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令嬢13歳・騎士祭の再開
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ノエル様のお見舞いを終えてマクシミリアンと席に戻ると。
ミルカ王女が何故かベルリナ様と肩を組んで楽しそうな顔をしていた。ベルリナ様はなんだかとても微妙なお顔だけど……。
ミルカ王女の背後でハウンドも悪い顔をしていて、マリア様は『くっ……推しカプ頑張れ!』なんて呟きながら悔しそうな顔をしている。一体何があったのかしら。
ゾフィー様はノエル様とゆっくりお話ししたいだろうからと医務室に残してきた。
お二人のことだしきっとよい語らいをされているわね。
フィリップ王子は治癒師の手配の最中だ。彼はダウストリア家のかかりつけ治癒師の着が明日になりそうだと聞いて、王宮から治癒師を派遣することを決めたのだ。
それでも治癒師の数は少なく出払ってしまっているから、夕方着にはなってしまうそうなのだけれど。
ちなみに治療費もフィリップ王子持ちらしい。王宮付きの治癒師はとても高額で一貴族家にとっては相当な負担になってしまうものね。
……ノエル様はフィリップ王子に大事にされているのね。親友っていいな、なんて思ってしまう。
「遅いなお前たち」
ミーニャ王子は相変わらずテーブル席でお菓子を食べていたようだ。彼はわたくしたちを見るとゆったりと紅茶を口に運びながらそう言った。
ほんとにこの方はマイペースだな……。この人の番になる人は大変なんだろうな。いや、案外恋は人を変えたりするのかしら?
「お待たせして申し訳ありません、ミーニャ王子」
わたくしはそう言いながら席へと戻った。会場の騒然とした様子はもう落ち着いており、皆今か今かと試合の再開を待ち望んでいる。
ノエル様は怪我を押して試合に臨むようだけれど……本当に大丈夫なのかしら。無理はしないといいな。
そっと手を繋がれた気配がしてそちらを見ると、マクシミリアンが柔らかく微笑んでいた。
繋がれた手をぎゅっと握り返すとまた微笑まれる。
ノエル様が大変な時にこんなことを思っちゃいけないのかもしれないけど。マクシミリアンが公の場でも隣にいるのは本当に幸せだ。
彼が隣にいるだけでこんなに幸せなのに、マクシミリアンと結婚したらどれだけ幸せな生活になるんだろう。
例の制約があるから婚約までにあと二年と少し。成人してから結婚するとして、成人までにもう一年かかるから先といえば先の話なんだけど。
この国では未成年でも結婚ができるけれど成人後がやはり望ましいとはされている。成人が十六歳だからそれ以下の年齢だと幼すぎるものね。
……マクシミリアンが旦那様なんて、毎日ドキドキして死んでしまいそうね。
「……ビアンカ嬢」
マクシミリアンになんだか感慨深げに名前を呼ばれる。彼も、隣に並べる立場になったのが嬉しいのかもしれない。
「……セルバンデス卿」
「いつものようにマクシミリアンと呼んでください」
そうね、セルバンデス卿と呼ぶのは格式張っていて少し疲れてしまうものね。
「ふふ、マクシミリアン。じゃあ貴方もビアンカって呼んで?」
「……シュラット侯爵にお仕えしているうちは呼べません」
おねだりするとマクシミリアンにきっぱりと断られてしまい、わたくしは拗ねた気持ちになってしまう。
この人案外律儀なところがあるのよね! 今くらい、いいじゃないって思うんだけど。
「もう! 今だけよ。お願い、マクシミリアン!」
わたくしが食い下がると彼は少し困ったように口を開いて……。
「……ビアンカ」
と頬を染めながら耳元で囁いてくれた。
「…………!!」
わたくしは、自分から言いだしたことなのに真っ赤になって固まってしまった。
どうしよう。マクシミリアンの低音イケボで名前を囁かれると、想像していたより名前呼びの破壊力がすごい。
婚約したらずっとこうなの? ドキドキしすぎて心臓が破裂しそうなんですけど!!
