19 / 24
転生王子は庭園で2※
しおりを挟む
ティアラ嬢の唇は、柔らかい。そして甘い。唇に舌を差し入れてみるとティアラ嬢は驚いたように身を震わせたけれど、おずおずと自らも舌を伸ばしてきた。その小さな舌に自らの舌を擦り合わせると、驚くほどに気持ちいい。俺は散々舌を嬲った後に、口蓋や白い歯にも舌を這わせた。
「ふ、ぁ、あ」
深い口づけを与えていると、ティアラ嬢から愛らしい小さな喘ぎが漏れる。それに昂ぶらされた下腹部が、はちきれんばかりになって痛い。
俺は体感で二十分ばかり彼女の唇を貪った。そしてようやく唇を離すと、ティアラ嬢は俺の胸に倒れ込んでくる。その体を抱きしめ、さらさらとした黒髪をできるだけの優しさで撫でてあげた。
……その間も俺の股間は大変なことになっているのだが。こんなところで押し倒すわけにもいかない。そもそも童貞にそんな根性はない。
誰が来るかも、わからないし。
『今日は私以外の護衛はおりません。その私も数時間程度、どこかでうっかり昼寝をするかもしれませんね。今日は天気がとてもいいので』
その時、俺の脳裏にブリッツの言葉が蘇った。あいつ、これを見越して……!
いや、ダメだ。そもそもティアラ嬢の気持ちがわからない。『嫌いにならないで』と言われたが『好き』と言われたわけではないのだ。
……キスをしたのも、早まったな。
「しおん、おうじ」
とろりとした瞳を俺に向けながら、ティアラ嬢が幼い口で俺の名を呼ぶ。ああもう、可愛い。
「ダメだよ、ティアラ嬢。そんな風に呼ばれると我慢ができなくなるから」
「がまん……」
ティアラ嬢は自分の体に触れている物に気づいたようで、俺の下腹部に目を向ける。そして顔を真っ赤にした。
「シオン、王子。これは」
「うん、収まるまで我慢するから。気にしないで」
俺はティアラ嬢の体をさらに深く抱き込んで、深呼吸をした。収まれ、早く収まれ。
「……その、ティアは構いません。抱いて、ください」
「ティアラ嬢!?」
「シオン王子、抱いて。ティアを婚約者のままでいさせてください」
それは、公爵家の娘としての義務だろうか。そんな苦い気持ちが胸に広がる。
そんな気持ちが顔に出ていたのか、ティアラ嬢は俺の表情を見て悲しそうな顔をした。
「お嫌いな女のことなど……抱けませんよね」
ティアラ嬢は、おかしなことを言う。俺は眉を顰めながらティアラ嬢を見つめた。
「ティアラ嬢こそ、俺のことを嫌っているだろう?」
「え……?」
今度はティアラ嬢が呆気に取られた顔で俺を見つめる。そしてぷるぷると何度も首を横に振った。
「は、はじめてお会いした日から。お慕いしておりました」
「……えーっと。そんな嘘、つかなくても」
「う、嘘じゃありません!」
「だけど、叩かれたり、怒られたりばかりだったし……」
「うううう、それは」
じわりとティアラ嬢の瞳に涙が浮かぶ。そして彼女は俺の胸にぐりぐりと額を押し当てた。
「王子のことが愛おしすぎて、恥ずかしかったんです。だからあんな無礼な態度に」
――ティアたんはツンじゃなくて、ツンデレだった。
なんということだ。こんな国宝級のツンデレが存在したなんて。
俺はティアたんの体を抱き上げた。軽い、羽根のように軽い。体が近い、いい匂いがする。股間が、とても痛い。
「王子!?」
「……東屋へ。そこなら万が一誰か来ても、見られないから」
耳元で囁いて、そのまま甘噛みをするとティアたんの口から甘い喘ぎが漏れた。
「あの、あの。シオン王子は、その。私のことは……」
ぎゅっと俺の服を握って、恐る恐るティアラ嬢が訊ねてくる。
「……一目惚れした。天使かと思ったよ」
俺は中二病時代の前世のようなセリフを、素のテンションで囁いた。恥ずかしい。
だけどティアたんの顔が嬉しそうに綻んだので、そんなことはどうでもいいのだ。
「ふ、ぁ、あ」
深い口づけを与えていると、ティアラ嬢から愛らしい小さな喘ぎが漏れる。それに昂ぶらされた下腹部が、はちきれんばかりになって痛い。
俺は体感で二十分ばかり彼女の唇を貪った。そしてようやく唇を離すと、ティアラ嬢は俺の胸に倒れ込んでくる。その体を抱きしめ、さらさらとした黒髪をできるだけの優しさで撫でてあげた。
……その間も俺の股間は大変なことになっているのだが。こんなところで押し倒すわけにもいかない。そもそも童貞にそんな根性はない。
誰が来るかも、わからないし。
『今日は私以外の護衛はおりません。その私も数時間程度、どこかでうっかり昼寝をするかもしれませんね。今日は天気がとてもいいので』
その時、俺の脳裏にブリッツの言葉が蘇った。あいつ、これを見越して……!
