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令嬢13歳・二人の求愛者と騎士祭と
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試合はその後滞りなく進行し、二回戦へと進行する前の休憩時間に入った。
一回戦中にフィリップ王子も戻って来て『ちゃんと治癒師は手配できたぞ! 褒めてくれビアンカ!』なんて言いながら金色の頭を少し下げてナデナデをねだられたので、犬の子でも扱うかのようにガシガシと乱雑に撫でておいた。
……最初はお断りしようと思ったんだけど、実際友人想いでとても偉いものね。
そんなに雑な撫でかたにも関わらずフィリップ王子がとても幸せそうに笑うから。『乙女ゲームのメインヒーローなのに犬の子みたいに撫でられて喜ぶんじゃないわよ!』なんて内心思ってしまう。
ほんと、どうしてそんなに嬉しそうなのよ……。
――これが恋は盲目ってやつなのだろうか。どうして相手がわたくしなの、フィリップ王子。
彼の幸せのためにわたくし以外に恋をして欲しい、切実に。わたくしはフィリップ王子のことが幼馴染としては大好きだけど恋愛の意味では好きになれないから。
今も彼は時折笑顔を見せつつご機嫌で横に座っている。うう……メインヒーロー様の惜しみない無邪気な笑顔は正直可愛いですね。
ゲーム内の少し高慢なフィリップ王子と違って、子供っぽいところもあって内面も大変可愛らしいし。
ただ……。
「フィリップ様。手を繋ぐのはいい加減お止めになって!」
「何故だ、マクシミリアンも繋いでいるじゃないか。婚約者候補に俺の好意をアピールしてなにが悪いんだ」
わたくし、貴方の好意には本当に応えられませんのよ……!!
もう片側からわたくしの手を握るマクシミリアンの握力がどんどん上がっていて、不機嫌なオーラが全開で恐ろしくて震えてしまう。
……ギャラリーがまた興味津々でこちらを見てるし。このままだとわたくしの評判がとんでもないことになる気がする。
「……お友達じゃ、ダメですの……?」
自然にそんな呟きが洩れてしまう。
それを聞いてフィリップ王子は頬を膨らませた。
「嫌だ。俺はビアンカと婚約して色々なことをしたいんだ。唇へのキスもしたいし、抱きしめて香りも嗅ぎたいし、俺の私室にも呼んで二人でイチャイチャしたいし、色々なスキンシップもだな……」
「ちょっ……お止めになってくださいませ!」
彼の言葉にわたくしは思わず叫んでしまう。するとフィリップ王子はニヤリと笑った。
「幼い頃からビアンカに恋をしているんだ。健康な男子がする妄想くらい、いくらでも溜まっている」
囁かれ、金色の目を煌めかせながら流し目で見られて。豪奢な美貌で乞うような表情を浮かべられる。
……その雰囲気は非常に耽美だけれどその言葉の内容は、健全な青少年的な……ちょっとえっちなものなのよね。
ベルリナ様がフィリップ王子の発言を聞いて白目を剥きそうになっている。うう……キラキラな王子様だと思っていた方の青少年的な発言なんて聞きたくないですよね。
「……フィリップ王子。ビアンカ嬢に不埒な妄想をぶつけるのは止めて欲しいのですが」
マクシミリアンが剣呑な声でフィリップ王子に切り込んでいく。
「セルバンデス卿、不埒なのはお前だろう。お前がビアンカに普段なにをしてるか、知らない訳ではないのだからな」
「だったら引いてくださいフィリップ王子。ビアンカ嬢が私だけにそれを許しているということは、貴方には一切の脈がないという証左でしょうに」
「お……お止めになってぇ!!」
二人の険悪かつ、恥ずかしくなる会話にわたくしは再び絶叫した。
ベルリナ様の視線がとても痛い、痛いわ……。
ああ、自国の王子と他国の侯爵の両天秤なんて。すごーい! 乙女ゲームみたい!