「も、もう一回……!」
「困った子ですね、ビアンカは」
耳に唇が触れるような距離で、そう囁かれてしまう。
あああー! どうしよう、『困った子』なんて推しに言われて名前まで呼ばれるなんて! いくら課金すればいいの!? 好き!
「……どうしよう。寮に帰ったらもっと言ってもらわなきゃ」
「ほどほどにしましょうね、お嬢様」
――ビアンカ嬢を通り越してお嬢様呼びに戻されてしまった。
ひどいわ、なんて思いながら頬を膨らませると、マクシミリアンにおかしそうに小さく声を上げて笑われてしまう。
こんな彼が見られるなんて……本当にこの世界に転生してよかったわ。ゲームだけでは知ることができなかったマクシミリアンの表情で日々はいっぱいだ。
そうこうしていると風の魔石を使った拡声器で教師が試合再開を告げた。
ノエル様の試合は第一試合だったから、彼の次の出番まではまだまだ時間がかかる。のんびりと試合の観戦でもしようかしらね。
ゾフィー様とフィリップ王子も観戦をしているうちに帰ってくるだろう。
入場口から選手が入ってきて対峙する。三年生同士なのか、どちらも筋肉質で大きな生徒だ。
ノエル様も十三歳にしては体格が立派で身長も170cm以上はあるので見劣りはしないのだけど。小さなゾフィー様と並ぶと本当に身長差がすごいのよね。
今戦っている二人の打ち合いはすごいけれど、ノエル様と比べるとどうしても見劣りしてしまう。
怪我さえなければノエル様は余裕で優勝していたのかも……。
いや、ノエル様だったらお怪我をしていても優勝できるのかもしれないけど!
そうやって試合を観戦していると、
「た……ただいま戻りましたわ……!」
なんだかフラフラとした様子のゾフィー様がお戻りになり、魂が抜けたような惚けた表情で席へと着いた。
その顔は真っ赤で時折『ああ……奥さん……』なんてうわ言のように言っている。
ゾフィー様、絶対ノエル様となにかあったでしょう!?
ああ、お聞きしたいけど今じゃないわね。騎士祭が終わってからじっくり聞かせてもらおう!
ミルカ王女が何故かベルリナ様と肩を組んで楽しそうな顔をしていた。ベルリナ様はなんだかとても微妙なお顔だけど……。
ミルカ王女の背後でハウンドも悪い顔をしていて、マリア様は『くっ……推しカプ頑張れ!』なんて呟きながら悔しそうな顔をしている。一体何があったのかしら。
ゾフィー様はノエル様とゆっくりお話ししたいだろうからと医務室に残してきた。
お二人のことだしきっとよい語らいをされているわね。
フィリップ王子は治癒師の手配の最中だ。彼はダウストリア家のかかりつけ治癒師の着が明日になりそうだと聞いて、王宮から治癒師を派遣することを決めたのだ。
それでも治癒師の数は少なく出払ってしまっているから、夕方着にはなってしまうそうなのだけれど。
ちなみに治療費もフィリップ王子持ちらしい。王宮付きの治癒師はとても高額で一貴族家にとっては相当な負担になってしまうものね。
……ノエル様はフィリップ王子に大事にされているのね。親友っていいな、なんて思ってしまう。
「遅いなお前たち」
ミーニャ王子は相変わらずテーブル席でお菓子を食べていたようだ。彼はわたくしたちを見るとゆったりと紅茶を口に運びながらそう言った。
ほんとにこの方はマイペースだな……。この人の番になる人は大変なんだろうな。いや、案外恋は人を変えたりするのかしら?
