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閑話16・短編まとめ3
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活動報告にちょこちょこ上げている短編のまとめその3です。
『彼に推しを説明する』(時系列的にはお付き合い後、学園祭前)
イチャイチャしているだけの小話です。
-----------------------------------
『彼に推しを説明する』
わたくしは寮の部屋でマクシミリアンに膝枕をしてもらい、のんびりと休日の午後を過ごしていた。
胸の上にはマクシミリアンが出してくれた黒い子犬を抱いてその毛並みの手触りを堪能している……黒の滑らかな被毛がとても気持ちいい。
マクシミリアンはなんだか楽しそうな表情で、飽きずにずっとわたくしの髪を手で梳いていた。
子犬の体温とマクシミリアンの手の感触の心地よさで思わずウトウトとして目を閉じると、さらりとした髪が触れる感触と共に柔らかなものが唇に落ちてきた。
それに驚いて目を開ければ、とても近い位置にマクシミリアンの端正な美貌があってわたくしの目は一気に覚めてしまう。
……不意打ちで世界で一番好みのお顔が近くにあるとか、し……心臓が止まる!
しかも急にキスするなんて……!
「キスしたでしょ!!」
「はい、しました」
真っ赤な顔で問うと、彼は悪びれもせず悪戯っぽい笑顔を浮かべて言った。
うう、至近距離で推しの可愛い笑顔だなんて、許してしまうじゃない……!
「やっぱりマクシミリアンのお顔はずるいと思うの! 推しの顔がよすぎる! お金払わせて!!」
恥ずかしくて思わず両手で顔を隠してじたばたしながら叫ぶと、マクシミリアンは怪訝そうな顔をした。
「お嬢様、お給金はもう頂いておりますよ?」
「ああ……そうじゃなくて! 推しに課金出来ないのがつらいの……!」
「お嬢様。以前から気になっていたのですが……『推し』とはなんでしょう?」
マクシミリアンに訊かれて、わたくしは思わず固まってしまった。
……前世から貴方のことが1番好きでしたって、せ……説明しなきゃならないですかね……!?
「えっと……言わなきゃダメ?」
わたくしは、マクシミリアンを見上げて苦笑いしつつ言った。
「秘密はもう、作らないというお約束ですよね?」
するとマクシミリアンが悲しそうに眉を下げる……ああああ、そのお顔も可愛いですね!
意識すると彼のお顔が見られなくなって日常生活に支障をきたすので、意識しないようにと心がけているけれど。マクシミリアンはわたくしの好みの粋のようなお顔なのだ。
その酷薄な印象にも見える端正な顔立ちも、奇麗な褐色の肌も、夜を溶かしたみたいな黒髪も、闇みたいな深い色の瞳も、全部大好き。
もちろん見た目だけじゃない。
ずっと一緒にいて深く内面を知って、彼と思い出を積み重ねて、現実の彼を好きになった。
「……前世のね。乙女ゲームの登場人物の中で、マクシミリアンが1番好きだったの」
前世から貴方が好みでしたなんて、重くない? 引かない?
マクシミリアンはわたくしの言葉を聞いて目を丸くした。
「それでね、その……前世の言葉で1番好きってことを、『推し』って言うの」
恥ずかしくて、彼の視線から逃れたくて思わず顔を手で覆ってしまう。
そのわたくしの手を子犬がペロペロと温かい舌で舐めた。うう……くすぐったい。
「しかもね、現実のマクシミリアンは乙女ゲームよりも、もっとずっと素敵で。現実の方が更に推せちゃうから、本当にずるいの!」
早口で語る言葉が止まらない。
前世でマクシミリアン担当の友達と語り合った時も毎回数時間止まらなかったのだ。簡単に止まるわけがない。
自担の友人とだけじゃなくフィリップ王子担当の友人ともスカイ〇で数時間『互いの推しのよいところアピール選手権』を繰り広げた。
「好きなところを挙げろって言われたら、何時間でも言えるわ。それが『推し』なの!」
羞恥でマクシミリアンの顔が見られない……なんて思っていたら顔を覆っていた手をマクシミリアンにそっと掴まれ取り払われた。
「熱烈な、告白ですね」
マクシミリアンが頬を染め潤んだ目をして見つめてくる。……や……止めて!
「お嬢様は前世から、私をお好きだったということですね」
改めて言われると、すごく恥ずかしい。
だけど前世の『推し』と今世の『推し』は意味合いがね、全然違うから……!