……わたくしだってそんなの傍観者として楽しみたい。当事者なんてちっとも楽しくないわ……。
結局二人と手を繋いだままオロオロしているうちに二回戦へと試合は突入してしまった。
ノエル様の出番は二回戦の第二試合。
彼の怪我の具合のことを思うと、とても落ち着かない気持ちになってしまう。
ゾフィー様は一心不乱にアリーナを見つめている。この第一試合が終わったらノエル様の出番なのだ。気が気じゃないわよね……。
「ノエルが当たるのは格下の相手だ。怪我をしているとはいえノエルの勝利は手堅いと思うのだが……」
フィリップ王子がぼそりと言う。
ノエル様をいつも見ている彼の言葉だ、信頼性は高いのだろう。
ノエル様は先ほどリュオンをほとんど動かずに下してしまった。最小限の動きで対処できる相手であれば、怪我をしていても捌ける可能性は確かに高そうだ。
そしてフィリップ王子の宣言通り、ノエル様はあっさりと次の相手を下し準決勝へと駒を進めた。
しかも開始から数十秒の決着で。――彼、本当にお強いのね。
ノエル様のご様子からは怪我の程度は伺えない。お辛い様子を見せたくないのだろう……恐らく、ゾフィー様に。
いつもはのんびりとした雰囲気のノエル様が、毅然とした様子で戦いに挑む姿はとても素敵だ。
騎士たちの令嬢人気が高い理由がよくわかるわ。
「ノエル様っ。わ……、わ。準決勝まで……!! しゅてき……!」
「本当に素敵ですわねぇ……」
ゾフィー様の感極まった声に釣られてわたくしも思わず、ため息と共に感嘆の言葉を漏らしてしまう。
するとマクシミリアンとフィリップ王子のなんだか不満そうな視線が双方から突き刺さった。
「……私も同じ学年でしたら騎士祭の優勝くらい、いくらでも捧げましたのに」
マクシミリアンが深いため息をつきながら言う。
マクシミリアン、いくらでもって……。貴方、魔法職で近接戦闘をやる方ではないはずよね。もしかして剣技もお得意だったりするの? チートなところがあるマクシミリアンだったらあり得るので怖い。
「……俺も参加すればよかったな」
フィリップ王子もブツブツと呟いている。王子、止めてくださいませ!
王太子である貴方の身になにかあったらどうするのよ……!
フィリップ王子は基本スペックが高くなんでもできる。だからトーナメントのいいところまで進んでしまいそうだけど。
そしてノエル様は第三試合もあっさりと制し……なんと決勝まで駒を進めてしまったのだ。
一回戦中にフィリップ王子も戻って来て『ちゃんと治癒師は手配できたぞ! 褒めてくれビアンカ!』なんて言いながら金色の頭を少し下げてナデナデをねだられたので、犬の子でも扱うかのようにガシガシと乱雑に撫でておいた。
……最初はお断りしようと思ったんだけど、実際友人想いでとても偉いものね。
そんなに雑な撫でかたにも関わらずフィリップ王子がとても幸せそうに笑うから。『乙女ゲームのメインヒーローなのに犬の子みたいに撫でられて喜ぶんじゃないわよ!』なんて内心思ってしまう。
ほんと、どうしてそんなに嬉しそうなのよ……。
――これが恋は盲目ってやつなのだろうか。どうして相手がわたくしなの、フィリップ王子。
彼の幸せのためにわたくし以外に恋をして欲しい、切実に。わたくしはフィリップ王子のことが幼馴染としては大好きだけど恋愛の意味では好きになれないから。
今も彼は時折笑顔を見せつつご機嫌で横に座っている。うう……メインヒーロー様の惜しみない無邪気な笑顔は正直可愛いですね。
ゲーム内の少し高慢なフィリップ王子と違って、子供っぽいところもあって内面も大変可愛らしいし。
ただ……。
「フィリップ様。手を繋ぐのはいい加減お止めになって!」
「何故だ、マクシミリアンも繋いでいるじゃないか。婚約者候補に俺の好意をアピールしてなにが悪いんだ」
わたくし、貴方の好意には本当に応えられませんのよ……!!