「お待たせして申し訳ありません、ミーニャ王子」
わたくしはそう言いながら席へと戻った。会場の騒然とした様子はもう落ち着いており、皆今か今かと試合の再開を待ち望んでいる。
ノエル様は怪我を押して試合に臨むようだけれど……本当に大丈夫なのかしら。無理はしないといいな。
そっと手を繋がれた気配がしてそちらを見ると、マクシミリアンが柔らかく微笑んでいた。
繋がれた手をぎゅっと握り返すとまた微笑まれる。
ノエル様が大変な時にこんなことを思っちゃいけないのかもしれないけど。マクシミリアンが公の場でも隣にいるのは本当に幸せだ。
彼が隣にいるだけでこんなに幸せなのに、マクシミリアンと結婚したらどれだけ幸せな生活になるんだろう。
例の制約があるから婚約までにあと二年と少し。成人してから結婚するとして、成人までにもう一年かかるから先といえば先の話なんだけど。
この国では未成年でも結婚ができるけれど成人後がやはり望ましいとはされている。成人が十六歳だからそれ以下の年齢だと幼すぎるものね。
……マクシミリアンが旦那様なんて、毎日ドキドキして死んでしまいそうね。
「……ビアンカ嬢」
マクシミリアンになんだか感慨深げに名前を呼ばれる。彼も、隣に並べる立場になったのが嬉しいのかもしれない。
「……セルバンデス卿」
「いつものようにマクシミリアンと呼んでください」
そうね、セルバンデス卿と呼ぶのは格式張っていて少し疲れてしまうものね。
「ふふ、マクシミリアン。じゃあ貴方もビアンカって呼んで?」
「……シュラット侯爵にお仕えしているうちは呼べません」
おねだりするとマクシミリアンにきっぱりと断られてしまい、わたくしは拗ねた気持ちになってしまう。
この人案外律儀なところがあるのよね! 今くらい、いいじゃないって思うんだけど。
「もう! 今だけよ。お願い、マクシミリアン!」
わたくしが食い下がると彼は少し困ったように口を開いて……。
「……ビアンカ」
と頬を染めながら耳元で囁いてくれた。
「…………!!」
わたくしは、自分から言いだしたことなのに真っ赤になって固まってしまった。
どうしよう。マクシミリアンの低音イケボで名前を囁かれると、想像していたより名前呼びの破壊力がすごい。
婚約したらずっとこうなの? ドキドキしすぎて心臓が破裂しそうなんですけど!!
「も、もう一回……!」
「困った子ですね、ビアンカは」
耳に唇が触れるような距離で、そう囁かれてしまう。
あああー! どうしよう、『困った子』なんて推しに言われて名前まで呼ばれるなんて! いくら課金すればいいの!? 好き!
「……どうしよう。寮に帰ったらもっと言ってもらわなきゃ」
「ほどほどにしましょうね、お嬢様」
――ビアンカ嬢を通り越してお嬢様呼びに戻されてしまった。
ひどいわ、なんて思いながら頬を膨らませると、マクシミリアンにおかしそうに小さく声を上げて笑われてしまう。
こんな彼が見られるなんて……本当にこの世界に転生してよかったわ。ゲームだけでは知ることができなかったマクシミリアンの表情で日々はいっぱいだ。
そうこうしていると風の魔石を使った拡声器で教師が試合再開を告げた。
ノエル様の試合は第一試合だったから、彼の次の出番まではまだまだ時間がかかる。のんびりと試合の観戦でもしようかしらね。
ゾフィー様とフィリップ王子も観戦をしているうちに帰ってくるだろう。
入場口から選手が入ってきて対峙する。三年生同士なのか、どちらも筋肉質で大きな生徒だ。
ノエル様も十三歳にしては体格が立派で身長も170cm以上はあるので見劣りはしないのだけど。小さなゾフィー様と並ぶと本当に身長差がすごいのよね。
今戦っている二人の打ち合いはすごいけれど、ノエル様と比べるとどうしても見劣りしてしまう。
怪我さえなければノエル様は余裕で優勝していたのかも……。
いや、ノエル様だったらお怪我をしていても優勝できるのかもしれないけど!
そうやって試合を観戦していると、
「た……ただいま戻りましたわ……!」
なんだかフラフラとした様子のゾフィー様がお戻りになり、魂が抜けたような惚けた表情で席へと着いた。
その顔は真っ赤で時折『ああ……奥さん……』なんてうわ言のように言っている。
ゾフィー様、絶対ノエル様となにかあったでしょう!?
ああ、お聞きしたいけど今じゃないわね。騎士祭が終わってからじっくり聞かせてもらおう!
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