「大好きよ。前世から好きだけど、今の方がずっと」
「……お嬢様。煽ってらっしゃいますか? キスしてもいいですよね?」
「ダメよ!」
わたくしの制止の声なんて聞かない嬉しそうな執事の顔が近づいてきて。
キスをたっぷり小一時間されてしまったのは、言うまでもない。
……マクシミリアンに餌を与えてはダメね。
『彼に推しを説明する』(時系列的にはお付き合い後、学園祭前)
イチャイチャしているだけの小話です。
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『彼に推しを説明する』
わたくしは寮の部屋でマクシミリアンに膝枕をしてもらい、のんびりと休日の午後を過ごしていた。
胸の上にはマクシミリアンが出してくれた黒い子犬を抱いてその毛並みの手触りを堪能している……黒の滑らかな被毛がとても気持ちいい。
マクシミリアンはなんだか楽しそうな表情で、飽きずにずっとわたくしの髪を手で梳いていた。
子犬の体温とマクシミリアンの手の感触の心地よさで思わずウトウトとして目を閉じると、さらりとした髪が触れる感触と共に柔らかなものが唇に落ちてきた。
それに驚いて目を開ければ、とても近い位置にマクシミリアンの端正な美貌があってわたくしの目は一気に覚めてしまう。
……不意打ちで世界で一番好みのお顔が近くにあるとか、し……心臓が止まる!
しかも急にキスするなんて……!
「キスしたでしょ!!」
「はい、しました」
真っ赤な顔で問うと、彼は悪びれもせず悪戯っぽい笑顔を浮かべて言った。
うう、至近距離で推しの可愛い笑顔だなんて、許してしまうじゃない……!
「やっぱりマクシミリアンのお顔はずるいと思うの! 推しの顔がよすぎる! お金払わせて!!」
恥ずかしくて思わず両手で顔を隠してじたばたしながら叫ぶと、マクシミリアンは怪訝そうな顔をした。
「お嬢様、お給金はもう頂いておりますよ?」
「ああ……そうじゃなくて! 推しに課金出来ないのがつらいの……!」
「お嬢様。以前から気になっていたのですが……『推し』とはなんでしょう?」
マクシミリアンに訊かれて、わたくしは思わず固まってしまった。
……前世から貴方のことが1番好きでしたって、せ……説明しなきゃならないですかね……!?
「えっと……言わなきゃダメ?」
わたくしは、マクシミリアンを見上げて苦笑いしつつ言った。
「秘密はもう、作らないというお約束ですよね?」
するとマクシミリアンが悲しそうに眉を下げる……ああああ、そのお顔も可愛いですね!
意識すると彼のお顔が見られなくなって日常生活に支障をきたすので、意識しないようにと心がけているけれど。マクシミリアンはわたくしの好みの粋のようなお顔なのだ。
その酷薄な印象にも見える端正な顔立ちも、奇麗な褐色の肌も、夜を溶かしたみたいな黒髪も、闇みたいな深い色の瞳も、全部大好き。
もちろん見た目だけじゃない。
ずっと一緒にいて深く内面を知って、彼と思い出を積み重ねて、現実の彼を好きになった。
「……前世のね。乙女ゲームの登場人物の中で、マクシミリアンが1番好きだったの」
前世から貴方が好みでしたなんて、重くない? 引かない?
マクシミリアンはわたくしの言葉を聞いて目を丸くした。
「それでね、その……前世の言葉で1番好きってことを、『推し』って言うの」
恥ずかしくて、彼の視線から逃れたくて思わず顔を手で覆ってしまう。
そのわたくしの手を子犬がペロペロと温かい舌で舐めた。うう……くすぐったい。
「しかもね、現実のマクシミリアンは乙女ゲームよりも、もっとずっと素敵で。現実の方が更に推せちゃうから、本当にずるいの!」
早口で語る言葉が止まらない。
前世でマクシミリアン担当の友達と語り合った時も毎回数時間止まらなかったのだ。簡単に止まるわけがない。
自担の友人とだけじゃなくフィリップ王子担当の友人ともスカイ〇で数時間『互いの推しのよいところアピール選手権』を繰り広げた。
「好きなところを挙げろって言われたら、何時間でも言えるわ。それが『推し』なの!」
羞恥でマクシミリアンの顔が見られない……なんて思っていたら顔を覆っていた手をマクシミリアンにそっと掴まれ取り払われた。
「熱烈な、告白ですね」
マクシミリアンが頬を染め潤んだ目をして見つめてくる。……や……止めて!
「お嬢様は前世から、私をお好きだったということですね」
改めて言われると、すごく恥ずかしい。
だけど前世の『推し』と今世の『推し』は意味合いがね、全然違うから……!
「大好きよ。前世から好きだけど、今の方がずっと」
「……お嬢様。煽ってらっしゃいますか? キスしてもいいですよね?」
「ダメよ!」
わたくしの制止の声なんて聞かない嬉しそうな執事の顔が近づいてきて。
キスをたっぷり小一時間されてしまったのは、言うまでもない。
……マクシミリアンに餌を与えてはダメね。
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