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もののけ執事とお座敷少女8
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「力の、使いすぎ……」
心当たりは、ありすぎる。それは、昨日から増え続けている仕事だ。
座敷ちゃんは『自分の力は弱い』と言っていた。あの量の仕事を舞い込ませるのは、かなりの負担だったんじゃ。
「こんなになるまで無理をして、私の仕事を増やしてたの? どうして、そんなことを」
私は豊かでもないけれど、明日飢えて死ぬという状況でもない。身を削るような無茶なんてしなくてもいいのに。
「家の主を喜ばせたかったのだろう。座敷わらしの性だな」
夜音さんはそう言うと、悲しげな表情で眉尻を下げた。
座敷わらしが家を繁栄させようとする理由なんて、今まで考える機会がなかったけれど。『家の主を喜ばせたい』というなんていう、健気な理由だったんだな……
苦しげな息をしている座敷ちゃんの頭を撫でる。すると少しだけ、彼女の表情が和らいだ気がした。
「まぁ、安静にしていれば回復するでしょう」
「よ、良かった」
夜音さんの言葉を聞いて、私は心の底から安堵し胸を撫で下ろした。
「毎日こんな無茶をしていれば、いずれ壊れてしまいますが」
しかし夜音さんの言葉によって、また絶望に突き落とされる。
壊れるだなんて、そんな恐ろしいことを言わないで欲しい。
「夜音さん、怖いことを言わないでください」
「本当のことですよ。力の使いすぎは、命に関わることです」
「そんな……」
座敷ちゃんが起きたら、無理はしないでと伝えないと。
「今日は休みを取ると言ってきます。ついでに不調でも食べやすいものを持ってきましょうかね」
「夜音さん、いいんですか?」
「芽衣様一人だと、頼りないですからね」
夜音さんは嫌味な口調で言ってから黒狐に変わると、天袋に消え、すぐに戻ってくる。
その口にはまたビニール袋が咥えられているけれど……。一体どこから持ってきているんだろう。
「彼女が目を覚ましたら声をかけますので。芽衣様はお仕事をしていてください」
夜音さんは人型に戻ると、ビニール袋から桃缶やヨーグルトを取り出した。
どちらも見たことのないメーカーのものだ。あちらの世界の商品なのかな。
「……病人のものを、なにを物欲しげに見てるんですか」
「そ、そんなつもりは。……いえ、ちょっとだけそうだったかも」
自分の意地汚さを呪いたい。夜音さんは呆れたようにため息をついた。
「後で芽衣様の分も持って行きますから。ほら、ちゃんと働いて。健全な精神は、生活に困らない程度の金銭に宿るんですよ。そのためにせっせと労働しなさい」
……健全な精神は健全な肉体に宿る、じゃないのか。
でもたしかに一理ある。お金がないと不安が増えて、人は病んでしまう。
「じゃあ、座敷ちゃんをお願いします」
「はい、ちゃんと看てますから。労働を頑張ってくださいね」
夜音さんはそう言うと、ぱたんと襖を閉めた。
座敷ちゃんのことは気になるけれど、仕事はちゃんとしなければ。私は気を引き締めながら、ノートパソコンの前に座った。
彼女が倒れたからか、メールの新着は増えていない。そのことに少しほっとする。今は座敷ちゃんの力が消費されていないという、証拠に感じたから。
時刻はそろそろ十五時だ。今日は一文字たりとも仕事が進んでいないので、気合いを入れて作業をしないと。
「頑張るぞ」
小さくつぶやいてから、画面と向かい合う。
座敷ちゃんは夜音さんが看てくれている。今の私にできることは、仕事を頑張るくらいなのだ。
心当たりは、ありすぎる。それは、昨日から増え続けている仕事だ。
座敷ちゃんは『自分の力は弱い』と言っていた。あの量の仕事を舞い込ませるのは、かなりの負担だったんじゃ。
「こんなになるまで無理をして、私の仕事を増やしてたの? どうして、そんなことを」
私は豊かでもないけれど、明日飢えて死ぬという状況でもない。身を削るような無茶なんてしなくてもいいのに。
「家の主を喜ばせたかったのだろう。座敷わらしの性だな」
夜音さんはそう言うと、悲しげな表情で眉尻を下げた。
座敷わらしが家を繁栄させようとする理由なんて、今まで考える機会がなかったけれど。『家の主を喜ばせたい』というなんていう、健気な理由だったんだな……
苦しげな息をしている座敷ちゃんの頭を撫でる。すると少しだけ、彼女の表情が和らいだ気がした。
「まぁ、安静にしていれば回復するでしょう」
「よ、良かった」
夜音さんの言葉を聞いて、私は心の底から安堵し胸を撫で下ろした。
「毎日こんな無茶をしていれば、いずれ壊れてしまいますが」
しかし夜音さんの言葉によって、また絶望に突き落とされる。
壊れるだなんて、そんな恐ろしいことを言わないで欲しい。
「夜音さん、怖いことを言わないでください」
「本当のことですよ。力の使いすぎは、命に関わることです」
「そんな……」
座敷ちゃんが起きたら、無理はしないでと伝えないと。
「今日は休みを取ると言ってきます。ついでに不調でも食べやすいものを持ってきましょうかね」
「夜音さん、いいんですか?」
「芽衣様一人だと、頼りないですからね」
夜音さんは嫌味な口調で言ってから黒狐に変わると、天袋に消え、すぐに戻ってくる。
その口にはまたビニール袋が咥えられているけれど……。一体どこから持ってきているんだろう。
「彼女が目を覚ましたら声をかけますので。芽衣様はお仕事をしていてください」
夜音さんは人型に戻ると、ビニール袋から桃缶やヨーグルトを取り出した。
どちらも見たことのないメーカーのものだ。あちらの世界の商品なのかな。
「……病人のものを、なにを物欲しげに見てるんですか」
「そ、そんなつもりは。……いえ、ちょっとだけそうだったかも」
自分の意地汚さを呪いたい。夜音さんは呆れたようにため息をついた。
「後で芽衣様の分も持って行きますから。ほら、ちゃんと働いて。健全な精神は、生活に困らない程度の金銭に宿るんですよ。そのためにせっせと労働しなさい」
……健全な精神は健全な肉体に宿る、じゃないのか。
でもたしかに一理ある。お金がないと不安が増えて、人は病んでしまう。
「じゃあ、座敷ちゃんをお願いします」
「はい、ちゃんと看てますから。労働を頑張ってくださいね」
夜音さんはそう言うと、ぱたんと襖を閉めた。
座敷ちゃんのことは気になるけれど、仕事はちゃんとしなければ。私は気を引き締めながら、ノートパソコンの前に座った。
彼女が倒れたからか、メールの新着は増えていない。そのことに少しほっとする。今は座敷ちゃんの力が消費されていないという、証拠に感じたから。
時刻はそろそろ十五時だ。今日は一文字たりとも仕事が進んでいないので、気合いを入れて作業をしないと。
「頑張るぞ」
小さくつぶやいてから、画面と向かい合う。
座敷ちゃんは夜音さんが看てくれている。今の私にできることは、仕事を頑張るくらいなのだ。
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