もう片側からわたくしの手を握るマクシミリアンの握力がどんどん上がっていて、不機嫌なオーラが全開で恐ろしくて震えてしまう。
……ギャラリーがまた興味津々でこちらを見てるし。このままだとわたくしの評判がとんでもないことになる気がする。
「……お友達じゃ、ダメですの……?」
自然にそんな呟きが洩れてしまう。
それを聞いてフィリップ王子は頬を膨らませた。
「嫌だ。俺はビアンカと婚約して色々なことをしたいんだ。唇へのキスもしたいし、抱きしめて香りも嗅ぎたいし、俺の私室にも呼んで二人でイチャイチャしたいし、色々なスキンシップもだな……」
「ちょっ……お止めになってくださいませ!」
彼の言葉にわたくしは思わず叫んでしまう。するとフィリップ王子はニヤリと笑った。
「幼い頃からビアンカに恋をしているんだ。健康な男子がする妄想くらい、いくらでも溜まっている」
囁かれ、金色の目を煌めかせながら流し目で見られて。豪奢な美貌で乞うような表情を浮かべられる。
……その雰囲気は非常に耽美だけれどその言葉の内容は、健全な青少年的な……ちょっとえっちなものなのよね。
ベルリナ様がフィリップ王子の発言を聞いて白目を剥きそうになっている。うう……キラキラな王子様だと思っていた方の青少年的な発言なんて聞きたくないですよね。
「……フィリップ王子。ビアンカ嬢に不埒な妄想をぶつけるのは止めて欲しいのですが」
マクシミリアンが剣呑な声でフィリップ王子に切り込んでいく。
「セルバンデス卿、不埒なのはお前だろう。お前がビアンカに普段なにをしてるか、知らない訳ではないのだからな」
「だったら引いてくださいフィリップ王子。ビアンカ嬢が私だけにそれを許しているということは、貴方には一切の脈がないという証左でしょうに」
「お……お止めになってぇ!!」
二人の険悪かつ、恥ずかしくなる会話にわたくしは再び絶叫した。
ベルリナ様の視線がとても痛い、痛いわ……。
ああ、自国の王子と他国の侯爵の両天秤なんて。すごーい! 乙女ゲームみたい!
……わたくしだってそんなの傍観者として楽しみたい。当事者なんてちっとも楽しくないわ……。
結局二人と手を繋いだままオロオロしているうちに二回戦へと試合は突入してしまった。
ノエル様の出番は二回戦の第二試合。
彼の怪我の具合のことを思うと、とても落ち着かない気持ちになってしまう。
ゾフィー様は一心不乱にアリーナを見つめている。この第一試合が終わったらノエル様の出番なのだ。気が気じゃないわよね……。
「ノエルが当たるのは格下の相手だ。怪我をしているとはいえノエルの勝利は手堅いと思うのだが……」
フィリップ王子がぼそりと言う。
ノエル様をいつも見ている彼の言葉だ、信頼性は高いのだろう。
ノエル様は先ほどリュオンをほとんど動かずに下してしまった。最小限の動きで対処できる相手であれば、怪我をしていても捌ける可能性は確かに高そうだ。
そしてフィリップ王子の宣言通り、ノエル様はあっさりと次の相手を下し準決勝へと駒を進めた。
しかも開始から数十秒の決着で。――彼、本当にお強いのね。
ノエル様のご様子からは怪我の程度は伺えない。お辛い様子を見せたくないのだろう……恐らく、ゾフィー様に。
いつもはのんびりとした雰囲気のノエル様が、毅然とした様子で戦いに挑む姿はとても素敵だ。
騎士たちの令嬢人気が高い理由がよくわかるわ。
「ノエル様っ。わ……、わ。準決勝まで……!! しゅてき……!」
「本当に素敵ですわねぇ……」
ゾフィー様の感極まった声に釣られてわたくしも思わず、ため息と共に感嘆の言葉を漏らしてしまう。
するとマクシミリアンとフィリップ王子のなんだか不満そうな視線が双方から突き刺さった。
「……私も同じ学年でしたら騎士祭の優勝くらい、いくらでも捧げましたのに」
マクシミリアンが深いため息をつきながら言う。
マクシミリアン、いくらでもって……。貴方、魔法職で近接戦闘をやる方ではないはずよね。もしかして剣技もお得意だったりするの? チートなところがあるマクシミリアンだったらあり得るので怖い。
「……俺も参加すればよかったな」
フィリップ王子もブツブツと呟いている。王子、止めてくださいませ!
王太子である貴方の身になにかあったらどうするのよ……!
フィリップ王子は基本スペックが高くなんでもできる。だからトーナメントのいいところまで進んでしまいそうだけど。
そしてノエル様は第三試合もあっさりと制し……なんと決勝まで駒を進めてしまったのだ。
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