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公爵騎士様と友達になったらしいです?1
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スヴァンテ様が山小屋に『監視』に来るようになって、そろそろ一ヶ月。
ざくざくと畑を耕している私の隣に、スヴァンテ様がやってきた。
「手伝おう」
彼はそう言いながら、私の手から鍬を取り上げる。
「あ、ありがとうございます」
「うむ」
彼は短くそう返すと、見ていて気持ちいい綺麗なフォームで鍬を振り下ろす。
最近ずっと、この調子なんだよな。口数は少ないけれど空気が柔らかくなったし、農作業も手伝ってくれる。
公爵様に鍬を振るわせていいものかと最初は動揺していたけれど、近頃は彼のしたいようにさせていた。騎士様であるスヴァンテ様は体力がとてもあるから、畑はみるみるうちに耕されていく。正直、とても助かる。
「男の人って、やっぱりすごいですね。私がやるよりとても早いです」
「……そうか」
「すごく、助かってます」
「……そうか」
スヴァンテ様は相変わらず無愛想だ。だけど、少し機嫌がよさそうだなと雰囲気から感じ取れる。褒められて嬉しいのかな。この公爵様にも可愛いところがあるんだなぁと、ちょっと微笑ましい気持ちになる。
ちらりと見たスヴァンテ様の綺麗なお顔には、跳ねた泥がついていた。手を伸ばして泥を拭うと、彼は少し目を丸くする。めずらしく、ちょっと隙のある表情だ。
「ふふ、お顔に泥がついていたので」
そう言いながら手についた泥を見せつつ笑いかけると、スヴァンテ様の頬が赤くなった。なぜ、赤くなるんだろう。
彼の表情の意味がわからず、首を傾げながら綺麗なお顔を見つめてしまう。するとスヴァンテ様の頬の赤は、さらに濃い色になった。
「いや、その。……ありがとう」
スヴァンテ様は目を細めながら、優しい笑みを浮かべる。
「うわっ」
絶世の人の笑顔を間近で浴びて、私は間抜けな声を上げてしまった。美しい人の笑顔って、破壊力がすごい。というか、スヴァンテ様のちゃんとした笑顔をはじめて見た気がする。……本当に、綺麗。
「……ん?」
今度はスヴァンテ様が首を傾げた。そんな彼を目にして、私ははっと我に返る。
「きょ、今日は……ノライモを植えようと思うんです!」
なぜだか焦ってしまった私は、唐突すぎる話題を振ってしまう。
「そうか。ノライモというものは、食べたことがないな」
そんな唐突な話題にも、スヴァンテ様は生真面目な顔で返事をしてくれる。
ノライモは山に自生するお芋だ。平民の食卓にはよく上がるものだけれど、貴族様の食卓に出ることはないらしい。
山に生えていたもので種芋を作って試しに畑に植えてみたら、大神様の力のおかげで野生のものより美味しく育ったんだよね。アマイモと違って甘みはないのだけれど、ほくほくした食感でとても美味しいのだ。バターを添えたりしたら、もっと美味しくなるんだろうなぁ。そんな贅沢なものは、私の微々たる貯金では買えないんだけど。
「種芋を倉庫から取ってきますね」
「私も行こう」
種芋を取りに倉庫に行こうとすると、スヴァンテ様がそう言いながらついてくる。
「えっ、畑は?」
「もう耕した」
そう言われて畑を見れば、言葉の通りにもう耕起が終わっていた。本当に、仕事が早いな。
ざくざくと畑を耕している私の隣に、スヴァンテ様がやってきた。
「手伝おう」
彼はそう言いながら、私の手から鍬を取り上げる。
「あ、ありがとうございます」
「うむ」
彼は短くそう返すと、見ていて気持ちいい綺麗なフォームで鍬を振り下ろす。
最近ずっと、この調子なんだよな。口数は少ないけれど空気が柔らかくなったし、農作業も手伝ってくれる。
公爵様に鍬を振るわせていいものかと最初は動揺していたけれど、近頃は彼のしたいようにさせていた。騎士様であるスヴァンテ様は体力がとてもあるから、畑はみるみるうちに耕されていく。正直、とても助かる。
「男の人って、やっぱりすごいですね。私がやるよりとても早いです」
「……そうか」
「すごく、助かってます」
「……そうか」
スヴァンテ様は相変わらず無愛想だ。だけど、少し機嫌がよさそうだなと雰囲気から感じ取れる。褒められて嬉しいのかな。この公爵様にも可愛いところがあるんだなぁと、ちょっと微笑ましい気持ちになる。
ちらりと見たスヴァンテ様の綺麗なお顔には、跳ねた泥がついていた。手を伸ばして泥を拭うと、彼は少し目を丸くする。めずらしく、ちょっと隙のある表情だ。
「ふふ、お顔に泥がついていたので」
そう言いながら手についた泥を見せつつ笑いかけると、スヴァンテ様の頬が赤くなった。なぜ、赤くなるんだろう。
彼の表情の意味がわからず、首を傾げながら綺麗なお顔を見つめてしまう。するとスヴァンテ様の頬の赤は、さらに濃い色になった。
「いや、その。……ありがとう」
スヴァンテ様は目を細めながら、優しい笑みを浮かべる。
「うわっ」
絶世の人の笑顔を間近で浴びて、私は間抜けな声を上げてしまった。美しい人の笑顔って、破壊力がすごい。というか、スヴァンテ様のちゃんとした笑顔をはじめて見た気がする。……本当に、綺麗。
「……ん?」
今度はスヴァンテ様が首を傾げた。そんな彼を目にして、私ははっと我に返る。
「きょ、今日は……ノライモを植えようと思うんです!」
なぜだか焦ってしまった私は、唐突すぎる話題を振ってしまう。
「そうか。ノライモというものは、食べたことがないな」
そんな唐突な話題にも、スヴァンテ様は生真面目な顔で返事をしてくれる。
ノライモは山に自生するお芋だ。平民の食卓にはよく上がるものだけれど、貴族様の食卓に出ることはないらしい。
山に生えていたもので種芋を作って試しに畑に植えてみたら、大神様の力のおかげで野生のものより美味しく育ったんだよね。アマイモと違って甘みはないのだけれど、ほくほくした食感でとても美味しいのだ。バターを添えたりしたら、もっと美味しくなるんだろうなぁ。そんな贅沢なものは、私の微々たる貯金では買えないんだけど。
「種芋を倉庫から取ってきますね」
「私も行こう」
種芋を取りに倉庫に行こうとすると、スヴァンテ様がそう言いながらついてくる。
「えっ、畑は?」
「もう耕した」
そう言われて畑を見れば、言葉の通りにもう耕起が終わっていた。本当に、仕事が早いな。
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