いはできないですよ」

 そんな彼に少し腹が立って、私は拗ねた口調で言ってしまう。
 すると。スヴァンテ様のお顔が……なぜだか、ひどく傷ついたようなものになった。
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