いや、ダメだ。そもそもティアラ嬢の気持ちがわからない。『嫌いにならないで』と言われたが『好き』と言われたわけではないのだ。
……キスをしたのも、早まったな。
「しおん、おうじ」
とろりとした瞳を俺に向けながら、ティアラ嬢が幼い口で俺の名を呼ぶ。ああもう、可愛い。
「ダメだよ、ティアラ嬢。そんな風に呼ばれると我慢ができなくなるから」
「がまん……」
ティアラ嬢は自分の体に触れている物に気づいたようで、俺の下腹部に目を向ける。そして顔を真っ赤にした。
「シオン、王子。これは」
「うん、収まるまで我慢するから。気にしないで」
俺はティアラ嬢の体をさらに深く抱き込んで、深呼吸をした。収まれ、早く収まれ。
「……その、ティアは構いません。抱いて、ください」
「ティアラ嬢!?」
「シオン王子、抱いて。ティアを婚約者のままでいさせてください」
それは、公爵家の娘としての義務だろうか。そんな苦い気持ちが胸に広がる。
そんな気持ちが顔に出ていたのか、ティアラ嬢は俺の表情を見て悲しそうな顔をした。
「お嫌いな女のことなど……抱けませんよね」
ティアラ嬢は、おかしなことを言う。俺は眉を顰めながらティアラ嬢を見つめた。
「ティアラ嬢こそ、俺のことを嫌っているだろう?」
「え……?」
今度はティアラ嬢が呆気に取られた顔で俺を見つめる。そしてぷるぷると何度も首を横に振った。
「は、はじめてお会いした日から。お慕いしておりました」
「……えーっと。そんな嘘、つかなくても」
「う、嘘じゃありません!」
「だけど、叩かれたり、怒られたりばかりだったし……」
「うううう、それは」
じわりとティアラ嬢の瞳に涙が浮かぶ。そして彼女は俺の胸にぐりぐりと額を押し当てた。
「王子のことが愛おしすぎて、恥ずかしかったんです。だからあんな無礼な態度に」
――ティアたんはツンじゃなくて、ツンデレだった。
なんということだ。こんな国宝級のツンデレが存在したなんて。
俺はティアたんの体を抱き上げた。軽い、羽根のように軽い。体が近い、いい匂いがする。股間が、とても痛い。
「王子!?」
「……東屋へ。そこなら万が一誰か来ても、見られないから」
耳元で囁いて、そのまま甘噛みをするとティアたんの口から甘い喘ぎが漏れた。
「あの、あの。シオン王子は、その。私のことは……」
ぎゅっと俺の服を握って、恐る恐るティアラ嬢が訊ねてくる。
「……一目惚れした。天使かと思ったよ」
俺は中二病時代の前世のようなセリフを、素のテンションで囁いた。恥ずかしい。
だけどティアたんの顔が嬉しそうに綻んだので、そんなことはどうでもいいのだ。
2
お気に入りに追加
1,159
あなたにおすすめの小説
猛禽令嬢は王太子の溺愛を知らない
高遠すばる
恋愛
幼い頃、婚約者を庇って負った怪我のせいで目つきの悪い猛禽令嬢こと侯爵令嬢アリアナ・カレンデュラは、ある日、この世界は前世の自分がプレイしていた乙女ゲーム「マジカル・愛ラブユー」の世界で、自分はそのゲームの悪役令嬢だと気が付いた。
王太子であり婚約者でもあるフリードリヒ・ヴァン・アレンドロを心から愛しているアリアナは、それが破滅を呼ぶと分かっていてもヒロインをいじめることをやめられなかった。
最近ではフリードリヒとの仲もギクシャクして、目すら合わせてもらえない。
あとは断罪を待つばかりのアリアナに、フリードリヒが告げた言葉とはーー……!
積み重なった誤解が織りなす、溺愛・激重感情ラブコメディ!
※王太子の愛が重いです。
とある悪役令嬢は婚約破棄後に必ず処刑される。けれど彼女の最期はいつも笑顔だった。
三月叶姫
恋愛
私はこの世界から嫌われている。
みんな、私が死ぬ事を望んでいる――。
とある悪役令嬢は、婚約者の王太子から婚約破棄を宣言された後、聖女暗殺未遂の罪で処刑された。だが、彼女は一年前に時を遡り、目を覚ました。
同じ時を繰り返し始めた彼女の結末はいつも同じ。
それでも、彼女は最期の瞬間は必ず笑顔を貫き通した。
十回目となった処刑台の上で、ついに貼り付けていた笑顔の仮面が剥がれ落ちる。
涙を流し、助けを求める彼女に向けて、誰かが彼女の名前を呼んだ。
今、私の名前を呼んだのは、誰だったの?
※こちらの作品は他サイトにも掲載しております
婚約破棄してたった今処刑した悪役令嬢が前世の幼馴染兼恋人だと気づいてしまった。
風和ふわ
恋愛
タイトル通り。連載の気分転換に執筆しました。
※なろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ、pixivに投稿しています。
【R18】殿下!そこは舐めてイイところじゃありません! 〜悪役令嬢に転生したけど元潔癖症の王子に溺愛されてます〜
茅野ガク
恋愛
予想外に起きたイベントでなんとか王太子を救おうとしたら、彼に執着されることになった悪役令嬢の話。
☆他サイトにも投稿しています
モブの私がなぜかヒロインを押し退けて王太子殿下に選ばれました
みゅー
恋愛
その国では婚約者候補を集め、その中から王太子殿下が自分の婚約者を選ぶ。
ケイトは自分がそんな乙女ゲームの世界に、転生してしまったことを知った。
だが、ケイトはそのゲームには登場しておらず、気にせずそのままその世界で自分の身の丈にあった普通の生活をするつもりでいた。だが、ある日宮廷から使者が訪れ、婚約者候補となってしまい……
そんなお話です。
頑張らない政略結婚
ひろか
恋愛
「これは政略結婚だ。私は君を愛することはないし、触れる気もない」
結婚式の直前、夫となるセルシオ様からの言葉です。
好きにしろと、君も愛人をつくれと。君も、もって言いましたわ。
ええ、好きにしますわ、私も愛する人を想い続けますわ!
五話完結、毎日更新
悪役令嬢はざまぁされるその役を放棄したい
みゅー
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生していたルビーは、このままだとずっと好きだった王太子殿下に自分が捨てられ、乙女ゲームの主人公に“ざまぁ”されることに気づき、深い悲しみに襲われながらもなんとかそれを乗り越えようとするお話。
切ない話が書きたくて書きました。
転生したら推しに捨てられる婚約者でした、それでも推しの幸せを祈りますのスピンオフです。
宮廷外交官の天才令嬢、王子に愛想をつかれて婚約破棄されたあげく、実家まで追放されてケダモノ男爵に読み書きを教えることになりました
悠木真帆
恋愛
子爵令嬢のシャルティナ・ルーリックは宮廷外交官として日々忙しくはたらく毎日。
クールな見た目と頭の回転の速さからついたあだ名は氷の令嬢。
婚約者である王子カイル・ドルトラードを長らくほったらかしてしまうほど仕事に没頭していた。
そんなある日の夜会でシャルティナは王子から婚約破棄を宣言されてしまう。
そしてそのとなりには見知らぬ令嬢が⋯⋯
王子の婚約者ではなくなった途端、シャルティナは宮廷外交官の立場まで失い、見かねた父の強引な勧めで冒険者あがりの男爵のところへ行くことになる。
シャルティナは宮廷外交官の実績を活かして辣腕を振るおうと張り切るが、男爵から命じられた任務は男爵に文字の読み書きを教えることだった⋯⋯
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる